不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

文字の大きさ
31 / 96
三章

打開策

しおりを挟む
「私の聖属性の魔法が効かないなんて……こんな馬鹿な……」

シャーリーは、困惑の表情でゾンビダラボッチを見上げていた。

確かに。ネプォンとの旅でも、彼女は回復役としても、防御の要としても、聖属性の魔法の使い手としても、重宝されていた。

それがこうも通用しないなんて、初めてだ。

「大聖女様、みんな不審な目で私たちを見ています」

戸惑うシャーリーに、お付きの神官たちも不安そうに寄り添う。

「……何が大聖女だ」

誰か一人が言い始めると、周りにも連動していく。まずい空気だ。みんな恐怖のせいで、恐慌状態になりやすいからな。

やがて人々の間から、シャーリーに向かって石が投げられ始めた。
周りの神官がシールドを張って、石の直撃はない。けれど、口々に罵られている。

「役立たずの大聖女め!!」

「そうだ!」

「その通りだ!」

シャーリーは、怒りの表情を滲ませて周りを睨みつける。大聖女としての顔をかなぐり捨てたな。

「生意気な連中ね! ただの庶民のくせに!!」

「なんだと!?」

「本来私は、話もできないくらいの高位の存在。その私に向かって───」

「何が高位だ! 役立たずめ!!」

「言ったわね!!」

風圧が起きて、周りの人たちが吹き飛ぶ。
あいつ、何してんだ!?

そして彼女は、もう一度ゾンビダラボッチに聖属性の魔法を連続してあてた。

流石に奴も怯んでいる。
ほっとしたのか、シャーリーも片手を口にあてて笑いだした。

「ほほほ、ほら、ご覧なさいな! 魔族なんて私の前では……え?」

「グルルル!!」

唸り声をあげたゾンビダラボッチは、ぬっと手を伸ばして、シャーリーを捕まえる。

「きゃあぁー!!」

シャーリーの声が響き渡った。

ゾンビダラボッチが、攻撃を!?
そうか……! 攻撃対象が、シャーリーだけに切り替わったんだ!!

「シャーリー様!!」

お付きの神官たちも、思い思いの聖属性の魔法を放って助けようとするけど、誰一人シャーリーを助けられない。

仕方ない、次は……と思った時だ。

ドドーン!! 

「なんだ!?」

不意に大砲の音が聞こえて、ゾンビダラボッチのお腹に砲弾がめり込む。

この国の軍隊か!?
外敵を排除するため、攻撃を始めたんだ!!

「やめなさい! 標的になるぞぉ!!」

半人半馬の司祭が叫んでいるけど、砲弾は止まらない。

遠くから撃ってきているから、聞こえないんだ!!

ドドン! ドーン!!

ゾンビダラボッチを狙う大砲の弾は、さらに数を増やしていく。

シャーリーを抱えたゾンビダラボッチは、大砲を放つ方に向かって歩き始めた。

標的を変えたのか!?

まずい……! 俺から敵意が逸れては、攻撃抑止も絶対反転も、意味をなさなくなる。

なんとかしないと!!

「ネプォン! ネプォン、助けて!! イルハート! なんとかしてぇ!!」

シャーリーは、持ち去られながら下を向いて叫ぶ。
視線の先に、ネプォンがいた。大魔道士イルハートも静かに見ている。

勇者ネプォンの剣なら、あるいは……。

でも、ネプォンは大魔道士イルハートの肩を抱いて、馬車に乗り込むと、さっさと退散してしまった。

あの野郎! かつての仲間じゃないのか!?

「そんな……裏切り者! 裏切りものぉ!!」

シャーリーの声が、虚しく響き渡った。

ネプォンの馬車が走り去り、シャーリーは無我夢中で悲鳴をあげ続ける。

様子を見ていた聖騎士ギルバートが、槍を空中から取り出してケルヴィン殿下を見た。

「ケルヴィン殿下、聖騎士として、看過するわけにはいきません」

「ああ、わかってる。奴に攻撃が効かない理由がはっきりしない以上、彼女を取り戻すことだけに集中しよう」

ケルヴィン殿下は、俺たちの方を見た。

「アーチロビン、フィオ、ティト、協力を!」

俺たちも頷く。

シャーリーだけの問題じゃない。このままだと、被害が大きくなる。

すると、先ほどの半人半馬の男が、俺たちの方に向かって叫んだ。

「あんたたちも、手を貸してくれ!! ゾンビダラボッチの襲撃を許したのは、大聖女が我が国の神器を動かしてしまったからだ! 元の位置に戻せば、奴を結界内に押し戻せる!!」

神器!?

ケルヴィン殿下は、サッと走りながら俺たちを振り返った。

「行ってくる! ここを頼む!!」 

俺たちは頷いて、歩き去るゾンビダラボッチを睨みつけた。

奴はシャーリーを握ったまま、大砲が飛んでくる方へと向かっている。

止めないと!!

そう思う俺たちの前に、神官の集団があった。

「皆さん、大聖女様をお助けせねば!!」

シャーリーを救えなかったお付きの神官たちは、オロオロしながらゾンビダラボッチの後をついていこうとする。

無理に決まってる!!

俺は、慌てて彼女たちの前に回り込んだ。
俺は顔を知られていないから、彼女たちの前に出ても大丈夫。

「よせ!! 止まるんだ!」

「きゃ!」

「な、なんです? あなた……」

「俺と俺の仲間が向かいますから! 何があっても、手出しはしないでください」

「でも……!」

「自分が標的になりますよ!」

俺が強く言うと、彼女たちは顔を見合わせて黙った。

「アーチロビン、シャーリー様を追って!!」

そこへフィオが駆け寄ってくる。
神官たちは彼女を見て驚いた。

「グ、グライア神官? なぜここに?」

「オベリア様の密命を受けて、ある冒険者の供についたと聞いていますが、こちらの方に帯同されてるの?」

口々にフィオを見た神官たちは、質問責めにしていた。

フィオは真剣な表情で、みんなを見つめる。

「そうです。皆様、街全体にシールドを張りましょう。ゾンビダラボッチの攻撃を、少しでも防ぐのです!!」

「グライア神官……シールド……そうですね!」

「そうだわ……攻撃は効かなくても、守りなら!!」

「この国の司祭が、ゾンビダラボッチを結界に押し戻す神器を用意してくれています。準備が整うまで、持ち堪えましょう」

「ええ!」

「わかったわ、グライア神官。力を合わせて!!」

フィオが、神官たちをまとめ上げて、祈りの書を開く。

まるで大聖女みたいだ、フィオ。

「アーチロビン、行こう!」

聖騎士ギルバートが、俺を呼ぶ。
とりあえずこの場は任せて、ゾンビダラボッチを追うぞ!!

先回りして、大砲を撃つのをやめさせないと!


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。


※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...