山に登ったら巫女少女と出会ったので遊ぶことにしました

榊空

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 静人達が来ることのできない日中に桔梗は、青藍と一緒に軒先から足をプラプラとさせながらぼーっと空を仰ぐ。


「今日は暇なのだ」

「いつも暇な気がするけど?」

「うむ、確かにそうなのだ。今日も暇なのだ」


 即座に帰ってきた返事に納得した桔梗はすぐさま言い直し、また空を見つめる。青藍も暇なのか体を丸めて寝転がるとぼそりと呟く。


「今日は何かすることあったっけ?」

「うーむ、茜が帰ってきたら畑を作ろうとは思っているのだ」

「あれ、まだ作ってなかったの?」

「作る予定だったのだ。けど、最近はお姉ちゃんたちの家に遊びに行ってたから、まだ進んでないのだ」


 畑を作ると聞いたのがだいぶ前のことのように感じていた青藍は不思議そうに首を傾げたが、それを見た桔梗は首を横に振りつつ説明してくれた。


「あー、ならしょうがない……、のかな?」

「しょうがないのだ。まぁ、今日は茜も帰ってくるはずなのだ。そしたら、一緒に畑を作ろうと思うのだ」

「野菜何作るの?」


 茜が手伝うことは確定しているからかそこには触れずに、これから作ることになる食べ物のほうに気が向いていた。


「冬に作れる、ホウレンソウ、ラディッシュとかにしようかと思ってるのだ」

「ラディッシュ?」

「なんか赤いやつなのだ」

「食べたことあったっけ?」

「多分ないのだ。あ、でも、もしかしたら静人がソースに使っていたかもしれないのだ」


 桔梗の言葉を聞いて、今までの料理を思い出すように青藍は目を瞑る。


「ソースかー。おにいさんたちが作ってたソースに使ってたかもしれないけれど、料理のことは分からないから使っていたかは分からないや」

「もみじに聞いてみたらわかるかもしれんのだ」


 そこまで料理に詳しいわけではない青藍は目を開き、首を横に振ってから桔梗に頷き返す。


「もみじちゃんなら聞いてたかもしれないけど。まぁ、あとで聞いてみようかな。もみじちゃんはまだ寝てるの?」

「まだ寝てるのだ。正直、毎日わしより早く起きてたから、今日もわしより早いと思ってたのだ」

「まぁ、おにいさんたちの家にいたときは楽しみすぎて早く起きてた感じだったし。最終日は体力が持たなかったのか朝ご飯に遅れてたけど」

「それもそうかなのだ。うむ? あ、多分起きたのだ。もみじの寝室から音が聞こえるのだ」

「ん……、ホントだ。この時間に起きたなら別にそこまで遅いわけでもない……かな?」


 青藍はもみじの言葉を聞いてから耳を澄まし、それで気付いたのかもみじの寝室のほうに視線を向ける。


「ふわぁ、おはよう。青藍ちゃん。桔梗お姉ちゃん」

「うん、おはよう」

「おはようなのだ。もみじ」


 眠たげに目をこすりながら寝室から出てくるもみじに、青藍と桔梗が挨拶する。もみじはそのまま水を汲みに行き、顔を洗ってすっきりしたように目をぱちぱちさせる。


「うーん! よし、目が覚めた! 朝ご飯どうしようか」

「うむ? 食材はあるのだ?」

「あ、い、芋ぐらいならあるけど。外に出かけるわけにもいかないし、どうしよう」

「芋だけはたくさんあるのだ……。うーむ、別に焼き芋でもわしは構わんのだ」


 いつものように料理を作ろうと意気込むもみじだったが、桔梗の言葉を聞いて一転、慌てた様子で手をパタパタさせる。その二人の様子を見ていた青藍があることに気が付いて愕然とする。


