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2巻
2-2
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〇
宿屋に戻り、アルトくんに声をかけた。
「おはよう~、アルトくん」
『おは……よ…………』
アルトくんって早起きするイメージがあるんだけど、今日は珍しく遅く起きてきたし、なんだか眠そうだ。
「どうしたの? 眠そうだよ?」
『うぅ……昨日あまり寝れなくて…………』
「そうだったの!?」
『まぁそれはいいさ。それにしても何かいいことでもあったのか?』
「うん! カミラさんと一緒に教会に行ってきたんだ」
『へぇー。ワタルって女神様を信仰しているんだね?』
「う~ん、信仰していると言えるほどじゃないけど、大地の女神様はいつも僕を助けてくれるし、祈ることで少しでも感謝を伝えられたらいいなと思う」
『それはいいことだね~。でも、ネメシス様には気をつけるんだぞ?』
「アルトくんも知ってるんだ?」
『古の勇者様が残した本に書いてあったからね!』
『アルトが……あの本を読んでいたことに驚きよ』
『姉上様!? 僕をどういう風に見ていたんですか!?』
『…………』
カミラさんは何も言わずに後ろを向いて、『ふっ』と声が聞こえそうな笑みを浮かべた。
アルトくん…………頑張って!
アルトくんも起きたので一階に降りると、グランさんとジータさんと他の皆さんがテーブルを囲んで食事を取っていた。ジータさんたちは冒険で外に出ていることが多いため、家は持たずに宿屋で生活しているという。
「ワタルくん! こっちこっち!」
ジータさんが笑顔で手を振っている。
僕たちがテーブルに着くと、それを確認した店員さんがすぐに朝食を運んできた。
「ワタルくんは、これからどうするの?」
「ん~、このまま次の街を目指してもいいんですけど、この街の周辺で面白い場所があったら寄ってみたいなとも思っていて、どこかありますか?」
「面白い場所?」
「はい。普通じゃないというか、なんか珍しい場所とか?」
「珍しい場所か~、ん~、それならダンジョンとかどう?」
「ええええ!? ダンジョンなんてあるんですか!?」
「うふふ。ワタルくんっていつも面白い反応をするんだね。あるわよ?」
「すごい! 行ってみたいです!」
「それなら街を出て南に伸びている道を進んでいくと、看板が出ているはずよ」
「ありがとうございます! 早速行ってみます!」
ダンジョンと聞くだけでワクワクする。前世のゲームでもよくあったダンジョン。そこには険しくてもワクワクする冒険があるはずだ。
「ダンジョンは危険な魔物も多く出るから気をつけてね?」
「はいっ!」
ダンジョンについて詳しく聞きながら朝食を食べ終えた。
「宿と食事、ありがとうございました」
「ううん。こちらこそ助けてくれてありがとう。大怪我しなくて済んだし、これくらい大したことないわよ。もし困ったことがあったら、いつでも私たちを訪ねてきてね」
「はい! その時はよろしくお願いします!」
第2話
ジータさんたちに別れを告げて、早速街の南に向かう。
街の中央にはお店がたくさんあるけど、そこから少し外れると民家が多く並んでいた。
ちょっとした広い空き地では子どもたちが遊んでいたり、散歩を楽しんでいるカップルがいたりする。
そんな生活感を感じられる街を抜け、南門を出て道沿いを歩く。
看板が出ているらしいから、ゆっくり足を進めた。
しばらく歩き続けると、看板に「アルゼンダンジョンはこちら」の文言と矢印が書かれていた。
「どうやらこっちみたいですね」
カミラさんも確認して頷いた。
分かれ道を右に曲がり、さらに進む。
またしばらく歩くと、道が洞窟に続いているのが見えた。
『あそこがダンジョンみたいだね。こんな場所にダンジョンがあるなんて知らなかったわ』
「カミラさんはダンジョンに入ったことがあるんですか?」
『そうね。昔ちょっとね』
カミラさんって博識というか、経験豊かというか、なんでも知っているよね。
僕は初めてのダンジョンにワクワクしながら、みんなと中に入った。
中は想像通り洞窟そのもので、くねくねした道が続いている。
