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番外編 ライオネル視点(本編)
隻眼の侍従
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俺が片目を失ったことをきっかけに、シャトラ国の跡目争いから逃れてこの国へ来て数年。
俺は主である左大臣から密命を受けた。
ある女性の醜聞を作り出せと。
その女性の名前はレモニー・ケル。
王宮内で権力闘争を繰り広げる相手である、右大臣の一人娘で、何かと有名な女性だった。
情報収集も兼ねて、人に尋ねたりして人となりを調べていく。
とにかく性格が悪いと言われ、周りから嫌われていたので、醜聞を作り出すのは簡単だった。
労せずに次々と仕掛けていき、右大臣が火消しに回ってその力を削ぐことに大いに貢献した俺は、左大臣の信頼を得ることができた。
内心、馬鹿馬鹿しくて嫌気もさしていたが、身内同士が血で血を洗う故国の権力闘争に比べたら、まだ、マシなほうだった。
この時俺は、実はレモニー本人に直に会ったことはなかった。
遠くから姿を見る程度。
その程度で醜聞が一人歩きするほど、彼女は酷い女性と言われていた。
そんな時だ。
一人のある女性が外の世界からやってきたのは。
その瞬間、俺は不思議な役目と力を得た。
裏シナリオのゲートキーパーとしての、管理者の役目だった。
その力のおかげで、この世界がプログラムによるネットの配信ゲームの世界であること、自分もそのキャラクターの一人に過ぎないことを知った。
受け入れるも何もない。
そういうものとして、自動的に俺は行動した。
そして左大臣から、ティモシー王子の侍従となり、彼の恋人の女性ライカを手に入れる計画を実行するよう命令を受ける。
そのために利用するのが、また、あのレモニー・ケルだった。
ティモシー王子に恋する彼女を、ライカの敵として祭り上げて、ライカをヒロインとして舞台に立たせて、輝かせるための悪役にすること。
・・・またかと思ったが、今度は新しい力をもとにレモニーの動向を探りながら、計画を立てていく。
この力はすごい。
距離や時間も関係なく、全てを知り、把握できる。
見たいと思えばその光景すら、頭の中に映し出すことができるのだ。
当然彼女を多く知るようになるのだが、知れば知るほど、彼女は普通の女性だった。
もちろん、甘やかされた故のわがままさは持っていたが、周りが言うほどの悪女ではない。
この程度、その辺にいるくらいの相手だった。
俺は、次第にそんなレモニーに執着するようになっていく。
彼女を悪役として見えるように計画は立てて実行するが、彼女が立場を悪くするたびに、胸が痛むようになってきた。
こんなことはおかしい。
俺はプログラムされた人形に過ぎないはずだ。
データにアクセスして理由を探る。
なんと、俺はレモニーの前世の恋人で、領主だったライオネラの生まれ変わりとして、彼女を愛するようにプログラムされていたのだ。
まあ、愛するとはいえ、所詮はそう見えるよう、そうなるよう、シナリオ通りに動くだけなのだが。
俺と言う存在は、他のプレイヤーのゲームにも存在していて、他のライオネルたちも、次々とレモニーを愛して、プレイヤーが基準を満たせなければ、処刑台へとレモニーを送りだしていた。
かつて現実の世界の領主ライオネラがレモニーの前世と言われるレモニカを、その手で処刑台へと送り出したように。
制作者側の意図だと思われるが、人形の俺には覚えのない話だ。
彼女を愛したことも、所詮そうなるように敷かれたレールを走っているだけ。
淡々と目的を果たしていく。
そんなある日のこと。
プレイヤーライカとティモシー王子が、婚約パレードを行う日に、このゲームのシステムに異常が生じた。
制作者側も何が起きたのかわからず、他のプレイヤーのライオネルたちのところでは、起きていない現象のようだ。
・・・そういえば俺もなんだか、いつもと違う。
昨日までの俺と何かが違う。
なんだ・・・?
とりあえず決められた役目を果たせと、制作者側から指示が出る。
その日も、俺はレモニーの屋敷で、毒入りのワインを仕掛けて戻る傍ら、管理者の力でレモニーが婚約パレードをどうしようと思っているのか、覗きみていた。
そしてそれを話そうとするレモニーが視界に入った途端、俺は強烈な思慕の念を抱いた。
今までのレモニーと違う!
それだけは、はっきりわかった。
ヒロインのライカと同じ、生身の人間に感じるもの。
プレイヤー?
いや・・・違う。
そして自分自身もそれまでにない、心の動きに戸惑っていた。
そもそもプログラムに過ぎない俺が、なぜこんな気持ちになる?
これまで、ここまでの気持ちをレモニーに持ったことはない。
むしろ、レモニーより、プレイヤーライカの方を気にしていたくらいなのに。
なんだ・・・何が起こった?
これでは、自分も生身の人間みたいじゃないか。
管理者としての力は行使できるものの、他のキャラクターたちも異常な数値を示し始めていた。
プレイヤーライカと同じように、一人一人が命を持ったとしか思えない。
制作者側も、何かし始めたようだが、こちらになんの修正も起きない。
それでも時間は過ぎていくので、俺はレモニーの動向を探り続けた。
新しいレモニーは、婚約パレードをぶち壊す指示を出さず、おまけに毒入りワインの確認をメイドのシャーリーンに命じていた。
このシナリオを知っている!?
やはりプレイヤーか?
それにしては、キャラクターとしての数値は、この世界の出入りを示していない。
だとすれば・・・転生?
ゲームの世界を舞台にした異世界への転生はよくあるそうだが、プレイヤーが他のプレイヤーがプレイ中のゲームの世界に直に転生する話は聞いたことがない。
彼女は何者だ?
