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もうすぐこの国の結界が他国から来国した聖女により、強固なものに張り直してもらえるという噂に人々は大きな声で喜び合っていた。
ここ数年は神殿に在籍する僅かな聖女達が力を合わせて結界を維持してきたが、それも限界に近かったのだ。
新しい聖女が見つかったとしてもすぐに聖女として神殿に住まう事を辞退する者もいれば、結婚を理由に神殿から出る者もいた。
もちろん結婚後も聖女として神殿にその名を登録したまま仕事として来れないかと打診したとして、激務を理由に辞退された。
以前では考えられないようなレベルの聖女候補でも受け入れずには成り立たない状態になりほとほと困っていた時に、一時的にでも結界を強化してもらえるのであればありがたかったのだ。
サムル王国の大聖女候補ライラの聖女としての能力は秀でていて、その優れた力が認められ王家から王太子の婚約者として求められた聖女なのだ。
リザルドの国民はその秀でた聖女の行列に沸き立っていた。
前日から神殿に向うまでの行列が通る道は綺麗に飾り付けられてはいるが、冬季のリザルドには花がないため華やかさには欠けていたが、少しでも聖女ライラに喜んでもらおうとリザルド王国の国旗とサムル王国の国旗が道中の至る所に設置された。
いよいよ王宮から聖女ライラが神殿に向う当日は王都に住まう者にとっては滅多にない祝い事に沸き立っていた。
「ちょっとショボくない?」
リザルドの冬使用の馬車に乗ったライラは不満げに一言呟いたが、厚い二重窓の向こうにはその呟きは漏れることなく馬車は動き出した。
◇◇◇
スコーン店の前も多くの人でごった返していたが、店舗内の人数制限なども予め決めていた為に店員達はそこまで忙しくはない業務をこなしていた。
店頭にはエレアが立ちスコーンを販売していたが、こちらも好評で飛ぶように売れていた。
本日のスコーンは聖女ライラの祈りの儀式に対してのリザルド王国からのささやかなお礼として、売り上げは聖女ライラの名前で孤児院へ寄付する事としていた。
ユリアのスコーン店が聖女ライラへの敬意を表してと前日にユリアが発表したのだ。
最近ユリアのスコーン店で働いている、同じくユリアを名乗る美しい女性がいることも噂されていたが、マダム・リリーの店員の見目麗しいことは知られている。
リザルド王国に親善団として来国した聖女ライラがいつまで経ってもこの国の抱える問題に手を貸さなかった頃に、マダム・リリーが始めた治療院の聖魔力を持つ女性がピンクブロンドの髪色に青い瞳だったことから、マダム・リリーの遠回しな批判だろうと言われていた。
今回ささやかなお礼として聖女ライラの名で今日のスコーンの売り上げを孤児院に寄付するという発表は聖女ライラの祈りの儀式を歓迎しているようにみえるが、店頭に立つ女性がライラと同じピンクブロンドの髪色に青い瞳という様相なのは当てこすりとも見えた。
前日に神殿でライラが王宮で自ら作ったというスコーンが有料で配られたからだ。
ライラは当日に行列の合間に馬車を止めて、馬車から降りて手ずからスコーンを配りたいと希望したのだが、ライラが作ったスコーンが神殿までの道中を見ようと詰め掛けている人々すべてに行き渡るはずもなく、馬車から降りたライラの元にスコーン欲しさに詰めかけることも予測されることもあり却下となった。
ライラがようやくサムル王国の使節団に加わった目的に前向きになった事を喜んだ同行の文官達もいろいろと手配していたが、ライラの希望の手ずからスコーンを配る企画はどう考えても無謀だったのだ。
まずスコーンの数をどうするか。
ライラは今までも暇だ暇だと王宮内で散々スイーツを作ってはそれを「太るから」と自分は食べることなく、結局は使節団の同行者が食べるか、同じようなスイーツばかりで飽きて王宮で働く使用人に下げ与えていた。