気になる点を挙げるなら、壁から不思議な気配――――魔力を感じるということだ。
『壁が気になるの?』
「えっと、不思議な魔力を感じるんですよね」
『ダンジョンはね、生きているのよ。壁を壊してもまた再生したりするのよ』
「へぇー! そうなんですね! やってみてもいいですか?」
『いいと思うけど、あまりたくさん壊すと何が起きるか分からないわよ?』
気になったので叢雲で壁を斬ってみる。
壁に小さな傷がついて地面に石がポロポロと落ちた。
しばらく観察していると、壁につけた傷が少しずつもとに戻り始める。
「すごい! 壁がもと通りになりましたね!」
『ダンジョンはもとの姿に戻りたがる習性があるみたいなのよね』
戻ってるところをよく見ると、壁を覆っている魔力が壁に変わっていく。
そして壁を傷つけた時に地面に落ちた石は粒子となって、魔力としてまたダンジョンに吸収されていった。
「なるほど…………ダンジョンの壁は金属ではなくて、魔力の塊だったんですね」
『ん? どういうこと?』
「えっと、この壁も魔力で作られていますし、石も魔力に戻っていきましたから、具現化する魔法と言うか、ダンジョン自体が魔法みたいなものかなと」
『ふ、ふむ? ワタルくんって意外と考えるのが好きなのかしら……』
カミラさんが何かをボソッとつぶやいたけど、声が小さくて聞こえなかった。
アルトくんを先頭に道を歩き進める。
アルトくんに続くコテツの後ろ姿がまた凛々しくて微笑ましい。
念のため【レーダー】にも意識を向けると、ダンジョンが入り組んだ形なのがよく分かる。
「アルトくん、そこは左だよ」
僕の言葉に従って道を進んでいく。
「その先に魔物がいるよ~」
『分かった!』
最初に出会った魔物は大きな蛇型の魔物だったけど、アルトくんの爪攻撃の一撃で倒れた。
倒した魔物を観察していると、その全身が透けていき、最後は魔力の粒子となって姿を消した。
そして、消えた魔物の跡には、青く光る不思議な小さな宝石が落ちていた。
「カミラさん、これはなんですか?」
『ワタルくんって運がいいわね。それは魔石と呼ばれているモノだよ。中に魔力が込められた石と言えばいいのかしら。使い道が多いから、街ではたくさん買い取りしているのよ』
「確かに石の中から魔力を感じますね。それにしても運がいいということは、落ちないこともあるんですか?」
ダンジョンの壁から感じる魔力と似ているけど、魔力の雰囲気が少し違う。
『その通りよ。むしろ魔石が残ることが稀なのよ。魔物によって落とす大きさが違うから、強い魔物を倒して大きな魔石を狙う魔石ハンターを生業にする人もいるくらいだよ』
「おお! 魔石ハンター! かっこいい名前です!」
『ふふっ。ただ毎回残る訳じゃないから、地上の魔物を狩った方が生活はしやすいそうよ』
「そうなんですね~。魔石ってどれくらいの確率で残るんでしょう?」
『ん~、聞いた話では百体のうち一体から落ちるそうよ?』
「思っていた以上にとても低かったです……」
『そうね。だからワタルくんは運がいいのよ。私がダンジョンに入る時に魔石のことを説明しなかったのも、いつ落ちるか分からないから、落ちてから説明をしようと思っていたの』
僕は手の中にある魔石を見つめた。
最初は青色だと思ったけど、透明な石の中に青色の魔力がうねって水色に光っている。
「カミラさん。魔石って全部青いんですか?」
『ううん。青色以外にも、赤色と黒色があるわ。ただ、赤色と黒色はなかなか手に入らないし、どこから手に入るかも分からないわよ』
「えっ? どこから手に入るか分からない?」
『ええ。書面でしか残ってないくらい貴重なものなの。だから、普通は青色の魔石しかないと思ってくれていいわよ』
赤色と黒色の魔石…………覚えておこう。
魔石について色々知れたので、また道を進みながら魔物を狩っていく。
アルトくんやコテツが楽しそうに魔物を倒していった。
しばらく狩りを続けていると、カミラさんが目を細めてボソッとつぶやいた。
『おかしいわ…………』
実は僕もカミラさんと全く同じ感想を持っている。
その理由は――――目の前に落ちている魔石のせいだ。
くねくねしたダンジョンの奥を目指して進みながら、魔物を狩る。
