34 / 92
34
しおりを挟む桔梗が旅に出ていった翌日の朝みどりがやって来た。紹介する人物を連れてくるつもりだったみたいだが、連れてこようとしていた人物は忙しいらしく連れて来ることが出来なかったらしい。
「いやー、だいぶ前に頼んでた仕事のこと忘れててなぁ。その仕事が終わった後やったら時間取れそうやさかいそんときに会ってもらえるやろか?」
「分かった。その時にはさすがに桔梗も帰ってきてると思うからその時に皆で会う」
「どんな人なのか楽しみだね。一緒に料理とかしてみたい」
「あー、私は頼りにしとるし、いいやつだから心配せんでもええよ。でもまぁ一緒に料理は頼んだらしてくれそうやけど、料理の味には期待したらいかんよ? 茜は別に得意という訳やないからな」
「茜って名前なの?」
「せやよ。そういえば名前も教えてなかったか。身長はうちとそんなに変わらん位で青藍から見れば大きく感じるかもしれへん。筋肉がすごいついとるわけやあらへんのやけど成人の男性よりも力持ちでな? 青藍ともみじと桔梗の三人なら軽々と持ち上げられるやろうと思うで」
「おー、そんなに力持ちなら高い高いしてもらえるかも!」
「……してほしいの? もみじちゃんは」
もみじの少しずれた考え方に青藍が無表情ながらも呆れているのが分かる顔でもみじを見つめる。そんな青藍にまぶしいほどに純粋な目でもみじが問いかける。
「え? 青藍ちゃんはしてほしくないの?」
「別にいいかな? どうせならこの前本を運んだ時にいてほしかった」
「あ、そうやった。とりあえず昨日言ってた料理の本とかいろいろ持ってきたさかい。それともみじちゃんにはこれやね」
「あ、調理道具? ありがとう! えへへ、これでもっと料理が楽しくなるね」
「ホントに料理好きなんやねー。そこまで喜んでもらえるとうちも嬉しいわ」
渡された調理道具を大事そうに抱えて笑顔を見せるもみじの様子にみどりは嬉しそうに微笑む。もみじは渡された調理道具を眺めたあとにみどりのほうを振りむく。
「だって料理作るの楽しいもん! みどりちゃんは何か好きなことってないの?」
「うちか? うちはそうやな。強いてあげるなら読書やな」
「本読むの? 書斎にある本とか読んでみる?」
「お、ええの? せやったら今度読ませてもらおうかな。この前見せてもらった時に気になってたんよ」
「別に汚さなければいくら読んでも大丈夫。私は一回読んだらもう見ないからそういう本は置いてるから」
「そういえば一回読めば覚えるんやったっけ?」
「別に全部完璧に覚えてるわけではないけど。ある程度は覚えれる」
「いいなー。私は何回も書いたりしないと覚えれないのに。まだ文字も完璧に覚えてないんだよ?」
「文字を覚えるのが一番難しいからしょうがないよ。そこを乗り越えればあとは多少楽になるよ」
「そうなの? 平仮名以外にもカタカナとか漢字とかあって難しいよ?」
「最悪漢字は覚えなくてもええと思うで? 最近の本には漢字にふり仮名がふってあることが多いさかい」
「ふり仮名ってなぁに?」
「えっとやな。例えばやけど本に『包丁』って書いてあるときにその上にこうやって『ほうちょう』って読み方が書いてあるもののことやな」
実際に見てもらったほうが早いと思ったみどりは地面に木の棒を使って文字を書く。もみじは地面の文字を見て説明を聞いて理解できたのかうんうん頷いている。
「そういうのだけだったら平仮名とカタカナを覚えるだけでいいからすぐに覚えれるかも!」
「あとは数字も覚えたり、単位を覚えたりしないとね。料理に使う単位がいろいろあるんよ」
「単位?」
「単位ってのはそうやな。もみじちゃんこの指いくつに見える?」
「え? 二本!」
「うんうん。それじゃあ、ここに人はどのくらいいる?」
「三人!」
「今みたいに数字の後の言葉みたいの物のことを単位って言うんや。これを覚えとかんと料理はおいしいのは出来んのや。まぁ、目分量で行く人もおるけど。最初はレシピに忠実に作らんとな」
「レシピ! この前教えてもらったよ。献立のことだよね!」
「そうそう、そうやって横文字の言葉も覚えていかんとな。そういえばなんやけど、桔梗のやつは静人さんらにしばらく出かけることって教えたんやろうか」
「昨日急に思いついた気がするから教えてない可能性が高いかな」
「まったく、今度帰って来たときはちゃんと教えるように言わんといかんな」
「もうそろそろおにいさんたちが来る時間だからその時に教えよう。今日の料理も楽しみ」
「そういえば青藍ちゃんの趣味は無いん? 食べること以外で」
「食べること以外だとみどりと同じ読書。他には今のところないかな」
「うーん、青藍ちゃんものづくりとか興味ない?」
「なんでまた急に? あと特に興味ない」
「せやろな。いやぁ、ここに村を作りたいって話覚えとる? この場所から少し離れたところにうちらみたいなものばっかりの村を作ってしまうってやつや。その村を作ることになったらいろいろ必要になるやろ?」
「それは分かるけど。そういう物資を手に入れるためのここの野菜を売る交渉をこの前したんじゃなかったの?」
「さすがにそれだけでは未来も大丈夫とは思えんのや。先のことを考えると自分らでもある程度は作れるようになっとったほうが安心やん」
「むぅ、理屈は分かるけど……」
みどりの考えてることが理解できるのか難しそうな顔で考え込む青藍だったが、そんな青藍を見てみどりが軽い調子で話しかける。
「いやまぁ、無理にとは言わんし。好きでもないことをやる必要は無いさかい、そういうのが好きな人をここに招けばいいだけやから」
「うーん。でも、あまり人を増やしてほしくないとは思うし、分かった、とりあえず試しにやってみる。もしかしたら面白いかもしれないし」
「お、せやったら今日持ってきたのも無駄にならんで済んだわ」
「何を持ってきたの?」
「ものづくりに必要になりそうなものを沢山持ってきたで。さすがに場所がないと置いておけんから最初に作るんは小屋やな」
「最初から難しすぎない?」
「頑張って青藍ちゃん! 私は料理を頑張るね!」
「いや、うん。分かった。頑張ってみる。でも小屋とか作ったことないしそういう本も読んだことないからそこら辺の準備は任せる」
「おっけーや。任せといて。分かりやすいのをもってきたるからな」
「本を読んだだけでできるとは思えないけど期待してる。私も頑張る」
「まぁ無理はせんでええからな? おっ?」
話し込んでいた三人組の耳に静人達のことを知らせる風鈴が聞こえた。
「あ、おにいさん達来たみたい。小屋のこと相談しようっと」
「え、あ、まぁ確かに静人さんらやったら分かるかもしれんけど」
「迎えに行こうよー。お兄さんたち待ってるよ?」
「あ、そうだね。早く行かないと」
小屋のことで考え込んでいた青藍だったがもみじの言葉で気が付いたのか、静人達のもとに駆け足で向かう。その後ろをゆったりとした足取りで青藍の言葉に苦笑いを浮かべたみどりが追いかけていく。
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる