58 / 94
喪失と帰結の回廊1
視界が白む。
眩しい朝日とは別に、頬に触れる手の温かさに薄目をあけた。
その眩しさに、一度はまぶたを閉じる。しかし微かに感じたベッドの軋みと、触れてくるひんやりとした手。
諦めて、再び瞳に光を取り入れた。
「おはよ、アレン」
「……ニアか」
見慣れた人懐っこい顔。
相変わらず子犬のような目をして、頬に優しいキスを落としてくる。
「起きれる?」
「ゔっ」
(身体が、痛い)
久しぶりに、手酷く抱き潰された。
きっと今までかなり、手加減されてきたのだろう。
しかし昨晩は例外。
改めて、抱かれる側の負担を思い知った。
(ていうか、回復魔法くらいかけていけよ。あの腹黒エルフ)
いつの頃からか。性行為後の身体の不調や違和感は癒されなくなった。
キスマークも露骨に肌に散らし。まるで誰に抱かれたのか思い知らせるかのように、軽く歯型まで残す。
やめろと何度も訴えても、意地の悪い笑みを返すばかりである。
「で、アイツはどこだ」
一発くらい張り倒してやってもバチは当たらないはずだ、と舌打ちまじりで問いただす。
「あれ? そういえば、シセロなら今朝は見てないなぁ」
首をかしげる彼を一瞥し、おもむろに身体を起こしていく。
腰――特に、言う事がはばかられる場所。ソコの違和感がひどい。
さすがに注がれた精液は、綺麗にしたのだろう。
とろり、と垂れてくることはないが。それにしたって、散々喘がされた喉はかすれているし噛み付かれた箇所もヒリヒリする。
「うわ、今日は一段とひどいじゃん」
「……うるさい」
支えようと貸してくれる手は素直に取りつつ、苦々しい声でつぶやく。
「可哀想に。何回シたのさ」
「数えてないし、数えてても教えない」
あれから何度も絶頂させられた。もうヤダ、やめろと泣きわめいても止まらない。
ついには気絶したアレンを、揺すって起こしてまで犯した男。
なのに、時折与えてくる口付けは縋り付きたいほどに優しかった。
「あーあ、いいなぁ。今夜はオレの番ね!」
「毒でも盛ってやろうか」
「ハハッ、残念でしたぁ。オレには、そういうの効かないから」
「くそっ。そうだったな」
実は人間でなくゴーレム。
しかも他に類を見ない、術者不在で不死の怪物。その造りは特殊で、破壊の方法すら分からないのだ。
「オレとしては、今からでもいいけどね」
「こ、この鬼畜っ、死ね!」
朝から笑えないジョークを飛ばす少年を、キッと睨みつける。
冗談じゃなかった。こんな満身創痍でそんなことすれば、今度こそ寝込んでしまう。
「あはははっ、そんな怒らないでよ。大丈夫、アレンはオレ達と違ってデリケートだもんねぇ」
「君たちがムダに頑丈過ぎるんだよっ、人外め」
こうしてみると、人間という種族はなんとまぁ弱い存在なのだろう。
生まれ持った身体能力は、他の動物や種族に大きく劣っている。
なのにこれだけの文明を築き上げ。共存と言えど、多種族をまとめあげているのだ。
「アレンの場合。そんな所も、守ってあげたくなるんだよねぇ」
「ケッ、言ってろ」
尻やら胸やらをベタベタと触ってくる手を叩いて、アレンはひっぺがしたシーツを身体に巻く。
「おい。僕の服、どこにやりやがった」
確かベッドに入る時は着ていたハズだ。三度目の行為で、揺さぶられながら目の端に映ったのを記憶している。
それが朝起きたら無い。
「さあ。シセロが持っていったんじゃないの」
「……代わりのは」
「うーん。メイド呼んでこようか?」
「頼む」
ニアがメイドを呼びに部屋を出ると、アレンはため息をついてベッドに腰掛けた。
(アイツらしくないな)
今までこんなことは無かった。
朝に自分の所へ挨拶に来ないとか。代わりの服を持ってこず、夜着だけ持ち去るなんて。
(なんか、おかしい)
相変わらず、謎の多い男だ。魔王と繋がっていたこともそうだが、裏で何をしているか分かったものじゃない。
(かと言って)
憎むとか失望するとか、そういった感情にはならなかった。
単純に『まぁ、やりそうだな』としか。
元々黒いウワサの絶えない奴ではあったし、その動機もあるのかもしれない。
「ほんと、馬鹿なヤツ」
似合わない必死さで交わしたキスも、祈るような口説き文句も。
すべてが違和感に満ちている。
(あとで力づくで吐かせてやろう)
むしろ力づくで抱かれた側のハズなのに、偉そうにそう考えて腕を組む。
「最初の男、か」
口にしてから思わず赤面する。
(女じゃあるまいし!)