アルトくんとコテツが交互に倒しているが、そこで異変を感じた。
「えっと…………また落ちましたね?」
『ありえないわ……魔石がこんなに落ちるなんて聞いたことないもの……』
「あはは……はは…………」
理由は分からないけど、倒した全ての魔物から魔石が落ちている。
最初の三回までは偶然かなと思っていたけど、それが十回も続くと何か変だと感じた。今三十個目の魔石が落ちたので、魔物を狩ると魔石が必ず落ちていることになる。
拾った魔石は全てアルトくんの背中に括りつけた鞄の中に入れた。
数が増えれば増えるほど重くなるので、どうしようかなと考えているところだ。
「あ! そろそろ最奥ですね!」
【レーダー】にダンジョン内の一番広い場所が映っていて、そこから先は道がない。
ダンジョンというから複数の層になっているのかなと思っていたけど、一層しかなかった。
『周囲の地形が分かるのも信じられないわ……ダンジョンで道に迷わないなんて…………』
カミラさん曰く、ダンジョンでは道に迷って出られなくなる人がいるそうだ。なので、入る時は長期間いられる準備を整えて入るみたい。
道を進んで最奥の広間に着くと、広い空間の奥に不思議な扉が見えた。壁に埋もれている訳ではなく、ただポツンと立っている。
扉は壁についているモノというのが僕の常識だからか、ものすごく違和感を覚える。
『あの中がボス部屋よ』
「ボス!」
その言葉だけでワクワクが止まらない。
『ワタル! 入ってみようぜ!』
「うん!」
恐る恐る扉を開いた。
扉の先は虹色の不思議な光がうねうねしていて奥が見えない。
「このまま入ればいいんですよね?」
『そうね。ボスがすぐに攻撃してくることはないと思うけど、一応用心しておいてね』
「はい!」
扉の奥に一歩足を踏み入れた。
通り抜ける際、虹色の光で視界がいっぱいになり、先ほどの広間より数倍大きい空間が現れた。
中は光が全く差し込まないのに、不思議と明るい。
全体を照らしている光…………ダンジョンが帯びている光だったんだね。
みんなでボス部屋に入ると扉が閉まり、カチッと鍵がかかる音が響いた。
これはボス部屋に他の人が入らないようにするためで、逃げる時は内側から鍵を開けて外に出ればいいらしい。
扉が閉まってすぐ、広間の奥に黒い靄が立ち昇って形を作り始めた。
大きな形を作った黒い靄の中から姿を見せたのは、巨大な人型の牛の魔物だった。
『ミノタウロスだわ! かなり強力なボスで、ボスの中ではハズレよ! 気をつけて!』
カミラさんがハズレと言う魔物のボス。それは、場合によっては当たりとも言えた。
強力なボスほど倒した際の報酬は高くなるが、その分危険性が高い。
初めてのボスがミノタウロスというのは、そういう意味ではハズレなのだろう。
「ワンワン!」
「ごめんごめん。エクスカリバー!」
コテツの催促でスキル【武器防具生成】をコテツに使って専用武器、聖剣エクスカリバーを呼び出した。するとコテツが眩い光に包まれ、茶色だった毛が真っ白に変わって「勇者モード」になった。
ダンジョンの中で勇者モードとなったコテツの美しい白い毛並みが光り輝く。
「がおーん!」
真っ先にコテツが飛び出た。
『姉上様!』
『分かってるわよ!』
アルトくんとカミラさんが左右に分かれて飛び出して、コテツと三方向から中央のミノタウロスを攻め始める。
ミノタウロスがコテツに狙いを定めて走り出したが、両サイドから雷攻撃がミノタウロスを襲う。
僕も【武器防具生成】で専用武器、叢雲を取り出してコテツの後ろを追った。
アルトくんたちの雷攻撃で足が竦んだミノタウロスに、コテツが連続で斬撃を浴びせた。
「グルァアアアアアアア!」
大きな咆哮による音圧でコテツは飛ばされたが、なんてことないというように空中で体勢を整えて、悠々と着地するコテツ。
その着地と同時に、今度は僕が攻撃を始めた。
ミノタウロスとの身体の大きさがあまりにも違い、胴体を攻撃するにはリスクが伴うため、足元を斬りつける。
すぐに振り下ろされる巨大な斧の気配を感じて、後方に瞬時に離脱した。
斧が空振りして地面を叩きつけると同時に、また雷がミノタウロスを襲う。
強いボスというだけあって、ものすごくタフだね……!
