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二章
第44話 死神ですか?
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「情けないわね。あんなやつらに、なにを手こずっているの!」
怒りを表すライブラ。
折角の美女も、しかめっ面になって顔に出るシワが残念であった。
「それにしても、あいつら……強いな、戦いの前に『ポーション』を飲んでいるように見えたのだが……」
「ん? 飲んでいたわよ?」
「マジか、あいつら『錬金術師』もいんのか。これは大当たりだな」
自分達が連れて来た兵士達が全員負けたにも関わらず、英雄ヘルドと連れのライブラは何ともないような表情で戦場を眺めていた。
「ねえ、ヘルド! 私に魔法、撃たせてよ!」
「いや、駄目だ」
「えー! 何でよ!」
怒っているライブラに、溜息を一つ吐いたヘルドは続けた。
「あいつら、有能過ぎる。このまま殺すのは勿体ない。俺様の手ごまにしたい、特に『錬金術師』がいるなら話は別だ。お前の魔法だと、全員殺しかねないからな」
ヘルドの言葉に、しょぼくれたライブラは、イライラした姿で小石を蹴った。
◇
「ねえ、アレク」
「どうしたの、アイリス」
「あいつら……ヤバい気がする」
「ああ、僕もそう思うよ」
本当なら、戦場の状況を見ていたかった。
でも、戦場の向こうで、こちらを見つめている男と女から目が離せられない。
こんなに遠くにいても感じるのは、その凄まじい威圧感。
彼がその気なら、一瞬で戦場が制圧されてしまうんじゃないかという不安が頭をよぎっていた。
「そろそろ、あいつらも……動くわよね」
「うん、戦場も静かになったのなら……僕達の勝利だろうから……、駄目だ、一秒も惜しい、アイリス、撤退の指示を」
「え? ――う、うん。分かった」
アイリスから撤退の指示があり、町から撤退指示の鐘の音が戦場に響き渡った。
自分達が優勢だったとしても、この指示を守らない町民は一人もいなかった。
それから暫くして、全員が戻り、防壁の扉が閉められる。
閉める音と共に、今回の負傷者の確認作業が急いで行われている。
全員戻っていると思い、安堵の溜息を吐いた。
そして、向こうの男を見た。
――――!? いない!?
パチパチパチパチ
僕が立っていた防壁の壁に、ある男が座って、拍手をした。
「よお、お前がここの代表か」
「な、な!?」
「おいおい、驚く事もないだろう。お前らが相手しているのが、誰だと思ってる?」
突如の出現に、僕の前をアイリスが遮った、敵対心丸出しで。
「ほぉ、お前、魔女も連れてんのかー、ますます気に入った」
男は平然と喋っているが、その威圧感に晒され、僕は全く動けていなかった。
辛うじて、アイリスが全身から噴き出す汗と共に、彼に向かい対峙出来ていただけだ。
脳裏に一瞬、あの男に一撃でアイリスの首が一瞬で飛ぶ夢が見えた。
「ま、待って! アイリス!」
僕の言葉に、焦っていたアイリスが一歩下がった。
「くっくっくっ、お前のその判断、正解だよ。その女が仕掛けた瞬間、首が飛んだからな」
それが嘘ではない事を、僕もアイリスも、そしてこの場にいる全員が知っていた。
「まあ、言いたい事も多いだろうが、俺様はお前を気に入った。アレクと言ったな? お前に二つだけ選択肢をやろう。喜べよ? 俺様がこんなに寛大な慈悲を与えるなんて、滅多にないからな」
彼の言葉を、一つ一つに全身を集中させる。
たった一瞬。
たった一瞬で我々は死を迎える。
目の前の男が、僕達にとって『死神』である事を理解している。
だから、言葉一つ聞き逃さないように、僕達は彼の口が開くその刹那の瞬間が、永久を感じる程に長く感じた。
怒りを表すライブラ。
折角の美女も、しかめっ面になって顔に出るシワが残念であった。
「それにしても、あいつら……強いな、戦いの前に『ポーション』を飲んでいるように見えたのだが……」
「ん? 飲んでいたわよ?」
「マジか、あいつら『錬金術師』もいんのか。これは大当たりだな」
自分達が連れて来た兵士達が全員負けたにも関わらず、英雄ヘルドと連れのライブラは何ともないような表情で戦場を眺めていた。
「ねえ、ヘルド! 私に魔法、撃たせてよ!」
「いや、駄目だ」
「えー! 何でよ!」
怒っているライブラに、溜息を一つ吐いたヘルドは続けた。
「あいつら、有能過ぎる。このまま殺すのは勿体ない。俺様の手ごまにしたい、特に『錬金術師』がいるなら話は別だ。お前の魔法だと、全員殺しかねないからな」
ヘルドの言葉に、しょぼくれたライブラは、イライラした姿で小石を蹴った。
◇
「ねえ、アレク」
「どうしたの、アイリス」
「あいつら……ヤバい気がする」
「ああ、僕もそう思うよ」
本当なら、戦場の状況を見ていたかった。
でも、戦場の向こうで、こちらを見つめている男と女から目が離せられない。
こんなに遠くにいても感じるのは、その凄まじい威圧感。
彼がその気なら、一瞬で戦場が制圧されてしまうんじゃないかという不安が頭をよぎっていた。
「そろそろ、あいつらも……動くわよね」
「うん、戦場も静かになったのなら……僕達の勝利だろうから……、駄目だ、一秒も惜しい、アイリス、撤退の指示を」
「え? ――う、うん。分かった」
アイリスから撤退の指示があり、町から撤退指示の鐘の音が戦場に響き渡った。
自分達が優勢だったとしても、この指示を守らない町民は一人もいなかった。
それから暫くして、全員が戻り、防壁の扉が閉められる。
閉める音と共に、今回の負傷者の確認作業が急いで行われている。
全員戻っていると思い、安堵の溜息を吐いた。
そして、向こうの男を見た。
――――!? いない!?
パチパチパチパチ
僕が立っていた防壁の壁に、ある男が座って、拍手をした。
「よお、お前がここの代表か」
「な、な!?」
「おいおい、驚く事もないだろう。お前らが相手しているのが、誰だと思ってる?」
突如の出現に、僕の前をアイリスが遮った、敵対心丸出しで。
「ほぉ、お前、魔女も連れてんのかー、ますます気に入った」
男は平然と喋っているが、その威圧感に晒され、僕は全く動けていなかった。
辛うじて、アイリスが全身から噴き出す汗と共に、彼に向かい対峙出来ていただけだ。
脳裏に一瞬、あの男に一撃でアイリスの首が一瞬で飛ぶ夢が見えた。
「ま、待って! アイリス!」
僕の言葉に、焦っていたアイリスが一歩下がった。
「くっくっくっ、お前のその判断、正解だよ。その女が仕掛けた瞬間、首が飛んだからな」
それが嘘ではない事を、僕もアイリスも、そしてこの場にいる全員が知っていた。
「まあ、言いたい事も多いだろうが、俺様はお前を気に入った。アレクと言ったな? お前に二つだけ選択肢をやろう。喜べよ? 俺様がこんなに寛大な慈悲を与えるなんて、滅多にないからな」
彼の言葉を、一つ一つに全身を集中させる。
たった一瞬。
たった一瞬で我々は死を迎える。
目の前の男が、僕達にとって『死神』である事を理解している。
だから、言葉一つ聞き逃さないように、僕達は彼の口が開くその刹那の瞬間が、永久を感じる程に長く感じた。
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