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33話 お給金体制

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「みんなありがとう!」

 開店時間が終わり、大盛況だったイベントを手伝ってくれたみんなに感謝を伝える。

 今日はイベントということもあり、とんでもない利益を上げることができた。

 当然、手伝ってくれた彼らにはお給金を渡すと「こんなに貰えません!」と断られたが、みんなで説得して何とか押し付けることができた。

 もちろん、賄いはたれ焼肉とたこ焼き、帰りはパンとたこ焼きも付けてあげた。

 何度も感謝を言われたけど、こちらこそだ。

 その理由というのも、たこ焼きの売り方にある。

 うちは屋台といえ、基本的に食事・・にフォーカスしてきた。それは焼肉だからというのもある。

 しかし、たこ焼きは食事というよりは間食。歩いても食べられるように、皿ではなく安価の包み葉っぱと、大工セビルさんにお願いして作って貰った爪楊枝つまようじで渡している。

 これがヒットした理由で、待っていたお客様全員がたこ焼きを食べながら待ったのだ。

 焼肉を食べて残ったコッペパンはそのまま三つ持ち帰りしていくから、みんな得した気分と話していた。

 ということもあって、銅貨二枚の味見セットはとんでもない売れ行きで、仕分けを手伝ってくれなかったらどうなったことか…………こればかりは僕の考えが甘かったなと反省した。

 それともう一つ変わったことと言えば、ポンちゃん人気が凄まじい。

 食べ終わったお客様がうちの番犬――――ごほん。仲間のポンちゃんと触れ合ってから帰るようになった。

『キュフフ~くすぐったいニャ~』

 と、まんざらでもなさそうに喜んでいるポンちゃんが可愛かった。ただ、君…………腹を見せて足をバタバタして気持ちよさそうにしてもいいけど、一応店の守り神だからね? 

 六日目も無事に終わって、夕飯は宿屋ホワイトテールでいただく。

 いつも同じ味ばかりだと飽きるからね。

 無限調味料の弱点があるとするなら、召喚することはできず、あくまで【一秒クッキング】で作る時に追加するしかできない。

 なので、こうして出された料理の味のアクセントが足りないと思った時に、取り出して掛けることができないのだ。

「さて、これは今日のお給金だよ」

「あれ!? いつもより多いよ?」

「今日の売り上げは良かったからね。うちは分配制だし、稼げないと減ったりするからね」

「う~ん…………」

 不満そうに顔にしわを寄せるセレナ。

「ねえ。メニューを増やすにもお金が必要で、メニューが増えたらその分材料費も上がるんだよね?」

「ま、まあね……でもそれは稼ぎで十分――――」

「それなら、お給金は決まった額がいい。もしどれだけ売り上げがよくても、銀貨三枚まで。売り上げが芳しくないなかったら減ってもいい」

「はいはい!」

「どうぞ。ミレイちゃん」

「銀貨三枚も多いと思います!」

 それに賛同するように手を上げて「同意見です」とライラさん。

「はい。私も同じ意見です。衛兵さんでさえ、一日給金が銀貨一枚なのに、私達がその三倍はおかしいと思います。これじゃ他の人と公平じゃありません」

 僕が喋る隙を与えずに、セレナが話をどんどん進める。

「なので、ここで【自由の翼】のお給金決めをします。店長のノアには発言権はありません!」

 ええええ!? 僕、店長なのに!?

「お給金をぐっと下げたいところですが、それでは店長が納得しなさそうなので、ここ五日間私がずっと考えた案を発表します。お給金の体制は最大額を銀貨一枚とします。これは街を守ってくださる衛兵さんと同額でとんでもなく多い額になります」

 銀貨一枚は日本円換算なら一万円。だが、宿屋ホワイトテールのツインルームで大銅貨五枚なのを鑑みると、銀貨一枚でも随分と高い。

 ちなみに僕達が入っているツインルームだが、後からセイナちゃんから聞いたところ、どうやら宿屋内で一番高い部屋らしい。つまり、一種のスイートルームだ。

 シングルの安い部屋となると、大銅貨一枚とかだそう。

 つまり、銀貨一枚は平民から見ると凄い額になるのだ。

「そこで、屋台の開き方でお給金を三段階にします。朝、昼、夜。今は昼しか開いていませんが、いつか朝開店や夜開店があるかも知れません。それぞれにお給金判定をして、朝昼夜で働いた場合のみ、最大額の銀貨三枚とします」

 な……るほど?

「ただし、これもあくまで最大・・・・・・。売り上げ次第では下がります」

「「はいっ」」

「まずこれで店長は納得してくださったことでしょう!」

 有無を言わさないつもりのようだ。

「これで残った全てのお金は店長のものになります! それを店長がどう使おうが店長の自由です!」

「ま、待っ――」

「レシピ一つひとつが値段が高く、その上で色んな食材が必要になるので、それらを買ってくれることを祈りながら、【自由の翼】のお給金体制会議を終わりとします~! これは決定事項です!」

 最後に三人がテーブルを軽く叩きながら、僕に顔を寄せてきた。
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