どうやって攻撃しようかなと悩んで、思いついたある戦法を試すことにする。
雷攻撃が鳴り止む前に、手に持った叢雲をミノタウロスの頭部に目掛けて投げつけた。
叢雲が後頭部に刺さるとミノタウロスがまた大きく吠える。
数秒すると刺さった叢雲が消えたので、再度召喚する。
これなら魔力を1だけ消耗して、叢雲を投げナイフの代わりに使える。ふと思いついた作戦だったけど、上手くいってよかった。これからも戦いで使えそうだ。
ミノタウロスが僕に向きを変えて、巨大な斧を一心不乱に振り下ろす。
エレナちゃんのお父さん、ゲラルドさんから教わった「相手が自分を攻撃している間、仲間がいるなら回避に専念して味方を信じる」を実行する。
本来なら相手の攻撃にカウンターを合わせるのが定石だったが、味方がいるなら味方の攻撃のチャンスにもなるので、そのまま注意を引きつける。
ミノタウロスの斧が地面を叩く度に、地面の石が周囲に飛ぶので、叢雲で飛んでくる石を払いながら振り下ろされる斧を懸命に避けた。
今度はコテツがミノタウロスの背中を駆け上がり、後頭部に素早く聖剣を連続で斬りつける。
コテツを追い払うためにミノタウロスが後頭部に左腕を上げたタイミングで、僕は叢雲をその顔に目掛けて投げつけた。
ミノタウロスは飛んできた叢雲を左手で防いだため、後頭部にいるコテツの攻撃がやむことなく続いた。
『コテツ殿! 行くぞ!』
アルトくんの声が聞こえて、コテツが後ろに大きく跳んだところに強烈な雷が落ちる。
先ほどの雷より威力が数倍大きくなっていて、ミノタウロスが痛々しい鳴き声を上げた。
最後に僕が、再度叢雲を顔面に目掛けて投げつけて、それが頭に刺さると、ミノタウロスの身体が真っ黒い靄になって空中に消えていった。
「コテツ! カミラさん! アルトくん! 勝ったよ~!」
「ワンワン!」
『勝ったぞ~!』
『勝ってしまったわ…………』
飛んできたコテツが僕の顔を舐め始める。
「あはは~、くすぐったいよ~、コテツ~」
アルトくんも来てコテツと一緒にわちゃわちゃし始める。
僕とコテツとアルトくんでわちゃわちゃしてたら三人が丸くまとまって、ぐるぐる転がった。
転がった先で何かにぶつかる。
「あ~! 宝箱!?」
人生で初めて見る宝箱だ。
ゲームとかアニメでしか見たことがない宝箱は、僕が異世界で夢見ていたものの一つでもある。
「カミラさん! 開けてみてもいいですか?」
『もちろんいいわよ』
「じゃあ、早速開けてみます~!」
宝箱の上部を両手でつかんでゆっくり開ける。
開いた中から眩しい光が溢れ出した。
「眩しい~!」
目を細めながら宝箱を全開にした。
するとパカッと開いた宝箱から光が消え、中が見えるようになった。
「えっと……? これはなんだろう?」
宝箱の中に入っていたのは――――薄緑色の布だ。いや、マントか?
手に取ってみると、ものすごく触り心地がよくて、前世のシルクのような肌触りの布だった。
広げてみると、とてもじゃないけど、僕が着用できるサイズには思えない。
だって、小さな僕でも小さいと感じる大きさだから。
首に巻けるようになってるから、マントなのは間違いなさそうだけど……。
その時、コテツが視界に入る。
コテツとマントを交互に見て、おもむろにコテツの首元に持っていき、マントをつけてみた。
「わあ~! コテツ! すっごく似合ってるよ!」
薄緑色のマントが、通常時に戻ったコテツの茶色い毛並みにとても似合っていて、勇者モードのコテツとはまた違う感じの勇者っぽさがある。
『コテツ殿にとても似合ってますな~!』
「ワンワン!」
『珍しいわね……本来ならワタルくんの装備が出ると思うんだけど…………』
「僕は今のままでも十分満足してますから。コテツに似合うモノが出てきて嬉しいです!」
『まぁそれならいいけど。あんなに強いボスを倒したから、性能もきっといいモノだと思うわ』
「肌触りはとてもいいんですけど、装備品としての性能もあるんですね。どんな性能なんだろう?」
「ワン~!」
一回吠えたコテツは、なんとその場から――――――
「えええええ!?」
『おお~! コテツ殿! すごいですな!』
『これはまた大当たりを引いたみたいだね』
僕たちが驚くのも無理はなかった。
だって、目の前のコテツは――――少し宙に浮いていたのだから。
〇
ダンジョンからゆっくり帰る道。
コテツは手に入れたマントが気に入ったらしくて、僕たちの前を飛んだまま進んでいる。
ボスを倒して手に入れた装備らしい高性能で、着用者を浮遊させる力を持っているみたい。
ただし、どこまでも飛べる訳ではなく、地面から二メートルくらいが限界のようだ。
飛ぶ速度はコテツが普段から走れる速度と同じで、まっすぐ飛ぶ時は足をまっすぐ伸ばすのに対して、上がったり下がったりする時は足をパタパタさせるから空中を走っているように見える。
『コテツ殿、ご機嫌ですな~』
「ワン! ワン!」
『それは羨ましい~! 僕もいつか飛べるかな?』
「ワフッ!」
『そうですな! 今度は僕が着用できるマントが出るといいなぁ~』
「ワン!」
ふむふむ…………。
多分「アルトくんの専用マントもいずれ出るよ~」と言っているのかな?
