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地獄の裏は死後の国2
※※※
ただただ右足と左足、交互に出して彷徨う。
そしてころころと笑いながら、話しかけてくる少女の声を聞く。
時折『ああ』とか『そうか』なんて相槌を返してやれば、また嬉しげに言葉は弾んだ。
(……どれくらい歩いただろう)
時間も分からぬ中を、ただひたすら突き進んでいく。
自らの体内時計も麻痺するほどだったが、不思議と目が黒一色の世界に慣れることはなかった。
しかし暗闇でも、歩いていればそれがどんな場所か薄々分かってくる。
硬い足音が響くのは、大理石の上。
つまりここは建物。さらには音の反響からして、高さも奥行もかなりある建造物。
それは。
「神殿、か」
しかもかなり独特な造りで、お世辞にも整頓された空間ではないらしい。
「……ん?」
つま先で軽く触れた物を拾い上げてみる。
小さく冷たいそれは、目にせずとも分かる精密なつくりの金属。
(歯車、か。まるで時計の)
小さな歯車。きっとこれがいくつか集まってようやく、機械仕掛けの時を刻むのだろう。
今のアレックスには見えないが、床には無数の時計の部品と思われる物が落ちていた。
一抱えもあるものから、幼子の手のひらサイズのものまで。
歯車だけではない。繊細な形をした大小の針。
時の止まったような静寂と、散らばった無数の時計たちの残骸。
これが何を意味するのか――。
「ここはどこだ」
声は応えない。
ただ小さく息を吐く音がした。
「彼女は、お前のことを女王と言った。なぜ、俺に会いたがる。これは取引きなのか?」
【そう、お散歩はおしまい】
淡々とした口ぶりだった。
ほんの少し残念そうな。まるで、そこそこ楽しかった遊びが終わってしまったような。
その瞬間。
「灯りが」
ほんの数メートル先に突如として、光がともる。
柔らかく温かい色味のそれは、ほんのわずかに揺らめいていた。
【ねぇ大丈夫。怖くないの】
怯えた子どもをあやすような声を、無視して足を踏み出す。
カツン、カツン―― と足早な音を立てる。
不思議なことに、何にもつまずくことは無かった。
【アレックス。怖くないわ】
追いかけてくる声を、ひたすら無視する。
聞いては駄目だ、応えてはいけない。そう心が警告を出す。
先程までの安らぎはなんだったのか。
胸の潰れるような焦燥感に、追い立てられる。
歩いていたのが早歩きになり、しまいには駆け出していた。
(なぜだ、なぜ……なぜ……)
汗が吹き出す。
喉が干上がったようにカラカラになって、喘ぐように酸素を取り込む。
いつまで走っても、辿り着かない。
ずっと闇の中だ。光はすぐそこにあるのに。
【アレックス、怖くないわ】
「俺は……怖がってなんか、ない」
思わず打ち消す。
しかし声だけの少女が、クスクスと笑う。
嘘つき、と。
『――君って。怖いもの知らずって感じだよな』
アレンの言葉がふと脳裏によみがえる。
以前、呆れたように言われたのだ。
(どんな状況下だったか)
特になんでもない会話の一部だったのだろう。
覚えているのは、目の前の椅子に座った彼のサイズが合っていない服。
(ああそうだ、あの日だ)
まだ出会って間のない時。
自分の大きな服を、ブカブカで着ている彼の生足が眩しかった。
憎まれ口叩きながらも、控えめに礼を述べる青年に好感は増す。
自身の境遇を苦々しく思いながらも、決してそれに溺れようとしなかった凛とした瞳。
ただ単純に綺麗だ、と思った。
……慌てて、市場で調達した服を投げつけるように渡した。
目の毒で襲ってしまいそうだったから。
(やれやれ。あの時ほど精神力試されたことはなかったな)
キスマークという名の痣を身体に散らし、ぐったりと横たわる彼を担いで帰った。
この美味そうな獲物を食べないなんて、と本能が責め立てるが手を出す訳にはいかない。
ひたすら大切にしたかったからだ。
大切に囲って守って、愛し慈しみたかった。
そうすれば、彼の微笑みがこちらに向くと信じて。
しかし早々に手元から奪い取られる事態に、怒りと共に怯えが走る。
そう、確かに彼は怖かった。
(もう会えないんじゃないだろうか)
手の届かない所へやられ、愛しい人の面影を追いながら一人で生きていく人生なのではないかと。
得てから失うのは、とてつもなく辛い。
まるで、身体を引き裂かれるような痛みを心に伴う。
「俺は……怖い、のか」
ポツリ、とつぶやく。
怖いもの知らずは、その言葉通り知らなかったから感じなかっただけ。
孤独に野垂れ死には構わない。でも、その刹那にも他の者と生きているだろう彼を想像するのが怖い。
嫉妬と焦燥で狂う自分が、怖い。
【アレックス、死と恋は似ていると思うの】
少女の声で吹き込まれる言葉。
【ひとたびその魅力に取り憑かれたら、きっと貴方を離さない。その魂まで投げ打って、目の前の深淵に飛び込んでいくでしょう】
【恋だけじゃないわ。死はすべての感情に通じる、救いとなるはずなのよ】
【この暗闇は貴方の心。一筋の光すら、見つけられない】
【よしんば見つけられても、それは幻。すべて両手からこぼれ落ちてしまうの】
「あ……」
数メートル先にあった光が、突然消えた。
再び世界は闇に包まれる。
途端、彼は足を止めた。歩けなくなったのだ。
【人間は光にばかり吸い寄せられる。それが自らを焼く、劫火になるかもしれないのに】
あやつり人形の糸が切れたかのように、その場に膝をつく。
おびただしい数の時計の針が、肌を刺した。
どんよりと暗い青銅色の歯車達が、漫然と横たわる。
ここがアレックスの心象風景であるならば、何を現しているのだろう。
ふと、目の前の掛けた歯車を拾う。
小さなそれは、彼の無骨な手には華奢過ぎる。壊してしまいそうで、そっと手のひらに乗せて眺めた。
【ここは貴方の心。でも、ここから先は我の国。フシギな国――不死の国。つまり、死後の国】
死んだ者、もうこれ以上死ぬ事の無い者達の世界だと。
声だけの少女はなおも言い連ねる。
【ここでは夢を見られるのよ】
「……夢?」
【そう。夢】
今度は、すぐ目と鼻の先に光が灯った。
天蓋付きのベッドが現れたのだ。
白いレースが幾重にもあしらわれた幕から中の光が柔らかく漏れている。
小さなベビーベッドのような大きさ。
そこに人影がぼんやりと映る。
【死の夢を――僕とと一緒に】
「その声は」
再び、彼は試されるのか。
あの向こうの影は若い男。
声も、気がつけば愛しい者のそれだった。あの幕の向こうには、アレンがいる。
(間違いなく、ニセモノだろう)
姿なき罠だ。
天蓋を捲れば、もうこの死の国から逃れられない。
先程の声の主である、女王陛下とやらに囚われてしまうのだ。
死と眠りは似ている。
彼女は、アレックスにこうもちかけているのだ。
『ともに目覚めのない夢を見よう』と。
「……なぜ俺なんだ?」
そう問いかけた表情は、苦悶に満ちていた。
きっとこれは何らかの魔法。実際にここが、死の国である証明もない。
目の前の得体の知れない者は、自分を騙そうとしている――そう思おうとした。
しかし、それが出来ない。
心が痺れたようになって、上手くモノが考えられないのだ。
【僕は死の天使。死によって救われる命はある】
【死は、眠りと同じ。恐ろしいバケモノなんかじゃないんだ】
【僕はその為に、造られた】
「そうか」
アレックスは立ち上がった。
どこからか不思議な、甘い香りが漂う。
麝香のような。
いや。それよりもっと甘美で魅惑的なその香りは、よりいっそう脳を痺れさせる。
「……そこから聞こえるのは、時計の針かそれとも歯車か」
不規則な音は、天蓋付きベッドから聞こえてくるようだ。
今にも止まってしまいそうな、ゆっくりとしたリズム。
【ここはすべての歯車が、命を終える場所だよ】
「やっぱり何言ってんのか、分かんねぇな」
アレックスはそう呟くと、立ち上がった。
「でも選ぶべき道は、分かったぜ」
緩慢だが確かな足取りで、彼は光に向かって歩き出す。
「確かに、俺は怖かったんだ」
手に入らぬもどかしさと、失う哀しみ。
そして他の者に蹂躙されたと知って覚えた、狂おしい程の嫉妬と怒り。
常に冷静で、表情の起伏が平坦であったはずの自分にあるまじき激情。
自身が恐ろしくなった。
「これでもう解放されるんだな」
小さく微笑む彼に、愛しい者の声は応える。
