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第一章
ep-21 疲れた時の肉って良いよね
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神奈川県某市某駅。時間は17時だが、そこに1人の小さな人影が歩いていた。そう、皆さんお察しヴィートである。皆さん思ったはずだ、あれ?お前そもそも描くの飽きてお色気に走ったな、と。
だが残念、我らがヴィートは帰って来た‼︎…神奈川へと‼︎…あれ、コレって帰って来たに入んのか?まぁ良いとしよう。
さて、そんなヴィートだが…珍しく髪はボサボサ、ノーメイク(実は普段は多少なりともナチュラルメイクをしている)、服はヨレヨレと来た。何故こんなになっているか…誰かに襲われたのか(勝てる奴いんの?)。否、全て否である‼︎
「あぁ…ワジマの馬鹿やろー…」
そう、連勤連徹夜明けである。個人輸入を謳っているものの、物によってはそれはそれは向こうの世界でずっと狩りをしている事もある。今回のご依頼は…
・ドール(ヴィート謹製レッサードリアード使用品)×3体
・小鬼印の回復剤(ヴィート謹製マンドラゴラ使用品、且つ高純度で効果は中級クラス)×256本(256本⁉︎ふざけんな馬鹿やろー‼︎byヴィート)
・大型ドラゴンの剥製×12体(種類問わず)
・小型ドラゴンの剥製×8体(種類問わず)
・謎の肉(実際はレッサードラゴン達の肉)×400キロ前後(多い場合は追加で支払い)
・謎の肉(こっちはミノタウルス)×800キロ
等々。DMを見た瞬間「み゜っ⁉︎」と変な声が出たほどだ。書ききれないだけで、それ以外もたんまり。流石にワジマの部屋に殴り込んで「何だコレふざけてんのか馬鹿やろー‼︎」とキレたが…
「いや、私そもそも色んなところに伝手があってさ…うん、いや一応ね?減らしてとは言ったけどさ?なんか評判良くて、美味い酒もらっちゃって…テヘ?」
この後ヴィートのドロップキックがワジマの顔面に炸裂、クルクル回転しながらベッドに突き刺さると言う悲しい事件があったとか…
そんなこんなでアホ程案件を抱え込んでいたワジマの尻拭いでここ連日狩りと加工に奔走していたのだ。しかも運の悪いことにギンからまたドールの納入も被っていたためストックもなく(臭いし加工が面倒だから基本的にコレはストックしていない)、それ以外でも割と必要素材が多かった影響もあって、結局すぐ終わらせようとしていたこの案件、気が付けば2週間ぶっ通しとなった。
特にDM記載の期日が短かったのも悪影響し、マジで追い詰められていた。それはもう途中から八つ当たりでしばいた当たり屋冒険者やゴブリン、オークは数知れず。途中ギルマスが止めなければガチで殺していた。
以下その一幕。
「ぁー…で?何?呼び出した理由は何?」
「ひぃっ、お、お父さん…じゃないギルマスから確認」
真っ青な顔で震えるエル。完全にとばっちりだ。
「今すぐギルマス呼べ、ブチ殺してやる…」
「あやや、こ、殺しちゃダメですぅ…‼︎」
「あぁ?急いでんだよ‼︎僕ぁ暇じゃねぇんだよォッ‼︎」
カウンターバンバン。ひび割れるカウンター。カウンターは犠牲になったのだヴィートの怒りの犠牲になぁ‼︎
その時、ヴィートの背中に衝撃。
ギロリと睨むとモヒカン頭のいかにもな冒険者が騒いでいる。
「あー、痛え痛え、どっかのチビの背中にぶつかっちまって俺の大切な腕が折れたみてぇだなぁ‼︎あー痛え痛え‼︎」
「誰?」
「ああ?お前ちょいちょい見かける底辺女か?金だけ持ってんのは知ってんだよ‼︎そうだお前今晩俺の部屋にきな…俺の女になって治療費ぎぃっ⁉︎」
折れたと叫ぶ冒険者の腕。次の瞬間肩から先が空を舞う。
「ぎゃああああああ⁉︎腕っ⁉︎俺のっ‼︎⁉︎腕ぇっ⁉︎な、何ひぎっ⁉︎」
地面に転がり叫び回る冒険者。エルは既にギルマスを呼びに走った。頑張れエル‼︎専属の定めだ、早くしないとモヒカン死ぬぞエル‼︎
その間に冒険者は頭を踏まれ地面とディープキス。嫌だなそれ。
「助けて助けて⁉︎ごめんなさい調子乗りました許してくださぁい‼︎」
「駄目死ね」
「お願いします出来心だったんですぅぅぅ‼︎貴女様がとても美人だったのでつい」
「駄目死ね」
「あれこれ俺何しても死ぬな⁉︎ちょちょちょ⁉︎潰れる潰れる頭の中身出ちゃう⁉︎ね⁉︎お兄さんが悪かったから‼︎」
「駄目死ね」
「あー成る程ね?これはもう助かんねぇな?」
「駄目死ね」
「誰かぁぁぁぁ⁉︎この女やべーよ助けて⁉︎駄目死ねしか言わねーよ⁉︎」
「駄目死ね」
