32 / 52
ポジティブシンキング!
しおりを挟む
現地集合とあってすでに待っていた山口や篠原、貴田とは別に意外な人物がそこにいた。
「多賀君!?」
「よ、伊織ちゃん」
多賀 廻、皆からはタガメと呼ばれている。いわゆるチャラ男というかクラスのムードメーカー的な存在であり、恭弥とはいまだによくつるんでいる男子生徒だ。
普段もなにかと声をかけてくれたり、一部の一軍女子たちから嫌味などを言われた時にさり気なくフォローしてくれたりなど親切なやつであった。
「今日は恭弥のお守りで来てんの。よろしくな」
「お守り……?」
いわゆる恭弥の親友であればこの場にいるのは特段不思議ではないが、だとしてもお守りというのはよく分からず首をかしげる。
すると彼はいいのいいの、とおどけた様子で肩をすくめてみせた。
「……邪魔だけはすんなよ」
唸るように恭弥が口を挟む。しかし腹を立てる様子もなくいつもの調子で。
「それはお前次第だよなァ、恭弥クン?」
と笑う。
「なんか三軍と一軍の交流会みたいになっちまったなぁ」
とぼやくのは貴田だ。しかしさらに横から篠原が。
「まあオレは淡々と作品鑑賞に勤しむまでだが」
とスマホ見ながら言えば、山口がふきだした。
「お前は推しが出てる作品を見たいだけだろ」
「うっせぇな。いいだろ、可愛いんだから」
「アイドルが主演とかもう地雷の気配しかないって」
「黙れぶち殺すぞ」
ここはここで一触即発になりそうだったが稀美がすかさず間に入って微笑む。
「ほらみんな早く行こ?」
「「「はいッ!!!」」」
やはり美少女の笑顔は世界を救うというのが立証されてしまった瞬間であった。というのもまず完全にオタク三人衆は骨抜きでさっきの争いはなんとやらで和気あいあいし始めたからだ。
――はぇぇ……美少女ってすごい。
もはや羨ましさなんてものも感じないほどであるし、なんなら伊織自身も少しドキッとしてしまうほどの可憐さだった。
「……」
「おーい、恭弥クン? 顔が怖いぞ」
「元々だ馬鹿野郎」
「なにをおっしゃるイケメンが」
だが相変わらず恭弥は不機嫌だしタガメは飄々としているのだが。
――やっぱり自分の大切な人が他の男にそういう目で見られたら嫌だよね。
当たり前だと自分に言い聞かせるたびにその言葉で心えぐられるのは本当にバカだと伊織は思った。
「ね、コイツこう見えて結構単純でバカなんだよ~」
「えっ!」
タガメの言葉に一瞬自分の心を読まれたかと焦ったが当然そうではなく。
「伊織ちゃんも苦労するっしょ? こんな男やめてオレのとこにおいで~」
「……今日がお前の命日にしてやろうか」
両手を広げておどけている親友に対して恭弥は殺意に満ちた目で睨みつけている。だが実際に手を出さないのと相手も平然としているのをみると、どうもいつものやりとりらしい。
――なんだか。
「いいなぁ」
ふと口からこぼれ落ちてしまった言葉に本人より先にいち早く反応したのはタガメだった。
「え、もしかしてガチでオレのとこくる?」
「ちがっ、そうじゃなくて。稀美さんともそうだけど二人が仲良くていいなって」
「仲良い? あははっ、コイツ本気でオレのこと殺しにかかる勢いだけど」
彼は謙遜しているが、こうやって軽口を言い合う関係を恭弥と築けることが羨ましいのだ。
――僕なんて陰キャだしオタクっぽいし。
隣にいてもオドオドキョドっているのが精一杯なもので。
もちろんオタク友達がいるからボッチではないものの、オタクと言ってもVTuberが好きということ以外に別に情熱を燃やすモノがある訳でもない。
何においても中途半端だという自己評価が拭えずにいた。
「僕は正直うらやましいよ」
そう言いつつ、持ち前のネガティブ思考で鬱々としていると。
「つまらんこと言うな。行くぞ」
と恭弥に一刀両断されて手をひかれる。
「あ、ごめん……」
――たしかに彼にとってもつまらないし、くだらない。
しょぼんと力なく肩を落とす伊織を、彼が一瞥した。
「俺は好きだ」
「え?」
「そのままで良い」
だから、といささか乱暴に言われて一際強くつないだ手で引き寄せられる。
「少なくとも俺はそれでいい」
そう囁かれた言葉はまるでとっておきの秘密を打ち明けような声色で、伊織の心臓を跳ねさせるのには充分な色気を含んでいた。
「え……え……」
「置いてかれるぞ」
「ひぇ……あ、うん!」
――び、びっくりした~~~っ!!!
耳が孕むってまさにこういう事だ、イケメンだけじゃなくてイケボって恐ろしいと内心身震いしながら大人しくうなずいた。
「恭弥くん、ありがとう」
「あ?」
ちょっと勘違いしそうになったけど、と照れ笑いを挟みつつ彼を見上げる。
「僕のことも親友だっていってくれたんだよね」
「!?!?!?」
一方の恭弥は鳩が豆鉄砲を食らった顔をしたほんの数秒あと。
「……おぅ」
なぜか今度はそっちが項垂れがちになったのも、タガメが腹を抱えて笑っているのも今の伊織には見えてなかった。
――ちょっとは仲良くなれたってことだよね!