嬉しそうに自分を求め、執着してくる姿を『好ましい』なんて。
「ゔぅぅぅ……あの野郎ッ、また変な魔法か薬盛りやがったんじゃないだろうな!!!」
何から何まで変だった。
嫌いばかりだったシセロの言動が、妙に気になるなんて。
(しかも)
昨日は、うっかり生き別れたあの男のことまで思い出してしまった。
「アレックスは――って、だからッ!!!」
頭をかきむしって自分に、ツッコミを入れる。
「あはは。別れた元カレに未練タラタラの女の子みたいだね~」
「ヒッ!?」
棒読み気味の声に、息をのむ。
恐る恐る振り向くと。
「やっぱりオレが着替えさせてあ・げ・る♡」
「あ……あ……あ……」
アレンの服を持って微笑むニアの姿。
しかし目が笑ってない。
「ここで他の男の名前を口にするなんて、いい度胸してるよねぇ?」
「ち、ちが……っ」
「アレックス、だっけ。確かに割といいセンいってるよね。肉体美ってやつ」
「いやその、ええっと……」
やましいことは無いハズだ。別に、誰とも恋人関係ではない。
だが上手く言葉が紡げないのはなぜか。
それは目の前の少年の威圧感、というか怒気がすざましいからである。
「かるーく。1、2回イっとこうか♡」
「や、やだ……来るなっ」
足早に近付いてくる少年から逃げようと、ベッドに乗りあげる。
(うっ)
必死に四つん這いで這うが、やはり痛む腰。なぜか尻たぶに付けられた歯型も、まとった布の下でヒリつく。
「ねぇアレン」
「ヒィィッ!?」
シーツをまくりあげられ、尻を強く引っぱたかれた。
アレンの悲鳴を聞いてか、含み笑いが聞こえる。
「あーあ。こんなトコロに跡付けられちゃって」
「そ、それは、シセロがっ……」
「オレはここにロウソクでも垂らしてあげようか?」
「~~~っ!!!」
想像するだけで声が出なくなる。
Mっ気はない。だからそこ、恐怖しかないのだ。
「ウソだよ。可愛がってあげる」
「でもっ……き、着替え……」
「それは後でね。どうせ、アレンは自分で服着れないから」
それはどういう意味か、なんて聞けない。
聞かなくても分かる。
「今日一日、身動き取れなくなるかもしれないけど。ごめんね?」
「やっ……やだァァァッ!!!」
泣きの入った悲鳴をあげたと同時に、うなじの噛み跡に重ねるように歯を立てられた。
眩しい朝日とは別に、頬に触れる手の温かさに薄目をあけた。
その眩しさに、一度はまぶたを閉じる。しかし微かに感じたベッドの軋みと、触れてくるひんやりとした手。
諦めて、再び瞳に光を取り入れた。
「おはよ、アレン」
「……ニアか」
見慣れた人懐っこい顔。
相変わらず子犬のような目をして、頬に優しいキスを落としてくる。
「起きれる?」
「ゔっ」
(身体が、痛い)
久しぶりに、手酷く抱き潰された。
きっと今までかなり、手加減されてきたのだろう。
しかし昨晩は例外。
改めて、抱かれる側の負担を思い知った。
(ていうか、回復魔法くらいかけていけよ。あの腹黒エルフ)
いつの頃からか。性行為後の身体の不調や違和感は癒されなくなった。
キスマークも露骨に肌に散らし。まるで誰に抱かれたのか思い知らせるかのように、軽く歯型まで残す。
やめろと何度も訴えても、意地の悪い笑みを返すばかりである。
「で、アイツはどこだ」
一発くらい張り倒してやってもバチは当たらないはずだ、と舌打ちまじりで問いただす。
「あれ? そういえば、シセロなら今朝は見てないなぁ」
首をかしげる彼を一瞥し、おもむろに身体を起こしていく。
腰――特に、言う事がはばかられる場所。ソコの違和感がひどい。
さすがに注がれた精液は、綺麗にしたのだろう。
とろり、と垂れてくることはないが。それにしたって、散々喘がされた喉はかすれているし噛み付かれた箇所もヒリヒリする。
「うわ、今日は一段とひどいじゃん」
「……うるさい」
支えようと貸してくれる手は素直に取りつつ、苦々しい声でつぶやく。
「可哀想に。何回シたのさ」
「数えてないし、数えてても教えない」
あれから何度も絶頂させられた。もうヤダ、やめろと泣きわめいても止まらない。
ついには気絶したアレンを、揺すって起こしてまで犯した男。
なのに、時折与えてくる口付けは縋り付きたいほどに優しかった。
「あーあ、いいなぁ。今夜はオレの番ね!」
「毒でも盛ってやろうか」
「ハハッ、残念でしたぁ。オレには、そういうの効かないから」
「くそっ。そうだったな」
実は人間でなくゴーレム。
しかも他に類を見ない、術者不在で不死の怪物。その造りは特殊で、破壊の方法すら分からないのだ。