なぜ俺はこんな気持ちになる?
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、お気に入り登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
俺は主である左大臣から密命を受けた。
ある女性の醜聞を作り出せと。
その女性の名前はレモニー・ケル。
王宮内で権力闘争を繰り広げる相手である、右大臣の一人娘で、何かと有名な女性だった。
情報収集も兼ねて、人に尋ねたりして人となりを調べていく。
とにかく性格が悪いと言われ、周りから嫌われていたので、醜聞を作り出すのは簡単だった。
労せずに次々と仕掛けていき、右大臣が火消しに回ってその力を削ぐことに大いに貢献した俺は、左大臣の信頼を得ることができた。
内心、馬鹿馬鹿しくて嫌気もさしていたが、身内同士が血で血を洗う故国の権力闘争に比べたら、まだ、マシなほうだった。
この時俺は、実はレモニー本人に直に会ったことはなかった。
遠くから姿を見る程度。
その程度で醜聞が一人歩きするほど、彼女は酷い女性と言われていた。
そんな時だ。
一人のある女性が外の世界からやってきたのは。
その瞬間、俺は不思議な役目と力を得た。
裏シナリオのゲートキーパーとしての、管理者の役目だった。
その力のおかげで、この世界がプログラムによるネットの配信ゲームの世界であること、自分もそのキャラクターの一人に過ぎないことを知った。
受け入れるも何もない。
そういうものとして、自動的に俺は行動した。
そして左大臣から、ティモシー王子の侍従となり、彼の恋人の女性ライカを手に入れる計画を実行するよう命令を受ける。
そのために利用するのが、また、あのレモニー・ケルだった。
ティモシー王子に恋する彼女を、ライカの敵として祭り上げて、ライカをヒロインとして舞台に立たせて、輝かせるための悪役にすること。
・・・またかと思ったが、今度は新しい力をもとにレモニーの動向を探りながら、計画を立てていく。
この力はすごい。
距離や時間も関係なく、全てを知り、把握できる。
見たいと思えばその光景すら、頭の中に映し出すことができるのだ。
当然彼女を多く知るようになるのだが、知れば知るほど、彼女は普通の女性だった。
もちろん、甘やかされた故のわがままさは持っていたが、周りが言うほどの悪女ではない。
この程度、その辺にいるくらいの相手だった。
俺は、次第にそんなレモニーに執着するようになっていく。
彼女を悪役として見えるように計画は立てて実行するが、彼女が立場を悪くするたびに、胸が痛むようになってきた。
こんなことはおかしい。
俺はプログラムされた人形に過ぎないはずだ。
データにアクセスして理由を探る。
なんと、俺はレモニーの前世の恋人で、領主だったライオネラの生まれ変わりとして、彼女を愛するようにプログラムされていたのだ。
まあ、愛するとはいえ、所詮はそう見えるよう、そうなるよう、シナリオ通りに動くだけなのだが。
俺と言う存在は、他のプレイヤーのゲームにも存在していて、他のライオネルたちも、次々とレモニーを愛して、プレイヤーが基準を満たせなければ、処刑台へとレモニーを送りだしていた。
かつて現実の世界の領主ライオネラがレモニーの前世と言われるレモニカを、その手で処刑台へと送り出したように。
制作者側の意図だと思われるが、人形の俺には覚えのない話だ。
彼女を愛したことも、所詮そうなるように敷かれたレールを走っているだけ。
淡々と目的を果たしていく。
そんなある日のこと。
プレイヤーライカとティモシー王子が、婚約パレードを行う日に、このゲームのシステムに異常が生じた。
制作者側も何が起きたのかわからず、他のプレイヤーのライオネルたちのところでは、起きていない現象のようだ。
・・・そういえば俺もなんだか、いつもと違う。
昨日までの俺と何かが違う。
なんだ・・・?
とりあえず決められた役目を果たせと、制作者側から指示が出る。
その日も、俺はレモニーの屋敷で、毒入りのワインを仕掛けて戻る傍ら、管理者の力でレモニーが婚約パレードをどうしようと思っているのか、覗きみていた。
そしてそれを話そうとするレモニーが視界に入った途端、俺は強烈な思慕の念を抱いた。
今までのレモニーと違う!
それだけは、はっきりわかった。
ヒロインのライカと同じ、生身の人間に感じるもの。
プレイヤー?
いや・・・違う。
そして自分自身もそれまでにない、心の動きに戸惑っていた。
そもそもプログラムに過ぎない俺が、なぜこんな気持ちになる?
これまで、ここまでの気持ちをレモニーに持ったことはない。
むしろ、レモニーより、プレイヤーライカの方を気にしていたくらいなのに。
なんだ・・・何が起こった?
これでは、自分も生身の人間みたいじゃないか。
管理者としての力は行使できるものの、他のキャラクターたちも異常な数値を示し始めていた。
プレイヤーライカと同じように、一人一人が命を持ったとしか思えない。
制作者側も、何かし始めたようだが、こちらになんの修正も起きない。
それでも時間は過ぎていくので、俺はレモニーの動向を探り続けた。
新しいレモニーは、婚約パレードをぶち壊す指示を出さず、おまけに毒入りワインの確認をメイドのシャーリーンに命じていた。
このシナリオを知っている!?
やはりプレイヤーか?
それにしては、キャラクターとしての数値は、この世界の出入りを示していない。
だとすれば・・・転生?
ゲームの世界を舞台にした異世界への転生はよくあるそうだが、プレイヤーが他のプレイヤーがプレイ中のゲームの世界に直に転生する話は聞いたことがない。
彼女は何者だ?
なぜ俺はこんな気持ちになる?
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
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※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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