鍵をかけて 

たからかた

文字の大きさ
5 / 5

鍵をかけて 第五話

しおりを挟む
 モナはトイレの窓から這い出ると、怖い思いをしながら、アパートの共同廊下に降りた。
横を見ると玄関が見える。モナは必死に走って首にかけた鍵を外すと、鍵穴を見た。
鍵穴がうっすら光り、いつもより大きな鍵穴に変化した。すぐに鍵を挿そうとしたが、震えてなかなか鍵が入らない。そこに声がした。

「そこは外じゃないか。本当にいいのか?」
低い、風の音に似た声だった。
モナは鍵を挿しかけた手を止めた。確かにここは玄関の外だ。本当にこれでいいのだろうか。
玄関の内側からカチカチと歯を鳴らす音が聞こえる。

その時、モナは前に玄関の掃除の手伝いをしていた時に、隣のおばさんに叱られたことを思い出した。
「玄関の掃除をしたとき、ゴミを箒でここに掃わき出したままで、片付けなかったら、隣に住んでるおばさんに、怒られたことがあるの。
ここは、共用廊下だって。
アパートの入り口が玄関で、アパートのお部屋までのこの道は外じゃなくて、家の中と同じだと思いなさい、て。」
モナは自分に言い聞かせるように、喋り続けた。

 モナの言葉を聞いて、カチカチ鳴っていた歯がぴたりと止まった。
そして、
「食わせろ!」
と、大きくて恐ろしい声がして、玄関のドアノブが動く。モナは今度こそ迷いなく鍵穴に鍵を挿し込んだ。
「嫌!絶対嫌だ!!」
モナは思い切り鍵を回して鍵をかけた。

 突然モナは目の前が真っ暗になった。
まさか、間違えたのだろうか?
その時モナは揺さぶられていることに気づいた。
「モナ?モナ?」
母親の声だった。モナが目を開けると、両親が心配そうに見ていた。

「よかった!目を覚ました!」
そう言うと、両親は泣きそうな顔でモナを強く抱きしめた。
モナは何が起こったのかわからなかったが、家の中はいつも通りだった。
ただ、玄関の外が騒がしかった。
「何があったの?」
モナがそう聞いた時、父親の後ろから知らないおじさんがモナを覗き込んだ。

モナが驚いていると、父親がそのおじさんと話し始めた。
「娘は眠っていただけのようです。」
そんな父親の言葉に、その知らないおじさんは、ホッとした様子で応えた。
「いや、運がよかったですな。この近所に連続殺人犯が逃げ込んでいて、自分を見た人間を皆殺しにしてましたから。」

 父親は立ち上がると、声を潜めて話し始めた。
「その、、隣の方は、、。」
知らないおじさんはため息をついて、
「ベランダに出たところで下を歩く犯人と目があったようですな。滅多刺しでしたよ。よく、お嬢さんが見つからなかったものだ。子供でも容赦しない奴ですから。」
と、言った。

「黒沢刑事!おっしゃっていた通り、この家のドアにも血痕がありました。何度か開けようとしたようです。」
そう声がして、黒沢刑事と呼ばれたおじさんは、振り向いた。
モナが怯えた顔をしたので母親が強く抱きしめる。
父親も顔が真っ青になっていた。
「何故、娘がいると?」
と、父親は尋ねた。

 その時、ゲーム機から大きな音がした。
モナは、ハッとなってゲーム機を見る。画面には、ゲームクリアのエンディングが流れていた。
「この音かもしれませんな。」
黒沢刑事が顔を顰めた。
ゲームの画面は製作会社とそのロゴが最後に出てきて、消えたと思ったら次の文字が浮かんできた。
モナは母親にしがみつきながらその文字を読んだ。

『プレイヤー名 モナ
クリアおめでとうございます。
次回のご参加お待ち致しております。
さあ、鍵をあけて。』

 文字を読み終えると、モナは母親から離れ迷うことなくゲーム機の電源を落とし、ソフトを取り出すと、ゴミ箱に投げ捨てた。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。

※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

もじゃ連広報担当

ホラーであり、SFでもあるような?
ハラハラドキドキしながら一気に読めました!

2021.05.06 たからかた

ありがとうございました。
少しでもゾクッとしていただけたら、嬉しいです。

解除

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。