高嶺の花も恋をしたい!

吉岡ミホ

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観賞用②

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 最初から知っていたら、高野はきっと私に手を出さなかっただろう。

「……ごめんなさい、だますようなことをして」
「謝ってほしいわけじゃない。ただ、女性の初めてって、もっと大切にするべきものじゃないのか? いや……途中で止めなかった俺が悪いんだけど」

 高野の顔には明らかに申し訳なさそうな後悔の色が見て取れた。

「あの、気にしなくていいのよ?」
「だが……」
「ひょっとして、ずっと責任を感じてたの? そんな必要全然ないから。むしろ太一くんには感謝しているくらいなの」
「は? 感謝?」

 それは事実だった。あの夜がなければ、今の前向きな私はいなかっただろう。それに、過去の私は……。

「私……全くモテなくて。男性がその……そういう目で私を見てくれること自体なかったの」
「そんなわけないだろう」
「ううん、本当。高校では女子校だったからすっごくモテたんだけどね。背が高いからみんなにカッコいいって言ってもらえて。でも大学では……」

 過去の私は美人だと言われて決して悪い気はしていなかった。「美人」という言葉が褒め言葉の一つだというくらいには受け入れられていた。
 でも大学時代のある出来事から、美人だと言われることに忌避感を抱くようになった。

「私は……『観賞用』なんだって」

 忘れもしない。あれは大学に入って少しした頃だ。
 当時の私は高校卒業まで女子校育ちで、男子とは全くと言っていいくらい縁がなかった。
 そんな中、入学して間もなく必修英語で隣の席になった男子の森山くんと話をするようになった。と言っても授業の内容とかバイトの話とか、ごく普通の同級生としての雑談だったと思う。でも私にとって同年代の男子とまともに話をするのは、森山くんが初めての経験だったのだ。毎日話をするたびにドキドキして、彼の優しい雰囲気に、いつの間にか特別な気持ちを抱いていた。

 そんなある日、傘を忘れたことに気づき講義室へ取りに戻ると、3名の男子が残って話をしていた。

「やっぱ女子少ないよなー。当たり前だけどここ建築学科だもんな。可愛い子、全然いないし」
「けどあの子、すごいよな」
「ああ、高嶺花緒か?」

 私? 何故か私の名前が出てきたので足が止まってしまい、思いがけず盗み聞きすることになってしまった。

「そうそう、芸能人レベルの美人だよな」
「たしかに絶世の美女だけど、なんか現実味がないというか」
「あー、それわかるわ。綺麗すぎて近寄りがたいんだよな。身長だってモデルみたいに高いし。まさに名前通り、建築学科の高嶺の花だ。話しかけたところで返してもらえないのが目に見えてるし、俺的にはもうちょい可愛い寄りの方がいいな。身長も俺より低いやつ」
「俺も! ちっこい子の方が守ってやりたい感じがする」
「でも森山は仲良さそうにしてるよな? お前、高嶺の花狙いなのか?」
「いや、別に。喋ったら普通の子だったからたまに話してるだけ。中身は普通だと思うけど……」
「チッチッチ、俺は知ってるの。顔は良くてもボディがねぇ。森山の好みじゃないんだよなー」
「あ、おい、言うなよ……」
「ふっふっふ、こいつ、爆乳好きだから」
「おいっ」
「ブッ――なんだ、真逆じゃん! 高嶺の花はスレンダーでモデル体型だけど、出るとこ出てないもんなぁ」
「はぁ……まあそういうこと。だから別に好みじゃない。俺も可愛い系の抱き心地いいタイプが好みだ」
「フッ、高嶺の花は観賞用だな」
「まさにそれ。ケースに入れて眺める用」
「フィギュアかよ!」
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