「あ、今日からは魚が毎日出るとは限らないんだっけ。う、お魚……」

「我慢するのだ。というか今までが食べすぎなのだ。別にお肉も嫌いなわけではないのだ?」

「そうだけど。うん、我慢する。でも、出てきたときはたくさん食べるからね」

「う、うむ。覚悟しておくのだ」


 青藍の様子に顔を引きつらせて桔梗が頷く。そんな三人の会話が終わったタイミングでみどりが現れる。その両手には大量の荷物を抱えている。


「やっほー、お届け物やでー」

「あれ、みどりお姉さんだ!」

「うん、みどりお姉さんやでー。こっちに戻ってきても食材が無いかもと思って持ってきたんやけど、どない?」


 いきなり現れたみどりに嬉しそうに近寄るもみじに桔梗は笑顔で答える。両手の荷物を掲げてもみじに見せる。


「良かったー。実はお芋しかなくて困ってたところだったんです」

「そうなん? せやったらちょうどよかったわ」

「お魚もある?」


 青藍はちょこちょことみどりに近づいて自分の好物を目で探しつつ質問する。その質問にみどりは頬をかいて困ったように苦笑する。


「持ってきてあげたいんやけどな。お魚は鮮度の問題があるからなぁ。冷蔵庫とかあればええんやけど。食材が痛むともったいないし。さすがに毎日は持ってこれんしな」

「うぅ、無いの……。森の中にお魚いたかな?」

「そんな悲しそうな顔せんでも。さすがにこの世界……。あー、パレットにはいないと思うで」


 魚がどうしても食べたいのか悲しそうな顔をする青藍に、みどりはさらに困ったように眉をひそめる。


「あー、みどり。今更なのだがパレットの世界にはわしら以外にはどんな生物もおらんのだ?」

「多分やけど、というかこの世界はもともと桔梗が持ってたものなんやろ? なんで桔梗が知らへんねん」


 桔梗はみどりの言葉に少し考えた後話し出す。


「うむ? あー、元々の持ち主はわしじゃないのだ。この世界は元々わしの……、うーむ、師匠的な人のものだったのだ。いろいろと世界の管理の仕方は教えてもらったがの。それに、この世界を渡してきたと思ったらいなくなったのだ」

「え、桔梗師匠おったん?」


 桔梗に師匠がいたことを知らなかったからか、みどりは驚いた様子を見せる。そんなみどりに首を小さく横に振り離し始める。


「師匠というか、しばらくやっかいになっておったのだ。その時に師匠と呼ぶようにと言われただけなのだ」

「あー、なんというか。変人そうやなぁ」

「変人ではあった気がするのだ。今も暇つぶしで誰かを拾って世話してたりするかもしれんのだ」

「暇つぶして……、そう言われたん?」

「言われたのだ。でも、本当にそう思ってたかまでは分からんのだ」


 桔梗たちの話を聞いて気になったのか青藍が会話に混ざろうと近づいてくる。


「桔梗、世界の管理を任されたってことは川に魚を増やすこともできる……?」

「さすがに増やすことは出来んのだ。出来ても暮らしやすい空間にするくらいなのだ。養殖でも始めるのだ?」


 青藍の提案に首を横に振りつつも別の提案した桔梗の言葉に、青藍は少し考えてから頷く。


「お魚食べたいから始めるかも」

「あー、畑を作る方が先やからな。魚のえさも必要になるんやし、畑でついでにエサも作ればええんやない? まぁ、魚のえさにも魚使うらしいんやけどな」

「む、がんばる。……? 魚のえさにも魚使うの?」


 青藍はこぶしを握り締めて意気込んだあと、みどりの最後の言葉にキョトンとした顔で首を傾げる。


「まぁ、小麦粉とかと一緒に使うらしいから、たくさんはいらんのやろうけど。いっそのこと川の整備をして、藻を大量に作ったりする方が早いかもしれへんよ?」

「藻? あの緑色のやつ?」

「せやせや。この世界やったらそっちの方がむしろ楽かもしれんし」

「そうなんだ。じゃあ、頑張ってみる。でも肝心のお魚はどうするの?」


 藻のことは知っているのか頑張ると意気込んだ後、魚について疑問を呈する。みどりはその言葉に安心させるように頷き親指を立てる。


「それはまぁ、うちに任せといてな。用意できると思うから」

「分かった。みどり姉に任せる」

「おんおん。任せとき」


 軽い調子で頷くみどりに青藍は安心したようにゆるく口角をあげる。

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