【目覚めない夢を】
眼前に揺れる布に、そっと手を掛けた――。
「さようなら、アレン」
ただただ右足と左足、交互に出して彷徨う。
そしてころころと笑いながら、話しかけてくる少女の声を聞く。
時折『ああ』とか『そうか』なんて相槌を返してやれば、また嬉しげに言葉は弾んだ。
(……どれくらい歩いただろう)
時間も分からぬ中を、ただひたすら突き進んでいく。
自らの体内時計も麻痺するほどだったが、不思議と目が黒一色の世界に慣れることはなかった。
しかし暗闇でも、歩いていればそれがどんな場所か薄々分かってくる。
硬い足音が響くのは、大理石の上。
つまりここは建物。さらには音の反響からして、高さも奥行もかなりある建造物。
それは。
「神殿、か」
しかもかなり独特な造りで、お世辞にも整頓された空間ではないらしい。
「……ん?」
つま先で軽く触れた物を拾い上げてみる。
小さく冷たいそれは、目にせずとも分かる精密なつくりの金属。
(歯車、か。まるで時計の)
小さな歯車。きっとこれがいくつか集まってようやく、機械仕掛けの時を刻むのだろう。
今のアレックスには見えないが、床には無数の時計の部品と思われる物が落ちていた。
一抱えもあるものから、幼子の手のひらサイズのものまで。
歯車だけではない。繊細な形をした大小の針。
時の止まったような静寂と、散らばった無数の時計たちの残骸。
これが何を意味するのか――。
「ここはどこだ」
声は応えない。
ただ小さく息を吐く音がした。
「彼女は、お前のことを女王と言った。なぜ、俺に会いたがる。これは取引きなのか?」
【そう、お散歩はおしまい】
淡々とした口ぶりだった。
ほんの少し残念そうな。まるで、そこそこ楽しかった遊びが終わってしまったような。
その瞬間。
「灯りが」
ほんの数メートル先に突如として、光がともる。
柔らかく温かい色味のそれは、ほんのわずかに揺らめいていた。
【ねぇ大丈夫。怖くないの】
怯えた子どもをあやすような声を、無視して足を踏み出す。
カツン、カツン―― と足早な音を立てる。
不思議なことに、何にもつまずくことは無かった。
【アレックス。怖くないわ】
追いかけてくる声を、ひたすら無視する。
聞いては駄目だ、応えてはいけない。そう心が警告を出す。
先程までの安らぎはなんだったのか。
胸の潰れるような焦燥感に、追い立てられる。
歩いていたのが早歩きになり、しまいには駆け出していた。
(なぜだ、なぜ……なぜ……)
汗が吹き出す。
喉が干上がったようにカラカラになって、喘ぐように酸素を取り込む。
いつまで走っても、辿り着かない。
ずっと闇の中だ。光はすぐそこにあるのに。
【アレックス、怖くないわ】
「俺は……怖がってなんか、ない」
思わず打ち消す。
しかし声だけの少女が、クスクスと笑う。
嘘つき、と。
『――君って。怖いもの知らずって感じだよな』
アレンの言葉がふと脳裏によみがえる。
以前、呆れたように言われたのだ。
(どんな状況下だったか)
特になんでもない会話の一部だったのだろう。
覚えているのは、目の前の椅子に座った彼のサイズが合っていない服。
(ああそうだ、あの日だ)
まだ出会って間のない時。
自分の大きな服を、ブカブカで着ている彼の生足が眩しかった。
憎まれ口叩きながらも、控えめに礼を述べる青年に好感は増す。
自身の境遇を苦々しく思いながらも、決してそれに溺れようとしなかった凛とした瞳。
ただ単純に綺麗だ、と思った。
……慌てて、市場で調達した服を投げつけるように渡した。
目の毒で襲ってしまいそうだったから。
(やれやれ。あの時ほど精神力試されたことはなかったな)
キスマークという名の痣を身体に散らし、ぐったりと横たわる彼を担いで帰った。
この美味そうな獲物を食べないなんて、と本能が責め立てるが手を出す訳にはいかない。
ひたすら大切にしたかったからだ。
大切に囲って守って、愛し慈しみたかった。
そうすれば、彼の微笑みがこちらに向くと信じて。
しかし早々に手元から奪い取られる事態に、怒りと共に怯えが走る。
そう、確かに彼は怖かった。
(もう会えないんじゃないだろうか)