ヴィートの剥き出しの殺気に周りも尻込みする。普段稀にしか来ない女が、仮にも銅級より上の鉄級の冒険者を…いや、このギルド内にいる誰の目にも止まらない速度で腕を落とした。勝てるわけが無い…と言うか今の状態的に下手に手を出したら二の舞待ったなしだ。故に誰も目を逸らす。
あわや冒険者の頭はそのトレードマークのモヒカンと共に爆発四散か⁉︎
そこへ走り込んだのはギルマス。テカテカの頭を汗でよりテカテカになった頭から汗を飛ばしながらヴィートを引き剥がす。
「うおおおっ⁉︎待て待て待てーっ⁉︎殺すな殺すな‼︎」
「駄目死ね」
「あっ、コレダメなパターン入ったな?」
「ぎ、ギルマスこのやべー女を早くどっかに…ぶえらっ⁉︎」
「あっ…」
哀れなモヒカンは持ち上げられたヴィートの蹴りによって吹き飛んだ。腕切られて何で死んで無いかって?この世界では常識ですよ。
「…汗臭い…ハゲ降ろせてかぶっ殺す」
「何このナチュラルボーンジェノサイダー…エル、何かあったのか?」
「最近本業の方の仕事で忙殺されてるらしくて…ここ数日まともに寝てないらしいです」
「あぁ…そう言う」
「そこでギルマスに呼ばれて殺意の波動に目覚めた感じかなぁ…と」
「タイミング~…」
あちゃーと言う顔でゲンナリしたギルマス。そりゃそうだ。ギルマス的には最近レッサードリアード含め様々なモンスターが、生息地から悉く姿を消していることから「これ、ヴィート何かしてんな?」と確認しようと思っただけである。まあ、大正解だが。
「降ろせ殺す」
「殺すな殺すな、ほらここで俺殺したらえーっと…」
「ミーニャです」
「ミーニャが悲しむぞ?ほら、犯罪者になっちまうから…な⁉︎」
「……用事は何」
ミーニャの名前を聞いて頭が少し冷えたのか、底冷えするようなドスの利いた声でギルマスにぶら下げられたまま問いかける。
「いや、まぁ…最近ゴブリンやオーク…果てにはレッサー種の魔物達が居なくなりまくっててなぁ…何か知って」
「仕事の材料で必要だったから狩った」
「「えぇ…認めちゃったよ…」」
「他は?」
「あーその…提出とかは…?」
「材料だからするわけないじゃん…あ、ゴミならあるよ」
そう言うとヴィートがコートから出して来たのは粗末なズダ袋、数袋。見ればその口からはゴブリンやオークだけでなく、毛むくじゃらの腕やら細腕やら人間らしき腕も見える。
「な、何だコレ…」
「ゴミ」
「お、主に?」
「ゴブリン、オーク、その他よく分からん動物と盗賊と山賊」
「皆殺しかよ」
「邪魔した向こうが悪い」
酷え…それがギルマス含むこの場にいる全員の感想だった。確かに敵対した奴に…それも山賊達に対して慈悲を持つ者など愚物以外の何者でもない。しかし、だからと言って出会ってはブチ殺して回るのはまた別である。と言うか慈悲がなさすぎる。
「じゃあ僕帰るからコレあげる。多分装備とか財宝とかあると思うけど今はそれどころじゃないからあげる」
「「えっ」」
「後はよろしく、今止めたら止めた奴もそのズダ袋に詰めるから」
こうして嵐…どころか災害レベルにやべーもののを投げてヴィートは帰った。そうして今に至る。尚納品は済んでいる。ワジマ指定の送り先に送っておいた。おまけでワジマの家(ヴィートの部屋の真上)にはしっかり密封したレッサードリアードの果肉の頭を模した部分を置いておいた…未処理の奴を。
なんか出かける時に「お、何々…沢山注文したお礼です?ほぇー…おつまみかなぁ…っ⁉︎えっ⁉︎人の頭っていうかくっさっ⁉えなにこれドリアン以じょヴォエッ⁉︎」と良く分からん悲鳴が上から聞こえた気がするが、まぁ良いだろう。
「肉だ…疲れた時は肉を食おう…」
完全に逝った目でそう溢すヴィート。一説だと肉にはストレスを緩和する幸せホルモンこと「セロトニン」を分泌させるらしい。後これ別にヴィートは知らない。何となくストレスやべーから肉食おうという考えである。
某駅を東口から出て空中デッキを渡り、右のビル併設の階段から降りてゆく。ヘロヘロの足を動かして歩いて行くともう表通りや裏通りから居酒屋やレストランのうまそうな匂いが鼻腔を刺激する。思わずすぐ近くの天丼屋やファストフードに駆け込みたくなる衝動を抑えつつ歩く。
油断をしたらすぐに違う店に入ってしまいそうなほど蠱惑的な匂いに脳がヒリつく。
だが違う…っ‼︎今日のヴィートは肉に…これぞ肉という肉に飢えている‼︎ファストフード店のジャンクなバーガーや海鮮マシマシの天丼などお呼びじゃあない……‼︎‼︎
ふらふらとした足取りでついに辿り着いたのは一○屋。飲み屋の一角にあるその店はぱっと見でモダンでレトロ…しかもとても高そうな雰囲気で入りずらい空気を感じ取る。
「いやそんな事より肉」