「オレとしては、今からでもいいけどね」
「こ、この鬼畜っ、死ね!」
朝から笑えないジョークを飛ばす少年を、キッと睨みつける。
冗談じゃなかった。こんな満身創痍でそんなことすれば、今度こそ寝込んでしまう。
「あはははっ、そんな怒らないでよ。大丈夫、アレンはオレ達と違ってデリケートだもんねぇ」
「君たちがムダに頑丈過ぎるんだよっ、人外め」
こうしてみると、人間という種族はなんとまぁ弱い存在なのだろう。
生まれ持った身体能力は、他の動物や種族に大きく劣っている。
なのにこれだけの文明を築き上げ。共存と言えど、多種族をまとめあげているのだ。
「アレンの場合。そんな所も、守ってあげたくなるんだよねぇ」
「ケッ、言ってろ」
尻やら胸やらをベタベタと触ってくる手を叩いて、アレンはひっぺがしたシーツを身体に巻く。
「おい。僕の服、どこにやりやがった」
確かベッドに入る時は着ていたハズだ。三度目の行為で、揺さぶられながら目の端に映ったのを記憶している。
それが朝起きたら無い。
「さあ。シセロが持っていったんじゃないの」
「……代わりのは」
「うーん。メイド呼んでこようか?」
「頼む」
ニアがメイドを呼びに部屋を出ると、アレンはため息をついてベッドに腰掛けた。
(アイツらしくないな)
今までこんなことは無かった。
朝に自分の所へ挨拶に来ないとか。代わりの服を持ってこず、夜着だけ持ち去るなんて。
(なんか、おかしい)
相変わらず、謎の多い男だ。魔王と繋がっていたこともそうだが、裏で何をしているか分かったものじゃない。
(かと言って)
憎むとか失望するとか、そういった感情にはならなかった。
単純に『まぁ、やりそうだな』としか。
元々黒いウワサの絶えない奴ではあったし、その動機もあるのかもしれない。
「ほんと、馬鹿なヤツ」
似合わない必死さで交わしたキスも、祈るような口説き文句も。
すべてが違和感に満ちている。
(あとで力づくで吐かせてやろう)
むしろ力づくで抱かれた側のハズなのに、偉そうにそう考えて腕を組む。
「最初の男、か」
口にしてから思わず赤面する。
(女じゃあるまいし!)
嬉しそうに自分を求め、執着してくる姿を『好ましい』なんて。
「ゔぅぅぅ……あの野郎ッ、また変な魔法か薬盛りやがったんじゃないだろうな!!!」
何から何まで変だった。
嫌いばかりだったシセロの言動が、妙に気になるなんて。
(しかも)
昨日は、うっかり生き別れたあの男のことまで思い出してしまった。
「アレックスは――って、だからッ!!!」
頭をかきむしって自分に、ツッコミを入れる。
「あはは。別れた元カレに未練タラタラの女の子みたいだね~」
「ヒッ!?」
棒読み気味の声に、息をのむ。
恐る恐る振り向くと。
「やっぱりオレが着替えさせてあ・げ・る♡」
「あ……あ……あ……」
アレンの服を持って微笑むニアの姿。
しかし目が笑ってない。
「ここで他の男の名前を口にするなんて、いい度胸してるよねぇ?」
「ち、ちが……っ」
「アレックス、だっけ。確かに割といいセンいってるよね。肉体美ってやつ」
「いやその、ええっと……」
やましいことは無いハズだ。別に、誰とも恋人関係ではない。
だが上手く言葉が紡げないのはなぜか。
それは目の前の少年の威圧感、というか怒気がすざましいからである。
「かるーく。1、2回イっとこうか♡」
「や、やだ……来るなっ」
足早に近付いてくる少年から逃げようと、ベッドに乗りあげる。
(うっ)
必死に四つん這いで這うが、やはり痛む腰。なぜか尻たぶに付けられた歯型も、まとった布の下でヒリつく。
「ねぇアレン」
「ヒィィッ!?」
シーツをまくりあげられ、尻を強く引っぱたかれた。
アレンの悲鳴を聞いてか、含み笑いが聞こえる。
「あーあ。こんなトコロに跡付けられちゃって」
「そ、それは、シセロがっ……」
「オレはここにロウソクでも垂らしてあげようか?」
「~~~っ!!!」
想像するだけで声が出なくなる。
Mっ気はない。だからそこ、恐怖しかないのだ。
「ウソだよ。可愛がってあげる」
「でもっ……き、着替え……」
「それは後でね。どうせ、アレンは自分で服着れないから」
それはどういう意味か、なんて聞けない。
聞かなくても分かる。
「今日一日、身動き取れなくなるかもしれないけど。ごめんね?」
「やっ……やだァァァッ!!!」
泣きの入った悲鳴をあげたと同時に、うなじの噛み跡に重ねるように歯を立てられた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…