便利すぎるチュートリアルスキルで異世界ぽよんぽよん生活

御峰。

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「あ、あの! 僕はここから皆さんを助け出したい……。ですが、それを僕の一存だけで選べません。それにここを出たら一度は魔族の国エラシアに来て頂くことにもなります。きっと話したくないことも辛いことを思い出すこともあるでしょう。だとしても皆さんの安全やこれからの生活も支援します。どうか……僕達と一緒に来て頂けませんか?」
 また困惑した表情に変わった彼女達だったが、エルフ族の女性がゆっくりと口を開いた。
「どうして私達を助けてくれるの? 君達に何のメリットもないはずなのに……」
 エレナちゃんと目が合った。
 ニコッと笑ったエレナちゃんは大きく頷いた。
「メリットがないのは助けない理由になりません。助けたいから助ける……というのは僕のわがままかもしれませんが、こうして僕の背中を押してくれる仲間もいますし、彼女の期待にも答えたいですから」
「ほえ? 私?」
「僕はエレナちゃん達……猫耳族に助けられました。彼らがいなければ、今でもコテツと二人で旅をしていたと思いますが、きっといろんな大変なことがあったと思います。彼らに受けた優しさがあるからこそ、誰かに手を差し伸べたい……そう思えるようになったんです」
「優しさ……」
「それにメリットもございます」
「メリット……? どういうメリットが……?」
「僕はこれからエルフ族が住まうアルフヘイムに行こうと思ってます。もし可能ならアルフヘイムのことやエルフ族のことを教えてもらえたら助かります。これではいけませんか?」
 何かを考え込むエルフ族の女性。
 他の女性達も話し合い始めた。
 そんな姿を笑顔で見守るエレナちゃんの姿に、彼女達の表情もまたもや和らいでいく。
 エレナちゃんがいなければ、彼女達から信頼されるのはきっと難しかったと思う。
 この一件が終わったらエレナちゃんに感謝を伝えないとね。
 その時、スキル【レーダー】に大きな赤い丸が一つ、地下に向かってゆっくり移動し始めた。
「っ!? 誰かくる! エレナちゃん。こちらに来る人は僕とコテツで止める。皆さんと話し合ってくれる?」
「わかった!」
「コテツ。行こう」
「わんわん!」
 コテツと一緒に部屋を出る。
 中のことはフウちゃんがいるから何となく伝わってくるし、【レーダー】で誰か隠れていないことも確認しているから大丈夫。
 あとは彼女達の意志が決まるまで待たないと。
 廊下の奥に一人の男が降りてくる。
 【レーダー】から見ただけで強い人なのはわかるけど、どこかで会ったことがある気配……?
 ゆっくり男の姿が見え始めた。
「ん? お前……あの時のガキか。どうしてこんなところに」
「貴方は……バギロス部族の……」
「何か嫌な胸騒ぎがして来てみれば……まさかこんなところでお前に会えるとは。くくくっ。あの時の雪辱。ここで全部返してやるぜ!」
「くっ……コテツ!」
「わんわん!」
 男は歓喜した表情でその背中に背負っていた大きな斧を構えて飛んできた。
 叢雲を生成し、男の斧の先をギリギリで弾く。
「っ! ガキの癖に相変わらずバカ力だな! 魔族の国の少年!」
「僕はワタルです! 魔族の国の少年ではありません!」
「俺は元バギロス部族のバラント!」
「元!?」
「おうよ! お前のおかげであの部族のしきたりというやつから抜け出せた! それに感謝してるぜ!」
「まさか……同部族を!?」
「世は弱肉強食! 権力がなくなった弱者は生きる価値などない!」
「命を……命を何だと思ってるんですか!」
「弱者の命など! 我ら強者のために踏まれるだけの雑草だ!」
「この……わからずや!」
 振り下ろされた斧をギリギリのタイミングで避ける。
 ドワーフ族特製の大斧は、防いだとしても何か特殊な使い方があったりする。
 以前も危険な目に遭った。
 その対策にも相手の懐に飛び込む。
「雷撃小槌!」
 バラントの体を強打する。
 バギギ! と音が廊下に響き渡る。
「くっ! 効かぬ!」
 バラントの太い腕が僕の横顔に飛んでくる。
 雷で破けた服の中に、水色の鎧が見えた。
「雷撃対策などしている!」
「それは……何となく予想してました!」
「何っ!?」
「コテツ!」
 彼の殺気が僕に向けられてるのは知っていたし、懐に飛び込んだ時もその殺気は失わずに自信は消えなかった。
 僕がどう動くかくらい彼も知っていたと思う。
 だからこそ、僕は自分を囮にする。
「鉄の盾!」
 作られた盾に腕を強打する。
 それと同時に隣からコテツの強烈な体当たりが激突し、彼は壁に埋もれる勢いで吹き飛んだ。
「がはっ……」
「僕は一人じゃないんだ!」
「く、くくくっ……だが……ここに来た時点で……お前の負けだ…………帝国の貴族に……魔族の国の者が…………これでまた……戦争だっ!」
「それは……」
「ぐはっ……」
 彼はそう言い残して気を失い倒れた。
 確かに魔族の国所属の僕が帝国の貴族の屋敷に勝手に侵入したとなると……大きな問題となる。
 いくら僕としての理由があったとしても、魔族の国側に明確な理由にはならない。
 このままでは……。
 その時、扉が開いてエレナちゃんが顔を出した。
「ワタル! こっちの話が終わったよ! みんなから了承を得たよ!」
「ありがとう!」
 さっきの戦いの衝撃で上にも伝わったみたいで、【レーダー】には多くの赤い丸がこちらに向かって来るのがわかる。
 このまま逃げることはできるが……それではバラントが目を覚ました時に大きな問題となる。
 ならば……!
「よし! エレナちゃん! みんなさんと一緒に手を繋いで待っていてくれ!」
「あれをやるのね? わかった!」
 意図をわかってくれたみたいで、すぐに部屋の中に入ったエレナちゃん。
 僕は急いで気絶したバラントをコテツと一緒に部屋の中に運んだ。
 中では何だか穏やかな表情で手を繋いだ女性達とエレナちゃんが待っていてくれる。
 僕に向かって手を差し伸べてくれたエレナちゃんの手を握り返す。
「帰ろう」
「うん!」
「――――スキル【拠点帰還】!」
 僕と手を繋いだみんなを優しい光が包み込むと、景色が変わった。
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