と自己肯定感は相変わらず低いが間違った方向のポジティブさで浮かれていたのである。
「多賀君!?」
「よ、伊織ちゃん」
多賀 廻、皆からはタガメと呼ばれている。いわゆるチャラ男というかクラスのムードメーカー的な存在であり、恭弥とはいまだによくつるんでいる男子生徒だ。
普段もなにかと声をかけてくれたり、一部の一軍女子たちから嫌味などを言われた時にさり気なくフォローしてくれたりなど親切なやつであった。
「今日は恭弥のお守りで来てんの。よろしくな」
「お守り……?」
いわゆる恭弥の親友であればこの場にいるのは特段不思議ではないが、だとしてもお守りというのはよく分からず首をかしげる。
すると彼はいいのいいの、とおどけた様子で肩をすくめてみせた。
「……邪魔だけはすんなよ」
唸るように恭弥が口を挟む。しかし腹を立てる様子もなくいつもの調子で。
「それはお前次第だよなァ、恭弥クン?」
と笑う。
「なんか三軍と一軍の交流会みたいになっちまったなぁ」
とぼやくのは貴田だ。しかしさらに横から篠原が。
「まあオレは淡々と作品鑑賞に勤しむまでだが」
とスマホ見ながら言えば、山口がふきだした。
「お前は推しが出てる作品を見たいだけだろ」
「うっせぇな。いいだろ、可愛いんだから」
「アイドルが主演とかもう地雷の気配しかないって」
「黙れぶち殺すぞ」
ここはここで一触即発になりそうだったが稀美がすかさず間に入って微笑む。
「ほらみんな早く行こ?」
「「「はいッ!!!」」」
やはり美少女の笑顔は世界を救うというのが立証されてしまった瞬間であった。というのもまず完全にオタク三人衆は骨抜きでさっきの争いはなんとやらで和気あいあいし始めたからだ。
――はぇぇ……美少女ってすごい。
もはや羨ましさなんてものも感じないほどであるし、なんなら伊織自身も少しドキッとしてしまうほどの可憐さだった。
「……」
「おーい、恭弥クン? 顔が怖いぞ」
「元々だ馬鹿野郎」
「なにをおっしゃるイケメンが」
だが相変わらず恭弥は不機嫌だしタガメは飄々としているのだが。
――やっぱり自分の大切な人が他の男にそういう目で見られたら嫌だよね。
当たり前だと自分に言い聞かせるたびにその言葉で心えぐられるのは本当にバカだと伊織は思った。
「ね、コイツこう見えて結構単純でバカなんだよ~」
「えっ!」
タガメの言葉に一瞬自分の心を読まれたかと焦ったが当然そうではなく。
「伊織ちゃんも苦労するっしょ? こんな男やめてオレのとこにおいで~」
「……今日がお前の命日にしてやろうか」
両手を広げておどけている親友に対して恭弥は殺意に満ちた目で睨みつけている。だが実際に手を出さないのと相手も平然としているのをみると、どうもいつものやりとりらしい。
――なんだか。
「いいなぁ」
ふと口からこぼれ落ちてしまった言葉に本人より先にいち早く反応したのはタガメだった。
「え、もしかしてガチでオレのとこくる?」
「ちがっ、そうじゃなくて。稀美さんともそうだけど二人が仲良くていいなって」
「仲良い? あははっ、コイツ本気でオレのこと殺しにかかる勢いだけど」
彼は謙遜しているが、こうやって軽口を言い合う関係を恭弥と築けることが羨ましいのだ。
――僕なんて陰キャだしオタクっぽいし。
隣にいてもオドオドキョドっているのが精一杯なもので。
もちろんオタク友達がいるからボッチではないものの、オタクと言ってもVTuberが好きということ以外に別に情熱を燃やすモノがある訳でもない。
何においても中途半端だという自己評価が拭えずにいた。
「僕は正直うらやましいよ」
そう言いつつ、持ち前のネガティブ思考で鬱々としていると。
「つまらんこと言うな。行くぞ」
と恭弥に一刀両断されて手をひかれる。
「あ、ごめん……」
――たしかに彼にとってもつまらないし、くだらない。
しょぼんと力なく肩を落とす伊織を、彼が一瞥した。
「俺は好きだ」
「え?」
「そのままで良い」
だから、といささか乱暴に言われて一際強くつないだ手で引き寄せられる。
「少なくとも俺はそれでいい」
そう囁かれた言葉はまるでとっておきの秘密を打ち明けような声色で、伊織の心臓を跳ねさせるのには充分な色気を含んでいた。
「え……え……」
「置いてかれるぞ」
「ひぇ……あ、うん!」
――び、びっくりした~~~っ!!!
耳が孕むってまさにこういう事だ、イケメンだけじゃなくてイケボって恐ろしいと内心身震いしながら大人しくうなずいた。
「恭弥くん、ありがとう」
「あ?」
ちょっと勘違いしそうになったけど、と照れ笑いを挟みつつ彼を見上げる。
「僕のことも親友だっていってくれたんだよね」
「!?!?!?」
一方の恭弥は鳩が豆鉄砲を食らった顔をしたほんの数秒あと。
「……おぅ」
なぜか今度はそっちが項垂れがちになったのも、タガメが腹を抱えて笑っているのも今の伊織には見えてなかった。
――ちょっとは仲良くなれたってことだよね!
と自己肯定感は相変わらず低いが間違った方向のポジティブさで浮かれていたのである。
53
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
胎児の頃から執着されていたらしい
夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。
◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。
◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる