闇堕ちの魔女は案外人気があるようです

里音ひよす

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聖女ライラのほんわかスローライフ リザルド王国神殿編2

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 私は何処に行っても自分らしく生きたいって常に考えてて周囲にも言っているんだけど、その1つに早起きはしないってこと。
 他にも嫌いな物は食べないとか、嫌いな勉強はしないとか、いろいろマイルールがあって、それらをちゃんと叶えてくれる環境に今まで居たから今日みたいな日は本当に最悪だわ。

 前日に神殿に行くのは昼前でいいんじゃないかと話してたのに、まぁお昼前じゃなきゃ嫌って実際には言い切ってたんだけど、リザルドの神殿とこっちの文官達がどうしてもお昼じゃダメだって。
 それにこっちの親善団の責任者も加わって強引に朝に出発なんて決めたの。

 朝に出発ってことはそれよりも早く起きなきゃいけないってことでしょ。

 ホントにあり得ない。

 それで今に至るってわけ。

 無理矢理に寝室に入ってきた侍女達がカーテンを開けても絶対に起きてやらないって構えてたんだけど、それだと髪の毛も服も整えず馬車に放り込むって侍女長ってやつ?が来て、そんな恰好で神殿に行けるわけないじゃない!?

 だから渋々起きたけれど、抗議の意味も込めて何一つ自分で動かない事に決めたの。

 今日はいつになく皆が強引で、起きないって寝たまま何もしなかったら

 「とりあえず着替えだけさせて馬車に乗せましょう」
 なんて言い出して、朝に入浴しなきゃ一日が始まらないっていつも言ってるのに何言い出すの!
 腹が立って

 「入浴しなきゃ絶対に嫌!もう祈らないんだから!!」
 と叫んだら入浴が許されたわ

 ふん!当たり前の事なんだけどね!!

 聖女特製のスコーンを沢山作っていたから疲れてるのに、これ以上私を疲れさせないで欲しいわ。

 ようやく入浴が終わり、ヘアスタイルは・・・ものすごくシンプルにされそうになったので、私が一番可愛く見えるツインテールにしてもらって両方にルビーの髪飾りを沢山付けてもらった。
 ピンクブロンドの髪色に赤がとっても映えるの。

 服装はまたシンプルな白いドレス・・・こんな貧乏くさい服をどうして私が着なきゃいけないのよ。
 私の荷物の中から幾つか白いワンピースを探してきてもらった。

 私は聖女だから白系の服は結構作っているからね。

 リザルドが聖女のドレスを用意するっていうから新しいドレスを楽しみにしていたのに、どんだけ時代が古いタイプかわからないくらい古い型で作ったドレスなんて着るわけないでしょ。

 白いワンピースだけどふんだんにフリルがついていてレースの手袋とか小物もゴージャスなのを選んだわ。
 ひざ丈のワンピースに難色を示されたけれど、皆が私に注目してるのにあんなただ白いだけの地味なドレスなんて冗談じゃないわ。

 出発よりもかなり早くに準備が整ったから、本当はあんな早朝に起こされずにすんだんじゃないかな。
 ムカつく・・・

 数日は神殿で祈りの儀式を行うから私の生活必需品は予備をすでに神殿に送ってもらい、ついでに私が快適に過ごせるように神殿での滞在室を整えるように伝えたんだけど、ちゃんと出来てるかな?
 すごく歴史のある神殿だって誰だか言ってたけれど、歴史があるってことはそれだけ古い事でしょ。
 汚くなければいいんだけど、汚かったら王宮に戻ればいいか。

 手持ち無沙汰になり出された紅茶を飲みながら今日の事を考えていたんだけど、慰問先で配る予定で作っていたスコーンは神殿関係者が強引に持って行ったのよね・・・
 私は自分の手で配りたかったんだけど、そんな時間は用意出来ないなんて言われてさ、神殿で配るなんて言ってぜ~んぶ持って行こうとするの。
 魔物を干からびさせたモノはすでにスコーンに混ぜてしまってたから、それを神殿関係者に見つかったらヤバいのよ。
 全部私が配るって言ってるのにダメだって。
 幾つかは隠せたけど、どれに魔物が干からびたモノが入ってるのかわからないから私の手元にあるのが例のスコーンなのかもわからない。
 ただ神殿関係者が残りのスコーンを持って帰っても何も言ってこないからバレてはないのかな。
 
 バスケットの中に包装したスコーンを入れて、その上から可愛いハンカチでスコーンを隠してみた。
 籠の持ち手の部分がパッとしないから私のレースの白いリボンをつけてみた。

 スコーンが入っている籠と白いワンピースの自分の姿を鏡で確認してみると、うん、可愛い。
 まるでライラのスイーツ店の店員みたいな服装をイメージさせて作らせたものだから、私にすごく似合ってるの。

 今日の予定では神殿まで王宮から馬車で向かい、あっちで少し休憩して貧困街に慰問に行きたいって希望を出してたけど、貧困街で数個のスコーンじゃ私が恥ずかしいじゃない。
 それとも私のスコーンを神殿関係者が貧困街に配ってくれるのかしら?

 そこのところをあとでちゃんと聞いておかないとね。

 そろそろ出発だって連絡があったから私も立ち上がり籠を持った。

 聖女専用の馬車はリザルドの王宮が用意してくれたもので、冬用の馬車の中はとっても暖かいんだって。
 辺りを見回すとアーサー王太子がいたけれど、私の姿を一目見るとまた不愛想に目を逸らされた。
 本当に嫌な奴。
 私の魅力に気付かない奴は皆嫌な奴だけど。

 どうしてアーサールートが上手くいかなかったんだろうって考えたけど、最初の王都での出会いが出来なかったのがきっと一番の原因なのよね。
 あそこで偶然の出会いさえしておけば、私が他国の王太子の婚約者だろうと恋には落ちれたはず。
 これから魔族領に向けて討伐隊を出してもらうためにも仲良くはしたいんだけど、今の状況じゃ難しそうだし、とりあえず私が動けるように状況を変えるしかないわ。

 神殿までの行列が動き出したみたい。
 私の乗る馬車が動き始めたのは外から歓声が上がりだして少ししてだった。
 サムル王国の時もだけど、皆が私に期待して歓声を上げてくれるのは気分が良いわ。

 王都自体が冬の間は人の出入りがあまりないから、冬はそこまで活気はないって話だったけど結構人が多いじゃない。
 小さめの窓から外を眺めてると急に馬車が止まった。

 えっ?

 こういう慶事の行列が止まるのって良くないんじゃないの?
 何かのトラブルだとすれば私の祭事に泥を塗られた感じじゃない?

 そうこうしていると外から叫び声がどんどん重なりだして・・・何が起こってるの?

 「魔物だ!」

 なんて声がしだしたし、魔物!!

 ヤバい!急いで馬車の内鍵を閉めた。
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