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ネプォン編
勝つのは俺だ
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俺は前と同じように、魔王を倒した勇者としてガルズンアース国に帰還し、王になった。
問題なく日々を過ごす。
もう、馬鹿弓使いもいない今、このまま魔王は俺が死ぬまで復活しないかもな。
はは、はははは。
なんてことない。うまくいったんだ、そうだろ?
「義兄上」
そんな俺を、ヘレン王妃の弟、ケルヴィンが呼び止める。
あーん? 面倒なこいつが残ってたな。
「なんだ? ケルヴィン」
「お尋ねしたいことがあります」
「な、なんだよ」
「魔王は、確かに倒したんですよね?」
「!?」
「各地の魔族が、勢いを落とさないのです。奇跡的にも、この国は守れておりますが、おかしいと思いまして」
「おかしい? 何がおかしいんだ」
「通常ですと、魔王が死んだ後の世界は、魔族の活動が目に見えて落ちます。それぞれの住処に引き籠り、ほとんど人に姿を見せなくなるはずなのに」
「……」
「それに、大聖女オベリア様が、魔王ダーデュラの魂を感じると極秘に伝えてまいりました」
「───は! そんな与太話を信じたのか!?」
「与太話?」
「魔王は倒した! お前もくだらないことを言わずに、引っ込んでろ!!」
俺は、ケルヴィンを別荘に監禁した。
そもそも、こいつが抜け出した時から、面倒が始まったんだ。
始末してもいいが、理由もなくやれない。一応王族だからな。
どうしてやるかな……。
だが、あの野郎、翌日に脱走しやがった。
くそ! さては、魔導士ティトだな!?
あのクソババア、舐めた真似をしやがって!
聞けば、聖騎士ギルバート・ベルアンナも不在。
おまけに、フィオまでいないと聞く。
フィオか。
あいつ、俺が即位してからすぐにここへ来るようにと命令を伝えたのに来なかった。
どこで何しているんだか。
またケルヴィンに同行しているのなら、命令違反で捕まえてやる。
おや? あいつ……。
俺はコソコソと城を出ようとする、イルハートを捕まえた。
「どこに行くんだよ、お前」
「どこ、て。ケルヴィン王子を捕まえるのでしょお?」
「お前が行かなくていい」
「でもぉ」
「この先、何をしようと何も変わらない。馬鹿弓使いもいない、今となっては」
「あら、ぼうやは生きてるわよお?」
「!?」
俺は、思わずイルハートの両肩を掴んだ。
「なに!? どういうことだ!?」
「いったぁい」
「イルハート! どこだ!? どこにあいつはいたんだ!?」
「チェタ鉱山でケルヴィン殿下たちが、ヘカントガーゴイルに襲われてねぇ。倒したのは、ぼうやだったのぉ」
「なんだとぉ!? ま、ま、まさか。大帝神龍王の力を使ってか!?」
「え? なぜ知ってるの?」
「答えろ! 死んだはずのあいつがなぜ……!!」
「彼らの話をこっそり聞いたんだけどぉ」
イルハートによると、馬鹿弓使いが落ちた先は、大帝神龍王の住処に続く隠し通路だったそうだ。
ちょうどその時、シャーリーが忘れた三叉の水晶を届けに来ていたフィオが偶然巻き込まれて、一緒に滑落。
落ちる最中に、はずみで水晶が胸に捩じ込まれて、馬鹿弓使いは大帝神龍王と同化を果たしたそうだ。
「な、な、な……!」
これじゃ、前と同じ。結果は同じじゃないか!
「それで、驚いたのはもう一つ。ぼうやはね、神器を持っていたのぉ」
「は!?」
「神弓を使ってたもの。ヘカントガーゴイルもあっという間に倒されてたぁ」
なんであいつが神器をもてた!?
───あ! そうか。俺は神器を召喚するあの剣も一緒に、崖の下に落としたんだ。
あいつ、律儀に拾ってやがったのか!?
ちくしょう……クソ野郎!!
「まさか、それじゃ……あの馬鹿弓使いとフィオもいい仲になってたんじゃないだろうな?」
「よくわかるわねぇ。恋人同士になってたわよぉ?」
ぬぐあぁぁぁぁー!!!
俺が頭を抱えてのたうち回ると、イルハートはさっさといなくなっていた。
え、おい、待てよ。お前までいなくなるんじゃねーよ!!
イルハート、イルハートぉぉ!!
ドクン!!
心臓が激しく動いた。
あ……く……。
息が……できない……。
俺の手が、目の前でミイラのように干からびていく。
あ、ああ……!?
「時間だな」
目の前にタインシュタ・フランが現れた。
転送の魔法でとんできたのか。
「こ……ごれは、どうしたん……だ」
「命を対価に時を戻しただろ? ここで、お前は終わるのだ」
「な、なぜ、こんな……早すぎ……る」
「魔王はグルレスの英雄が倒す。神器も無事に手にしている。前よりもずっと早くに、英雄の座を引き継いだのだ。神々にとっても、お前は用無しになった」
「い……いやだ……」
「せめて魔王を倒していれば、よかったのにな」
「剣が……折れた。俺のせいじゃ……ない」
ガクン!
膝から下がなくなって、体が風化していく。
「メンテナンスを受けなかったのか? ニャルパンの鍛冶屋に行くチャンスはあったはずだぞ?」
「メンテナンス……そんなものなくても……天運が」
「やるべきことをやらねば、安全に分岐しないと教えたはずだがな」
「助けて……助け……」
「リスクはわかっていたはずだ。あとは自己責任だ」
「元に……戻し……元……も……」
「元に? 後悔しないな?」
「……助け……」
「ククク……」
奴の不気味な笑い声を最後に、俺は意識を失った。
終わった……俺は終わったんだ。
「ねぇ、代わってよ」
「まだよぉ」
シャーリーとイルハートの声が聞こえる。
死んだ後に、こいつらの声が聞こえるなんて。
この、薄情な女ども!
呪ってや……!
そこで目が覚めた。
あれ?
「あら、目が覚めたのね」
シャーリーが覗き込んでくる。
隣にはイルハートが立っていた。
な、なんだ!?
俺は気がつくと起き上がった。
体はなんともなっていない。
どういうことだ?
目の前には、タインシュタ・フランがいる。
「いい夢だっただろ?」
「は? 夢!?」
「命を対価に時を戻す前に、シュミレーションを見せた。後からお前の怨念に付き纏われるのは迷惑だからな。納得させた上で実行するためだ」
「夢……か!」
「どうだ。やるか?」
「シュミレーションと実際は、どれくらい違う?」
「違いは1%」
「!!」
ほとんど違わねーのか。
「俺の命が終わるのも、ケルヴィンが逃げ出したあの後か?」
「そうなるな」
なんだよ、それ。
馬鹿弓使いは葬れず、フィオも手に入らない。
それで俺は、即位後に夭折してしまう。
「馬鹿弓使いを崖から落とさなくても、剣のメンテナンスを受けたとしても変わらないのか」
「剣のメンテナンスを受けていれば、魔王を倒すのはお前だった、というだけだな。命を落とすのは変わらない」
「……」
「やるか?」
「もういい」
「賢明だな」
俺は、ふと壁にかけられた鏡を見た。顔に、たくさん落書きがしてある。
「あ!」
「きゃははは!」
「ふふふふ!」
イルハートとシャーリーが、腹を抱えて笑っていた。
アホらしい、このバカ女ども!!
いつの間に、仲良くなってんだか!
「お前らにも、描いてやる!」
「きゃー!」
「いや!! 押さないで! シャーリー!」
ドタドタと、逃げる彼女たちを追いかけ回す。
その時だ。
俺たちの足元から、悪霊が湧き出てきた。
しまった!!
ここは、ヘイムニルブ!
走ってはいけない場所。
その後のことは……思い出したくない。
もう、体も動かない。
シャーリーや、イルハートも似たようなものだろう。
タインシュタ・フランの声が、遠くから聞こえてくる。
「やれやれ、近々外伝を執筆しようとしていたが、この顛末で売れるかな。なあ、落ちぶれた英雄たちよ」
「も……戻せ……時を……」
「ネプォン、諦めろ。これは現実だ。回復するまで、しばらく寝てろ」
「たの……む」
「対価がないと言ったろ」
「シャ……リーと、イル……ハートの命を……対価に……」
「いや……ネプォン」
「この……人……でな……しぃ」
この状況で、ぐちぐち言うんじゃねーよ。
もう一度戻れば、今度こそ!
