義理の兄弟は過ちを犯す

だいたい石田

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家族のままでいたかった

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――どうしてわかってくれないんだ。
激情に駆られて行動を起こした。後悔先に立たずだ。
わかってはいる。わかってはいるんのだけれど、わかってくれないもどかしさが悲しさになり、やがて怒りへと変わった。それはもちろん、自分に対しての怒りだ。ふがいない自分に対しての。



俺と慶は兄弟だ。とはいっても血のつながった兄弟ではない。
親の再婚でできた兄弟。
俺が年上なので兄。学年は一つ違い。
家によってはもめごとになるかもしれないが、慶と俺は違った。
慶のお母さんとも俺は仲良くできたし、慶も俺の父とうまくやっていた。
家族になっていた。

――だが、いつしかその感情は変化した。
何がきっかけだったのか、いつからかははっきりしない。
家族の情が恋愛のそれへと変わる。
禁断だ、と頭の中で声がする。
その想いを抑えようとすればするほど日に日に強くなる。
止められない。
自覚したその日から、俺は慶にあまり関わらなくなった。
勉強しないといけないからと、慶の部屋に行く回数を減らした。いや、なくした。
リビングにいれば、慶とでくわすことが多くなるから行かなくなった。
必要最小限にまで抑えた。食事も自室でとった。
トイレや風呂はさすがにいくが、なるべく出くわさないようにした。

――今思うとそれがいけなかったのかもしれない。
ゼロにするのではなく徐々に減らすべきだったのだ。


「怜、俺のこと避けてない?」
風呂上がりの無防備な姿で俺の部屋に来た慶をみたとき、理性の箍がはずれた。
自分でもわかっていた。急に慶とのかかわりをなくしてしまったから飢えていることを。
いつか、いつか糸が切れてしまうことを気づいていた。けれども、直さなかった。止めようとしなかった。

自分もつかっているシャンプーの香りが漂っている。
同じのシャンプーのはずなのにやけに甘い。そして、濃い。
この距離は家族の距離じゃない。
――そう、俺は慶を押し倒していた。

慶は一瞬、俺を押し返そうとして、そしてやめた。
飢えたけだもののように俺が襲い掛かっても一切抵抗をしなかった。
それから、両親の帰りの遅い日が俺たちの日になった。

このままではいけないと、何度も思った。
俺はまだしも慶は……と。
血のつながらないとは言え、男と睦みあっていてはいけない。
「終わりにしよう」とのどまででかかった。でも、言葉にはできなかった。
だから、決めたのだ。
その代わりに「愛している」とはいわないと。
そうして、俺と慶は身体だけの関係になった。
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