関係なかった。カランカランと扉を開けると目の前には暖簾とキッチン。右には登り階段。
「いらっしゃいませー、上へどうぞ」
「うぃ」
言われるがままに登るとこじんまりとしたテーブルエリアに入る。席は土曜なのにも関わらずあまり人がいないのはきっと開店したばかりだからだろう。事実、店内は外から感じた雰囲気同様、とてもシックで落ち着いた雰囲気が伺える。
疲れたまま奥の窓の前に案内されると、大きな窓にはデカデカとステーキのサイズとそれに対応する値段が貼られている。
…フィレたっか……
が、ヴィートは脂の乗った肉よりもよりもっと齧って味わって「肉だ‼︎赤身だぁ‼︎」という肉が食いたかった。その時点でもう注文はほぼ決まった。
しかしそのステーキのペアとなる酒が決まらない。ヴィートは日本に来てから基本日本酒、ビールそして焼酎しか飲まなかった。ワインは一度飲もうかと思ったが、向こうの世界のワインを飲んだ際に悪酔いした記憶が邪魔をしてどうしても食指が動かない。
ぼんやりと迷っていると、ちょうどキッチンに灰色の頭になった壮年の男性スタッフが目に付いた…服装は黒のコック服、キッチンスタッフだろう。
「すいません」
「はい、何でしょう?」
少し怖い顔からすぐに柔和そうな顔になり、近くの棚にあった注文用紙を持って来た。まさかの手書きである。
「ステーキに合うペアの酒でお勧めってありますか?」
「あぁ…この大吟醸がお勧めですね」
「…だ、大吟醸?こっちのワインとかウィスキーではなく?」
つい先日ヴィートが訪れた沖縄ではウィスキーやビール、ワイン類はメニューにあったが日本酒…それも大吟醸なんて目に付かなかった。それに日本酒=魚介類というイメージが染み付いているヴィートとしてはびっくりな話であった。まさに目から鱗‼︎
「えぇ…大吟醸と、ステーキ…」
だがやはりというべきか、全くと言っていいほどイメージが湧かない。
「はい、大吟醸などの日本酒類は旨味成分がありますが、これがステーキの旨味と合わさり旨味同士の相乗効果でより旨く感じるんですよ」
「ほぇぇ…じゃあそれで」
「あっ、はい」
ホケーっとした顔のまま、迷いなく一合注文。しかもステーキを指定する前にである。いやまず肉頼めや。
「ステーキはフィレの350gで」
「はい、他には?」
「後は…牛筋煮は?」
そう言ってメニューの一品類の中、「牛筋煮」と書かれた項目を指差す。やはり酒の友達と言えば牛筋煮でしょ、とキラキラした目で問いかけるも…
「今牛筋煮はやってないんですよ…全てカレーに」
「じゃ、カレーで」
無念かと思いきやあっさりとカレーに変更。うまそうなら何でも良いのだ‼︎ただし、牛カツは売り切れだった。食いたかった…筆者も食いたかった、牛カツ。普通に美味そう、牛カツ。
そうして注文後、まず来たのは大吟醸。
若い女性店員が持って来た枡が机の上に置かれ、見ればその中に小さめのグラスが収まっている。そして彼女が持って来たのは巨大な一升瓶。
「じゃ、注ぎますねー」
「へーい」
トットットッと音を立てて注がれた透明かつ芳醇なその液体は瞬く間にグラスを満たして枡にまで溢れる。ホワリとした甘い香りが漂う。まだつまみは来ていないが、疲れたこの身体は目の前の生命の水を求めている…っ‼︎ならば、飲むしかあるまいて‼︎
「…んっ…ん…んんむ⁉︎」
甘い。持ち上げると溢れるそれに口を近づけ、啜ればまるでジュースのような甘さ。だがくどくないその甘さは口の上を上品に転がり、喉を滑り抜けてゆく。後に残るのは米の持つ甘い余韻とその香りだけ。
フルーティーながら力強く香るその香りはまさしく良い米で作られた良い大吟醸が纏う風格と言っても良い。思わずヴィートの小さな口がニンマリと笑う。
次に出て来たのは付け合わせのサラダ。こちらもシンプルながら、かかっているドレッシングは何かわからない。フレンチ系の味がするものの、ヴィートにとっては未体験の味。だが美味い。もう酔っているのもあって何食っても美味い気がしてくる。
…そして実に1時間…(筆者の時これくらいかかりました…)。
「申し訳ございません‼︎お待たせしました‼︎」
ようやっと出て来たのは巨大な鉄皿に乗った巨大な肉の塊と、大皿に盛られたカレーライス。
「はい優勝。今日の主役だわ~」
驚く事なかれそのステーキの厚み…実に3cm強はある‼︎確実に、だ。付け合わせも、ポテトサラダに目玉焼き。コーンともやしの炒め物。実に悪くない配役だ。かけてもらったステーキソースは醤油ベースの香ばしいソース。
カレーも大皿にしっかりと白米とごろごろの牛筋が入った文句無しのルー。そして赤い福神漬け。これで優勝でなければ何が優勝か…(哲学)?
