転生マザー♂の子育て論

田中 乃那加

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生贄は極上③

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 冷たい空気が流れていたはずの地下牢には熱気と濃い精の匂い、そして掠れた喘ぎ声で満たされていた。

「あ゙~っ、あ゙っ、お゙、ぁ、ああ」

 ビクンビクンッと身体を震わせながら石造りの床をのたうち回る。
 手首の緊縛はとうに解かれたのに、逃げ出すことすら思いつかない。というより思考力はもはや奪われていると言っても過言ではない。

「や゙ぁあ、や゙ら゙ぁぁ……も、イ゙ぎたぐな゙いぃ」

 胸やペニスだけではない。脇から首、耳の穴にいたるまでありとあらゆる箇所を弄られ開発された身体は性感帯だらけになっていた。

『すっかり良い顔つきになりましたね』
「んぁぁ、あ、ぇ、ゆるしてぇ、も、おねがぃ」

 もう精液すら出ないのに腰をヘコヘコさせて啼く姿。
 男であれば誰しもがこの扇情的な様子に喉を鳴らし、むしゃぶりつくだろう。それはこの影の男も同じようで。

『このいやらしいメス猫が』

 その瞬間、影がまるで霧散するかのように消えて代わりに一人の少年が現れた。

「え、エト?」
『そう――いや、そうだよ』

 赤髪をゆっくりかきあげて無邪気に笑うその姿こそ記憶にある彼だ。

『なぁオルニト』

 声変わり前のテノールは妙に艶っぽく名を呼ぶ。

『オレ、あんたが兄ちゃんだったらよかったよ』
「え、エト、なんで」

 彼はそばかすの残る頬を緩め、目元をキュッと細めて笑った。

『オレに抱かれたいんだろ、なぁ?』
「僕はそんなこと一度も……!」

 勢いよく否定はするがその間も息を乱すほどの快感とグズグズに蕩けた身体と頭に、つい勘違いしてしまう。

 身近な者たちにも反対されながらも、救いたいと望んだ相手。
 力のまったく入らない手を懸命に伸ばして、ゆっくり身体を前進させようとする。

「エト……ぁ、はぁっ……あ、た、たすける、から……」
『助ける?』
「だいじょ、ぶ……僕は君の、味方、だから……」
『オルニト』

 あのヤンチャ坊主だが心根の優しい少年に戻って欲しい。
 悪い仲間から足を洗って、太陽の下を堂々と顔を上げて生きていてと願っているのだ。

「いま、ならまだ……すぐに、僕が……」

 快楽に濡れた眼差しを向けながらも懸命に差し伸べようとした手を、少年の形をしたは無遠慮にとった。

『――本当に反吐へどが出る』
「え?」

 凍りつくような声に、呆気にとられたオルニトの表情が絶望に変わるまでわずか数秒。

「んん゙ぅっ!?」

 右腕をものすごい力で引き寄せられて噛みつかれるように口付けられた。

 舌が強引にねじ込まれ窒息するんじゃないかとめちゃくちゃに暴れるが、ビクともしない。

 くちゅくちゅ、という水音と荒い息の中でまるで溺れた者が必死で足掻くように身体を引こうとするがそれを許さないのが少年の形をしたと触手だ。

「ん゙ぅ゙ッ、ぉ゙、ぐ……!」

 苦しい。いっそ意識を失ってしまえば楽だったかもしれない。
 だがその想いとはうらはらに人外めいた長い舌で喉奥を犯されながらも触手たちがペニスや尻の窄まり、乳首を刺激し続ける。
 
 ありとあらゆる快感の責め苦にもがきつつも、唯一自由になっていた左腕で男の胸板を力なく叩いた。

『……ふん』
「っ、エトは、こんなことッ、しない」

 口を離した男を睨みつける。

「あの子は僕を怖がらないでいてくれたんだ」

 あの魔法の暴発から、村人達はオルニトを疎んだ。もちろんあからさまな嫌がせなどはあまりない。

 しかし大人たちの表情はどこか怯えていたし、子どもはもっと露骨だった。

 バケモノめ、村から出ていけ――と石を投げられたこともある。

 そのたびに親が大慌てで駆けていき、何かを小声で言いながら我が子を引きずっていった。

 その時、ちらりとこちらに寄越した眼差しを今でも忘れられない。

 畏怖と嫌悪の入り交じったそれは幼い心を確実に傷付けた。

「お前はエトじゃない。あの子はそんなこと……」
『だからなんだというんですか。バカバカしい』

 男は半笑いでため息をついて指を鳴らす。

『貴方が気に入りそうな姿をとったまでのこと。お気に召さないのなら――はどうだ、オルニト』
「!」

 赤毛の少年の姿はぐにゃりと歪み、現れたのは。

『俺に抱かれたいか』

 長い黒髪に褐色の肌、そしてエメラルドを思わせる翠色の瞳。

「い、イドラ……」

 本物ではない。わかっている。
 どうやらこの影のような男は特定の姿を持たず、自由自在に変化できる魔物らしい。

 だから連れ去られた時の醜いドラゴン
 もエトの姿もそうなのだろう。
 声も変えられるから、窓の外で呼んだのも彼だ。
 
はお前を愛してやれるぞ』

 耳朶に触れるのは悪魔のような囁きだった。
 
『皆から恐れられ嫌われてきたんだろう?』
「っ、それは」
『その魔力は人間界ではあまりにも異質であり脅威だ。しかし魔界ではちがう』
「……」
『俺は魔族だ。お前の力も存在もなにもかもすべて受け入れよう』