段々コテツの言っていることが分かってきた気がするわん。
帰り道で倒した魔物からも当たり前のように魔石が落ち、それを全て拾って帰る。
ベン街に着く頃には、お日様が傾いて辺りが暗くなり始めていた。
宿屋に戻り、アルトくんに声をかけた。
「おはよう~、アルトくん」
『おは……よ…………』
アルトくんって早起きするイメージがあるんだけど、今日は珍しく遅く起きてきたし、なんだか眠そうだ。
「どうしたの? 眠そうだよ?」
『うぅ……昨日あまり寝れなくて…………』
「そうだったの!?」
『まぁそれはいいさ。それにしても何かいいことでもあったのか?』
「うん! カミラさんと一緒に教会に行ってきたんだ」
『へぇー。ワタルって女神様を信仰しているんだね?』
「う~ん、信仰していると言えるほどじゃないけど、大地の女神様はいつも僕を助けてくれるし、祈ることで少しでも感謝を伝えられたらいいなと思う」
『それはいいことだね~。でも、ネメシス様には気をつけるんだぞ?』
「アルトくんも知ってるんだ?」
『古の勇者様が残した本に書いてあったからね!』
『アルトが……あの本を読んでいたことに驚きよ』
『姉上様!? 僕をどういう風に見ていたんですか!?』
『…………』
カミラさんは何も言わずに後ろを向いて、『ふっ』と声が聞こえそうな笑みを浮かべた。
アルトくん…………頑張って!
アルトくんも起きたので一階に降りると、グランさんとジータさんと他の皆さんがテーブルを囲んで食事を取っていた。ジータさんたちは冒険で外に出ていることが多いため、家は持たずに宿屋で生活しているという。
「ワタルくん! こっちこっち!」
ジータさんが笑顔で手を振っている。
僕たちがテーブルに着くと、それを確認した店員さんがすぐに朝食を運んできた。
「ワタルくんは、これからどうするの?」
「ん~、このまま次の街を目指してもいいんですけど、この街の周辺で面白い場所があったら寄ってみたいなとも思っていて、どこかありますか?」
「面白い場所?」
「はい。普通じゃないというか、なんか珍しい場所とか?」
「珍しい場所か~、ん~、それならダンジョンとかどう?」
「ええええ!? ダンジョンなんてあるんですか!?」
「うふふ。ワタルくんっていつも面白い反応をするんだね。あるわよ?」
「すごい! 行ってみたいです!」
「それなら街を出て南に伸びている道を進んでいくと、看板が出ているはずよ」
「ありがとうございます! 早速行ってみます!」
ダンジョンと聞くだけでワクワクする。前世のゲームでもよくあったダンジョン。そこには険しくてもワクワクする冒険があるはずだ。
「ダンジョンは危険な魔物も多く出るから気をつけてね?」
「はいっ!」
ダンジョンについて詳しく聞きながら朝食を食べ終えた。
「宿と食事、ありがとうございました」
「ううん。こちらこそ助けてくれてありがとう。大怪我しなくて済んだし、これくらい大したことないわよ。もし困ったことがあったら、いつでも私たちを訪ねてきてね」
「はい! その時はよろしくお願いします!」
第2話
ジータさんたちに別れを告げて、早速街の南に向かう。
街の中央にはお店がたくさんあるけど、そこから少し外れると民家が多く並んでいた。
ちょっとした広い空き地では子どもたちが遊んでいたり、散歩を楽しんでいるカップルがいたりする。
そんな生活感を感じられる街を抜け、南門を出て道沿いを歩く。
看板が出ているらしいから、ゆっくり足を進めた。
しばらく歩き続けると、看板に「アルゼンダンジョンはこちら」の文言と矢印が書かれていた。
「どうやらこっちみたいですね」
カミラさんも確認して頷いた。
分かれ道を右に曲がり、さらに進む。
またしばらく歩くと、道が洞窟に続いているのが見えた。
『あそこがダンジョンみたいだね。こんな場所にダンジョンがあるなんて知らなかったわ』
「カミラさんはダンジョンに入ったことがあるんですか?」
『そうね。昔ちょっとね』
カミラさんって博識というか、経験豊かというか、なんでも知っているよね。
僕は初めてのダンジョンにワクワクしながら、みんなと中に入った。
中は想像通り洞窟そのもので、くねくねした道が続いている。