「…ん?店員さーん」
「はいはい、如何なさいました?」
「何かステーキ小さいのもう一切れあるんですけど…?」
「いや、時間かかり過ぎてしまったお詫びですよ。どうぞお食べください」
「え⁉︎良いんですか?…ありがとうございます」
やったぜ。
確かにヴィート自身「あっれ、長いなぁ…」とは思ってはいた。が、その間普通に店内見てたり店内でかかっている曲を聞いてまったりしていたため、割と本気で時間はさして気にしていなかったのだ。
なのにまさかの2切れ…しかも肉の端っことはいうものの、割とデカい。こ、こんなことが許されてええんか…?いや許す。神が許さずとも俺が許す‼︎
「い、いただきまーす」
まずは一口で入る切れ端。フォークを突き刺して口へと放ると、その香ばしい焼けた肉の匂いが口と鼻を満たす。そしてそれらを更に強くする醤油ベースと思われるステーキソース。まさにステーキが素敵なステーキとなったのだ(激ウマギャグ)…っ‼︎
「んふふ…」
笑いが止まらないヴィートのナイフとフォークがメインの肉に突き刺さる。沖縄で食べたステーキと異なり、アロゼされている訳でも無い正しく「焼いた肉だぜっ‼︎」と言った風体のステーキなだけあり、手応えも抜群。肉がまるでクッションのようにナイフを押し返す。
キュコキュコとナイフを動かして切り出せば、赤い鮮やかな肉の色が現れる。しかしブルーのように焼けてないわけでは無い…この厚みで色合いとしてもしっかりと火が通っているのがわかる。
「はぁ…む…むぁ⁉︎」
旨い。ガツンと脳を揺さぶる肉本来の強い旨味。塩胡椒でシンプルな味付けにも関わらず、ソースで補強されたその旨さは実に殺人的である。
「やっばぁ…」
はいでました本日の「やっばぁ」頂きました。
この連日のデスマーチで疲れた脳が癒やされていく。その感覚で心が満たされる。毎度思うのら最近は食べるようにはなったが、ミーニャ達が(達とは言ってもミーニャのみだが)ステーキを食べたがらないないのは本当に勿体無いというコトだろう。
実際はあちら側の世界でステーキ=焼いた魔獣の肉でしか無いためだが。事実美味いステーキはある…単に王族貴族しか食えないだけで。
目玉焼きも半熟。その黄身目掛けて切り出したフィレステーキを突っ込む。途端にその身に黄色のマントを羽織った素晴らしい姿へと変貌する。
「ふぁ…」
その艶やかな見た目。もう最強。語彙力喪失レベルである。それをゆっくりと口に仕舞い込めば、瞬く間に広がるのは味のフロンティア‼︎そして流し込まれる酒。旨味と旨味の掛け算は無限大の味と言えるだろう。
時折ポテトサラダやもやしとコーンの炒め物を口に入れて、あえて口の中をリセットする。リセットしたその口にまた肉を詰めれば脳から出てはいけない程に幸せ物質が吹き出す。
肉、野菜、酒。その無限ループが終わる頃、少し冷めて来てしまったカレーが目に入る。
「…やっちまった」
既に湯気はないそのカレーを手前に取り、スプーンを差し込んで口に入れる。ぬるくなってしまったそれはあまり…
「いやうっまぁ…」
普通に美味かった。冷めていようが美味いカレーは美味い。それを実証したかのようなそのカレーライス。シンプルなスパイスと肉の旨みを存分に引き出したそのルーは、米と共に運べば正義。
肉の旨みは出ているのに臭みはない…つまりは下処理を徹底的にしている、手間のかかったカレーだと分かる。冷めたとは言えど冷え切った訳でもないそのカレーは、遺憾無くその美味さを発揮している。
「あぁ~内臓に染み渡るぅ~」
疲れと今し方入れた肉、そしてデスマーチのストレスでやられた臓腑に染み渡る優しい辛さ。辛さは控えめ、中辛よりも甘口寄りだろう。その優しさが今は嬉しい。
「あぁ…今度ミーニャにも教えたげよ……でもってまたどっか食べに行こ…」
そうぼやきながら、傾けた枡に入った残りの吟醸で喉を潤すのだった。
だが残念、我らがヴィートは帰って来た‼︎…神奈川へと‼︎…あれ、コレって帰って来たに入んのか?まぁ良いとしよう。
さて、そんなヴィートだが…珍しく髪はボサボサ、ノーメイク(実は普段は多少なりともナチュラルメイクをしている)、服はヨレヨレと来た。何故こんなになっているか…誰かに襲われたのか(勝てる奴いんの?)。否、全て否である‼︎
「あぁ…ワジマの馬鹿やろー…」
