女吸血鬼ー異端のシルヴィア

たからかた

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アリシアとの再会

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「祭壇に王の指輪があるのか・・・。」

ランヴァルトも、日記を覗きこんでくる。

こんな薄暗い中で、ランヴァルトも文字が見えるなんて。

後ろからフェレミスも、日記を読む。

「しかも、このジャックてやつが、ヴァレンティカの首を刎ねたことで、牙が抜け、真祖が封印されたわけだ。これは、ヴァレンティカが自分から首を斬らせたな。」

自分から?
私がびっくりして、フェレミスを見ると、彼はパチリと片目を閉じた。
それじゃ、やっばり・・・!!

「フェレミスもこの『ジャック』て人が、ヴァレンティカの恋人だったと思う?」

「思うね。ルミカラ教の信者で、彼女を追跡するうちに恋に落ちたんだろう。」

「なら・・・彼も辛かったよね。恋人にそんなことをお願いをされたら。」

私なら、辛くて苦しくてたまらなくなる。
もし、ランヴァルトにお願いされたら、できるかしら・・・。

そ、そりゃ、まだ恋人になってはいないけど。

「・・・他に方法がなかったんだろうな。」

ボソッと言ったのは、ランヴァルトだった。
私たちはランヴァルトに注目する。

彼は少し目を伏せて、

「あらゆる手段を尽くしてもダメで、これしかないと追い詰められたから・・・手をくだしたんだろう。自分よりも大切な人の願いなら、当たり前だ。」

と、言った。
ランヴァルト・・・。

ダグラス神官様も同じ日記を読んで、少し眉をしかめてから、私たちの肩を軽く叩いた。

「さあ、とにかく指輪を見つけて処分しよう。
それに、この日記にあるように、シルヴィアの牙は、真祖の解放に関係あるようだ。長居は無用だ。」

そう、そうよね。今は、ディミトリの目論もくろみを崩さないと。

みんなで小部屋を出て、廊下の最奥に目を凝らすと、大きな扉が見える。

あそこが祭壇のある部屋なのかしら。
あ、行く前に、いつディミトリが来るかわからないから、準備しないと。

「あの、ランヴァルトの時みたいに私の血を飲んでいきませんか?ディミトリや、他の吸血鬼に咬まれるかもしれないでしょ?」

と、私は提案した。
3人は頷いて、それぞれ軽く口の中を切って私の腕から流す血を、一雫ひとしずく飲んでいく。

「んー!甘露!シルヴィア、もっと飲みたいー。腕にしゃぶりついてもいーい?」

フェレミスが、嬉しそうに口を開けてくるので、ランヴァルトがすぐに彼の腕を掴むと、奥に向かって引き摺り出した。

「なんだよ、ランヴァルト!お前は指をしゃぶったろーが!俺だって、いーじゃん!!」

「うるさい!フェレミス!その下心はさっさとしまえ!」

「こらこら、二人とも!静かにしなさい!」

ダグラス神官様も、呆れたように二人の後ろからついていく。

私は苦笑しながら、一番後ろをついていった。
相変わらず、仲良しな二人よね。

やがて最奥の扉に辿り着き、ランヴァルトがゆっくりと扉を開いていく。

中は礼拝堂のようになっていて、大きな祭壇があった。

その祭壇の中心に、小さな箱が置いてある。

ダグラス神官様が祭壇にあがると、その箱を手に取って戻ってきた。

「ありましたか?」

ランヴァルトが尋ねると、ダグラス神官様は箱を見せてくれた。

「箱にベルアニ王国の紋章が刻まれている。間違いないだろう。」

私たちは箱をのぞき込んで、ディミトリに奪われなくてよかったとホッとした。

カチリ。

「何?今の音。」

私が思わず箱に手を伸ばすと、箱が勝手に開いて、中に保管されていた黄金の指輪が輝き始めた。

シュン!