気になる点を挙げるなら、壁から不思議な気配――――魔力を感じるということだ。
『壁が気になるの?』
「えっと、不思議な魔力を感じるんですよね」
『ダンジョンはね、生きているのよ。壁を壊してもまた再生したりするのよ』
「へぇー! そうなんですね! やってみてもいいですか?」
『いいと思うけど、あまりたくさん壊すと何が起きるか分からないわよ?』
気になったので叢雲で壁を斬ってみる。
壁に小さな傷がついて地面に石がポロポロと落ちた。
しばらく観察していると、壁につけた傷が少しずつもとに戻り始める。
「すごい! 壁がもと通りになりましたね!」
『ダンジョンはもとの姿に戻りたがる習性があるみたいなのよね』
戻ってるところをよく見ると、壁を覆っている魔力が壁に変わっていく。
そして壁を傷つけた時に地面に落ちた石は粒子となって、魔力としてまたダンジョンに吸収されていった。
「なるほど…………ダンジョンの壁は金属ではなくて、魔力の塊だったんですね」
『ん? どういうこと?』
「えっと、この壁も魔力で作られていますし、石も魔力に戻っていきましたから、具現化する魔法と言うか、ダンジョン自体が魔法みたいなものかなと」
『ふ、ふむ? ワタルくんって意外と考えるのが好きなのかしら……』
カミラさんが何かをボソッとつぶやいたけど、声が小さくて聞こえなかった。
アルトくんを先頭に道を歩き進める。
アルトくんに続くコテツの後ろ姿がまた凛々しくて微笑ましい。
念のため【レーダー】にも意識を向けると、ダンジョンが入り組んだ形なのがよく分かる。
「アルトくん、そこは左だよ」
僕の言葉に従って道を進んでいく。
「その先に魔物がいるよ~」
『分かった!』
最初に出会った魔物は大きな蛇型の魔物だったけど、アルトくんの爪攻撃の一撃で倒れた。
倒した魔物を観察していると、その全身が透けていき、最後は魔力の粒子となって姿を消した。
そして、消えた魔物の跡には、青く光る不思議な小さな宝石が落ちていた。
「カミラさん、これはなんですか?」
『ワタルくんって運がいいわね。それは魔石と呼ばれているモノだよ。中に魔力が込められた石と言えばいいのかしら。使い道が多いから、街ではたくさん買い取りしているのよ』
「確かに石の中から魔力を感じますね。それにしても運がいいということは、落ちないこともあるんですか?」
ダンジョンの壁から感じる魔力と似ているけど、魔力の雰囲気が少し違う。
『その通りよ。むしろ魔石が残ることが稀なのよ。魔物によって落とす大きさが違うから、強い魔物を倒して大きな魔石を狙う魔石ハンターを生業にする人もいるくらいだよ』
「おお! 魔石ハンター! かっこいい名前です!」
『ふふっ。ただ毎回残る訳じゃないから、地上の魔物を狩った方が生活はしやすいそうよ』
「そうなんですね~。魔石ってどれくらいの確率で残るんでしょう?」
『ん~、聞いた話では百体のうち一体から落ちるそうよ?』
「思っていた以上にとても低かったです……」
『そうね。だからワタルくんは運がいいのよ。私がダンジョンに入る時に魔石のことを説明しなかったのも、いつ落ちるか分からないから、落ちてから説明をしようと思っていたの』
僕は手の中にある魔石を見つめた。
最初は青色だと思ったけど、透明な石の中に青色の魔力がうねって水色に光っている。
「カミラさん。魔石って全部青いんですか?」
『ううん。青色以外にも、赤色と黒色があるわ。ただ、赤色と黒色はなかなか手に入らないし、どこから手に入るかも分からないわよ』
「えっ? どこから手に入るか分からない?」
『ええ。書面でしか残ってないくらい貴重なものなの。だから、普通は青色の魔石しかないと思ってくれていいわよ』
赤色と黒色の魔石…………覚えておこう。
魔石について色々知れたので、また道を進みながら魔物を狩っていく。
アルトくんやコテツが楽しそうに魔物を倒していった。
しばらく狩りを続けていると、カミラさんが目を細めてボソッとつぶやいた。
『おかしいわ…………』
実は僕もカミラさんと全く同じ感想を持っている。
その理由は――――目の前に落ちている魔石のせいだ。
くねくねしたダンジョンの奥を目指して進みながら、魔物を狩る。
