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3話〜イケメンと友達になったはいいが〜
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「楓ちゃんこれ、凜くんから。返さなくてもいいって」
家に帰ってきた姉ちゃんから雑誌のたっぷり詰まった紙袋を渡される。事務所で陽影と鉢合わせ、家まで送ってもらったらしい。
やることを一通り終え、俺は中身を確認した。男性向けから女性向けのファッション誌まで、さまざまな雑誌が揃っている。
こないだ、次に出る雑誌の予定を陽影に聞いたら、「よかったら今まで出た雑誌全部貸そうか」と向こうから言ってくれた。どれだけ量があるか分からないのでその時は「忙しいだろうしお前の気が向いた時に見せてくれたらいいよ」と返事をしたのだが、思っていたよりも早かった。
つか、学校に持ってくるとばかり思ってたから、こうして姉ちゃん伝てに持ってくるのは意外だった。
とかなんとか思ってると、一番上に載せられた1冊に付箋が貼られていることに気がつく。
『最初のうちは少ししか映ってないし表情もぎこちなくて恥ずかしいので、あまり見ないでください』
俺は吹き出した。
何故に敬語。こいつにも羞恥心なんてあったのか。可愛いとこもあんじゃん。
「だったら尚更、じっくり見てやんないとだよな」
デビュー時代の初々しい姿を観察して、後で会った時にからかってやろう。
そう画策して、さっそく俺は付箋が貼られた冊子を手に取った。
正直、最初の数冊は陽影の姿を探すのに苦労した。やっと見つけたと思ったら殆ど後ろ姿だけだったり、ページの端っこにちっちゃく映ってるだけだったり。でも、月日が流れるにつれ、陽影はみるみるうちに存在感を増していった。
表紙に「陽影凜」の名前を発見した時は思わず感動しちしまったし、1ページまるまるこいつの写真が映っているのを見た時は、誇らしくもあった。
陽影よりもっと知名度の高いモデルが家族にいるにもかかわらず、俺はそんなことをすっかり忘れ、「すごいっしょ、こいつ俺の友達なんですよ」と自慢して回りたい気持ちになった。何ならかつての友達にメールまで送りかけた。しなかったけど。
時間も忘れ、ファッション誌に齧り付いた。
洒落た着こなしのメンズモデルが様々なポーズを浮かべている。時には笑い、時には無表情で。カメラ目線で。カメラから目を逸らし。椅子に座り、立ち。商品の鞄をアピールするように持ち、あるいは手ぶらで。服を着て、あるいは少し着崩して肌を見せて。
それらの中で陽影が一際存在感を放っているように見えるのは俺の贔屓目ではないはずだ。
ベッドに寝そべり、頬杖をつきながらどんどんページをめくっていき、そこに映っている陽影を評価する。
陽影は大人びた表情を浮かべている。……俺、陽影のこんな顔、知らねえんだけど。
陽影はカメラに向かって優しく微笑んでいる。陽影の笑顔はもっと綺麗で、可愛いんだぜ。
陽影は唇を薄く開き、誘うように俺をじっと見つめる。やめろ、そんな顔、俺以外に見せんな。
……って、ん? 俺以外にそんな顔見せんな?
いやいや、いやいやいや。流石にそれはおかしいだろ。まずいって、友達に対する感情としてはあまりにバッドなチョイスだ。
落ち着け、落ち着けよ俺。陽影に口説かれすぎて、頭イカれちまったんじゃないだろうな。
よし、リセットしよう。一旦仕切り直しだ。もう一度今の写真を見るところからやり直そう。今度こそ正しいリアクションを取ってやるぞ。
俺は一度本を閉じ、深呼吸を繰り返す。感情が凪のように穏やかになったのを確認してから、再び雑誌に向き直った。もちろん、そこにいるのはさっき見た「エロい」陽影の姿である。
はいストップ! 一旦停止!
待てよ俺。だからさ、友達に対するチョイスで「エロい」はないだろって。せめてセクシーにしとけ。そっちならまだオブラートに包めている。だがエロいはダメだ。完全に言い方がやらしい。
親しき仲にも礼儀あり。友達をそういう目で見てはならん。むしろ俺をそういう目で見てんのは向こうだろって話だが、それは一旦置いておいてだ。
俺は友達として、純粋に陽影を応援したいの! 陽影に邪な感情を向けるそこいらの女子と一緒くたにされるのは嫌だ。
また深呼吸。ドキドキと高鳴る心臓を落ち着かせ、雑誌と対峙する。何故俺はここまで意固地になってこれと向き合おうとしてるんだろう。友人のそんな姿、見たくなけりゃ見なきゃいいだけなのに。
でも、なんか、悔しいだろ!
てなわけで、俺は雑誌の中の陽影に何度も挑戦しては呆気なくやられてしまった。「エロい」「淫ら」「えっち」「けしからん」など様々な言葉が頭に浮かぶが、どれも友達に向けるには違う気がする。
RPGのラスボスだって、経験値積んで装備整えて何度もリトライすりゃ勝つことができた。しかしながら、この陽影を前にすると俺は、パンツ一丁のレベル1勇者がラスボスに挑むかのような気持ちにさせられた。
つか、陽影が攻撃力強すぎんだよ。何このポーズ。何この表情。何この格好。お前、曲がりなりにもファッション誌なんだから服はちゃんと着ろよ。主役は服であってお前じゃないんだからさ。グラビアじゃねえんだから。
そもそも、俺だって陽影の裸見たことねえのに。何先に雑誌でお披露目しちゃってんのさ。
……ってオイ、裸見たことがあってたまるか! 俺と陽影は友達だって何度も言ってんだろうが!
