通過儀礼は華やかにはためく

田中 乃那加

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4.過剰愛情に溺れさせないで

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 互いに無言で部屋に入り、玄関で靴を脱ぐのももどかしいほどだ。
 そのまま、もつれ合うように上着を脱ぎ捨てる。
 いつもなら彼が脱ぎ散らかした服を俺が拾って丁寧に畳んだり掛けたりしているけれど、今日はお互いそんな事、気にしていられなかったんだろう。

「ぅ……んっ」

 寝室のベッドに沈み込むまでに、三度のキスをした。
 最初の二度は触れ合うだけの子供のキス。
 そして今は唇を舐めて、条件反射のように開いた口内を舌で探っていく大人のキス。

「誠さ……キス、されんの上手になったよねぇ」

 最初は俺から仕掛けられると、ビクビクして涙目になってたのに。
 そう揶揄すると『うるさいよ』と不機嫌そうな声と共に軽く脇腹を殴られた。

「痛いなぁ……
 
 その言葉にどんな意味を感じたのか、彼は動きを止めて目を伏せる。
 俺は構わず、ベッドに押し倒して彼の服をどんどん剥ぎ取った。
 ラッピングを乱暴に取り払うように。それを彼は非難すること無く、黙ってされるがままだ。
 ……まるで罰を受ける罪人のようだ、と俺は感じて腹が立った。

「ねぇ、どうしたらお前は俺のモノになるのかな。……この前みたいに縛ってみる? もう会社にも全部バラして、お前の社会的生命を絶ってしまおうか。親御さんにも今度ご挨拶行ってさぁ……」

 全部、何度しようと思ったことか。
 俺の辛うじて存在するブレーキを、ここで叩き壊してやればどれだけ気持ちいいだろう。
 ……そんなことを考えながら彼の返事も聞かず、すっかり全裸に剥いてしまった彼の身体をまさぐり始める。
 同じ男と思えないくらいに綺麗な身体だ。こんなんで今までよく無事で居られたと思う。
 最後に抱き合ったのは一週間前、だからもう付けた跡もほとんど残っていない。

「愛してんだよ、俺は」
 
 そう、愛してる。男とか女とか、そういうんじゃなくて。この男そのものを会いしている。

「なんで分かってくれないのかなぁ」

 こんなに愛して欲しているのに。
 またジワリと目頭が熱くなりかけて、俺は口を噤んだ。
 その代わりなおも深く、その身体を探り始める。
 ……胸の飾り、乳首に指を触れると小さく震えた反応に気を良くした。
 さらにそこを弄って摘んで刺激してやると、啜り泣くような声が聞こえてくる。
 顔をすっかり隠してしまった彼が、震えながらも快感に耐える姿は素敵だ。

「顔、隠さないの」

 小さい子供に言うように注意して、片手で彼の両手首を纏めて拘束してしまう。
 必死で抵抗するこの愛しい人の上に馬乗りになってしまえば、彼はもう何も出来ない。
 俺のなすがままだ。

「や、っ……恥ずか、しい」
「何が恥ずかしいの。これまで散々な姿見せといてさ」
「っ、言うなッ……!」

 俺の言葉に初めてこちらを睨みつけた彼の瞳。それもすごく綺麗だ。
 真っ直ぐで光を映していて。俺が持てない色を彼は持っている。

「ほら。恥ずかしいの好きでしょ?」
「……このっ、変態」
「変態の手管に参っちゃってるのは誰?」
「っ……!?」

 いっそう強く摘み上げれば、痛みで跳ね上がる身体。
 次に宥めるように手を下ろしていく。臍の窪みをわざとゆっくり撫でて、薄く筋肉の付いた腹に触れると既に立ち上がり始めたソレが揺れるのを見た。
 込み上げる笑いを隠さずにいれば、彼がやめろと怒りを含んだ声を出す。

「なんで? 触って欲しそうだよ」
「こんなっ……まどろっこしいこと、するんじゃない」
「なにそれ」
 
 ってことね。
 それに答えないほど俺は余裕ある訳じゃないし、あとやっぱり少し怒ってんだよ。

「泣いても止めてあげないからね」

 そんな最終警告も。

「……いつも止めてくれないだろ」

 ―――なんていう憎まれ口を封じる事で無駄になった。
 



■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□


 ……後ろから重なるように覆いかぶさって挿入する。
 そうすると、まるで彼を丸ごと征服できたような気分になった。
 顔が見えないか不満だったけど、正常位でもどうせ顔隠しちゃうから一緒だよね。

「ぁ、ああっ、ひっ……も、もっと、ゆっくりぃ……」

 懇願する声を鼻で笑い飛ばして、さらに深く抉り込む。
 途端、背中がしなって泣くような声が上がった。奥がまだ苦手らしい。
 どんなに抱いても、未だにぎこちなくて何処か初々しいのがとても好ましい。
 もちろん、そうじゃなくなってもそれはまたそれで良いんだろう。

 つまり、どんな彼でも俺は満足できる。
 俺の隣に一生いて、愛してくれさえいたら。

「も、イっ……」
「駄目」
「ひっ、ぃ……う、ぐぅッ」

 予め添えてた手で、きつくソコを締めあげた。
 大きく身震いする身体に、苦しそうな吐息と息も絶え絶えでもう許してと哀願する彼は俺をいつも満足させてくれる。
 彼が苦しめることが、もはや俺のになってるのかもなぁ。
 何度も何度も彼の弱い所を内側から、突いて抉ればいっそう高い声で啼くのを俺は知っている。
 もう前を触らなくても、後ろの刺激だけで達する事が出来る身体だ。でもこうやって塞き止められたら辛いだろう。
 ……だからするんだけど。

「ぅあぁっ、ぁ、も、やだぁっ……助け、てぇぇ」

 篭った熱に苛まれる姿はやっぱり可愛い。
 死んじゃうとか、壊れるとか狂うとか。絶望的なワードを吐き出して、泣き出しちゃうなんて。
 俺もそろそろ限界来てしまう。

「ね、っ……キス、しよ」

 弾む息で強請れば、素直に首を曲げて応じてくれる健気さ。
 こういうの、俺は愛を感じてしまうんだよ。俺は愛されてるって。

「んむっ……っふ、ぁ……ん」

 こっちもヤバいもんで、キス覚えたてのガキみたいなガッついたモノしか出来ない。
 ぴちゃぴちゃぴちゃ、という水音が部屋の空気をさらに淫靡にしているのをこの恋人は分かってるんだろうか。

「な、なぁ……っ、首、痛くって、さァ」
「?」

 誠の言葉に首を傾げると、彼はもどかしそうなため息を一つ。

「た、体位、変えろって、言ってんだよ……この変態野郎」

 目の縁は紅くて、たくさん吸い付いた唇もすっかり色付いて腫れ気味。
 そこらの化粧した女より色っぽくて堪らなく綺麗で……あぁ、駄目だ。

「もう、知らないからな……っ」

 俺は余裕も何もかもかなぐり捨てた。
 一度そこを素早く抜いて、彼の身体力づくでひっくり返す。
 そして、勢いのまま再び突っ込んだ。
 身体の下で小さな呻き声が聞こえたが、構ってやることは出来ない。
 
「俺を煽ったのは、誠だからね?」

 
 それだけが脳内を占める。凶暴でどうしようもない渇望感だ。
 それでも目の前のこの男は。

「……来いよ。受け止めてやるから」

 そう言って涙に濡れた顔で微笑む。

「っ、くそっ」

 ―――それは、なけなしの理性を吹っ飛ばすには充分過ぎた。


 
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