【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。

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14話 新しい力

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「せ、セレナ……そんなに捕まえて来たんだね……」

 傷一つなく、まるでピクニックにでも行ってきたかのように緩い笑顔のセレナの後ろには、大量のコーンラビットが入った大きな籠が置かれた。

 今日は本気で狩ると言っていた通り、セレナは午前中だけでもコーンラビットを三十体も捕まえてきた。しかもどれも外傷がない。

「全部衝撃波だけで倒してるから外傷はないと思う!」

 しょ、衝撃波!? それだけでそんな簡単に倒せるもんなのか!?

 …………これからセレナに逆らうのはやめておこう。

 一瞬体をぶるっと震わせて、箱の中に入ったコーンラビットの血抜きを急ぐ。

 何も言わなくてもセレナはコーンラビットを籠から出してくれて、僕が血抜きしたコーンラビットをまた籠の中に戻す。

「よ~し。午前中はこんなもんだね。午前中だけでも一日分は捕まえたかな~」

「ノア。私、午後からも狩りたい」

「えっ? でももうこんなに……」

「コーンラビットを沢山捕まえれば生活費も増えるから。ノルマを達成しても時間が余ってるなら頑張りたいの」

 やはり今日はいつものセレナと雰囲気が違う。いつもなら僕がこうしようああしように対して、文句一つ言わず、まるで嫌われるのを避けるかのように自分の感情よりも僕を優先していた。

 それなのに、今朝からは自分がどうしたいか。それをちゃんと言うようになった気がする。

 きっと昨晩のことで彼女の心情に大きな変化があったのだろう。

 …………娘が巣立っていく親の気持ちってこういう気持ちだろうか?

 ちょっぴり寂しくも、嬉しいとも思う。そんな彼女の成長を僕は見守ってあげたい。

「分かった。ただし――――」

「絶対無理はしない。だよね?」

 僕の真似をするセレナ。

「ああ。その通りだ」

「もちろん約束するよ!」

 僕より少しだけ背の低いセレナに手を伸ばして頭をポンポンと撫でてあげる。綺麗な銀の髪が揺れ動いて日の光を受けて美しく輝く。

『ノア~お腹空いたニャ~』

「おっと、すまない。すぐにご飯にしよう――――と思ったけど、ちょっとだけ待ってくれ」

「どうかしたの?」

 宿屋から借りて来たレジャーシートを敷いて、中に座り込む。

 セレナとポンちゃんも一緒に座り込んだ。

「【アプリ】発動」

 僕の声に呼応して目の前に画面が現れる。セレナにもポンちゃんにも画面は見えないはずだ。

 宙に浮いている画面はそのまま手で触れることができて、スマホのタッチパネルのように操作することができる。

---------------------
 容量:2GB/3GB

・異世界会話(1GB)
・一秒クッキング(1GB)
---------------------

 本来なら【ストア】という部分からアプリをインストールするんだけど、今日の目的はそこではなく、【一秒クッキング】を押す。

---------------------
・一秒クッキング(1GB)
 ┗《解放》クッキングレシピ
 ┗《未解放》無限調味料(1GB)
 ┗《未解放》異空間冷蔵庫(5GB)
---------------------

 これが目的だ。

 ワクワクしながら【無限調味料】を押すと《【無限調味料】をインストールしますか?》と表示がでて、【YES】を押す。

---------------------
・一秒クッキング(2GB)
 ┗《解放》クッキングレシピ
 ┗《解放》無限調味料
 ┗《未解放》異空間冷蔵庫(5GB)
---------------------

 【一秒クッキング】の容量が1GBから2GBに変わった。

 しかも、追加パックという形なのでインストールも一瞬で終わった。通常アプリのインストールだとインストールが終わるまで時間がかかるからね。

「ノア? どうしたの? 凄くニヤニヤしてるよ?」

「おっと、つい顔が緩んでしまったな」

 今回獲得した【無限調味料】は待ちに待った。

 というのも十歳になって、初めて森で狩りをしながらレベルを上げて【一秒クッキング】をインストールした時点で【無限調味料】があるのは知っていた。

 でも家から追い出されるまでの間に、もし僕の予想通りの効果があるスキルなら、もう異世界料理はまともに食べれなくなる可能性があると踏んだ。特にアスカジュー家では素朴な食事が多かったからなおさらだ。

 だからずっとレベルを2に留めておいて、今日のこの日を待ちに待ったのだ。

「セレナ。ポンちゃん。驚くなよ? 僕の新しい力無限調味料で二人を満足させてあげるから」

「楽しみ~!」

『ニャんだニャんだ~!?』

 いつものようにふたりの大皿の上にコーンラビットを積み重ねる。

「焼肉!!」

 僕の言葉と共にコーンラビットが虹色の光に包み込まれる。

「イン、無限調味料・・・・・!!」

 眩い光に包まれたコーンラビットが焼肉に変貌する。

 いつもなら香ばしいお肉の香りが漂う焼肉が、今日はひと味違う。

 焼肉よりもより香ばしい――――焼肉のたれ・・の香りだ。

「美味そう~!」

『ノア! 食べていいニャ? ねえ、食べていいかなニャ? まだダメニャン?』

 ニャンとか言っているが、ポンちゃんはれっきとしたイヌ科で、犬にとって嗅覚は最大の味方であり敵だ。

 初めて感じる日本の焼肉のたれ・・・・・・・・の香ばしさに、ポンちゃんは滝のような涎を垂らし始めた。

「よし、食べていいぞ!」

「いただきます~!」

『食べるニャああああああ!』

 初めて焼肉のたれが沁みた美味い焼肉に、ポンちゃんは食べながらその場で微かにぴょんぴょん飛び跳ね、セレナに至っては一枚食べたら祈りを捧げていた。

 僕ももちろん久しぶりに食べる日本の味に大変満足した。
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