女吸血鬼ー異端のシルヴィア

たからかた

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囚われた法王様

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「シルヴィ・・・いや、シグルト!!」

ランヴァルトが、鍵が開いたままの牢屋に入ってくる。

会いたかった・・・!ランヴァルト!

自然と体が彼の元へと行こうとしたのだけど、片足が重いことに気づく。

「ランヴァルト!!・・・え、重い?」

「グフン!?あー行かないでぇ。まだ怖くて ・・・グフフ。」

私の足にしがみついたままのキャロン法王補佐官は、笑いながらそのまま上に這い上がってこようとする。

気持ち悪い!!

私は奥歯を噛み締めて血を飲むと、怪力でキャロン法王補佐官を振り払う。

「グフン!?もっと腰にしがみつきたかったのにぃー。」

キャロン法王補佐官は、すぐに手を伸ばしてきたけど、私はサッと避けてランヴァルトに駆け寄った。

勢いのまま彼の胸に飛び込んで、しがみつくように抱きつく。

「おぉっと!だ、大丈夫か?」

ランヴァルトの少し戸惑うような、照れるような声。

「えぇ・・・えぇ!!」

彼の温もりに緊張が解けて、本当は怖かったのだと自覚する。

死ぬかと思った・・・。

「一人で戦ったの?」
「無事で何よりだ。」

フェレミスとダグラス神官様も、話しかけてくる。みんな無事みたい。

「大丈夫。でも、みんなどうして?」

私が聞くとランヴァルトが、説明してくれた。

「ダグラス神官様が、エクソシストの長官を呼ばせて、本当の裏切り者を逃したくなければ、ここから出せと説得してくれたんだ。」

そうなんだ・・・。ダグラス神官様の後ろから、見慣れぬ背の高い女性が入ってくる。

この人がエクソシスト長官、みたいね。
凛々しく勇ましい女性、て感じ。

キャロン法王補佐官を投げ飛ばした、レベッカ長官ね。

「先程、高速移動で天井を駆け抜ける吸血鬼とすれ違った。すぐに、エクソシストたちに直接追跡させている。すまなかった、シグルト。」

そう言われて、私はハッとなる。
そうだ!代々法王を祀る陵墓に、ディミトリの主人格の純血がいる!!

そのことをみんなに言うと、驚いて全員で陵墓へと駆けつけることにした。

もちろん、この人も。

「グフーグフー!離せぇ!!」

キャロン法王補佐官も、他の神官に脇を抱えられて、走ってくる。

私はフェレミスと協力して、ランヴァルトとダグラス神官様も一緒に、高速移動で陵墓の前に来た。

これが歴代の法王の棺を収めた陵墓。
大きい!

そこには数人のエクソシストたちもいる。
まさか、イシュポラを追っていた人たち?

「お前たち、イシュポラを追ってきたのか?彼女はどこだ?」

ダグラス神官様に聞かれて、エクソシストたちは青い顔をして彼を見る。

「ほ、法王様を人質にして陵墓の中に入ったのです。ついてきたら、法王様の命はないと言われて・・・。」

「なんだと!!」

中で何が起こってるの!?
そうだ!私の力でみんなを透明化して中に・・・。

ヒタヒタヒタ・・・。足音が聞こえてくる。

「誰か出てくる。」

フェレミスが銃を構えた。
誰なの?イシュポラよね?

「・・・わざわざ出迎えるとはな。」

その時、聞き慣れた声がした。

「ディミトリ!?」

その場にいる全員が、驚きの声をあげる。
いつ?いつからいたの?

やがて陵墓の入り口から、肩に棺を背負ったディミトリが現れる。

彼の後には、石のように動かない法王様を抱えた、イシュポラがついてきた。

「ま、まさか、法王様はお亡くなりに?」

エクソシストたちが気色ばむと、ディミトリは首を捻ってため息をついた。

「ふん、生意気に自ら『石化』しやがった。まあ、法王の石化はベルアニの瘴気にさらせば、7日が限界だ。それくらい待ってやる。」

7日!一週間しかもたない!

