かぐや姫物語異伝(BL)

田中 乃那加

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求婚者に無理難題を (次、R18)

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「姫様の、バカ」

 そうつぶやくも状況はちっとも変わらない。

 まずあれからよく知らない偉そうなお兄さんやオッサンたちに面談させられる羽目になった。
 
『これはこれは……噂以上の美少女ではなありませぬか』
『是非ともわれの妻になってくだされ。もちろん苦労のひとつもさせませぬ』
『いや我の妻に!』
『おい抜け駆けするでない。姫は麿のじゃ。この成金風情が』
『まて聞き捨てなりませぬ、撤回されたし』
『なにを!』

 なんて目の前で喧嘩までされてウンザリだった。

 そういえば最近求婚というか……姫様に惚れ込んだ男たちからの、もはやストーカーレベルのアプローチがすごかった。
 家の中を覗き込んだり、深夜から寝室に忍び込もうとしたり (もちろん僕が撃退しましたけど!) よく分からんない手紙を寄越してくる輩もいたっけ。

 あ、手紙に関しては僕は全然読めないし読む気がなかった。でも姫様は何故かすでに地球人の文字習得していて、それにサラサラっと返事まで書いてたから凄いのなんのって。

 でもこういう行動が男たちを恋に狂わせ、誑かしてたって説もあるけど。

 それでも実際にこの距離感で姫様の顔を拝めた男は少なかったわけで。

 だからこの五人の貴族どもは浮かれに浮かれきってた。
 そして我こそはと鼻息荒い奴らを前に、僕はこう告げた。

『今から言うものを用意せよ』と。

 まぁ中身は割愛。
 だって本当に適当にいったんだもん。うちの星にだってないだろって金銀に輝く宝玉とか、火をつけたって燃えない毛皮とかさ。

 とにかく無理難題をふっかけまくった。これでキレるかなんかして諦めてくれたら良かった……のに。

「なんで全員了承してくるわけ!?」

 ひとつ返事のあと、なにやら自信ありげに帰っていったんだけど。
 いやいやいや、地球人ってこんなに諦め悪いの!? 

「姫様……」

 そしてこういう時に限って姫様は帰ってこない。
 それどころか音信不通になって何日経つだろう。

 姫様になりすましていた僕がいよいよ焦り始めたのが、求婚者の一人から連絡が来たこと。

 なんと僕が望んだモノを手に入れた、と言い出した。

 信じられる? 僕自身も存在してないと思ってた物を手に入れたなんて。明後日にはここにやってくるらしいと翁に言われたが、もう生きた心地がしない。

「姫様、帰ってきてくださいよぉ……」

 頭を抱えるしかない。もう僕の貧相な頭ではこれ以上、求婚をはねのける秘策もない。

 それになにより精神的にクタクタだ。そんな時。

「――もし」

 うなだれる僕の耳に、御須の向こうから躊躇うような声が聞こえた。

「貴方様にお手紙を預かっております」
「へ?」

 手紙……また男からか。

 ウンザリというか、もはやグッタリとしながらスっと隙間から差し込まれた折り畳まれた紙を指先でつまむ。

「はい、ご苦労さま」

 読まなきゃダメかな、ってこんなの僕に読めるワケないけど。
 でも御須の向こうの相手は立ち去る気配はない。

「えっと……」
「お返事をお願いします」
「返事?」

 少し困って声をかければ即答されて戸惑う。
 手紙に返事って、姫様みたいに書けっていうんだろうか。だとしたら絶対に無理だ。

「あ、あのぉ」
「お返事をお願いします。待っておりますので」

 御須の向こうの声は少年のようだ。真面目なのかなんなのか、こっちの困惑くらい察してほしい。

「……」

 でも待てよ? ここで妙なことをして不審がられるのも良くないかもしれない。
 僕はあくまで姫様の代わりをしてるだけの公務員看守。トラブル回避を第一にしなければ。

 ここまで考えた僕は手紙を手に取った。

「……」

 やっぱり意味不明だ。言語もだけど筆でぐねぐねと書かれた線はもはや落書きみたいだし、これを解読してさらに返事まで書こうなんて無理に決まってる、が。

「今すぐ書きますから!」

 ……僕には我が星の科学力がある。
 こめかみをトン、と叩くと起動するAIに小声で問いかけた。

『この手紙にいい感じの返事を』

 すると脳内に流れ込んでくる音声。

【はい、返歌を作成します】

 無機質なやつだが頼りになる。僕はものの数秒で弾き出された内容を書き記すことにした。

 といっても右腕とも同期させているから、まるで自動筆記のように書けるわけだけど。
 ま、地球人なんぞには到底できない芸当だろうね。

「はい、どうぞ」

 ドヤ顔で御須の下に滑り込ませた手紙は無言で速やかに回収された。

「承りました」
 
 相変わらず、無感情って感じの少年の声と共に気配は消える。どうやらミッションコンプリートらしい。

「ふん」

 姫様なんていなくたって僕だってこれくらい出来るんだぞ。
 そうふんぞり返りつつ、正直不安で胸が潰れてしまいそうだった。






 
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