タインシュタ・フランは、大きくため息をついた。
「よかろう。だが、記憶を持って戻ることはできん。この二人の命なら、せいぜい大帝神龍王と戦うあたりまでしか戻れんからな」
「あそ……こか。すべ……ての始まり……の」
「お前の意識だけを過去に飛ばす。また同じことの繰り返しになると思うがな。無限のループに落ちるぞ? 元英雄」
「今度……こそ、変えて……」
「ふん、そう言ってお前は……もう……数百年……同じ……」
タインシュタ・フランの声が遠ざかっていく。
みてろよぉ! 今度こそ変えてやる。
今度こそ……!
「ちっ! やってらんねーよ!!」
俺は自分の声で、意識を取り戻した。あ、ここは? 今、何してるんだっけ。
そうか、大帝神龍王を仕留めにきていたんだ。
シャーリーが、三叉の水晶を取り出し、封印のための依代となる生贄が必要だと口にしている。
「ちょうどいい。依代ならこいつだ」
俺は馬鹿弓使いを押さえつけ、三叉の水晶を胸に埋めさせた。
大帝神龍王に向かって奴を突き飛ばし、笑いながら叫ぶ。
「俺は魔王ダーデュラを倒し、この国の姫と結婚して国王になる男だ!! お前なんかにかまってられるかよ!!」
そうだ。俺は王になる。お前と違って、俺は選ばれた英雄だからな!
はは……ひゃはははは!
はははは! なんだろうな、既視感があるぜ。
なんだったかな、思い出せない。
まあ、いいや、俺の勝ちだ、そうだろ!?
俺の勝ちだ、俺の勝ち、俺の、俺の……。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。これで、この物語は完結です。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
次回作は『人身御供の乙女は、放り込まれた鬼の世界で、超絶美形の鬼の長に溺愛されて人生が変わりました』です。現在投稿しております。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
問題なく日々を過ごす。
もう、馬鹿弓使いもいない今、このまま魔王は俺が死ぬまで復活しないかもな。
はは、はははは。
なんてことない。うまくいったんだ、そうだろ?
「義兄上」
そんな俺を、ヘレン王妃の弟、ケルヴィンが呼び止める。
あーん? 面倒なこいつが残ってたな。
「なんだ? ケルヴィン」
「お尋ねしたいことがあります」
「な、なんだよ」
「魔王は、確かに倒したんですよね?」
「!?」
「各地の魔族が、勢いを落とさないのです。奇跡的にも、この国は守れておりますが、おかしいと思いまして」
「おかしい? 何がおかしいんだ」
「通常ですと、魔王が死んだ後の世界は、魔族の活動が目に見えて落ちます。それぞれの住処に引き籠り、ほとんど人に姿を見せなくなるはずなのに」
「……」
「それに、大聖女オベリア様が、魔王ダーデュラの魂を感じると極秘に伝えてまいりました」
「───は! そんな与太話を信じたのか!?」
「与太話?」
「魔王は倒した! お前もくだらないことを言わずに、引っ込んでろ!!」
俺は、ケルヴィンを別荘に監禁した。
そもそも、こいつが抜け出した時から、面倒が始まったんだ。
始末してもいいが、理由もなくやれない。一応王族だからな。
どうしてやるかな……。
だが、あの野郎、翌日に脱走しやがった。
くそ! さては、魔導士ティトだな!?
あのクソババア、舐めた真似をしやがって!
