便利すぎるチュートリアルスキルで異世界ぽよんぽよん生活

御峰。

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 大都市レイガリアを知った日から三日が経過した。
 僕の資金は日々増える一方だからいろんな事業に投資をしている。
 その一つが、武器や防具を扱う鍛冶屋。
 魔物の素材や鉱物を加工して作る武器や防具は、多くの魔族の助けとなっている。
 ただ、魔族は人族と違って種族によって体の形やサイズが全然違うため、基本的にオーダーメイドになってしまう。
 となると職人の負担も増え、作れる武器や防具の数もかなり厳しいのが現状だ。
 同じものを時間があるときにたくさん作って売れば、それだけ職人さんの生活も安定するからね。
 だからこそ魔族では鍛冶屋はあまり人気がなく、冒険者になる魔族も意外と少ない。
 僕はそんな現状を変えるべくして鍛冶屋全体に投資をしている。
 もう一つは、グライン街で開発が続いている魔道具。
 友達のリオくんは基本的に兵器系統の開発を進めているが、他の研究者はソエナちゃんのように調理器具などの日常用魔道具を開発してくれていたりする。
 もちろんリオくんだけじゃなく、彼らの魔道具開発にも投資している。
 エヴァさんから魔道具は国が税金を使って開発を進めると言っていたけど、【ぽよんぽよんリラックス】があまりにも繁盛してしまい、今では他国にまで展開して得られる資金が何倍も膨れ上がってしまった。
 他国への投資も検討したけど、僕が魔族の国エラシアに所属しているから国際問題になりかねないと、セレティア様から助言を貰ったのでしないことにした。
 と、実は裏でコッソリ食料を流して、生活が苦しんでいる方々に送ってるんだけどね。
 本日は魔族の国の鍛冶屋組長であるディルシンさんと共にユートピア号で大都市レイガリアにやってきた。
 以前僕達が入った入口前に着地するや否や、大勢のドワーフの皆さんがやってきて、目を光らせてユートピア号を眺める。
 僕にはよくわからない呪文みたいなことを言い合っているけど、どうやらユートピア号について分析しているみたいだ。
 実は世界で最も魔道具の製作に秀でている種族はドワーフ族みたい。
 そんな彼らが目の色を変えて分析するユートピア号を作ったリオくんって、凄いんだなと改めて思えた。
「こんにちは~」
「よ、よお!」
「久しぶり~ソエナちゃん。今回は僕の提案に応じてくれてありがとう」
「こ、こちらこそ、あ、ありがとうございます……?」
「あはは……無理にビジネストークにしなくていいよ? いつも通りで大丈夫だから」
 そう話すと、大きな溜息を吐いて「な~んだ……それでいいのかよ……」と呟いた。
「こちらはうちの鍛冶屋組合のディルシンさん。こちらは僕が何点が購入した調理器具を作ってくれた職人のソエナちゃんです」
「わ、私はまだ……見習いだっつうの……」
「でも立派な調理器具を作れるし、僕にとっては凄い職人さんだよ」
「そ、それは……」
 その時、彼女の後ろからひと際鋭い眼光のおじさんが見えた。
「おい。小僧」
「は、はい?」
「そいつはまだ見習いだ。職人なんて気安く呼ぶんじゃね」
「あはは……」
「お前がソエナが言っていた人族のワタルであってるな?」
「はい」
「うちと取引をしたい……と。しかも売値は全部こちらに任せると」
「はい!」
「いいだろう。じゃあ、こちらの武器を全部で、金貨十枚だ」
 そう話すと、武器が乱雑に入った箱を持った数人のドワーフさんが、僕達の前にいくつもの箱を置いた。
 ディルシンさんが軽く品定めをする。
「……ワタル様」
「はい」
「こちらの品物が金貨十枚だなんて――――ありえないぼったくりです。とてもじゃないが、こんな悪い品なら買うに値しません」
「ふん! 人族とやらは言い値でいいと言いながらその程度か! やはり人族を信じるなんてバカのやることだぜ!」
