夢(いつの日か)

story2 山

　暗い山道を私は走る
　なぜ今私は走っているのか覚えていない。
　母上、父上、何処におられるのですかと心の中で思う。
　腰にぶら下がった刀は小刻みにカチカチと鞘と刀身が擦れる音が聞こえる。
　なぜ私がこんな目に会わなければならないのかと無性に腹が立ったが、夜の寒い風と張り裂けそうな心臓がすぐにそれどころでは無いと脳に語りかける。
　ふと後ろを見ると、魑魅魍魎の数々が私を追っていた。
　先頭には前足が一本で、顔に壺を被った大型犬のような何かが私を追っている。
　必死に走り山道を抜けると鳥居と大きな橋が１つ目に入った。
　必死に鳥居と橋を通り抜けると後ろからは嫌な気配が全くしなくなっていた。
　振りかえると、チミモウリョウどもは山道の外にある鳥居から出られないのか、鳥居の前にたたずんでいる。
　私はほっと胸を撫で下ろした。
　後ろには明るい街が見える、そこが何処かは分からなかったがなぜかそこに帰らなくてはならないと思った。
　街の前には大きな門が１つ有った、門の近くによろうと足を進めると急に胸元が熱くなった、共に遅れて激痛が走った。
　何事かと首を回る限界まで回し後ろを見る。
　そこには、痩せこけて少しつり目、着物はボロボロの物を着た35～9歳位の侍がいた。
　その男は、(堪忍や、堪忍や、許せ、こうせな)
　とぶつぶつ独り言を言っている。
　嗚呼、私は刺されたのかと何故か冷淡に理解した。
　男の手はカチカチと震えて刀が腹の中で余分に肉を切り裂く、腹の中ではプチプチと筋肉だか臓器だか裂ける音が聞こえる。
　私は一層の事と意識を手放すことにした。
　
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　アラームが鳴る。
　
　ただでさえ、私は低血糖で朝方は弱いと言うのに胸くその悪い夢とこのアラームだ。
　
　私はいつものように朝食を食べて、スーツを着て出社する。