そう、連勤連徹夜明けである。個人輸入を謳っているものの、物によってはそれはそれは向こうの世界でずっと狩りをしている事もある。今回のご依頼は…
・ドール(ヴィート謹製レッサードリアード使用品)×3体
・小鬼印の回復剤(ヴィート謹製マンドラゴラ使用品、且つ高純度で効果は中級クラス)×256本(256本⁉︎ふざけんな馬鹿やろー‼︎byヴィート)
・大型ドラゴンの剥製×12体(種類問わず)
・小型ドラゴンの剥製×8体(種類問わず)
・謎の肉(実際はレッサードラゴン達の肉)×400キロ前後(多い場合は追加で支払い)
・謎の肉(こっちはミノタウルス)×800キロ
等々。DMを見た瞬間「み゜っ⁉︎」と変な声が出たほどだ。書ききれないだけで、それ以外もたんまり。流石にワジマの部屋に殴り込んで「何だコレふざけてんのか馬鹿やろー‼︎」とキレたが…
「いや、私そもそも色んなところに伝手があってさ…うん、いや一応ね?減らしてとは言ったけどさ?なんか評判良くて、美味い酒もらっちゃって…テヘ?」
この後ヴィートのドロップキックがワジマの顔面に炸裂、クルクル回転しながらベッドに突き刺さると言う悲しい事件があったとか…
そんなこんなでアホ程案件を抱え込んでいたワジマの尻拭いでここ連日狩りと加工に奔走していたのだ。しかも運の悪いことにギンからまたドールの納入も被っていたためストックもなく(臭いし加工が面倒だから基本的にコレはストックしていない)、それ以外でも割と必要素材が多かった影響もあって、結局すぐ終わらせようとしていたこの案件、気が付けば2週間ぶっ通しとなった。
特にDM記載の期日が短かったのも悪影響し、マジで追い詰められていた。それはもう途中から八つ当たりでしばいた当たり屋冒険者やゴブリン、オークは数知れず。途中ギルマスが止めなければガチで殺していた。
以下その一幕。
「ぁー…で?何?呼び出した理由は何?」
「ひぃっ、お、お父さん…じゃないギルマスから確認」
真っ青な顔で震えるエル。完全にとばっちりだ。
「今すぐギルマス呼べ、ブチ殺してやる…」
「あやや、こ、殺しちゃダメですぅ…‼︎」
「あぁ?急いでんだよ‼︎僕ぁ暇じゃねぇんだよォッ‼︎」
カウンターバンバン。ひび割れるカウンター。カウンターは犠牲になったのだヴィートの怒りの犠牲になぁ‼︎
その時、ヴィートの背中に衝撃。
ギロリと睨むとモヒカン頭のいかにもな冒険者が騒いでいる。
「あー、痛え痛え、どっかのチビの背中にぶつかっちまって俺の大切な腕が折れたみてぇだなぁ‼︎あー痛え痛え‼︎」
「誰?」
「ああ?お前ちょいちょい見かける底辺女か?金だけ持ってんのは知ってんだよ‼︎そうだお前今晩俺の部屋にきな…俺の女になって治療費ぎぃっ⁉︎」
折れたと叫ぶ冒険者の腕。次の瞬間肩から先が空を舞う。
「ぎゃああああああ⁉︎腕っ⁉︎俺のっ‼︎⁉︎腕ぇっ⁉︎な、何ひぎっ⁉︎」
地面に転がり叫び回る冒険者。エルは既にギルマスを呼びに走った。頑張れエル‼︎専属の定めだ、早くしないとモヒカン死ぬぞエル‼︎
その間に冒険者は頭を踏まれ地面とディープキス。嫌だなそれ。
「助けて助けて⁉︎ごめんなさい調子乗りました許してくださぁい‼︎」
「駄目死ね」
「お願いします出来心だったんですぅぅぅ‼︎貴女様がとても美人だったのでつい」
「駄目死ね」
「あれこれ俺何しても死ぬな⁉︎ちょちょちょ⁉︎潰れる潰れる頭の中身出ちゃう⁉︎ね⁉︎お兄さんが悪かったから‼︎」
「駄目死ね」
「あー成る程ね?これはもう助かんねぇな?」
「駄目死ね」
「誰かぁぁぁぁ⁉︎この女やべーよ助けて⁉︎駄目死ねしか言わねーよ⁉︎」
「駄目死ね」
ヴィートの剥き出しの殺気に周りも尻込みする。普段稀にしか来ない女が、仮にも銅級より上の鉄級の冒険者を…いや、このギルド内にいる誰の目にも止まらない速度で腕を落とした。勝てるわけが無い…と言うか今の状態的に下手に手を出したら二の舞待ったなしだ。故に誰も目を逸らす。
あわや冒険者の頭はそのトレードマークのモヒカンと共に爆発四散か⁉︎
そこへ走り込んだのはギルマス。テカテカの頭を汗でよりテカテカになった頭から汗を飛ばしながらヴィートを引き剥がす。
「うおおおっ⁉︎待て待て待てーっ⁉︎殺すな殺すな‼︎」
「駄目死ね」
「あっ、コレダメなパターン入ったな?」
「ぎ、ギルマスこのやべー女を早くどっかに…ぶえらっ⁉︎」
