不遇弓使いの英雄譚ー無敵スキル『絶対反転』を得て救世主となる

たからかた

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七章

爽やかな朝

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目を覚ますと、朝になっていた。

昨日あまり寝てないから、その分ぐっすり寝たんだな。

幸先がいい。

夢の中で、また龍王に会えたし、神龍酒の目処もついた。

あとは、日の本へと行くだけだな。

ん?

なんだろう……とても柔らかくて温かいものがある。

それに、甘くていい香りまでするぞ。

次第にはっきりしていく意識の中で、正体を確かめようと手を動かして触れてみた。

わ、すごく気持ちがいい。
絶妙な大きさと、弾力と柔らかさ。

この寝袋、こんなオプションついてたっけ……?

うっすらと、目を開けることにする。

「ん……」

目の前で、白い耳がピクピク揺れて、俺の顔をぴちぴち叩いている。

ホワホワして、気持ちいいな……て、ええ!?

俺は目が一気に覚めた。

俺の寝袋の中にフィオがいて、ピッタリくっついて眠っている。

おまけに腰には、しっかり彼女の尻尾が巻きつき、身動きできない。

な……なな!?

え! じゃ、俺が触っていたのは……まさか!
思わず手元を確認して、顔から火が出そうになる。

どおりで柔らかいわけだ。
ご、ごめんなさい!!

慌てて手を離して、寝袋を出ようとした。
───けれど。

「ふぁーあ」

隣の寝袋から、魔導士ティトが背伸びをして目を擦りながら、顔を出してくる。

ケルヴィン殿下も、あくびをしながら起き上がろうとしていた。

やばい!!

俺は慌てて寝袋に潜って、フィオを隠す。

「フィオが、おらんのう」

魔導士ティトが、呑気な声をあげた。
気づかないで、そのままトイレにでも行ってくれ!!

「あれ、本当だ。寝袋にフェイルノだけ残ってるな。お手洗いかもな」

ケルヴィン殿下も、ゴソゴソと俺の寝袋の前を通って魔導士ティトと話している。

こんなところを見られたら、完全に勘違いされる……!!

大体、フィオ、いつ来たんだよ!?

変な汗までダラダラ出てくる。
アワワ……。

「ん、アーチロビン……」

フィオが、モゾモゾと動き出した。待て! 待ってくれ!!

俺は慌てて彼女を抱きしめて、動きを封じる。

「あれ? なあ、ティト。アーチロビンの寝袋、やたらと膨らんでないか?」

「おや、そうじゃのう。ケルヴィン殿下」

ギク!!

「ガー、フィオ、イナイ」

「お、フェイルノ、フィオを知らないか?」

「フィオ、ネボケテタ。アーチロビンノ、ナマエ、ヨンデタ」

「ほーぉ?」

視線が……視線が刺さる。
ど、どうすれば?

「こりゃ!」

バシ! と魔導士ティトが、寝袋を叩いてくる。

さすがにフィオも目を覚まして、驚いていた。

「きゃ!!」

「しー!!」

今更隠しても仕方ないけど、お、俺がやったんじゃないぞ!?

「まったく、アーチロビンも隅におけん奴じゃ!」

俺はその声を聞いて、慌てて顔を出した。

「お、俺は何もしてない!」

「ふ、下手な言い訳を」

「ティト、本当だってば!!」

「よいよい。ワシが昨夜焚き付けたからな。これでフィオも堂々と、大聖女にならんで済むな。貞操の掟を破ったのだから」

「!!」

フィオもそれを聞いて、顔を出す。

「私……覚えてない」

そりゃそうだ。何もしてないんだから!!

俺はキョトンとしたフィオに、なんとか釈明しようと腕を解いた。

「な、な、何もしてないから、フィオ。俺たちは……」

そこへ、オウムのフェイルノがトントンとやって来て、寝袋の中を覗き込んでくる。

「チュウシタ?」

だー! お前はもう、それしか言えねーのかよ!!

