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二人の門出
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「長く教会をしていますけど、こんなことは初めてですよ。」
司祭様と、シスターマルティナが、壊れた祭壇を直しながら私たちを見る。
「すみません・・・。」
「時間をかけてでも、修繕には協力します。
司祭様、急いで式を挙げたいのでお願いします。」
私とクリスは平謝りしながら、片付けを手伝っていた。
私はあれからすぐにケシェペのドレスを脱いで、メイド長がお色直し用に持ってきていたドレスに着替えている。
執事のセバスティは気を失っていて、何が起きたのか、全然わかっていなかった。
「とにかく、式をやり直しましょう。
なんとか形だけは整いましたので。」
司祭様がパンパンと手を叩く。
メイド長がシュムシュラのブーケを、控室から持ってきてくれた。
私はそれを受け取ると、今度こそバージンロードを歩く。
セバスティがフラフラしてたけど、最後まで歩いてくれた。
クリスのそばまで行って、指輪を交換し、誓いの言葉を交わす。
「花嫁にキスを。」
司祭様に促されて、クリスと初めてのキスをする。
とても幸せ!
これからもよろしくね、クリス。
本当にケシェペとクリスが、キスまでしなくてよかった。
いくら芝居だとしても、バージンロードを奪われただけでも悔しかったんだから!
それから、ケシェペのドレスを燃やす儀式に入った。
ハンターたちが、それぞれの守護石を片手で握り、魔除けの札を一枚ずつドレスの上に貼りつけていく。
ドレスは2枚ある。
一枚は私が着ていたもの、もう一枚はケシェペが私の花嫁衣装に着替えた時に脱いで置いたもの。
あ、ケシェペは私の花嫁衣装のまま封印されたんだ。
仕方ないけど・・・、少し悔しいな。
そう思っている間に、儀式はどんどん進んでいく。
司祭様が聖水をふりかけ、十字を切って祈りを捧げる。
ハンターたちが続けて荘厳な壺を祭壇の前に据えた。
その中にケシェペのドレスが入れられる。
そして、クリスが蝋燭の炎を中に入れて燃やし始めた。
パチパチと音がし始め、ケシェペの体から流れ出た時と同じ、赤黒い煙が立ち上り始める。
クリスが隣に戻ってきて、そっと肩を抱いてきた。
「終わったよ、ポーリーン。
これで、ケシェペとの繋がりが切れた。」
私は深呼吸をして、その恐ろしいドレスが燃えて灰になるのを見つめていた。
それからまた、ケシェペを封印した鏡は教会の地下に戻された。
ケシェペの魂は不滅らしく、滅ぼすことはできないんだって。
こうやって閉じ込めるのが精一杯。
それだけ恐ろしい魔女なのだそう。
そして、シュムシュラが生えるこの場所は、昔からケシェペの封印の地として最適らしい。
「また、誰かが封印を解いたりしないかな。
私みたいに。」
私はクリスを見上げて尋ねた。
「俺の一族の誰かが、指輪を持って生まれてきたら、可能性がある。
その時はまた、同じようにして封じるしかない。」
クリスは、そう答えた。
「きちんと公表して、みんなに教えていた方がいいんじゃない?
私も知ってたら、きっと・・・。」
私は俯いた。
「あんな、馬鹿なこと・・・、しなかったと思う。」
魔法が使えることは楽しかった。
あのドレスも素敵だった。
何もかも楽しくて最高の日々だったの。
だからこそ、クリスに奪われることを恐れて、早く打ち明けることができなかった。
「かつてケシェペのことも、封印のことも、みんな知っていたんだよ。
でも、長く封印が守られていく間に、廃れて誰も気にしなくなっていった。
シュムシュラちゃ・・・じゃなくて、ポーリーンも知らなかったろ?」
クリスは横目で私を見る。
た、確かにケシェペの名前を聞いても、何をした人かはピンとこなかった。
「それに、俺は君に忠告した。
でも、君は聞かなかった。
こういうことは、我が身に起こらないと、理解できないんだと思う。
だけど・・・。」
クリスはそう言って、私の方に向き直った。
「ポーリーンが、その身に起こったことを伝えていけばいい。
ケシェペの魔力に溺れたらどうなるか。
君の言葉で後世に残すんだ。」
私は反省も込めてクリスを見つめて、頷いた。
「そうね。
怖いことがたくさんある、て。」
と、私が言うと、クリスは優しく微笑んだ。
「ま、奴のおかげでシュムシュラち・・・、いやポーリーンと出会えて、こんなに早く結婚できたんだけどな。」
「もう!
