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7話 前線へ向けて出発
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異世界童貞を卒業した朝がきた。
腕の中では茶髪の美女が静かな寝息を立てている。
昨夜はかなり無茶な事をしてしまった気がするが、ローナさんの青白かった顔色も血色を取り戻していた。
呼吸も落ち着いているし治癒と回復魔法が効果を発揮しているのだろう。
ベッドから起き上がり服を着ていると、ローナさんが目を覚ましたようだ。
「ユウさん・・・」
「おはようございます。体調はどうですか?」
「おはよう。なんだか普段よりもずっと呼吸が楽だし、寝覚めもすごくいいの。」
「それは良かった。」
「昨晩あんなに激しく愛されてしまったからかしら。」
「そうかもしれませんね。」
「子供が出来たらどうしようかしら。」
ローナさんには子供を産んでもらいたいとも思うが、僕は一文無し。
孤児院の先生は一人だけだし、妊娠してしまうと今以上に彼女の負担が増えてしまう。
流れに身を任せて無責任中出しセックスをした結果がこれだ。
戦争を終わらせて野戦病院に行っているという他の先生が戻れば彼女も安心して産めるか。
でも、戦争を終わらせる為の第一歩すらまだ踏み出せていない状況で言ったって説得力がないだろう。
いっそ神様の使徒である事を教えたほうが・・駄目だ、産むのを強制してしまう事になる。
「ユウさん?」
「あっすみません。ローナさん、避妊魔法を掛けますね。」
「魔法使いさんだったのね・・・じゃあお願い。」
「いつか僕の子供を産んでもらえますか?」
「・・えぇ。もちろんよ。」
彼女は優しく微笑んだ。
胸を隠しているシーツの横から彼女のお腹に手を当て、避妊魔法を発動する。
戦争を終わらせたら必ず彼女を孕ませよう。頑張らなければ。
彼女を抱きしめてキスをすると照れくさそうに笑った。
ローナさんが着替えを終えて食堂に向かい、二人で中に入るとチークちゃんを筆頭とした女子軍団がニマニマといやらしい笑顔でこちらを見るので、何やら恐怖を感じる。
この子達をこんな風にしてしまったのは一体誰なのか。
ジャンを筆頭とする男子諸君は訳が分からず???と顔に書いてあった。
朝食の席でクレアとローナさんは笑いながら話をしていた。
わだかまりが溶けているようで安心したが、一体何があって気まずい関係になっていたのかは気になる。
「チーク、今日は使用人の仕事は休みだ。ローナの手伝いをしろ。」
「了解しました!」
チークちゃんがビシッと敬礼を決める。
年長の二人、チークちゃんは使用人、ジャンは鍛冶屋の見習いとして働いているそうで、ジャンの方は最近あまり仕事がないらしく、三日に一回だけの出勤となっている。
それで鍛冶屋の経営が成り立つのか聞くと厳しい状態らしい。
軍が戦争で使う武具を注文してくるが、国の為だとか言って格安で作れと言ってくるのだそう。
はじめは親方も渋々受注していたが、国からの支払いが滞り始めてからは作るのをやめた。
注文を蹴った制裁として城で使う金物類の注文も全く無くなってしまったそうだ。
食料を調達している商人たちも利益のほとんど出ない国からの注文に嫌気がさしているらしいが、兵士達の為にと納品を続けている状況だそうな。
「戦争なんて早く終わっちまえばいいんだ。そうすりゃ先生達もみんな帰ってこられる。」
「その話はこの辺にしておきましょう。」
「あっ・・ごめんクレア、そんなつもりじゃないんだ。」
クレアが俯いてしまっていた。
朝食を終えてクレアの家に一度戻る事にした。
「ごめんねクレア。ジャンに悪気は無いのよ。」
「悪いのは私だから謝る必要なんて無い。本当は私がここに来る資格なんてないんだ。」
「そんな事ないわ。ジャンは戦争を嫌ってはいるけど、強いあなたには憧れているのよ。またいつでも来てね。」
「うぅ・・」
「ふふっ。あなたの泣き虫はいつまでも治らないわね。」
ローナさんと子供達にお別れをしてクレアの家へと向かう。
道中、どうしても気になるのでローナさんとの関係を聞いてみた。
「ローナさんと一体何があって会うのを躊躇してたんですか?」
「彼女は私が前線に行くのを反対していたんだ。だが、止めるのを聞かずに国を守る為にと前線行きを志願した。結果、神の意思に反して大勢の魔族を殺し、左手を失って帰って来たわけだ。彼女が正しかった。」