「法王様!!法王様を離せ!!」

ダグラス神官様が叫び、その場の全員が彼らに身構える。
イシュポラはそんな私たちに、自分の爪を伸ばしてみせた。

「後ろへ下がりな!法王をこのまま砕いてもいいんだよ!?」

イシュポラが法王様の首に長い爪を立てようとするので、みんな口を引き結んで後ろに下がる。

みんなが動けなくても、私なら!!

奥歯を噛もうとした時、ディミトリが私に向かって片手を広げた。

「何もするな。どんな力を使おうと、我々は法王を盾にするぞ。」

「!!」

ディミトリの声に、イシュポラは冷たい顔で笑うと、法王様を盾のようにかざしてくる。

「祝詞は?」

フェレミスが神官たちに言うと、ディミトリは小馬鹿にしたように、再びため息をついた。

「はぁ。私をその辺の吸血鬼と同列にみなすな。ここで暮らしていた間に、私は祝詞にすら影響を受けづらくなった。さあ、道を開けろ。」

ディミトリとイシュポラは、陵墓から出てくる。

「ディミトリまで入り込むなんて・・・!キャロン法王補佐官、あなたって人は!!」

周りの神官たちに睨まれたキャロン法王補佐官は、青い顔で首を振る。

「グフ?こ、こ、こんな・・・馬鹿な。イシュポラには確かに、あのペンダントを渡して出入りできるようにしていたが、なぜ、ディミトリまで・・・!」

ディミトリは鼻で笑いながら、イシュポラを見る。

「説明してやれ、イシュポラ。」

「えぇ。ディミトリが、シルヴィアにボロボロにされたあの日・・・肉の欠片となって逃げてきた彼を、しばらく私の胎内で養ってたの。」

そう話すイシュポラは、ディミトリの肩にしなだれかかる。

つ、つまり彼女の胎内にいたから、守護のペンダントをつけたイシュポラごと気配が消えてたの?

「イシュポラには感謝している。こうして私は復活できた。ここの神官どもの血も、彼女を通してご馳走になったしな。」

ディミトリは舌なめずりをして、不敵に笑った。
エクソシストの長官も、ダグラス神官様たちも、悔しそうに拳を握る。

ディミトリとイシュポラは、そのままスタスタと法王府の出口へと向かって歩いていった。

法王府の門番である審判の門も、法王様が捕まっている状況を前に、あっさりと道を開けてしまう。

門の外にはグリフィンが舞い降りてきた。

「逃走手段まで準備していたのか・・・!」

ダグラス神官様が歯軋りしながら言うと、ディミトリは笑いながらイシュポラと乗り込んだ。

「私は仲間とベルアニへ向かう。法王を助けたければ、ベルアニまで追ってこい。」

ディミトリは、グリフィンを操って空高く舞い上がる。

私は、裂けたベルアニ奇譚の残りを見つめた。
ほとんどイシュポラに奪われてしまった。
後書きくらいしか、残ってないかも。

「本当の狙いは何だ!?ディミトリ!!」

ダグラス神官様が叫ぶと、頭上から笑い声がする。

「それはすぐにわかる、ダグラス。
あと、追手もかけるなよ。法王が無事ではすまないからな。」

「小賢しい奴め・・・!」

「そう造ったのはお前たちだ。そうだろう?先生。」

グリフィンは大きく羽ばたくと、方向転換をして私たちに背を向ける。

行ってしまう・・・。
その姿がどんどん小さくなって、やがて見えなくなった。

「悔しいが、我々も体制を整えねばならん。
先ずは、怪我人の手当て、それから立て直しを。」

ダグラス神官様が、みんなに向かって話した。
そう・・・だよね。
今は、これ以上のことはできない。

法王様が連れ去られた空は、何事もなかったように静かだった。

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