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入社③
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近づいて野本さんの隣に立つと、身長差が20㎝以上あることに気づく。
野本さんの身長はおそらく150㎝前後。脚立の二段目に足をかけてやっと私の身長を超えるくらいだ。
私は一段目に足をかけて体を伸ばすと、難なく壁に残ったポスターの残骸を取り除くことができた。
「いいなぁ。それだけ身長があると格好いいし、便利だよね」
「……大女なだけですよ。でもお役に立てて良かったです。随分と高い位置に貼るんですね。新しいポスター、貼りましょうか?」
「本当? じゃあお願いしようかな。いつもなら五段を持ってくるんだけど、使われていたのか見当たらなくて。三段しかなかったのよね」
なるほど。五段の脚立なら上までちゃんと届いたのだろう。
私は新しいポスターを持ち、脚立の一番上にセロテープの台を置いてポスターを貼り始めた。
野本さんはすっかり私にポスターを任せてしまって、同期の山下さんと話を始めてしまった。
まあ、今お客様もいないし別にいいんだけど……。
「お前……何やってるんだ?」
「え? (ゴトン)キャッ!」
突然真後ろから男の人の声がして驚いた私は、脚立の上にのせていたセロテープの台を落としてしまい、拾おうとしてバランスを崩してしまった。
「おいっ」
とっさに支えてくれた人を見上げると、それは高野だった。
「ご、ごめんなさい……びっくりして」
「……悪かった、突然話しかけて」
「あ、も、もう大丈夫」
ずっと腕と腰を支えてくれていたのは有り難いけれど、妙に気恥しい。あれから高野に会うのは初めてだったから。こんなに密着しているとどうしても意識してしまう。
「高嶺さん! 大丈夫?」
セロテープを落とした音に気づき、野本さんが駆け寄ってきた。
「大丈夫です。セロテープ台を落としちゃっただけで……」
床にはテープの輪っか部分が外れてしまった台が横になっていた。
壊れていないか心配になり、私は慌てて拾い上げた。
ホッ……ただ外れただけだったわ。
「これ、高嶺の仕事なんですか?」
「え?」
なぜだか高野が野本さんに怒っている……?
「ああ、私がすることなんだけどね。その……身長がこれだから、上まで届かなくて。高嶺さん、高いから代わってくれたの」
「そ、そうなの。全然大したことじゃないし、今お客様もいないし!」
「だとしても、隣に付いているべきじゃないですか」
「そ、そうね。ごめんなさい高嶺さん」
「いや、ホント、全然……」
「お前はもうするな。俺がする」
「え」
そう言って、高野は私からセロテープを取り上げ、さっさとポスターを貼り終えてしまった。
周りには気まずい空気が流れている。
野本さんの身長はおそらく150㎝前後。脚立の二段目に足をかけてやっと私の身長を超えるくらいだ。
私は一段目に足をかけて体を伸ばすと、難なく壁に残ったポスターの残骸を取り除くことができた。
「いいなぁ。それだけ身長があると格好いいし、便利だよね」
「……大女なだけですよ。でもお役に立てて良かったです。随分と高い位置に貼るんですね。新しいポスター、貼りましょうか?」
「本当? じゃあお願いしようかな。いつもなら五段を持ってくるんだけど、使われていたのか見当たらなくて。三段しかなかったのよね」
なるほど。五段の脚立なら上までちゃんと届いたのだろう。
私は新しいポスターを持ち、脚立の一番上にセロテープの台を置いてポスターを貼り始めた。
野本さんはすっかり私にポスターを任せてしまって、同期の山下さんと話を始めてしまった。
まあ、今お客様もいないし別にいいんだけど……。
「お前……何やってるんだ?」
「え? (ゴトン)キャッ!」
突然真後ろから男の人の声がして驚いた私は、脚立の上にのせていたセロテープの台を落としてしまい、拾おうとしてバランスを崩してしまった。
「おいっ」
とっさに支えてくれた人を見上げると、それは高野だった。
「ご、ごめんなさい……びっくりして」
「……悪かった、突然話しかけて」
「あ、も、もう大丈夫」
ずっと腕と腰を支えてくれていたのは有り難いけれど、妙に気恥しい。あれから高野に会うのは初めてだったから。こんなに密着しているとどうしても意識してしまう。
「高嶺さん! 大丈夫?」
セロテープを落とした音に気づき、野本さんが駆け寄ってきた。
「大丈夫です。セロテープ台を落としちゃっただけで……」
床にはテープの輪っか部分が外れてしまった台が横になっていた。
壊れていないか心配になり、私は慌てて拾い上げた。
ホッ……ただ外れただけだったわ。
「これ、高嶺の仕事なんですか?」
「え?」
なぜだか高野が野本さんに怒っている……?
「ああ、私がすることなんだけどね。その……身長がこれだから、上まで届かなくて。高嶺さん、高いから代わってくれたの」
「そ、そうなの。全然大したことじゃないし、今お客様もいないし!」
「だとしても、隣に付いているべきじゃないですか」
「そ、そうね。ごめんなさい高嶺さん」
「いや、ホント、全然……」
「お前はもうするな。俺がする」
「え」
そう言って、高野は私からセロテープを取り上げ、さっさとポスターを貼り終えてしまった。
周りには気まずい空気が流れている。
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