聞けば、聖騎士ギルバート・ベルアンナも不在。
おまけに、フィオまでいないと聞く。
フィオか。
あいつ、俺が即位してからすぐにここへ来るようにと命令を伝えたのに来なかった。
どこで何しているんだか。
またケルヴィンに同行しているのなら、命令違反で捕まえてやる。
おや? あいつ……。
俺はコソコソと城を出ようとする、イルハートを捕まえた。
「どこに行くんだよ、お前」
「どこ、て。ケルヴィン王子を捕まえるのでしょお?」
「お前が行かなくていい」
「でもぉ」
「この先、何をしようと何も変わらない。馬鹿弓使いもいない、今となっては」
「あら、ぼうやは生きてるわよお?」
「!?」
俺は、思わずイルハートの両肩を掴んだ。
「なに!? どういうことだ!?」
「いったぁい」
「イルハート! どこだ!? どこにあいつはいたんだ!?」
「チェタ鉱山でケルヴィン殿下たちが、ヘカントガーゴイルに襲われてねぇ。倒したのは、ぼうやだったのぉ」
「なんだとぉ!? ま、ま、まさか。大帝神龍王の力を使ってか!?」
「え? なぜ知ってるの?」
「答えろ! 死んだはずのあいつがなぜ……!!」
「彼らの話をこっそり聞いたんだけどぉ」
イルハートによると、馬鹿弓使いが落ちた先は、大帝神龍王の住処に続く隠し通路だったそうだ。
ちょうどその時、シャーリーが忘れた三叉の水晶を届けに来ていたフィオが偶然巻き込まれて、一緒に滑落。
落ちる最中に、はずみで水晶が胸に捩じ込まれて、馬鹿弓使いは大帝神龍王と同化を果たしたそうだ。
「な、な、な……!」
これじゃ、前と同じ。結果は同じじゃないか!
「それで、驚いたのはもう一つ。ぼうやはね、神器を持っていたのぉ」
「は!?」
「神弓を使ってたもの。ヘカントガーゴイルもあっという間に倒されてたぁ」
なんであいつが神器をもてた!?
───あ! そうか。俺は神器を召喚するあの剣も一緒に、崖の下に落としたんだ。
あいつ、律儀に拾ってやがったのか!?
ちくしょう……クソ野郎!!
「まさか、それじゃ……あの馬鹿弓使いとフィオもいい仲になってたんじゃないだろうな?」
「よくわかるわねぇ。恋人同士になってたわよぉ?」
ぬぐあぁぁぁぁー!!!
俺が頭を抱えてのたうち回ると、イルハートはさっさといなくなっていた。
え、おい、待てよ。お前までいなくなるんじゃねーよ!!
イルハート、イルハートぉぉ!!
ドクン!!
心臓が激しく動いた。
あ……く……。
息が……できない……。
俺の手が、目の前でミイラのように干からびていく。
あ、ああ……!?
「時間だな」
目の前にタインシュタ・フランが現れた。
転送の魔法でとんできたのか。
「こ……ごれは、どうしたん……だ」
「命を対価に時を戻しただろ? ここで、お前は終わるのだ」
「な、なぜ、こんな……早すぎ……る」
「魔王はグルレスの英雄が倒す。神器も無事に手にしている。前よりもずっと早くに、英雄の座を引き継いだのだ。神々にとっても、お前は用無しになった」
「い……いやだ……」
「せめて魔王を倒していれば、よかったのにな」
「剣が……折れた。俺のせいじゃ……ない」
ガクン!
膝から下がなくなって、体が風化していく。
「メンテナンスを受けなかったのか? ニャルパンの鍛冶屋に行くチャンスはあったはずだぞ?」
「メンテナンス……そんなものなくても……天運が」
「やるべきことをやらねば、安全に分岐しないと教えたはずだがな」
「助けて……助け……」
「リスクはわかっていたはずだ。あとは自己責任だ」
「元に……戻し……元……も……」
「元に? 後悔しないな?」
「……助け……」
「ククク……」
奴の不気味な笑い声を最後に、俺は意識を失った。
終わった……俺は終わったんだ。
「ねぇ、代わってよ」
「まだよぉ」
シャーリーとイルハートの声が聞こえる。
死んだ後に、こいつらの声が聞こえるなんて。
この、薄情な女ども!
呪ってや……!
そこで目が覚めた。
あれ?
「あら、目が覚めたのね」
シャーリーが覗き込んでくる。
隣にはイルハートが立っていた。
な、なんだ!?
俺は気がつくと起き上がった。
体はなんともなっていない。
どういうことだ?