アルトくんとコテツが交互に倒しているが、そこで異変を感じた。
「えっと…………また落ちましたね?」
『ありえないわ……魔石がこんなに落ちるなんて聞いたことないもの……』
「あはは……はは…………」
理由は分からないけど、倒した全ての魔物から魔石が落ちている。
最初の三回までは偶然かなと思っていたけど、それが十回も続くと何か変だと感じた。今三十個目の魔石が落ちたので、魔物を狩ると魔石が必ず落ちていることになる。
拾った魔石は全てアルトくんの背中に括りつけた鞄の中に入れた。
数が増えれば増えるほど重くなるので、どうしようかなと考えているところだ。
「あ! そろそろ最奥ですね!」
【レーダー】にダンジョン内の一番広い場所が映っていて、そこから先は道がない。
ダンジョンというから複数の層になっているのかなと思っていたけど、一層しかなかった。
『周囲の地形が分かるのも信じられないわ……ダンジョンで道に迷わないなんて…………』
カミラさん曰く、ダンジョンでは道に迷って出られなくなる人がいるそうだ。なので、入る時は長期間いられる準備を整えて入るみたい。
道を進んで最奥の広間に着くと、広い空間の奥に不思議な扉が見えた。壁に埋もれている訳ではなく、ただポツンと立っている。
扉は壁についているモノというのが僕の常識だからか、ものすごく違和感を覚える。
『あの中がボス部屋よ』
「ボス!」
その言葉だけでワクワクが止まらない。
『ワタル! 入ってみようぜ!』
「うん!」
恐る恐る扉を開いた。
扉の先は虹色の不思議な光がうねうねしていて奥が見えない。
「このまま入ればいいんですよね?」
『そうね。ボスがすぐに攻撃してくることはないと思うけど、一応用心しておいてね』
「はい!」
扉の奥に一歩足を踏み入れた。
通り抜ける際、虹色の光で視界がいっぱいになり、先ほどの広間より数倍大きい空間が現れた。
中は光が全く差し込まないのに、不思議と明るい。
全体を照らしている光…………ダンジョンが帯びている光だったんだね。
みんなでボス部屋に入ると扉が閉まり、カチッと鍵がかかる音が響いた。
これはボス部屋に他の人が入らないようにするためで、逃げる時は内側から鍵を開けて外に出ればいいらしい。
扉が閉まってすぐ、広間の奥に黒い靄が立ち昇って形を作り始めた。
大きな形を作った黒い靄の中から姿を見せたのは、巨大な人型の牛の魔物だった。
『ミノタウロスだわ! かなり強力なボスで、ボスの中ではハズレよ! 気をつけて!』
カミラさんがハズレと言う魔物のボス。それは、場合によっては当たりとも言えた。
強力なボスほど倒した際の報酬は高くなるが、その分危険性が高い。
初めてのボスがミノタウロスというのは、そういう意味ではハズレなのだろう。
「ワンワン!」
「ごめんごめん。エクスカリバー!」
コテツの催促でスキル【武器防具生成】をコテツに使って専用武器、聖剣エクスカリバーを呼び出した。するとコテツが眩い光に包まれ、茶色だった毛が真っ白に変わって「勇者モード」になった。
ダンジョンの中で勇者モードとなったコテツの美しい白い毛並みが光り輝く。
「がおーん!」
真っ先にコテツが飛び出た。
『姉上様!』
『分かってるわよ!』
アルトくんとカミラさんが左右に分かれて飛び出して、コテツと三方向から中央のミノタウロスを攻め始める。
ミノタウロスがコテツに狙いを定めて走り出したが、両サイドから雷攻撃がミノタウロスを襲う。
僕も【武器防具生成】で専用武器、叢雲を取り出してコテツの後ろを追った。
アルトくんたちの雷攻撃で足が竦んだミノタウロスに、コテツが連続で斬撃を浴びせた。
「グルァアアアアアアア!」
大きな咆哮による音圧でコテツは飛ばされたが、なんてことないというように空中で体勢を整えて、悠々と着地するコテツ。
その着地と同時に、今度は僕が攻撃を始めた。
ミノタウロスとの身体の大きさがあまりにも違い、胴体を攻撃するにはリスクが伴うため、足元を斬りつける。
すぐに振り下ろされる巨大な斧の気配を感じて、後方に瞬時に離脱した。
斧が空振りして地面を叩きつけると同時に、また雷がミノタウロスを襲う。
強いボスというだけあって、ものすごくタフだね……!