相変わらず私のことシュムシュラちゃん、て呼ぼうとするんだから!」
「今回も、シュムシュラのおかげで助かったんだぜ?
怒るなよ。」
「そ、それはそうだけど!
でも・・・、あなたが地下でケシェペを抱きしめた時は、正直悲しかった。」
私の言葉に、クリスは頭を掻く。
「奴を祭壇の前に引きずり出すのは難しいから、一芝居打っただけだぜ?」
「それはね、頭ではわかってるのよ・・・。
でも、心が追いつかないの。
その後も結婚の儀式で色々してたし。
妬いちゃうの。
どうしても・・・。」
こういうところは、本当にまだ子供だと思う。
大人の女性なら、割り切るべきことだろう。
でも・・・。
「胸が痛いの・・・。
あなたをとられたと思ったから。」
正直に伝える。
「ポーリーン・・・、ここでそれを言うなよ。」
クリスが顔を覆っている。
呆れちゃったんだ。
こんな子供と結婚したのか、て・・・。
周りのハンターたちが、ヒュー!と言ってクリスをからかっている。
メイド長が顔を赤らめて、セバスティが、
「知りませんからね。」
と、言った。
ど、どうして?
どうしてみんなニヤニヤした顔で、私たちを見てるの?
次の瞬間、クリスが私を抱き上げた。
「きゃ!
い、いきなり、何!?」
「今はこれ以上煽るな!
も、もう結婚したんだから、このまま連れて帰る。
セバスティ、メイド長、失礼します。
それから、叔父貴たちもからかってないで、後片付けよろしくな!」
そう言って、教会の外に走り出ると、馬車に飛び乗った。
「クリス?
なに?
怒ってるの?」
「ちが・・・!
あー、もう、その可愛い顔はしまっといてくれよ!
しっかり掴まってろよ!?」
そう言うとクリスはすごい勢いで、馬車を走らせた。
そんなクリスに戸惑いながら、私はテパトの教会が小さくなっていくのを、じっと見る。
もう二度と、あの魔女が蘇ることがありませんように・・・と、願いながら。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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次回作「アホな婚約者よさようなら」を公開中です。
マザコン婚約者に悩まされるヒロインが、さっぱりと縁を切る話です。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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執事のセバスティは気を失っていて、何が起きたのか、全然わかっていなかった。
「とにかく、式をやり直しましょう。
なんとか形だけは整いましたので。」
司祭様がパンパンと手を叩く。
メイド長がシュムシュラのブーケを、控室から持ってきてくれた。
私はそれを受け取ると、今度こそバージンロードを歩く。
セバスティがフラフラしてたけど、最後まで歩いてくれた。
クリスのそばまで行って、指輪を交換し、誓いの言葉を交わす。
「花嫁にキスを。」
司祭様に促されて、クリスと初めてのキスをする。
とても幸せ!
これからもよろしくね、クリス。
本当にケシェペとクリスが、キスまでしなくてよかった。
いくら芝居だとしても、バージンロードを奪われただけでも悔しかったんだから!