家に帰ってきた姉ちゃんから雑誌のたっぷり詰まった紙袋を渡される。事務所で陽影と鉢合わせ、家まで送ってもらったらしい。
やることを一通り終え、俺は中身を確認した。男性向けから女性向けのファッション誌まで、さまざまな雑誌が揃っている。
こないだ、次に出る雑誌の予定を陽影に聞いたら、「よかったら今まで出た雑誌全部貸そうか」と向こうから言ってくれた。どれだけ量があるか分からないのでその時は「忙しいだろうしお前の気が向いた時に見せてくれたらいいよ」と返事をしたのだが、思っていたよりも早かった。
つか、学校に持ってくるとばかり思ってたから、こうして姉ちゃん伝てに持ってくるのは意外だった。
とかなんとか思ってると、一番上に載せられた1冊に付箋が貼られていることに気がつく。
『最初のうちは少ししか映ってないし表情もぎこちなくて恥ずかしいので、あまり見ないでください』
俺は吹き出した。
何故に敬語。こいつにも羞恥心なんてあったのか。可愛いとこもあんじゃん。
「だったら尚更、じっくり見てやんないとだよな」
デビュー時代の初々しい姿を観察して、後で会った時にからかってやろう。
そう画策して、さっそく俺は付箋が貼られた冊子を手に取った。
正直、最初の数冊は陽影の姿を探すのに苦労した。やっと見つけたと思ったら殆ど後ろ姿だけだったり、ページの端っこにちっちゃく映ってるだけだったり。でも、月日が流れるにつれ、陽影はみるみるうちに存在感を増していった。
表紙に「陽影凜」の名前を発見した時は思わず感動しちしまったし、1ページまるまるこいつの写真が映っているのを見た時は、誇らしくもあった。
陽影よりもっと知名度の高いモデルが家族にいるにもかかわらず、俺はそんなことをすっかり忘れ、「すごいっしょ、こいつ俺の友達なんですよ」と自慢して回りたい気持ちになった。何ならかつての友達にメールまで送りかけた。しなかったけど。
時間も忘れ、ファッション誌に齧り付いた。
洒落た着こなしのメンズモデルが様々なポーズを浮かべている。時には笑い、時には無表情で。カメラ目線で。カメラから目を逸らし。椅子に座り、立ち。商品の鞄をアピールするように持ち、あるいは手ぶらで。服を着て、あるいは少し着崩して肌を見せて。
それらの中で陽影が一際存在感を放っているように見えるのは俺の贔屓目ではないはずだ。
ベッドに寝そべり、頬杖をつきながらどんどんページをめくっていき、そこに映っている陽影を評価する。
陽影は大人びた表情を浮かべている。……俺、陽影のこんな顔、知らねえんだけど。
陽影はカメラに向かって優しく微笑んでいる。陽影の笑顔はもっと綺麗で、可愛いんだぜ。
陽影は唇を薄く開き、誘うように俺をじっと見つめる。やめろ、そんな顔、俺以外に見せんな。
……って、ん? 俺以外にそんな顔見せんな?
いやいや、いやいやいや。流石にそれはおかしいだろ。まずいって、友達に対する感情としてはあまりにバッドなチョイスだ。
落ち着け、落ち着けよ俺。陽影に口説かれすぎて、頭イカれちまったんじゃないだろうな。
よし、リセットしよう。一旦仕切り直しだ。もう一度今の写真を見るところからやり直そう。今度こそ正しいリアクションを取ってやるぞ。
俺は一度本を閉じ、深呼吸を繰り返す。感情が凪のように穏やかになったのを確認してから、再び雑誌に向き直った。もちろん、そこにいるのはさっき見た「エロい」陽影の姿である。
はいストップ! 一旦停止!
待てよ俺。だからさ、友達に対するチョイスで「エロい」はないだろって。せめてセクシーにしとけ。そっちならまだオブラートに包めている。だがエロいはダメだ。完全に言い方がやらしい。
親しき仲にも礼儀あり。友達をそういう目で見てはならん。むしろ俺をそういう目で見てんのは向こうだろって話だが、それは一旦置いておいてだ。
俺は友達として、純粋に陽影を応援したいの! 陽影に邪な感情を向けるそこいらの女子と一緒くたにされるのは嫌だ。
また深呼吸。ドキドキと高鳴る心臓を落ち着かせ、雑誌と対峙する。何故俺はここまで意固地になってこれと向き合おうとしてるんだろう。友人のそんな姿、見たくなけりゃ見なきゃいいだけなのに。
でも、なんか、悔しいだろ!
てなわけで、俺は雑誌の中の陽影に何度も挑戦しては呆気なくやられてしまった。「エロい」「淫ら」「えっち」「けしからん」など様々な言葉が頭に浮かぶが、どれも友達に向けるには違う気がする。
RPGのラスボスだって、経験値積んで装備整えて何度もリトライすりゃ勝つことができた。しかしながら、この陽影を前にすると俺は、パンツ一丁のレベル1勇者がラスボスに挑むかのような気持ちにさせられた。
つか、陽影が攻撃力強すぎんだよ。何このポーズ。何この表情。何この格好。お前、曲がりなりにもファッション誌なんだから服はちゃんと着ろよ。主役は服であってお前じゃないんだからさ。グラビアじゃねえんだから。
そもそも、俺だって陽影の裸見たことねえのに。何先に雑誌でお披露目しちゃってんのさ。
……ってオイ、裸見たことがあってたまるか! 俺と陽影は友達だって何度も言ってんだろうが!
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