目の前には、タインシュタ・フランがいる。
「いい夢だっただろ?」
「は? 夢!?」
「命を対価に時を戻す前に、シュミレーションを見せた。後からお前の怨念に付き纏われるのは迷惑だからな。納得させた上で実行するためだ」
「夢……か!」
「どうだ。やるか?」
「シュミレーションと実際は、どれくらい違う?」
「違いは1%」
「!!」
ほとんど違わねーのか。
「俺の命が終わるのも、ケルヴィンが逃げ出したあの後か?」
「そうなるな」
なんだよ、それ。
馬鹿弓使いは葬れず、フィオも手に入らない。
それで俺は、即位後に夭折してしまう。
「馬鹿弓使いを崖から落とさなくても、剣のメンテナンスを受けたとしても変わらないのか」
「剣のメンテナンスを受けていれば、魔王を倒すのはお前だった、というだけだな。命を落とすのは変わらない」
「……」
「やるか?」
「もういい」
「賢明だな」
俺は、ふと壁にかけられた鏡を見た。顔に、たくさん落書きがしてある。
「あ!」
「きゃははは!」
「ふふふふ!」
イルハートとシャーリーが、腹を抱えて笑っていた。
アホらしい、このバカ女ども!!
いつの間に、仲良くなってんだか!
「お前らにも、描いてやる!」
「きゃー!」
「いや!! 押さないで! シャーリー!」
ドタドタと、逃げる彼女たちを追いかけ回す。
その時だ。
俺たちの足元から、悪霊が湧き出てきた。
しまった!!
ここは、ヘイムニルブ!
走ってはいけない場所。
その後のことは……思い出したくない。
もう、体も動かない。
シャーリーや、イルハートも似たようなものだろう。
タインシュタ・フランの声が、遠くから聞こえてくる。
「やれやれ、近々外伝を執筆しようとしていたが、この顛末で売れるかな。なあ、落ちぶれた英雄たちよ」
「も……戻せ……時を……」
「ネプォン、諦めろ。これは現実だ。回復するまで、しばらく寝てろ」
「たの……む」
「対価がないと言ったろ」
「シャ……リーと、イル……ハートの命を……対価に……」
「いや……ネプォン」
「この……人……でな……しぃ」
この状況で、ぐちぐち言うんじゃねーよ。
もう一度戻れば、今度こそ!
タインシュタ・フランは、大きくため息をついた。
「よかろう。だが、記憶を持って戻ることはできん。この二人の命なら、せいぜい大帝神龍王と戦うあたりまでしか戻れんからな」
「あそ……こか。すべ……ての始まり……の」
「お前の意識だけを過去に飛ばす。また同じことの繰り返しになると思うがな。無限のループに落ちるぞ? 元英雄」
「今度……こそ、変えて……」
「ふん、そう言ってお前は……もう……数百年……同じ……」
タインシュタ・フランの声が遠ざかっていく。
みてろよぉ! 今度こそ変えてやる。
今度こそ……!
「ちっ! やってらんねーよ!!」
俺は自分の声で、意識を取り戻した。あ、ここは? 今、何してるんだっけ。
そうか、大帝神龍王を仕留めにきていたんだ。
シャーリーが、三叉の水晶を取り出し、封印のための依代となる生贄が必要だと口にしている。
「ちょうどいい。依代ならこいつだ」
俺は馬鹿弓使いを押さえつけ、三叉の水晶を胸に埋めさせた。
大帝神龍王に向かって奴を突き飛ばし、笑いながら叫ぶ。
「俺は魔王ダーデュラを倒し、この国の姫と結婚して国王になる男だ!! お前なんかにかまってられるかよ!!」
そうだ。俺は王になる。お前と違って、俺は選ばれた英雄だからな!
はは……ひゃはははは!
はははは! なんだろうな、既視感があるぜ。
なんだったかな、思い出せない。
まあ、いいや、俺の勝ちだ、そうだろ!?
俺の勝ちだ、俺の勝ち、俺の、俺の……。
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読んでくださってありがとうございました。これで、この物語は完結です。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
次回作は『人身御供の乙女は、放り込まれた鬼の世界で、超絶美形の鬼の長に溺愛されて人生が変わりました』です。現在投稿しております。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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この作品は感想を受け付けておりません。
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