「あっ…」
哀れなモヒカンは持ち上げられたヴィートの蹴りによって吹き飛んだ。腕切られて何で死んで無いかって?この世界では常識ですよ。
「…汗臭い…ハゲ降ろせてかぶっ殺す」
「何このナチュラルボーンジェノサイダー…エル、何かあったのか?」
「最近本業の方の仕事で忙殺されてるらしくて…ここ数日まともに寝てないらしいです」
「あぁ…そう言う」
「そこでギルマスに呼ばれて殺意の波動に目覚めた感じかなぁ…と」
「タイミング~…」
あちゃーと言う顔でゲンナリしたギルマス。そりゃそうだ。ギルマス的には最近レッサードリアード含め様々なモンスターが、生息地から悉く姿を消していることから「これ、ヴィート何かしてんな?」と確認しようと思っただけである。まあ、大正解だが。
「降ろせ殺す」
「殺すな殺すな、ほらここで俺殺したらえーっと…」
「ミーニャです」
「ミーニャが悲しむぞ?ほら、犯罪者になっちまうから…な⁉︎」
「……用事は何」
ミーニャの名前を聞いて頭が少し冷えたのか、底冷えするようなドスの利いた声でギルマスにぶら下げられたまま問いかける。
「いや、まぁ…最近ゴブリンやオーク…果てにはレッサー種の魔物達が居なくなりまくっててなぁ…何か知って」
「仕事の材料で必要だったから狩った」
「「えぇ…認めちゃったよ…」」
「他は?」
「あーその…提出とかは…?」
「材料だからするわけないじゃん…あ、ゴミならあるよ」
そう言うとヴィートがコートから出して来たのは粗末なズダ袋、数袋。見ればその口からはゴブリンやオークだけでなく、毛むくじゃらの腕やら細腕やら人間らしき腕も見える。
「な、何だコレ…」
「ゴミ」
「お、主に?」
「ゴブリン、オーク、その他よく分からん動物と盗賊と山賊」
「皆殺しかよ」
「邪魔した向こうが悪い」
酷え…それがギルマス含むこの場にいる全員の感想だった。確かに敵対した奴に…それも山賊達に対して慈悲を持つ者など愚物以外の何者でもない。しかし、だからと言って出会ってはブチ殺して回るのはまた別である。と言うか慈悲がなさすぎる。
「じゃあ僕帰るからコレあげる。多分装備とか財宝とかあると思うけど今はそれどころじゃないからあげる」
「「えっ」」
「後はよろしく、今止めたら止めた奴もそのズダ袋に詰めるから」
こうして嵐…どころか災害レベルにやべーもののを投げてヴィートは帰った。そうして今に至る。尚納品は済んでいる。ワジマ指定の送り先に送っておいた。おまけでワジマの家(ヴィートの部屋の真上)にはしっかり密封したレッサードリアードの果肉の頭を模した部分を置いておいた…未処理の奴を。
なんか出かける時に「お、何々…沢山注文したお礼です?ほぇー…おつまみかなぁ…っ⁉︎えっ⁉︎人の頭っていうかくっさっ⁉えなにこれドリアン以じょヴォエッ⁉︎」と良く分からん悲鳴が上から聞こえた気がするが、まぁ良いだろう。
「肉だ…疲れた時は肉を食おう…」
完全に逝った目でそう溢すヴィート。一説だと肉にはストレスを緩和する幸せホルモンこと「セロトニン」を分泌させるらしい。後これ別にヴィートは知らない。何となくストレスやべーから肉食おうという考えである。
某駅を東口から出て空中デッキを渡り、右のビル併設の階段から降りてゆく。ヘロヘロの足を動かして歩いて行くともう表通りや裏通りから居酒屋やレストランのうまそうな匂いが鼻腔を刺激する。思わずすぐ近くの天丼屋やファストフードに駆け込みたくなる衝動を抑えつつ歩く。
油断をしたらすぐに違う店に入ってしまいそうなほど蠱惑的な匂いに脳がヒリつく。
だが違う…っ‼︎今日のヴィートは肉に…これぞ肉という肉に飢えている‼︎ファストフード店のジャンクなバーガーや海鮮マシマシの天丼などお呼びじゃあない……‼︎‼︎
ふらふらとした足取りでついに辿り着いたのは一○屋。飲み屋の一角にあるその店はぱっと見でモダンでレトロ…しかもとても高そうな雰囲気で入りずらい空気を感じ取る。
「いやそんな事より肉」
関係なかった。カランカランと扉を開けると目の前には暖簾とキッチン。右には登り階段。
「いらっしゃいませー、上へどうぞ」
「うぃ」
言われるがままに登るとこじんまりとしたテーブルエリアに入る。席は土曜なのにも関わらずあまり人がいないのはきっと開店したばかりだからだろう。事実、店内は外から感じた雰囲気同様、とてもシックで落ち着いた雰囲気が伺える。