 吹き込まれる甘言に唇が震える。
 さしずめ、疎外感を持て余してきた心につけ込む悪魔の囁きといったところか。頬を撫でる長い指は美しく、泣きたくなるほど優しかった。

「こんなもの……ニセモノじゃないか」
『だからなんだ? お前はこの姿に惹かれている』
「ち、ちがう」
『違わないな。俺は人が求める形に変化することができてな。特にこうやって触れると――』

 彼がそっと唇に指を這わせる。

『会いたいと望む姿に変わる。これで分かっただろう、お前は俺を求めていることが』

 所詮は魔物の戯言。
 そんな心を読むかのような芸当ができるはずがない。そう言って惑わせ、快楽の虜にして堕落させるのが魔物やつらの常套手段なのだ。

『素直になれ、オルニト。身をゆだねるだけでいい』
「あ……ぁ、ぁ」

 ちゅ、と口付けを落とされた。それがふるいつきたくなるように優しく甘い。

 まるで酒に酔ったような熱い息を吐いた。

『そう力を抜いて』

 男の手がオルニトの下肢にまとわりつく触手を掴む。ブチブチと嫌な音をたててそれらを引きちぎった。
 
「あっ、ぁん」

 そんな刺激にさえ軽く喘いでしまう自分が情けない。涙目になる彼を嗤いながら、男は覆いかぶさってくる。

『さて受け入れてもらおうか』

 形の良い唇がいびつに微笑んだ。

「や、やだ」
『口だけだろう。ほら、その証拠に』

 そう言うと粘液でぬめった身体をまさぐり、抵抗する間もなく窄まりに指を突き立てた。

「ひぃっ!?」
『処女とは思えないほどよく蕩けて』
「あ゙っ、あ、ん、やだっ、さわ、らない、で」
『もっと広げようか』
「んぎぃ! い゙、や゙、いき、なり゙……ぬ、い゙てぇ゙っ」

 ぐちゅぐちゅと三本の指を突き入れて掻き回されてたまらなくなる。
 異物感と軽い痛みなんて最初だけ。乱暴極まりないそれに声を震わせ啼く姿は、さぞ加虐心をそそるだろう。

『お前のことを、処女でいながら名器に仕立てろと命令されていてな。だから悪く思うなよ』
「やだぁっ、やめ゙、あ゙……ッ!?」

 とあるトコロを掠めた瞬間、身体が跳ねるほどの強烈な快感に目を見開く。

『なるほど』
「え、え……ひっ、お゙!? んん゙、あ゙!」
『ここがお前のだ。覚えておけよ』
「ああぁぁッ、あァ、しょれっ、やめでっ! おかしっ、くなる、からぁ゙ぁぁ!!!」

 首を必死に振って拒否しようにもなんの抵抗にすらなっていない。
 
「やらっ、や、あ゙っ、ああ゙」

 愛撫なんて生易しいものじゃなく、これはもう拷問だ。
 耐えきれずイっても止めてもらえない。

「イった! イったの゙、にぃ゙っ!!」
『それがなんだ。まだできるだろう』
「でぎな゙ぃ゙ぃ! む゙りだから゙っ、でちゃ、ぅ、なんか……っ」
『ほら出せよ。精根尽き果てたところで淫紋つけてやるから』
「やだぁ゙っ、あ゙ぁ、とめ゙でっ、おね゙がいっ、ちがっ、ちがゔの゙! でちゃ――」

 ぷしゃっ、と音をたててペニスから精液とは別のものが吹き出す。
 尿にも似ているので失禁かと思った彼は涙ぐむが、どうやらそうではないようで。

『まったく潮吹きまでするなんて。はしたない』
「し、しお……?」
『でもまあ、これで準備は整ったな』

 体液と粘液の混ざってものにまみれた腹に手がかざされた。
 
『淫蕩なる花嫁。お前の腹に淫紋を刻み込む』
「がッ、ぁ゙!?」

 痛みを伴う熱に声を失う。
 焼印を入れられたような感覚。跳ねる四肢を押さえつける男の顔は、再びぐにゃりと歪む。

 もうこの姿も用無しとばかりに。



 ――目の前が白く、爆ぜた。
 
 


 
 
 

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