妄想聖書

丸我利伊太

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想生記

第一章 闇の深淵

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時間は進んでいた。その時間の進み具合は一定ではなくむらがあったのだ。
この空間では速く進み、別の空間では遅く進む。
時間が早く流れるときもあれば、おそいときもある。
円のようにループする時間も起きていた。

時空間が歪んでいる。

そして、一部分の空間において逆に時間が戻ることがあったのだ。
徐々に、徐々に時間の向きがかわっていった。
時間が逆方向、過去に向かって流れ始めたのだ。

奇跡だ! 第二の奇跡だ!

死んだはずの宇宙が生き返る。
ひとつ、ふたつ、無数の宇宙がよみがえった。

宇宙は会話を始めた。
平和な世界がまたおとずれた。
時間が逆に流れている。
何も、矛盾しなかった。

宇宙は老人から大人、そして子供へと変わっていった。
そしてまた、時間は正常に流れ始めたのだった。

平和な日々が続く。
宇宙は幸せを感じていた。
その幸せは永遠に存在するのだろうか?

誰も自分が死ぬことを知らない……

並行宇宙、パラレルワールド。
その宇宙の隣にまた宇宙が存在する。
四次元空間に三次元空間が並んでいるのだ。
ひとつの三次元に一つの宇宙。
その宇宙が四次元に連なっている。

ひとつひとつの宇宙には物質があり光の波が駆け巡っていた。
心、精神とは四次元空間の物質と波の作用だった。

宇宙は身体を持たなかった。

目もなく、耳もなく、皮膚もなかった。
そこには、物質と波があるだけだった。
心を光の波長として感じるのだった。
宇宙と宇宙を結ぶ光の言葉。

彼らは純粋だった。
けがれを知らなかった。

でも、時は無常に流れてゆく。
彼らに次の試練が待ち受けていた。

次の試練が……
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