「それで気まずかったと・・まぁ仲良く話しているのを見て安心しました。」
クレアの家に到着すると今後の予定を彼女に伝える。
僕は一度前線に赴いて戦闘を強制的に中断させ、可能であれば魔族側に接触して魔王と神託の魔女に取り次いでもらう。
聖女様たちには神官達が集まるのがいつかを調べてもらい、出来るだけ普段通りの振る舞いをするようにお願いをした。
「今の前線はここからだと馬の脚でも十日はかかる。神官達の会合がいつ行われるかをどうやって伝えればいい?」
「飛翔魔法で移動しながら転移魔法で移動できる地点を前線まで伸ばしますので、日数は短縮できるはずです。連絡は日に一度、この家に戻りますのでその時に。」
「出来る事なら私も同行したいが・・・。」
「クレアは出来るだけ護衛の任務を普段通り続けてください。」
「分かった・・。」
飛翔魔法の速度はそんなに速くは無いが地形を無視できる。馬よりは早く到着できるはずだ。
クレアが大雑把に書かれた地図を貸してくれた。
測量技術が無いらしく、街や村の位置関係と歩きでかかる日数が書かれている簡単な物だが有難い。
この王都アレクから前線へ向かうには、北へ向かう街道を五日ほど行くと鉱山の街ブギンに到達する。そこからさらに北西へ五日の場所が最前線だ。
間には小さな農村や村が点在していて地図に載っていない場所もあるのだとか。
野宿の必要は無いが街に入るとなるといくらかお金が必要になるかもしれないのでクレアからお金を借りた。
はやくこのヒモ生活から脱却しなければ。
「じゃあクレア、行ってきます。」
「気を付けて。なぁ・・やっぱり一緒に行きたい・・。心配なんだ。」
「気持ちは嬉しいですがここで聖女様を守ってあげて下さい。それに飛翔魔法は苦手でしょう。」
「うっ・・」
「転移魔法で必ず毎日戻りますから。」
「あぁ・・あっ。」
彼女を抱きしめ頬にキスをすると赤面してしまった。初心な反応が可愛いらしい。
城下町の北西まで移動し、人目のつかない場所で飛翔魔法を発動して飛び立つ。
あまり目立ちたくはないので外套のフードをかぶって街道から少し距離を置いた場所を少し高めの高度で飛行し、村や農村を探しながら北へ向かう。
風がすごく気持ちいい。前世では絶対に味わえない大空を生身で飛ぶ感覚。
まさに鳥になった気分だ。
腕の中では茶髪の美女が静かな寝息を立てている。
昨夜はかなり無茶な事をしてしまった気がするが、ローナさんの青白かった顔色も血色を取り戻していた。
呼吸も落ち着いているし治癒と回復魔法が効果を発揮しているのだろう。
ベッドから起き上がり服を着ていると、ローナさんが目を覚ましたようだ。
「ユウさん・・・」
「おはようございます。体調はどうですか?」
「おはよう。なんだか普段よりもずっと呼吸が楽だし、寝覚めもすごくいいの。」
「それは良かった。」
「昨晩あんなに激しく愛されてしまったからかしら。」
「そうかもしれませんね。」
「子供が出来たらどうしようかしら。」
ローナさんには子供を産んでもらいたいとも思うが、僕は一文無し。
孤児院の先生は一人だけだし、妊娠してしまうと今以上に彼女の負担が増えてしまう。
流れに身を任せて無責任中出しセックスをした結果がこれだ。
戦争を終わらせて野戦病院に行っているという他の先生が戻れば彼女も安心して産めるか。
でも、戦争を終わらせる為の第一歩すらまだ踏み出せていない状況で言ったって説得力がないだろう。
いっそ神様の使徒である事を教えたほうが・・駄目だ、産むのを強制してしまう事になる。
「ユウさん?」
「あっすみません。ローナさん、避妊魔法を掛けますね。」
「魔法使いさんだったのね・・・じゃあお願い。」
「いつか僕の子供を産んでもらえますか?」
「・・えぇ。もちろんよ。」
彼女は優しく微笑んだ。
胸を隠しているシーツの横から彼女のお腹に手を当て、避妊魔法を発動する。
戦争を終わらせたら必ず彼女を孕ませよう。頑張らなければ。
彼女を抱きしめてキスをすると照れくさそうに笑った。
ローナさんが着替えを終えて食堂に向かい、二人で中に入るとチークちゃんを筆頭とした女子軍団がニマニマといやらしい笑顔でこちらを見るので、何やら恐怖を感じる。
この子達をこんな風にしてしまったのは一体誰なのか。
ジャンを筆頭とする男子諸君は訳が分からず???と顔に書いてあった。
朝食の席でクレアとローナさんは笑いながら話をしていた。