その材料費をリザルド王宮が負担していたのだが、あちらから細かい事を言われるなと思う事もあったが、ライラが大量に作る材料費と厨房を占拠することで調理人達が困っていることを告げられて以降は材料は使節団がその費用や材料を調達するようにした。
その材料調達や費用がバカにならないことにすぐ気づいたのだが、豊かな農業大国のサムル王国と作物の多くを輸入に頼るリザルド王国とでは全ての価格が違うのだ。
もう少しこじんまりと趣味を楽しんで欲しいとライラに頼んだ事もあったが
「私はスイーツ店をオープンさせる予定なんだから、家で少人数のお菓子を作る感覚じゃダメなの」
と聞く耳を持たなかった。
スイーツを作る度に国王夫妻やアーサー王太子にそのスイーツを届けてはいたが、アーサー王太子はそのスイーツを断っていた。
正確にはアーサー王太子の侍従が丁寧に断っていたのだが。
執務室の近くにスイーツの乗ったお皿を持ったライラが何度も訪れたと、リザルドの文官からやんわりと相談を受けたサムル王国使節団は肝を冷やした。
聖女ライラは天真爛漫な方だと好意的に受け止めて同行していたが、だんだん天真爛漫ではなく他者への配慮や自分のしたことが周りにどんな影響を与えるかを考えていないのだ。
やっと祈りの儀式を行うとなり、胸をなでおろした後で今度は自分の作ったスイーツを皆に配って美味しいって言ってもらう等と言い出した。
ライラの計画をそのまま叶えるとすれば、聖女ライラの乗った馬車の後ろに数台の大量にスコーンを乗せた荷車を配置しなければ到底叶わないだろうし、そのスコーンの材料費やいつから焼き始めるのかも何もライラは考えていないのだ。
可愛い籠にスコーンを入れて配る自分の姿だけをイメージしての希望だろう。
その希望を叶えるのは我々ではなくエリック王太子だろう。
どうしてこんな者を婚約者として選び直したのか不思議だ。
至極まともな公爵令嬢で聖女だったエレア嬢よりも優れている点は聖女としての能力一点のみで、そこまでしてサムル王国に聖女の王太子妃が必要なのか不思議だ。
リザルドの王宮内で足止めされたまま鬱々と過ごしていた使節団は今回のライラの願いを全く聞こうとしなかったためにライラを怒らせ
「サムル王国に帰ったらあんた達皆クビにしてやるんだから!」
と叫ばれた。
これで子爵令嬢だとは恐ろしい。
下級貴族といえどどんな教育をすればこんな貴族令嬢が出来上がるのか。
もうすでに心の限界値を達した使節団はライラの怒りも無視することにし、リザルド側と相談し普通の行列で神殿に向う事で合意した。
ただしライラが作っていた100個近いスコーンに関しては神殿に先に送りあちらでどうにかしてもらうことにしたのだ。
結果、ライラのスコーンは神殿で一旦預かり、神殿から求める者に有料で配られることになった。
王都で今流行しているスコーンが神殿でも寄付すれば食べられる、しかも聖女が作った物だぞ!というわけで前日に神殿に人々が殺到したらしい。
エレアがスコーンを求める人に注文数を聞いて、他の店員がその数分紙袋にスコーンを詰めて渡しお金を貰っていると、聖騎士マーカスとユリアの姿を通りの反対側で見かけた。
スコーン店よりも王宮に近い場所に2人で歩いて向かっているのだろう。
美男美女が並んで歩くととても絵になる。
ただしそのユリアの露出ぶりに苛立っているのはモロウ商会のベンジャミンだった。
会長は激しいユリアちゃん推しで有名だが、こちらの世界でも推しが自分とは別の異性と仲良くしていると嫉妬でおかしくなるものなのかと思っていたがそうでもなく、聖騎士マーカスに対して好意的らしい。
ユリアに「私の聖女」を断られたことが会長としては胸を打つ出来事だったそうで
【聖女ユリア】という名のワインを近年中に売り出すそうだ。
自分の命を捧げる程の聖女の事を想い続ける聖騎士の想いをイメージしたワイン
監修はマダム・リリー
なるべくユリアと聖騎士マーカスが仲睦まじい姿を周囲に見せつけて、その後聖騎士マーカスがリザルドを去れば二度と会うことはない。
この二度と会うことがない事が会長としては寛容になる理由だった。