どうやって攻撃しようかなと悩んで、思いついたある戦法を試すことにする。
雷攻撃が鳴り止む前に、手に持った叢雲をミノタウロスの頭部に目掛けて投げつけた。
叢雲が後頭部に刺さるとミノタウロスがまた大きく吠える。
数秒すると刺さった叢雲が消えたので、再度召喚する。
これなら魔力を1だけ消耗して、叢雲を投げナイフの代わりに使える。ふと思いついた作戦だったけど、上手くいってよかった。これからも戦いで使えそうだ。
ミノタウロスが僕に向きを変えて、巨大な斧を一心不乱に振り下ろす。
エレナちゃんのお父さん、ゲラルドさんから教わった「相手が自分を攻撃している間、仲間がいるなら回避に専念して味方を信じる」を実行する。
本来なら相手の攻撃にカウンターを合わせるのが定石だったが、味方がいるなら味方の攻撃のチャンスにもなるので、そのまま注意を引きつける。
ミノタウロスの斧が地面を叩く度に、地面の石が周囲に飛ぶので、叢雲で飛んでくる石を払いながら振り下ろされる斧を懸命に避けた。
今度はコテツがミノタウロスの背中を駆け上がり、後頭部に素早く聖剣を連続で斬りつける。
コテツを追い払うためにミノタウロスが後頭部に左腕を上げたタイミングで、僕は叢雲をその顔に目掛けて投げつけた。
ミノタウロスは飛んできた叢雲を左手で防いだため、後頭部にいるコテツの攻撃がやむことなく続いた。
『コテツ殿! 行くぞ!』
アルトくんの声が聞こえて、コテツが後ろに大きく跳んだところに強烈な雷が落ちる。
先ほどの雷より威力が数倍大きくなっていて、ミノタウロスが痛々しい鳴き声を上げた。
最後に僕が、再度叢雲を顔面に目掛けて投げつけて、それが頭に刺さると、ミノタウロスの身体が真っ黒い靄になって空中に消えていった。
「コテツ! カミラさん! アルトくん! 勝ったよ~!」
「ワンワン!」
『勝ったぞ~!』
『勝ってしまったわ…………』
飛んできたコテツが僕の顔を舐め始める。
「あはは~、くすぐったいよ~、コテツ~」
アルトくんも来てコテツと一緒にわちゃわちゃし始める。
僕とコテツとアルトくんでわちゃわちゃしてたら三人が丸くまとまって、ぐるぐる転がった。
転がった先で何かにぶつかる。
「あ~! 宝箱!?」
人生で初めて見る宝箱だ。
ゲームとかアニメでしか見たことがない宝箱は、僕が異世界で夢見ていたものの一つでもある。
「カミラさん! 開けてみてもいいですか?」
『もちろんいいわよ』
「じゃあ、早速開けてみます~!」
宝箱の上部を両手でつかんでゆっくり開ける。
開いた中から眩しい光が溢れ出した。
「眩しい~!」
目を細めながら宝箱を全開にした。
するとパカッと開いた宝箱から光が消え、中が見えるようになった。
「えっと……? これはなんだろう?」
宝箱の中に入っていたのは――――薄緑色の布だ。いや、マントか?
手に取ってみると、ものすごく触り心地がよくて、前世のシルクのような肌触りの布だった。
広げてみると、とてもじゃないけど、僕が着用できるサイズには思えない。
だって、小さな僕でも小さいと感じる大きさだから。
首に巻けるようになってるから、マントなのは間違いなさそうだけど……。
その時、コテツが視界に入る。
コテツとマントを交互に見て、おもむろにコテツの首元に持っていき、マントをつけてみた。
「わあ~! コテツ! すっごく似合ってるよ!」
薄緑色のマントが、通常時に戻ったコテツの茶色い毛並みにとても似合っていて、勇者モードのコテツとはまた違う感じの勇者っぽさがある。
『コテツ殿にとても似合ってますな~!』
「ワンワン!」
『珍しいわね……本来ならワタルくんの装備が出ると思うんだけど…………』
「僕は今のままでも十分満足してますから。コテツに似合うモノが出てきて嬉しいです!」
『まぁそれならいいけど。あんなに強いボスを倒したから、性能もきっといいモノだと思うわ』
「肌触りはとてもいいんですけど、装備品としての性能もあるんですね。どんな性能なんだろう?」
「ワン~!」
一回吠えたコテツは、なんとその場から――――――
「えええええ!?」
『おお~! コテツ殿! すごいですな!』
『これはまた大当たりを引いたみたいだね』
僕たちが驚くのも無理はなかった。
だって、目の前のコテツは――――少し宙に浮いていたのだから。
〇
ダンジョンからゆっくり帰る道。
コテツは手に入れたマントが気に入ったらしくて、僕たちの前を飛んだまま進んでいる。
ボスを倒して手に入れた装備らしい高性能で、着用者を浮遊させる力を持っているみたい。
ただし、どこまでも飛べる訳ではなく、地面から二メートルくらいが限界のようだ。
飛ぶ速度はコテツが普段から走れる速度と同じで、まっすぐ飛ぶ時は足をまっすぐ伸ばすのに対して、上がったり下がったりする時は足をパタパタさせるから空中を走っているように見える。
『コテツ殿、ご機嫌ですな~』
「ワン! ワン!」
『それは羨ましい~! 僕もいつか飛べるかな?』
「ワフッ!」
『そうですな! 今度は僕が着用できるマントが出るといいなぁ~』
「ワン!」
ふむふむ…………。
多分「アルトくんの専用マントもいずれ出るよ~」と言っているのかな?
段々コテツの言っていることが分かってきた気がするわん。
帰り道で倒した魔物からも当たり前のように魔石が落ち、それを全て拾って帰る。
ベン街に着く頃には、お日様が傾いて辺りが暗くなり始めていた。
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