 怒りが籠った視線を向けてくる。
 それを返すかのようにディルシンさんも睨み返す。
 このままでは魔族とドワーフ族の間に大きなひびが入ってしまうかもしれない。
 それに――――。
「はいはい。ディルシンさん。そんなこと言っちゃダメですよ」
「ワタル様……?」
「僕は言い値で買いますと言いましたし、一度言ったことを後から騙されたからやっぱりなしでとは言いたくないんです。それに――――」
 乱雑に入れられた剣を一本取り出してみる。
 粗悪品……とわかるくらいに少しだけ歪な剣なのは僕でもわかる。
「確かに品としては金額に見合ってないのかも知れません。ですが、品の価値というのは何も効果だけではありません。この剣を打った職人さんが何年も腕を磨いて……辛いこともたくさんあったでしょう。この剣にはそれらの過去と努力が込められています。元々誰かを陥れるために作られた武器なら――――」
 僕は剣を振り上げて、強く地面に叩きつけた。
 バーンと大きな音が周囲に広がっていく。
「これくらいでも折れる物を作るでしょう。でもこの剣は失敗作と言いながら努力が詰まっていて、これくらいじゃびくともしません。僕は利益を出すためにドワーフ族から武器を買いたかったわけじゃありません。多くの駆け出しの冒険者さん達のためです。今は目先の利益よりも、彼らが強くなり生きてくれることで結果的に利益に繋がります。それにもっというなら――――」
 僕は頭の上に乗っていたフウちゃんを抱きしめた。
「僕達には【ぽよんぽよんリラックス】があります! お客様が減っては商売は成り立ちません。いいですね? ディルシンさん」
「ワタル様……ははっ。目先の結果しか見えず、恥ずかしいばかりでございます。これらの武器を必要な人に行き渡らせるように努力させていただきます」
「はい。そうしてくださると本当に助かります」
 僕は怒っていたドワーフさんの前に立った。
「金貨十枚になります。こちらの武器、確かに買わせていただきます」
「なっ……くっ…………ふん。後から金を返せと言われても返さねぇぞ!」
「もちろんです。それよりも、在庫はもっとありませんか? この量の十倍は買いたいんですけど」
「十倍っ!? お、お前……バ、バカなのか!?」
「いえ? というか皆さんは何か大きな勘違いをしていますよ?」
「勘違い……だと?」
「ここにある武器は皆さんにとっては失敗作なのかもしれませんけど……外ではものすごく頑丈な品だと思いますよ? すごく上品なものではないんですけど、まだ収入も安定しない駆け出しの冒険者さんには最高の業物です」
「バ、バカな……それを金貨で買うのがおかしいって言ってるんだ!」
「あはは……だってこれは今すぐ利益を出すための投資じゃないですから。もっと売ってください~もっと高い品でもいいですよ?」
「あ、ありえん……」
「ダメですか?」
「くっ……! お、おい! 倉庫にあるもの全部持って来い!」
「「「へ、へいっ!」」」
 それからいくつもの箱を持って来てくれて、その量は最初の買った武器の二十倍にも達する大量の武器を買うことに成功した。
 ドワーフさんは呆れて全額金貨五十枚まで負けてくれて、とても助かった。
 最初こそ、ドワーフ族がどうしてボロモロシア大荒野に武器を流したのか知りたかったけど、それよりもこうして強力な武器が手に入ったことに感謝するばかりだ。
 さすがに駆け出しの冒険者さんに同じ値段でこの武器は売れないけど、彼らの成長を見越して安価でこの武器を流し、やがて彼らが強くなって【ぽよんぽよんリラックス】を利用してくれたら嬉しい。
 それに……彼らが強くなり、誰かを助けてくれる未来があるのなら、巡り巡ってそれは僕達のためになるから。
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