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第二部
誰がために筆は舞う 仙界編 第十五話
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それから数年が経ち、鶴毘は無事に天仙まで昇格できた。
人界にも自由に来れるようになって、今は一緒に暮らしている。
鶴毘は仙人だから、こちらでは髪を黒く染めて薬師として過ごしている。
薬草とかの知識が凄いから。
ん?
あぁ、お医者様にならないのか、て?
彼は素敵な人だから、たちまち町娘たちの憧れの的みたいになって、恋文が絶えない。
そんな人が医師になったら、どんな誘惑されるかわかったもんじゃないから、私が阻止したの。
大奥の女性たちも一目見たいと噂になって、うちの周りに大挙して押し寄せるようになったのよ。
将軍様が流石にお怒りになって、鶴毘を捕まえようとしたり、色々あったなあ。
でも、鶴毘の作る薬が将軍様の持病に一番効くらしく、薬を提供する代わりにお目こぼしいただいたの。
最近は鶴毘の姿を見たお侍さんからも、恋文がくるようになって、鶴毘も驚いてた。
やれやれ、モテる伴侶を持つと大変だ。
でも、鶴毘は浮気なんて全然しない。
元が鶴だけに、人間には基本なんとも思わないらしく、私の存在が異例中の異例らしい。
これ、喜んでいいのかな?
私は前世で、鶴毘とつがいだったかもというと、鶴毘はつがいを持つ前に人間になったから、それはない、て。
鶴の仲間たちが妖怪に襲われて、それを助けるために一羽で対決して勝ったところを、天尊に認められて仙人の道に入ったんだって。
意外とこの人は武闘派なんだよね。
それに、つがいがいたら、その雌のところに絶対帰るから仙人の道は諦めただろうと言うの。
鶴毘なら、そうかも。
愛情深い人だもの。
ま、元々鶴は伴侶を生涯変えない愛の鳥だというから、他の人に浮気しないのは助かる。
紗空も、あれから別の仙人と出会って熱愛中と聞いた。
よかった。
今度こそお友達になれる・・・かな?
もう、洞窟に放り込まれるのやだ。
大天君からは、釣りの楽しみ方や、舟遊びを教えたいから、一人でおいでとよく言われる。
鶴毘は、大天君は女遊びする方だから絶対ダメと言って、必ずついてくる。
たしかに二人っきりで会うと、危険な仙人様かも。
見た目も長い髭を剃ったら、鶴毘とそう変わらないくらいの年齢にしか見えないし、顔立ちもいい。
色気もあるし。
過ぎた欲は身を滅ぼすが、欲がたぎろうとも、事をなすこともまた、立派な精神修養といって、仙女や人間の女性と浮いた話も多いらしい。
最後は奥さんにバレて髭をむしられてコテンパンにやられるけど、一番愛してるのは、やっぱり奥さんなんだって。
仙界の中でもオシドリ夫婦らしいけど、うーん。
紗空が似ないといいな。
にしても、色欲厳禁や節度はどこにいったの?
あ、豆吉さん実際の鶴毘を見て、ものすごく驚いてたな。
豆吉さんが結婚しても、二人の間には殺気めいたものがあったな。
でも、私は鶴毘以外はお断りします。
この人以上に好きになれる人なんかいないし、
この人以上に私を愛して大事にしてくれる人なんかいないんだから。
もちろん、不老不死の夫婦は目立つといけないから、別の土地へと渡り歩いたり、仙界でも暮らしてみたり、とにかく忙しい。
でも、鶴毘もいて、ムゥもいて。
何より絵師としてやれてるから、私は不満はない。
今ではイラストレーターも兼業してる。
有名になるとまずいから、細々とね。
時代は変わって、スマホの時代だけど、私たちは変わらず強い絆で結ばれている。
今では、コンピュータグラフィックで絵が動くから、あの筆で描いても問題なさそうね。
もし、どこかで、普通の紙に描いてある絵が動いたら、教えてね。
ムゥが時々イタズラして窓の外に飛ばしちゃうの。
私は絵師の紅葉。
今この時も、これからも、愛する人と一緒に生きています。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
この15話で本編終了になりますが、
この後番外編を投稿します。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
人界にも自由に来れるようになって、今は一緒に暮らしている。
鶴毘は仙人だから、こちらでは髪を黒く染めて薬師として過ごしている。
薬草とかの知識が凄いから。
ん?