わだかまりが溶けているようで安心したが、一体何があって気まずい関係になっていたのかは気になる。
「チーク、今日は使用人の仕事は休みだ。ローナの手伝いをしろ。」
「了解しました!」
チークちゃんがビシッと敬礼を決める。
年長の二人、チークちゃんは使用人、ジャンは鍛冶屋の見習いとして働いているそうで、ジャンの方は最近あまり仕事がないらしく、三日に一回だけの出勤となっている。
それで鍛冶屋の経営が成り立つのか聞くと厳しい状態らしい。
軍が戦争で使う武具を注文してくるが、国の為だとか言って格安で作れと言ってくるのだそう。
はじめは親方も渋々受注していたが、国からの支払いが滞り始めてからは作るのをやめた。
注文を蹴った制裁として城で使う金物類の注文も全く無くなってしまったそうだ。
食料を調達している商人たちも利益のほとんど出ない国からの注文に嫌気がさしているらしいが、兵士達の為にと納品を続けている状況だそうな。
「戦争なんて早く終わっちまえばいいんだ。そうすりゃ先生達もみんな帰ってこられる。」
「その話はこの辺にしておきましょう。」
「あっ・・ごめんクレア、そんなつもりじゃないんだ。」
クレアが俯いてしまっていた。
朝食を終えてクレアの家に一度戻る事にした。
「ごめんねクレア。ジャンに悪気は無いのよ。」
「悪いのは私だから謝る必要なんて無い。本当は私がここに来る資格なんてないんだ。」
「そんな事ないわ。ジャンは戦争を嫌ってはいるけど、強いあなたには憧れているのよ。またいつでも来てね。」
「うぅ・・」
「ふふっ。あなたの泣き虫はいつまでも治らないわね。」
ローナさんと子供達にお別れをしてクレアの家へと向かう。
道中、どうしても気になるのでローナさんとの関係を聞いてみた。
「ローナさんと一体何があって会うのを躊躇してたんですか?」
「彼女は私が前線に行くのを反対していたんだ。だが、止めるのを聞かずに国を守る為にと前線行きを志願した。結果、神の意思に反して大勢の魔族を殺し、左手を失って帰って来たわけだ。彼女が正しかった。」
「それで気まずかったと・・まぁ仲良く話しているのを見て安心しました。」
クレアの家に到着すると今後の予定を彼女に伝える。
僕は一度前線に赴いて戦闘を強制的に中断させ、可能であれば魔族側に接触して魔王と神託の魔女に取り次いでもらう。
聖女様たちには神官達が集まるのがいつかを調べてもらい、出来るだけ普段通りの振る舞いをするようにお願いをした。
「今の前線はここからだと馬の脚でも十日はかかる。神官達の会合がいつ行われるかをどうやって伝えればいい?」
「飛翔魔法で移動しながら転移魔法で移動できる地点を前線まで伸ばしますので、日数は短縮できるはずです。連絡は日に一度、この家に戻りますのでその時に。」
「出来る事なら私も同行したいが・・・。」
「クレアは出来るだけ護衛の任務を普段通り続けてください。」
「分かった・・。」
飛翔魔法の速度はそんなに速くは無いが地形を無視できる。馬よりは早く到着できるはずだ。
クレアが大雑把に書かれた地図を貸してくれた。
測量技術が無いらしく、街や村の位置関係と歩きでかかる日数が書かれている簡単な物だが有難い。
この王都アレクから前線へ向かうには、北へ向かう街道を五日ほど行くと鉱山の街ブギンに到達する。そこからさらに北西へ五日の場所が最前線だ。
間には小さな農村や村が点在していて地図に載っていない場所もあるのだとか。
野宿の必要は無いが街に入るとなるといくらかお金が必要になるかもしれないのでクレアからお金を借りた。
はやくこのヒモ生活から脱却しなければ。
「じゃあクレア、行ってきます。」
「気を付けて。なぁ・・やっぱり一緒に行きたい・・。心配なんだ。」
「気持ちは嬉しいですがここで聖女様を守ってあげて下さい。それに飛翔魔法は苦手でしょう。」
「うっ・・」
「転移魔法で必ず毎日戻りますから。」
「あぁ・・あっ。」
彼女を抱きしめ頬にキスをすると赤面してしまった。初心な反応が可愛いらしい。
城下町の北西まで移動し、人目のつかない場所で飛翔魔法を発動して飛び立つ。
あまり目立ちたくはないので外套のフードをかぶって街道から少し距離を置いた場所を少し高めの高度で飛行し、村や農村を探しながら北へ向かう。
風がすごく気持ちいい。前世では絶対に味わえない大空を生身で飛ぶ感覚。
まさに鳥になった気分だ。
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