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龍王と呼ばれたい 第三話
しおりを挟むどうしたもんかねぇ。頑丈そうな鎖で繋がれてるもんね。
とりあえず海に飛び込んで、飲めるだけ海水を飲んだら、岩にトグロをまいて、カジカたちが波をかぶらぬようにしてやったわ。
龍王がゲラゲラ笑って、炎を一直線に吐いてきたよ。
さっき飲み込んだ海水を、炎に向かって吐き出してみた。
でも力の差は歴然よね、押し戻されてくる。
まずいわ。
尻尾で海面を思いっきり叩いてめくらましして、カジカたちの鎖を噛み切る。
二人をくわえて飛び立って、雲の中に逃げようとしたんだけど。
嘘、雲が晴れちゃった。
雲は龍王の味方するって話は本当だったのね、やだねー。
もうすぐ追いつかれちゃいそう、こわいよー。
そしたらカジカが懐からハタキを取り出して、自分が戦うなんていうの。
やめなさい、て。
どこの世界にハタキに負ける龍王が
いるものですか!
このままじゃやられちゃう。
いつの間にか起きてた若武者が刀を抜いて、すれ違いざまに斬り結ぶと言うけど、怪しいもんだ。
多分アンタが食われるほうが早いと思う。
そういや、さっきから寒いのよね。
海水に浸かってすぐ飛んだから、冷えたんだ。ヤバい!
でも、よく見たら龍王も寒そう。
アンタも頭から海に突っ込んだもんね。
イチかバチか、カジカと若武者を口に含んで、一気に下へ向かうわ。
体の表面に軽く炎をかけて、体温調節よ。
なんか熱いなと思ったら、龍王が火の塊になって追って来てる。
その手があったかと少し悔しい。でも、人間二人抱えているんだから、同じにはできんわ。口の中で蒸し焼きになっちゃう。
海面が見えてきて、ギリギリで旋回して、空中で立ち止まる。
龍王は炎の勢いも相まって、また海に突っ込んだ。
おかげで水蒸気が舞い上がって、視界が悪くなったわ。
ラッキー。
視界が晴れる前に二人を浜に降ろす。
龍王のもとに戻ったら、二度も海につっこまされてえらく怒ってんの。
小細工はしないぞと言いはなち、猛然と向かってきた。
怖いし、逃げたいけど仕方がない。
もう闘っちゃってるんだもの、
最後までやるしかないんだもの。
渾身の一撃も軽くいなされ、首の後ろを嫌と言うほど噛まれた。
自分の骨が砕ける音、て、大きく聞こえるものね。
無茶苦茶に暴れても、離してもらえない。
噛まれたまま雷撃も喰らっちゃった。
体が痺れて力が抜ける。
ああ、死ぬんだと本能で察する。
まだ、挑むには早すぎる相手だった。
遠くにカジカの声が聞こえる。
さっさと食べときゃよかったな。
そしたらこんな目に遭わずにすんだ。
いや、カジカのことなんて無視してりゃよかった。
カジカが手に何かを持って、船を漕いでこちらに向かってくる。
だから、ハタキはやめなさい、て。そんなもの・・・
薄れる意識の中で、カジカが光るものを抜いたのがわかった。
まさか・・・まさかアンタ・・・。
目を凝らすとなんと抜刀している。
若武者から貸してもらったみたいだけど、アンタ、百姓の娘でしょ!?
野菜を切るのと違うのよ!?
龍王は、面白そうにカジカを見ている。
カジカは、近くまで船で漕ぎつけると、降りてこいと言わんばかりに刀を構える。
うげ、八相の構え。
あんた、芝居かなんかの見過ぎ!
それは、素人がやるもんじゃないの!
振り下ろしても自分の足を斬るだけよ!
あぁ!もう!!
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