それから、ケシェペのドレスを燃やす儀式に入った。
ハンターたちが、それぞれの守護石を片手で握り、魔除けの札を一枚ずつドレスの上に貼りつけていく。
ドレスは2枚ある。
一枚は私が着ていたもの、もう一枚はケシェペが私の花嫁衣装に着替えた時に脱いで置いたもの。
あ、ケシェペは私の花嫁衣装のまま封印されたんだ。
仕方ないけど・・・、少し悔しいな。
そう思っている間に、儀式はどんどん進んでいく。
司祭様が聖水をふりかけ、十字を切って祈りを捧げる。
ハンターたちが続けて荘厳な壺を祭壇の前に据えた。
その中にケシェペのドレスが入れられる。
そして、クリスが蝋燭の炎を中に入れて燃やし始めた。
パチパチと音がし始め、ケシェペの体から流れ出た時と同じ、赤黒い煙が立ち上り始める。
クリスが隣に戻ってきて、そっと肩を抱いてきた。
「終わったよ、ポーリーン。
これで、ケシェペとの繋がりが切れた。」
私は深呼吸をして、その恐ろしいドレスが燃えて灰になるのを見つめていた。
それからまた、ケシェペを封印した鏡は教会の地下に戻された。
ケシェペの魂は不滅らしく、滅ぼすことはできないんだって。
こうやって閉じ込めるのが精一杯。
それだけ恐ろしい魔女なのだそう。
そして、シュムシュラが生えるこの場所は、昔からケシェペの封印の地として最適らしい。
「また、誰かが封印を解いたりしないかな。
私みたいに。」
私はクリスを見上げて尋ねた。
「俺の一族の誰かが、指輪を持って生まれてきたら、可能性がある。
その時はまた、同じようにして封じるしかない。」
クリスは、そう答えた。
「きちんと公表して、みんなに教えていた方がいいんじゃない?
私も知ってたら、きっと・・・。」
私は俯いた。
「あんな、馬鹿なこと・・・、しなかったと思う。」
魔法が使えることは楽しかった。
あのドレスも素敵だった。
何もかも楽しくて最高の日々だったの。
だからこそ、クリスに奪われることを恐れて、早く打ち明けることができなかった。
「かつてケシェペのことも、封印のことも、みんな知っていたんだよ。
でも、長く封印が守られていく間に、廃れて誰も気にしなくなっていった。
シュムシュラちゃ・・・じゃなくて、ポーリーンも知らなかったろ?」
クリスは横目で私を見る。
た、確かにケシェペの名前を聞いても、何をした人かはピンとこなかった。
「それに、俺は君に忠告した。
でも、君は聞かなかった。
こういうことは、我が身に起こらないと、理解できないんだと思う。
だけど・・・。」
クリスはそう言って、私の方に向き直った。
「ポーリーンが、その身に起こったことを伝えていけばいい。
ケシェペの魔力に溺れたらどうなるか。
君の言葉で後世に残すんだ。」
私は反省も込めてクリスを見つめて、頷いた。
「そうね。
怖いことがたくさんある、て。」
と、私が言うと、クリスは優しく微笑んだ。
「ま、奴のおかげでシュムシュラち・・・、いやポーリーンと出会えて、こんなに早く結婚できたんだけどな。」
「もう!
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怒るなよ。」
「そ、それはそうだけど!
でも・・・、あなたが地下でケシェペを抱きしめた時は、正直悲しかった。」
私の言葉に、クリスは頭を掻く。
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でも、心が追いつかないの。
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こういうところは、本当にまだ子供だと思う。
大人の女性なら、割り切るべきことだろう。
でも・・・。
「胸が痛いの・・・。
あなたをとられたと思ったから。」
正直に伝える。
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クリスが顔を覆っている。
呆れちゃったんだ。
こんな子供と結婚したのか、て・・・。
周りのハンターたちが、ヒュー!と言ってクリスをからかっている。
メイド長が顔を赤らめて、セバスティが、
「知りませんからね。」
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ど、どうして?
どうしてみんなニヤニヤした顔で、私たちを見てるの?
次の瞬間、クリスが私を抱き上げた。
「きゃ!
い、いきなり、何!?」
「今はこれ以上煽るな!
も、もう結婚したんだから、このまま連れて帰る。
セバスティ、メイド長、失礼します。
それから、叔父貴たちもからかってないで、後片付けよろしくな!」
そう言って、教会の外に走り出ると、馬車に飛び乗った。
「クリス?
なに?
怒ってるの?」
「ちが・・・!
あー、もう、その可愛い顔はしまっといてくれよ!
しっかり掴まってろよ!?」
そう言うとクリスはすごい勢いで、馬車を走らせた。
そんなクリスに戸惑いながら、私はテパトの教会が小さくなっていくのを、じっと見る。
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