「ふふ、そりゃもう、あちこちにしたよな?  アーチロビン」

「やめてください! ケルヴィン殿下。俺は本当に……!」

「あちこち?」

「わー! フィオ! ここで確認するな!」

「いやはや。朝から若いモノは、元気じゃのう」

「ティトも揶揄うなよ!」

あああー、誰か助けてくれ!!
俺が一番混乱してる。

「おはようございます」

ちょうど運良く、テレクサンドラと聖騎士ギルバートが入って来た。

みんなの気が逸れて、テレクサンドラに挨拶を返す。

「おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます、テレクサンドラ」

あれ? そういや、ギルバートの奴、どこで寝たんだろう。

「お前、テレクサンドラと一緒に過ごしたのか?」

ケルヴィン殿下が、聖騎士ギルバートを細目で見つめる。

「警護しておりました!」

彼も負けない。警護ねぇ……。

「一晩中、寝室の外で警護されていらっしゃって。何度もお休みするようお伝えしたんですが……」

テレクサンドラも、少し困ったような顔で笑う。

ま、話題が逸れてよかった。
俺がフィオの方を見ると、フィオは恥ずかしそうにモジモジしている。

可愛い……。
やばい……抱きしめたくなる。
早く起きて離れないと、本当に既成事実をつくっちまう。

「お、起きよう、フィオ」

「え? え、ええ……」

俺はフィオが尻尾を解くのと同時に、寝袋を出た。

他のことをしてないと、おかしくなりそうだ!
と、とりあえずお手洗いを済ませよう……。

それから身支度を整え、もう一度変装して街に繰り出すと、みんなで朝食を取る。

俺は、そこで夢の中の龍王の話をした。

「良かった! 神龍酒のあてがあったなんて」

聖騎士ギルバートは、ニコニコしてパンを頬張る。

「なんとか、運には見放されなかったみたいだな」

ケルヴィン殿下は、紅茶を飲んでソーサーに置いた。

「しかし、いい酒をこちらも持って行かねばな。隣に酒屋があったぞ。覗いてみるか」

魔導士ティトが、デザートを食べ終える。
俺たちは、食事を済ませて隣の店に寄った。
さてと……と!?

俺は慌ててみんなを、店の外に押し出した。

「な、なんだ?」

ケルヴィン殿下が、戸惑っているので、俺は店内を指差す。

ネプォンと、暗黒騎士ヴォルディバがいたのだ。

「迎え酒とはなぁ、ヴォルディバ。悪酔いしたか?」

「ネプォン……俺は昨夜のことよく思い出せねーのよ。あー、頭がいてぇ」

「ふん! それで? あの馬鹿弓使いに、昨日会った奴が、似てたって?」

ギク! 今まで俺の存在を、ネプォンに勘付かれたことはない。

奴に気づかれると、この先やりにくくなる。

暗黒騎士ヴォルディバは、二日酔いの頭を抱えながら思い出すように声を絞り出した。

「おぉ、体格が似てやがった。それだけは思い出せる」

「あいつは、大帝神龍王と一緒に封印されたはずだ」

「おうよ、だから、俺も思い違いかと思ったんだがよ。万が一があるだろ?」

「……確かにな。いくら魔導士ティトや、聖騎士ギルバート・ベルアンナがいたとしても、見習い神官の小娘と王子だけで、ここまで来られるわけがない」

核心に迫ってきやがったな、こいつら。
俺の存在が知れると、じっちゃんが危なくなる。

最初の旅の時に、俺の家に来てるから、じっちゃんのことも知ってるしな。

暗黒騎士ヴォルディバが、気だるそうに頷きながら、何かを思い出したようにネプォンを見た。

「神官といや、シャーリーのことだけどよ、ネプォン」

「……あぁ」

「大聖女オベリア様が、連れ帰ってきたらしいぜ?」

「!?」

「全然会えねぇけど、お前何か知ってるか?」

「いや」

「トゥンカル・ミズ国に送迎したのは、イルハートだったな。あいつも、何も教えねぇんだ」

「そうか」

「シャーリーが、ゾンビ化してるなんて噂もあるんだぜ?」

「へぇ」

「もしもよ、ネプォン」

「ん?」

「シャーリーがゾンビ化していたのが本当で、お前らが見捨てたせいだったとしたら」

「……」

「ただじゃすまねぇからな」

暗黒騎士ヴォルディバと、ネプォンが静かに睨み合う。

いよいよ、二人の間に亀裂が入ったのか?
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