疲れたまま奥の窓の前に案内されると、大きな窓にはデカデカとステーキのサイズとそれに対応する値段が貼られている。
…フィレたっか……
が、ヴィートは脂の乗った肉よりもよりもっと齧って味わって「肉だ‼︎赤身だぁ‼︎」という肉が食いたかった。その時点でもう注文はほぼ決まった。
しかしそのステーキのペアとなる酒が決まらない。ヴィートは日本に来てから基本日本酒、ビールそして焼酎しか飲まなかった。ワインは一度飲もうかと思ったが、向こうの世界のワインを飲んだ際に悪酔いした記憶が邪魔をしてどうしても食指が動かない。
ぼんやりと迷っていると、ちょうどキッチンに灰色の頭になった壮年の男性スタッフが目に付いた…服装は黒のコック服、キッチンスタッフだろう。
「すいません」
「はい、何でしょう?」
少し怖い顔からすぐに柔和そうな顔になり、近くの棚にあった注文用紙を持って来た。まさかの手書きである。
「ステーキに合うペアの酒でお勧めってありますか?」
「あぁ…この大吟醸がお勧めですね」
「…だ、大吟醸?こっちのワインとかウィスキーではなく?」
つい先日ヴィートが訪れた沖縄ではウィスキーやビール、ワイン類はメニューにあったが日本酒…それも大吟醸なんて目に付かなかった。それに日本酒=魚介類というイメージが染み付いているヴィートとしてはびっくりな話であった。まさに目から鱗‼︎
「えぇ…大吟醸と、ステーキ…」
だがやはりというべきか、全くと言っていいほどイメージが湧かない。
「はい、大吟醸などの日本酒類は旨味成分がありますが、これがステーキの旨味と合わさり旨味同士の相乗効果でより旨く感じるんですよ」
「ほぇぇ…じゃあそれで」
「あっ、はい」
ホケーっとした顔のまま、迷いなく一合注文。しかもステーキを指定する前にである。いやまず肉頼めや。
「ステーキはフィレの350gで」
「はい、他には?」
「後は…牛筋煮は?」
そう言ってメニューの一品類の中、「牛筋煮」と書かれた項目を指差す。やはり酒の友達と言えば牛筋煮でしょ、とキラキラした目で問いかけるも…
「今牛筋煮はやってないんですよ…全てカレーに」
「じゃ、カレーで」
無念かと思いきやあっさりとカレーに変更。うまそうなら何でも良いのだ‼︎ただし、牛カツは売り切れだった。食いたかった…筆者も食いたかった、牛カツ。普通に美味そう、牛カツ。
そうして注文後、まず来たのは大吟醸。
若い女性店員が持って来た枡が机の上に置かれ、見ればその中に小さめのグラスが収まっている。そして彼女が持って来たのは巨大な一升瓶。
「じゃ、注ぎますねー」
「へーい」
トットットッと音を立てて注がれた透明かつ芳醇なその液体は瞬く間にグラスを満たして枡にまで溢れる。ホワリとした甘い香りが漂う。まだつまみは来ていないが、疲れたこの身体は目の前の生命の水を求めている…っ‼︎ならば、飲むしかあるまいて‼︎
「…んっ…ん…んんむ⁉︎」
甘い。持ち上げると溢れるそれに口を近づけ、啜ればまるでジュースのような甘さ。だがくどくないその甘さは口の上を上品に転がり、喉を滑り抜けてゆく。後に残るのは米の持つ甘い余韻とその香りだけ。
フルーティーながら力強く香るその香りはまさしく良い米で作られた良い大吟醸が纏う風格と言っても良い。思わずヴィートの小さな口がニンマリと笑う。
次に出て来たのは付け合わせのサラダ。こちらもシンプルながら、かかっているドレッシングは何かわからない。フレンチ系の味がするものの、ヴィートにとっては未体験の味。だが美味い。もう酔っているのもあって何食っても美味い気がしてくる。
…そして実に1時間…(筆者の時これくらいかかりました…)。
「申し訳ございません‼︎お待たせしました‼︎」
ようやっと出て来たのは巨大な鉄皿に乗った巨大な肉の塊と、大皿に盛られたカレーライス。
「はい優勝。今日の主役だわ~」
驚く事なかれそのステーキの厚み…実に3cm強はある‼︎確実に、だ。付け合わせも、ポテトサラダに目玉焼き。コーンともやしの炒め物。実に悪くない配役だ。かけてもらったステーキソースは醤油ベースの香ばしいソース。
カレーも大皿にしっかりと白米とごろごろの牛筋が入った文句無しのルー。そして赤い福神漬け。これで優勝でなければ何が優勝か…(哲学)?