(歩くだけであんなに目立つならもしかして馬車からもユリア達の姿を見つけるかもしれないわね・・・)
わざわざ聖女の名でスコーンを焼いて神殿で配る位なのだからユリアのスコーン店意識してるライラは更に苛つくことだろう。
ここ数年は神殿に在籍する僅かな聖女達が力を合わせて結界を維持してきたが、それも限界に近かったのだ。
新しい聖女が見つかったとしてもすぐに聖女として神殿に住まう事を辞退する者もいれば、結婚を理由に神殿から出る者もいた。
もちろん結婚後も聖女として神殿にその名を登録したまま仕事として来れないかと打診したとして、激務を理由に辞退された。
以前では考えられないようなレベルの聖女候補でも受け入れずには成り立たない状態になりほとほと困っていた時に、一時的にでも結界を強化してもらえるのであればありがたかったのだ。
サムル王国の大聖女候補ライラの聖女としての能力は秀でていて、その優れた力が認められ王家から王太子の婚約者として求められた聖女なのだ。
リザルドの国民はその秀でた聖女の行列に沸き立っていた。
前日から神殿に向うまでの行列が通る道は綺麗に飾り付けられてはいるが、冬季のリザルドには花がないため華やかさには欠けていたが、少しでも聖女ライラに喜んでもらおうとリザルド王国の国旗とサムル王国の国旗が道中の至る所に設置された。
いよいよ王宮から聖女ライラが神殿に向う当日は王都に住まう者にとっては滅多にない祝い事に沸き立っていた。
「ちょっとショボくない?」
リザルドの冬使用の馬車に乗ったライラは不満げに一言呟いたが、厚い二重窓の向こうにはその呟きは漏れることなく馬車は動き出した。
◇◇◇
スコーン店の前も多くの人でごった返していたが、店舗内の人数制限なども予め決めていた為に店員達はそこまで忙しくはない業務をこなしていた。
店頭にはエレアが立ちスコーンを販売していたが、こちらも好評で飛ぶように売れていた。
本日のスコーンは聖女ライラの祈りの儀式に対してのリザルド王国からのささやかなお礼として、売り上げは聖女ライラの名前で孤児院へ寄付する事としていた。
ユリアのスコーン店が聖女ライラへの敬意を表してと前日にユリアが発表したのだ。
最近ユリアのスコーン店で働いている、同じくユリアを名乗る美しい女性がいることも噂されていたが、マダム・リリーの店員の見目麗しいことは知られている。
リザルド王国に親善団として来国した聖女ライラがいつまで経ってもこの国の抱える問題に手を貸さなかった頃に、マダム・リリーが始めた治療院の聖魔力を持つ女性がピンクブロンドの髪色に青い瞳だったことから、マダム・リリーの遠回しな批判だろうと言われていた。
今回ささやかなお礼として聖女ライラの名で今日のスコーンの売り上げを孤児院に寄付するという発表は聖女ライラの祈りの儀式を歓迎しているようにみえるが、店頭に立つ女性がライラと同じピンクブロンドの髪色に青い瞳という様相なのは当てこすりとも見えた。
前日に神殿でライラが王宮で自ら作ったというスコーンが有料で配られたからだ。
ライラは当日に行列の合間に馬車を止めて、馬車から降りて手ずからスコーンを配りたいと希望したのだが、ライラが作ったスコーンが神殿までの道中を見ようと詰め掛けている人々すべてに行き渡るはずもなく、馬車から降りたライラの元にスコーン欲しさに詰めかけることも予測されることもあり却下となった。
ライラがようやくサムル王国の使節団に加わった目的に前向きになった事を喜んだ同行の文官達もいろいろと手配していたが、ライラの希望の手ずからスコーンを配る企画はどう考えても無謀だったのだ。
まずスコーンの数をどうするか。
ライラは今までも暇だ暇だと王宮内で散々スイーツを作ってはそれを「太るから」と自分は食べることなく、結局は使節団の同行者が食べるか、同じようなスイーツばかりで飽きて王宮で働く使用人に下げ与えていた。