手の届かない所へやられ、愛しい人の面影を追いながら一人で生きていく人生なのではないかと。
得てから失うのは、とてつもなく辛い。
まるで、身体を引き裂かれるような痛みを心に伴う。
「俺は……怖い、のか」
ポツリ、とつぶやく。
怖いもの知らずは、その言葉通り知らなかったから感じなかっただけ。
孤独に野垂れ死には構わない。でも、その刹那にも他の者と生きているだろう彼を想像するのが怖い。
嫉妬と焦燥で狂う自分が、怖い。
【アレックス、死と恋は似ていると思うの】
少女の声で吹き込まれる言葉。
【ひとたびその魅力に取り憑かれたら、きっと貴方を離さない。その魂まで投げ打って、目の前の深淵に飛び込んでいくでしょう】
【恋だけじゃないわ。死はすべての感情に通じる、救いとなるはずなのよ】
【この暗闇は貴方の心。一筋の光すら、見つけられない】
【よしんば見つけられても、それは幻。すべて両手からこぼれ落ちてしまうの】
「あ……」
数メートル先にあった光が、突然消えた。
再び世界は闇に包まれる。
途端、彼は足を止めた。歩けなくなったのだ。
【人間は光にばかり吸い寄せられる。それが自らを焼く、劫火になるかもしれないのに】
あやつり人形の糸が切れたかのように、その場に膝をつく。
おびただしい数の時計の針が、肌を刺した。
どんよりと暗い青銅色の歯車達が、漫然と横たわる。
ここがアレックスの心象風景であるならば、何を現しているのだろう。
ふと、目の前の掛けた歯車を拾う。
小さなそれは、彼の無骨な手には華奢過ぎる。壊してしまいそうで、そっと手のひらに乗せて眺めた。
【ここは貴方の心。でも、ここから先は我の国。フシギな国――不死の国。つまり、死後の国】
死んだ者、もうこれ以上死ぬ事の無い者達の世界だと。
声だけの少女はなおも言い連ねる。
【ここでは夢を見られるのよ】
「……夢?」
【そう。夢】
今度は、すぐ目と鼻の先に光が灯った。
天蓋付きのベッドが現れたのだ。
白いレースが幾重にもあしらわれた幕から中の光が柔らかく漏れている。
小さなベビーベッドのような大きさ。
そこに人影がぼんやりと映る。
【死の夢を――僕とと一緒に】
「その声は」
再び、彼は試されるのか。
あの向こうの影は若い男。
声も、気がつけば愛しい者のそれだった。あの幕の向こうには、アレンがいる。
(間違いなく、ニセモノだろう)
姿なき罠だ。
天蓋を捲れば、もうこの死の国から逃れられない。
先程の声の主である、女王陛下とやらに囚われてしまうのだ。
死と眠りは似ている。
彼女は、アレックスにこうもちかけているのだ。
『ともに目覚めのない夢を見よう』と。
「……なぜ俺なんだ?」
そう問いかけた表情は、苦悶に満ちていた。
きっとこれは何らかの魔法。実際にここが、死の国である証明もない。
目の前の得体の知れない者は、自分を騙そうとしている――そう思おうとした。
しかし、それが出来ない。
心が痺れたようになって、上手くモノが考えられないのだ。
【僕は死の天使。死によって救われる命はある】
【死は、眠りと同じ。恐ろしいバケモノなんかじゃないんだ】
【僕はその為に、造られた】
「そうか」
アレックスは立ち上がった。
どこからか不思議な、甘い香りが漂う。
麝香のような。
いや。それよりもっと甘美で魅惑的なその香りは、よりいっそう脳を痺れさせる。
「……そこから聞こえるのは、時計の針かそれとも歯車か」
不規則な音は、天蓋付きベッドから聞こえてくるようだ。
今にも止まってしまいそうな、ゆっくりとしたリズム。
【ここはすべての歯車が、命を終える場所だよ】
「やっぱり何言ってんのか、分かんねぇな」
アレックスはそう呟くと、立ち上がった。
「でも選ぶべき道は、分かったぜ」
緩慢だが確かな足取りで、彼は光に向かって歩き出す。
「確かに、俺は怖かったんだ」
手に入らぬもどかしさと、失う哀しみ。
そして他の者に蹂躙されたと知って覚えた、狂おしい程の嫉妬と怒り。
常に冷静で、表情の起伏が平坦であったはずの自分にあるまじき激情。
自身が恐ろしくなった。
「これでもう解放されるんだな」
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