謝ると死ぬ病気

だいたい石田

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陰気な男

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謝ると死ぬ病気だとわかったのはいつからだろう。
ネットスラングではなく比喩でもないそれは対処法がなかった。
謝らないことでしか防ぐほかはなかった。
治す方法もないのだから。

それでもなんら問題ないように思えた。
謝らないといけないときはもごもごとごまかした。
周囲はため息をついた。そして無視するようになった。
そりゃあそうだろう。
謝りもせずにもごもご言うだけの奴なんて相手にしたくない。
だが、その相手にしないことによって俺はより人との接触がなくなったので謝ることも減った。
生きていく以上、人と接さないわけにはいかないので完全に0にはならないのが悲しいところだ。

世間および社会はそれでよかった。
それが許されないのは家庭だった。
縁があって結婚に漕ぎつけたのはよかった。
が妻は謝らないと怒り狂った。
不明瞭な音声でもごもごと言ったが逆効果なだけだった。
「あなたはいつも被害者面をする!」と言われたがどうしようもなかった。

結婚式の飾りの花を決める約束を俺はすっかり忘れていた。
妻は何度か連絡をくれていたが気づかなかった。
妻一人で花屋と打ち合わせをしたらしい。
怒髪天を衝くの妻にケーキを差し出すもはたかれた。

「忘れていたのは業腹だが仕方ない。この期に及んでも謝れないし相変わらずの被害者面。もう耐えられない。」
妻は出て行ってしまった。
花の打ち合わせが、コップの最後の一滴になってしまったのだろう。
あふれてしまったのだ。
よく我慢してくれていたと思う。
妻の戸籍を汚してしまったことをひどく申し訳なく思った。
それでも謝れない。謝ってしまうと死ぬのだ。
口頭でも文面でも。
せめてもの気持ちに慰謝料は大目に払った。
結婚式のキャンセル料ももちろん払った。

結婚にも向かないとはっきりとわかってからは女性に近づかなくなった。
近づかなくても、女性が寄ってくることはない。
ひっそりと生きていこう。
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