その材料費をリザルド王宮が負担していたのだが、あちらから細かい事を言われるなと思う事もあったが、ライラが大量に作る材料費と厨房を占拠することで調理人達が困っていることを告げられて以降は材料は使節団がその費用や材料を調達するようにした。
その材料調達や費用がバカにならないことにすぐ気づいたのだが、豊かな農業大国のサムル王国と作物の多くを輸入に頼るリザルド王国とでは全ての価格が違うのだ。
もう少しこじんまりと趣味を楽しんで欲しいとライラに頼んだ事もあったが
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と聞く耳を持たなかった。
スイーツを作る度に国王夫妻やアーサー王太子にそのスイーツを届けてはいたが、アーサー王太子はそのスイーツを断っていた。
正確にはアーサー王太子の侍従が丁寧に断っていたのだが。
執務室の近くにスイーツの乗ったお皿を持ったライラが何度も訪れたと、リザルドの文官からやんわりと相談を受けたサムル王国使節団は肝を冷やした。
聖女ライラは天真爛漫な方だと好意的に受け止めて同行していたが、だんだん天真爛漫ではなく他者への配慮や自分のしたことが周りにどんな影響を与えるかを考えていないのだ。
やっと祈りの儀式を行うとなり、胸をなでおろした後で今度は自分の作ったスイーツを皆に配って美味しいって言ってもらう等と言い出した。
ライラの計画をそのまま叶えるとすれば、聖女ライラの乗った馬車の後ろに数台の大量にスコーンを乗せた荷車を配置しなければ到底叶わないだろうし、そのスコーンの材料費やいつから焼き始めるのかも何もライラは考えていないのだ。
可愛い籠にスコーンを入れて配る自分の姿だけをイメージしての希望だろう。
その希望を叶えるのは我々ではなくエリック王太子だろう。
どうしてこんな者を婚約者として選び直したのか不思議だ。
至極まともな公爵令嬢で聖女だったエレア嬢よりも優れている点は聖女としての能力一点のみで、そこまでしてサムル王国に聖女の王太子妃が必要なのか不思議だ。
リザルドの王宮内で足止めされたまま鬱々と過ごしていた使節団は今回のライラの願いを全く聞こうとしなかったためにライラを怒らせ
「サムル王国に帰ったらあんた達皆クビにしてやるんだから!」
と叫ばれた。
これで子爵令嬢だとは恐ろしい。
下級貴族といえどどんな教育をすればこんな貴族令嬢が出来上がるのか。
もうすでに心の限界値を達した使節団はライラの怒りも無視することにし、リザルド側と相談し普通の行列で神殿に向う事で合意した。
ただしライラが作っていた100個近いスコーンに関しては神殿に先に送りあちらでどうにかしてもらうことにしたのだ。
結果、ライラのスコーンは神殿で一旦預かり、神殿から求める者に有料で配られることになった。
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エレアがスコーンを求める人に注文数を聞いて、他の店員がその数分紙袋にスコーンを詰めて渡しお金を貰っていると、聖騎士マーカスとユリアの姿を通りの反対側で見かけた。
スコーン店よりも王宮に近い場所に2人で歩いて向かっているのだろう。
美男美女が並んで歩くととても絵になる。
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ユリアに「私の聖女」を断られたことが会長としては胸を打つ出来事だったそうで
【聖女ユリア】という名のワインを近年中に売り出すそうだ。
自分の命を捧げる程の聖女の事を想い続ける聖騎士の想いをイメージしたワイン
監修はマダム・リリー
なるべくユリアと聖騎士マーカスが仲睦まじい姿を周囲に見せつけて、その後聖騎士マーカスがリザルドを去れば二度と会うことはない。
この二度と会うことがない事が会長としては寛容になる理由だった。
(歩くだけであんなに目立つならもしかして馬車からもユリア達の姿を見つけるかもしれないわね・・・)
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