【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。

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37話 さらばシーラー街(三人称視点あり)

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 ね、眠い……。

 異世界に転生して毎日快眠だったのに、異世界人生初の徹夜をした。

 その原因となったセレナは――――あれ? セレナって【暴食】の力で寝る時間も非常に短くなってるよね? ということは、普段からずっと起きているのか……?

「お、おはよう」

「お、お、お、おはよ!」

 なんでそこで恥ずかしそうに挨拶してくるんだよ! こ、こっちまで緊張しちゃうじゃん……。

『ノア。どうしたニャ?』

「な、何でもないよ」

 不思議そうな表情を浮かべて見上げるポンちゃんの頭をひと撫でして、洗面台で顔を洗う。

 ミレイちゃん達も起き上がって、旅の支度を始める。

 今日でシーラー街を出ると思うと、色々感銘深いものがあるな。

 僕とセレナが実家から追い出されて、ポンちゃんと出会って、ミレイちゃんとライラさんに出会って。

 これからみんなで一緒に旅をする。凄く楽しみなところだ。

 みんなの支度が終わりと、大きな荷物は全て僕の【簡易収納】に入れる。

 【簡易収納】は屋台がちょうどすっぽり入るサイズで、荷物は屋台内に余った空間に詰め込めるので、とても便利だ。

 食材は【異空間冷蔵庫】が使えるから【簡易収納】だけで十分だったりするが、いつかレベルがたくさん上がったら【異空間収納】も取ってみたいと思う。

 短い間だったけどお世話になった部屋を出て、一階で朝食をご馳走になった。

「短い間でしたら、ありがとうございました」

「いえいえ! こちらこそ、利用してくださりありがとうございます! 父ともに感謝申し上げます! 体に気を付けながら旅してくださいね」

 みんなで手を振って宿屋を後にする。

 何度も開いた木製扉を潜り抜けて、眩しい日の光が照らす外に出る。

 道を進み、中央広場を越えて、僕達が着いた玄関口の反対側を目指す。

 シーラー街東門に着くと、いつも食べにきてくれた子供達が待っていてくれた。

「「「ミレイちゃん~」」」

 ミレイちゃんが彼女達に向かって走り出すと、背中の小さなリュックが揺れ動くのがまた可愛らしい。

「みんな! 元気にしてね!」

「ミレイちゃんも旅道、気を付けてね!」

 女の子同士、手を握って笑顔を向け合う。

 別れは辛いけど、これもまた旅の一つなんだと思う。

「みんな、またね~!」

 僕達は彼女達に手を振りながら西門をくぐって、街の外に出た。



 ◆



 ノア達が街を後にした数時間後。

 とある屋敷では、贅を尽くした調度品が並んだ豪華な部屋に、ブルグルス子爵がその大きな腹を抱えたまま、ソファーにぐったりとなっていた。

「はあ…………」

 大きな溜息を吐いた後、その腹から「ぐ~」という音が鳴り響く。

「子爵様。そろそろお昼ですがどうなさいますか?」

「やっとこの時間が来たか! よし。今日も出かけるぞ!」

「かしこまりました」

 すぐに支度に向かう執事と、さっきとは違い楽しみの笑顔を浮かべたブルグルス子爵。

 準備が整ったので、足早に馬車に乗り込んでシーラー街の平民地区中央広場に降りたった。

 ブルグルス子爵はいつもとは違い、足早に歩いて、とある場所に向う。

「早く……早く食べたいな~仕入れはしてくれたんだろうな?」

 ぶつぶつと独り言を言いながら進む子爵に、護衛達の顔が引き攣った。

 大通りから少し狭くなった道を駆け足で進んだ子爵は、どんどん笑顔になっていく。

「はあはあ……や、やっと…………た、食べられるぞ!」

 そして――――少し開けた場所に到着した。

「…………は?」

 間抜けな声を出してしまった子爵の視線の先には、予想していた屋台・・は存在せず、閑散とした空地が広がっているだけだった。

「し、執事! もうお昼の時間ではないのか!?」

「昨日と同時刻です。お昼で間違いありません」

「でもいないじゃないか!」

 怒りながら指さす子爵。

 その顔が笑顔から怒りに変わり、さらに焦りに変わり始めた。

「こ、このままじゃ食べられない……? そ、そんなバカな……」

 その時、通りかかった人を見かけた子爵は、普段なら想像もできないような目にも止まらぬ速さで掴みかかった。

「お、おい!」

「えっ? し、子爵様!?」

「そ、そうだ! 俺はブルグルス子爵だ! き、昨日までここで開かれていたお店は、どうして開いてないんだ!」

「あ~【自由の翼】ですね。【自由の翼】は――――次の町に向かって旅立ちましたよ? 昨日で最後でした」

 その言葉に、子爵は力なくその場に崩れた。

「な、なぜだ……またのお越しを心待ちにしておりますって言ったじゃないか……こんなにも……こんなにも待ちに待ったのにいいいい!」

 子爵はその場で大声で泣きじゃくった。
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