時の精霊に選ばれし者〜人狼リタは使命があります!

たからかた

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※私は偉大なはずーだ(ノアム視点)

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「テルシャ、精霊の神殿へ行くのだろーう!?」

私は必死に馬に乗ると、彼女の後ろについていった。

「そうですよ。
魔法研究所を再開するには、魔法を扱う最大の権威である大巫女様に認可をいただかないと。」

テルシャは、当たり前のことを聞くなと言わんばかりの態度ーだ。
こんな生意気な秘書だったーか?
従順で、優秀で、なんでもしてくれた女だったのーに。

「それなら、私が行かねーば!」

「必要ありません。
認可は、私が受けますので。」

「お、お、お前は、そんなこと言っていいのーか!?
お前が受けたところでなんになーる?
魔法の知識なんぞないだろーが。」

「まさか。
ウロン様とあなたが別の研究所で、研究員として働いていた頃から、後輩だった私はウロン様に色々教えてもらっていたのです。
知識はあなたよりあります。」

「のわぁにぃ!?
女嫌いのウロンがお前に教えーた?」

「今だから言いますけど、私はウロン様の恋人でした。
あなたに仕えたのは、彼の研究を守りたかったからです。
あなたに任せていたら、とうに潰れていたでしょう。」

「私の研究所ーだ!!」

「はいはい。」

「私がいたから、ウロンが死んでもあいつの研究そのものは、続けていけたのーだ。
わかったーか。」

「研究所員が優秀でしたからね。
みんなウロン様に基礎を叩き込んでもらえて、それなりに熟練した者たちが、10年前にあなたが研究所を立ち上げる時に、ついてきてくれましたからね。
だから、あなたの無茶なオーダーにも、応じてこれたのです。」

「・・・私が無能だと言いたいのーか?」

「お気づきでしたか。
よかったです。」

生意気、嫌味、こんのムカつく女ーだ!!!

「私より知識があるだーと!?
では、なぜうちの研究所は時が一時停止しなかーった!?
設立からずっと、10年間起きていなーい。
これを私の叡智と言わずになんだと・・・。」

「あの、リタのおかげでしょうね。」

と、テルシャは言ったのーだ。
ゴルボスと同じことを言いやがーって!

「リタは、研究所が設立されたその日に売られてきました。
最初は人狼を使った魔法の実験に使うためだったのに、あなたが靴磨きをさせるために彼女を使ったのでできませんでしたが。
不思議と、彼女が来てから誰も止まらなくなったんです。
そして、彼女がいなくなってみんな止まり出した。
明らかに彼女のおかげです。」

「なーんにもできないあいつに、そんな力があるものーか!!」

「事実は事実でしょ。」

こ、こーの!!

ウロンのやつも、この女のどこがよかったのーだ!!

こんなやりとりをしながら、音無しの森へと着いーた。

ウロンをなんとか蘇らせようと、死者復活の魔法を何度も試しーた場所。

結果は、もちろんダメだったーが。

私は禁忌だの、倫理に反するだのといった物事に興味はなーい。

やるだけやーる。
ダメだったら別の方法を模索すーる。

そこにできると言われた理論があり、技術があるのに、何を躊躇ーう?

あ?
森の生態系が崩れて、滅茶苦茶になった自然はどうするのかーと?

知ったことーか。

荒れたものは、荒れただけのこーと。
そのうち元に戻るだろーう。

そう話していると、何やら大きな音がしていーる。

「立ち止まるな!!
一気に駆け抜けるぞ!!」

と、誰かの声がして、森の奥で草木が灰のように崩れて舞っているのが見えーる。

先客ーか?

そう思っていると、目の前に巨大な灰の塊のような化け物が現れーた。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

私は大声で叫んーだ。

「危ない!
避けてください!」

テルシャが叫ぶと、灰の化け物は私に拳を振り下ろしてきーた。

慌てて馬の手綱を引いて、ギリギリをよけーる。

くそっ!
呪符さえあれーば!!

拳を避けた私を灰の化け物は、ひょいと
つまみあげて、口を開いてきーた。

「ひぃぃぃ!!
わたしはまずいーぞ!!」

そう言ったが、美味しそうに舌なめずりをして、パクッと食われーた。

「ノアム元理事長!!!」

テルシャの悲痛な声が聞こえーる。
・・・少しは後悔したーか?
私の偉大さを失ったことーに・・・。

「残念です。」

と、さらにテルシャが言ーう。
そうだろう、そうだろーう。

灰の化け物が私を飲み込んだ瞬間、灰が崩れて私はそのまま落下しーた。

腰をしたたかに打って、

「うぐぐぐ!!」

と、苦悶の声を上げーた。

「やっぱり、灰の化け物は脆いわよね・・・。
残念だわ。」

と、テルシャが言っていーる。
こら、お前の残念はどっちの残念なのーだ。

は!それより、私の靴が灰まみれではないーか!!

「うわぁぁぁぁー!!
靴が靴が靴がぁぁぁぁー!!!」

こっちの方がショックーだ!!
半狂乱になって、靴を磨ーく。

「うるさいったらないわ・・・。
微風と雫の精霊よ・・・この者の身につけるものを清め、望むままに浄化せよ。
クタン・セ・アリク!」

と、テルシャが呪符を取り出して唱えると、みるみる全身がきれいになる。

「なに!?
呪符があるのーか!?」

私は驚いーた。
この女は全て燃えたと言ったのーに!!

「これは、私物です。
燃えたのは研究所に保管してある分ですから。」

と、テルシャは言うと、馬をどんどん進めていーく。

私は慌てて後を追ーった。

グタグタ言いながらだーが。

「お前も気をつけろよ、リタ。」

森の出口からそんな声が聞こえーる。
リタ?
リタだとーぉ!?

私は猛然と馬を走らせて、神殿の入り口の前の吊り橋へとまろびでーた。
ん?
リタなんぞいないーぞ?
まあいーい。
ここから先は私が先ーだ!!

「まてまーて!!
私が先にいーくー!!」

そう叫んて吊り橋を渡ろうとするが、テルシャに順番だと止められーた。

そんな私の横を、美形の男と一匹の大きな黒い狼がすり抜けていーく。

な、な、なんて綺麗な男だ!
あの狼の飼い主ーか?

もう1人の銀髪の男も、先に行こうとするので、流石に行かせるかと、肩をつかんーだ。

お!

こ、この男ーは!!
あの、研究所を眺めていたあの美形のー男!!

探していたーぞ!!

私の心を奪った男なのーだ。

ん?なぜ逃げるのーだ!?

あ、神殿の中へ入っていーく。

私は、必死に吊り橋を渡り、神殿の巫女に中へ入れろと命じーた。

「帰れ。」

入り口の巫女にそう言われーた。

「私は、はいーる!!」

「帰れと言っている!!」

無理に入ろうとして、稲妻を食らっーた!!

痛い・・・ピリピリすーる。
ボロボロになった私は、隙を伺い、巫女に体当たりすると、そのまま侵入しーた。

けけけ!
グズどもーめ!!

その先に待ち受ける災難を、この時はまだ、知らなかっーた・・・。




















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