やがて指輪から光のおびが伸びて、ある方向を照らし始める。

「これは・・・!?この方向はベルアニ王国がある方向。棺の場所を指し示しているのか?」

ダグラス神官様は、慌てて指輪の箱の蓋を閉めた。光のおびが途絶えて、静かになる。

「びっくりしたぁ。ダグラス神官様、どうやってこの指輪を処分します?」

フェレミスが、ダグラス神官様に聞いていると、ランヴァルトとダグラス神官様が、さっと顔を緊張させた。

「吸血鬼の気配だ。」

「え!!」

コツコツと足音が聞こえてきた。

誰!?

私は思わず奥歯をみ締めて血を飲むと、みんなと手を繋いで透明化した。

やがて話し声が聞こえ始める。

「もう!体中砂だらけじゃない!!信じられない!!」

この声!!
私は目を見開いて、開いていく扉を見つめた。

「まったく、手のかかる純血のお嬢さんだな。ここまでひつぎかついできてやった俺様に、何の礼もなしか。」

野太い声の巨漢は、ディミトリの側近イァーゴ。その隣にいるのは・・・アリシア!

私の婚約者たちを次々と奪っていった、純血の吸血鬼のアリシア。

なぜ・・・ここに?
ここだと時間がわからないけど、彼女が起きているということは、今は夜ね。

アリシアは、ドレスについた砂を叩いて落としながら、イァーゴに話しかける。

しもべ風情にお礼なんか、いらないでしょ。ねぇ、それよりも約束は守ってもらえるのよね?指輪を奪って真祖の棺を見つけたら、私の牙は抜かない、て。」

「は!ムカつく純血だな。まあ、そういう条件だったからな。お前が教えてくれた、純血どものやかたの情報も確かだった。ディミトリが大喜びだったぞ。」

!?
なんですって?

私は思わず声を出そうとして、慌てて口を真一文字に引き結んだ。

アリシア・・・仲間の・・・みんなのやかたの場所を教えたの!?

アリシアは、嬉しそうな顔でイァーゴの方を見る。

「ディミトリが喜んでくれたの?やだ・・・嬉しい!」

「なんだ、お前もディミトリに惚れたのか。」

「だって、彼はとても強くて、頭が良くて、それでいて、あんなに美形だもの。カリスマ性もあるし。」

「いいのか?奴は、お前が見下すしもべ風情の吸血鬼だぜ?」

「関係ないわ・・・好きになったら気にならないもの。」

「は!まぁ、しっかり点数を稼ぎな。奴の周りは、いつも美女で溢れてる。しっかり役に立たないと、すぐに埋もれて忘れ去られるぜ。」

「まぁ!ご心配なく。あんな格下の女性たちに、この私が負けるわけないもの。」

「・・・みんな、そう言うんだよなぁ。」

イァーゴが頭を掻いて呟く間に、アリシアが祭壇の周りを調べ始める。

透明化した私たちの目の前を通り過ぎるアリシアに、フェレミスが小声でヒューと言いながら、

「うぉっ、このも超絶可愛いじゃん。この小悪魔的な雰囲気がいいねぇ。なぁ、ランヴァルト。」

なんて言い出した。
・・・面白くない話になりそう。
ランヴァルトも、可愛いと思うのかな・・・。

思うよね・・・。
美人で、奔放で、小悪魔的で・・・。

「どうでもいい。」

え・・・?
ランヴァルトは、あっさりと小声で言い切ると、私に話しかけてきた。

「知ってる奴らか?シルヴィア。」

「え、えぇ。じ、女性の方は純血の吸血鬼、アリシア・ジーナ・キュリアヌス。巨漢の男性は、ディミトリの側近の一人、イァーゴよ。」

「ありがとう、シルヴィア。」

ランヴァルトは私と話した後、今度はダグラス神官様に相談し始めた。

「どうします?ダグラス神官様。純血一体と、おそらく新種の吸血鬼一体。去るまで待つか、倒すか。」

「ふむ・・・法王様の居場所を知っているのなら捕獲したいが・・・。それに倒すにしても、ディミトリは側近の死を感知してしまう。もう少し探りを入れよう。」

ダグラス神官様は、そう言って沈黙する。

祭壇の周りをウロウロするアリシアは、次第に指輪が見つからない焦りを表情に滲ませ始めた。

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