「…ん?店員さーん」
「はいはい、如何なさいました?」
「何かステーキ小さいのもう一切れあるんですけど…?」
「いや、時間かかり過ぎてしまったお詫びですよ。どうぞお食べください」
「え⁉︎良いんですか?…ありがとうございます」
やったぜ。
確かにヴィート自身「あっれ、長いなぁ…」とは思ってはいた。が、その間普通に店内見てたり店内でかかっている曲を聞いてまったりしていたため、割と本気で時間はさして気にしていなかったのだ。
なのにまさかの2切れ…しかも肉の端っことはいうものの、割とデカい。こ、こんなことが許されてええんか…?いや許す。神が許さずとも俺が許す‼︎
「い、いただきまーす」
まずは一口で入る切れ端。フォークを突き刺して口へと放ると、その香ばしい焼けた肉の匂いが口と鼻を満たす。そしてそれらを更に強くする醤油ベースと思われるステーキソース。まさにステーキが素敵なステーキとなったのだ(激ウマギャグ)…っ‼︎
「んふふ…」
笑いが止まらないヴィートのナイフとフォークがメインの肉に突き刺さる。沖縄で食べたステーキと異なり、アロゼされている訳でも無い正しく「焼いた肉だぜっ‼︎」と言った風体のステーキなだけあり、手応えも抜群。肉がまるでクッションのようにナイフを押し返す。
キュコキュコとナイフを動かして切り出せば、赤い鮮やかな肉の色が現れる。しかしブルーのように焼けてないわけでは無い…この厚みで色合いとしてもしっかりと火が通っているのがわかる。
「はぁ…む…むぁ⁉︎」
旨い。ガツンと脳を揺さぶる肉本来の強い旨味。塩胡椒でシンプルな味付けにも関わらず、ソースで補強されたその旨さは実に殺人的である。
「やっばぁ…」
はいでました本日の「やっばぁ」頂きました。
この連日のデスマーチで疲れた脳が癒やされていく。その感覚で心が満たされる。毎度思うのら最近は食べるようにはなったが、ミーニャ達が(達とは言ってもミーニャのみだが)ステーキを食べたがらないないのは本当に勿体無いというコトだろう。
実際はあちら側の世界でステーキ=焼いた魔獣の肉でしか無いためだが。事実美味いステーキはある…単に王族貴族しか食えないだけで。
目玉焼きも半熟。その黄身目掛けて切り出したフィレステーキを突っ込む。途端にその身に黄色のマントを羽織った素晴らしい姿へと変貌する。
「ふぁ…」
その艶やかな見た目。もう最強。語彙力喪失レベルである。それをゆっくりと口に仕舞い込めば、瞬く間に広がるのは味のフロンティア‼︎そして流し込まれる酒。旨味と旨味の掛け算は無限大の味と言えるだろう。
時折ポテトサラダやもやしとコーンの炒め物を口に入れて、あえて口の中をリセットする。リセットしたその口にまた肉を詰めれば脳から出てはいけない程に幸せ物質が吹き出す。
肉、野菜、酒。その無限ループが終わる頃、少し冷めて来てしまったカレーが目に入る。
「…やっちまった」
既に湯気はないそのカレーを手前に取り、スプーンを差し込んで口に入れる。ぬるくなってしまったそれはあまり…
「いやうっまぁ…」
普通に美味かった。冷めていようが美味いカレーは美味い。それを実証したかのようなそのカレーライス。シンプルなスパイスと肉の旨みを存分に引き出したそのルーは、米と共に運べば正義。
肉の旨みは出ているのに臭みはない…つまりは下処理を徹底的にしている、手間のかかったカレーだと分かる。冷めたとは言えど冷え切った訳でもないそのカレーは、遺憾無くその美味さを発揮している。
「あぁ~内臓に染み渡るぅ~」
疲れと今し方入れた肉、そしてデスマーチのストレスでやられた臓腑に染み渡る優しい辛さ。辛さは控えめ、中辛よりも甘口寄りだろう。その優しさが今は嬉しい。
「あぁ…今度ミーニャにも教えたげよ……でもってまたどっか食べに行こ…」
そうぼやきながら、傾けた枡に入った残りの吟醸で喉を潤すのだった。
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