短編置き場

うめつきおちゃ

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忘れて 微ホラー

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「西葛西の廃工場」
「覚えてる――《裂ける女》だろ。綾瀬のコンビニ」
「……うわっ、なんだっけ。えっと……たしか、……女だよな?」
「――はい。時間切れ。綾瀬のコンビニは《信号待ちする首なしライダー》だよ」
「なっつ!エモっ。懐かしすぎて泣けてくるわ!うわー、まじで懐かしい。……あれってもう何年前になるんだ?」
「6年だろ。中2の時だから――14で……」

 俺は、年を明けると成人式を迎える。中学を卒業してからこっちの方へは来ていなかったけど、成人式で昔懐かしい奴らに会うんだと思ったら、なんとなく足が伸びて――ここに来た。

 そして、久しぶりの再会を果たしたわけだ。
 会いたいと思っていたけど……、果たしたくなかった再会を。

 

「なぁなぁ、誰が言い出しっぺだっけ。覚えてる?」
「誰だろ。……ケンスケとかじゃないかな。こういうの考えるの、好きなやつだったし」
「あー!そうだよ!ケンスケだ、懐かしい。会いてぇなぁ」




「やめとけ。――お前はもう死んでるんだから」


 俺の言葉で、完璧なまでの静寂が訪れた。
 遠くに聞こえた空ぶかしのエンジン音も聴こえなくなったことに、俺は恐怖を覚えて冷や汗が垂れる。

「誰が、なんだって?」
「……お前だよ。……お前は中2ん時、みんなで家抜け出して夜中に心霊スポット行こうって――」
「――覚えてるよ。たぶん、ケンスケが言い出したんだろ?アイツがオカルトブームを流行らしてさ」
「盛り上がったよな。オリジナルの怪談とか作って」




「あああああああ。そうか、《忘れる亡霊》ってやつだ。懐かしい」
 
 
 《忘れる亡霊》は俺の考えた怪談だ。
 自分が死んだことを忘れて、徘徊する亡霊。
 普段は誰にも見えないけど、そいつを知ってる奴だけは見えるっていうもので――。


「つまり、俺は死んでんのか」
「…………ああ、だから墓参りに来たんだよ」
「そっか。……あれ?たしか《忘れる亡霊》って……」






「出会ったら死ぬ。俺が考えた話だから覚えてるよ」
「……そっか。ごめん」








「いいよ。どうせ死ぬつもりだったから」
 
 空ぶかしのエンジン音が、静かな夜を割いて届いた。いつもの夜だ。


 死ぬにはちょうどいい。
 でも、できることなら俺はなにも忘れたくはないな――と思った。
 
 
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