あぁ、お医者様にならないのか、て?
彼は素敵な人だから、たちまち町娘たちの憧れの的みたいになって、恋文が絶えない。
そんな人が医師になったら、どんな誘惑されるかわかったもんじゃないから、私が阻止したの。
大奥の女性たちも一目見たいと噂になって、うちの周りに大挙して押し寄せるようになったのよ。
将軍様が流石にお怒りになって、鶴毘を捕まえようとしたり、色々あったなあ。
でも、鶴毘の作る薬が将軍様の持病に一番効くらしく、薬を提供する代わりにお目こぼしいただいたの。
最近は鶴毘の姿を見たお侍さんからも、恋文がくるようになって、鶴毘も驚いてた。
やれやれ、モテる伴侶を持つと大変だ。
でも、鶴毘は浮気なんて全然しない。
元が鶴だけに、人間には基本なんとも思わないらしく、私の存在が異例中の異例らしい。
これ、喜んでいいのかな?
私は前世で、鶴毘とつがいだったかもというと、鶴毘はつがいを持つ前に人間になったから、それはない、て。
鶴の仲間たちが妖怪に襲われて、それを助けるために一羽で対決して勝ったところを、天尊に認められて仙人の道に入ったんだって。
意外とこの人は武闘派なんだよね。
それに、つがいがいたら、その雌のところに絶対帰るから仙人の道は諦めただろうと言うの。
鶴毘なら、そうかも。
愛情深い人だもの。
ま、元々鶴は伴侶を生涯変えない愛の鳥だというから、他の人に浮気しないのは助かる。
紗空も、あれから別の仙人と出会って熱愛中と聞いた。
よかった。
今度こそお友達になれる・・・かな?
もう、洞窟に放り込まれるのやだ。
大天君からは、釣りの楽しみ方や、舟遊びを教えたいから、一人でおいでとよく言われる。
鶴毘は、大天君は女遊びする方だから絶対ダメと言って、必ずついてくる。
たしかに二人っきりで会うと、危険な仙人様かも。
見た目も長い髭を剃ったら、鶴毘とそう変わらないくらいの年齢にしか見えないし、顔立ちもいい。
色気もあるし。
過ぎた欲は身を滅ぼすが、欲がたぎろうとも、事をなすこともまた、立派な精神修養といって、仙女や人間の女性と浮いた話も多いらしい。
最後は奥さんにバレて髭をむしられてコテンパンにやられるけど、一番愛してるのは、やっぱり奥さんなんだって。
仙界の中でもオシドリ夫婦らしいけど、うーん。
紗空が似ないといいな。
にしても、色欲厳禁や節度はどこにいったの?
あ、豆吉さん実際の鶴毘を見て、ものすごく驚いてたな。
豆吉さんが結婚しても、二人の間には殺気めいたものがあったな。
でも、私は鶴毘以外はお断りします。
この人以上に好きになれる人なんかいないし、
この人以上に私を愛して大事にしてくれる人なんかいないんだから。
もちろん、不老不死の夫婦は目立つといけないから、別の土地へと渡り歩いたり、仙界でも暮らしてみたり、とにかく忙しい。
でも、鶴毘もいて、ムゥもいて。
何より絵師としてやれてるから、私は不満はない。
今ではイラストレーターも兼業してる。
有名になるとまずいから、細々とね。
時代は変わって、スマホの時代だけど、私たちは変わらず強い絆で結ばれている。
今では、コンピュータグラフィックで絵が動くから、あの筆で描いても問題なさそうね。
もし、どこかで、普通の紙に描いてある絵が動いたら、教えてね。
ムゥが時々イタズラして窓の外に飛ばしちゃうの。
私は絵師の紅葉。
今この時も、これからも、愛する人と一緒に生きています。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。
この15話で本編終了になりますが、
この後番外編を投稿します。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※この物語はフィクションです。表現や人物、団体、学説などは作者の創作によるものです。
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