謝ると死ぬ病気

だいたい石田

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高圧的な男

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謝ると死ぬ病気にかかったと自覚したのは、小学5年のとき。
友達とふざけていて腕が強めに友達にあたった。
痛かったよなあと思い「ごめ」と言いかけた瞬間に口の中に血の味が広がった。
「ん」まで言っていたら死んでいた。
言えなかったのは口の中が血であふれていたからだ。
臓器の一部が瞬時にぼろぼろになったらしい。
どの臓器なのかは覚えていない。
血を吐き倒れた俺に驚いた友達が先生を呼び、先生が救急車を呼んでくれた。
意識が戻ったのは3日後だった。

「お母様はご退室ください。」
毎日お見舞いにきてくれる母をある日、医師は追い出した。
医師はずっと俺に言いたかったことがあったのだ。
タイミングが合わずに言えず、あと2、3日で退院というその日、ついに声をかけてくれた。

「今からいうことをよく聞いてほしい。一度しか言えない。」
主治医ではないのであまり会ったことのない医者は真剣な顔でそういった。
「はい。」
否を唱えられる雰囲気ではなかった。
「君は謝ると死ぬ病気にかかっている。これからの人生、絶対に謝ってはいけない。この病気のことも話してはいけない。この2つだけは絶対に守ってほしい。」
「はい。」
質問ができる雰囲気でもなかった。うなずいた俺を見て医者は頭をなでてくれ、それから部屋を出て行った。
医者と入れ違いに戻ってきた母親には「なんの話をしたの?」と言われたが、答えなかった。
先ほど聞いたことを脳内でずっと反すうしていたから。

それからの人生は一変した。
とにかく謝ってはいけない。謝罪の意を表してもいけない。
”ごめん””すみません””申し訳ないです”は言えない。
ただ”遺憾に思う”これはいいのだ。謝罪の意は含まれていないから。

謝らないでいいように人当たりよくするとなめられる。
普通にしているとどうしても謝らないといけないときがくる。
ではどうすればいいのか。
答えは、高圧的に接する、だ。

どんなことをしても決して謝らないようにするためにはそうするしかなかった。
普通の人間関係なんてできなかった。
あまり話さないようにし、それでもなめられないようにした。
無口で高圧的な人間になってしまった。
学校生活はとかく話すことが多い。大学まで行きたかったが諦めた。
あとになって通信の大学に行けばよかったと思ったがどのみち無理だったと思う。
親とも仲が悪かったから。

会社でもうまくいくわけがなかった。
謝れないし悪びれる様子もないのだ。
だれからも嫌われてしまう。
結局、転職を繰り返し人と接することのないような仕事についた。
日々、機械と接しメンテナンスをする。
同じように働く人とあいさつはするがそれ以上はない。
昼は出勤途中で買ったコンビニ弁当をもそもそと食べる。

結婚なんて考えられるわけもない。恋人すらできたことがないのだ。
謝ると死ぬ病気にかかってしまうと。

ネットで情報を探そうとすると胸が痛くなる。
医者に話しても信じてもらえず、腹が痛くなるだけ。腹痛を診てもらうも原因は胃やら腸やらを悪くしているといわれて薬をもらうが、早い時で診察室をでると治る。

この死んだような人生を送るしかないのだ。
今日も孤独に生きるしかないのだ。
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