破滅のアダムとイヴ 〜Sランクと記憶喪失と東京と〜

新進真

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起 『Sランクの少年は、国から追放されました。』

第8話 今までありがとう

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「今……トートさんが『コンパスを見つけた』と言ってました」

「コンパス……森の中……った……そこに……ある……気……つけ……」

 そのまま、トートさんは息絶えたように見えた。笑みを浮かべたまま、この世から消え去った。真っ黒に流れた……彼女の血は止まることもなく、逆に生命の糧はここで止まった。

「トートさん……!」
 2人目だ。総合的には3人目だが、この仲間内で失うのは、2人目。前回は兵士に刺されて亡くなったが、今回は爆発と共に命を落とした。唐突な出来事で、涙すら出ない。ただ呆然と、彼女の手を握ることしかできない。

「トートがコンパスを見つけたらしいが……”気をつけて”とも言ってたな」
 コンパスを探す過程で何があったのか……。僕に大きな疑問が残った。そのコンパスは、相手を即死させる魔法でも持っているのか。

「トート……今までありがとう。とりあえず……その森に行こう」とレッドさんがしんみりした口調でそう言った。彼女もまた、仲間の死を目の前にしてしまった。

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 僕らは、ワープ魔法で森に着いた。ここは……ランセル王国の中だが、城からは結構離れている。
 少し進むと、木が全く生えていない場所を発見した。地面には青く光る……コンパスだ。
 普通のコンパスとほぼ同じ、強いて言うなら針が緑色である。手に取ろうとしたが、クリムさんに止められた。

「根も葉も何もない……元から生えていなかった? もしくは……このコンパスが消した?」

 僕は急いで、このコンパスから離れた。そこまで恐ろしい能力を持っているとは思わなかった。
 試しにレッドさんが触れることになった。彼女ならある程度なら対処できる。おそるおそる手を出してみると、より強く光り始めた。

 ドカンッ……

 爆発音と共に、このコンパスから天に届く程の光線が空に投射された。
 レッドさんはその辺にある石ころを掴み、その光線に向かって投げつける。すると、石は粉々になり……やがて青白く光り消滅した。

「トートは……この光線を直接受けてしまったようね」と彼女は冷静に分析をし、神本を手に取った後、コンパスの前に置いた。

 キュイン……
 キュイン……

 すると突然、光が弱まり始めた。神本の力なのだろうか、そのまま光も消滅した。
 安全になったコンパスをレッドさんが拾い上げても、何も起こらない。が、コンパスの緑色の針が……北を指している。
 北にあの石があるという解釈で間違いないみたいだ。

「とりあえず、歩いてみよう。クリムとエストくんは先に向かってて、私はトートの所に戻るから……」と彼女は言う。僕もトートさんの元に向かいたかったが、察したクリムさんに止められた。

「あとで……クリムのところにワープするからさ」

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 残念ながら、僕たちは《足が速くなる魔法》や《効率よく物を探す魔法》を知らない。この世の中に存在するのかもしれないが、僕たちはそもそもレッドさんから魔法を習っている。彼女が知らなければ、僕たちも分からない。

 ただひたすらに、森の中を歩き続けた。もしかしたら……さっきみたいに地面に置いてあるかもしれない。かすかな希望のもと、歩き続けた。

 なお、彼女は雲の中に戻ったきり帰ってこない。

 トートさんが死んでしまったばかりなのに歩かされて、正直心身共に疲れ果ててしまった。

「おいエスト……もしかしたらあれかもしれないぞ」
 そんなクリムさんの言葉に、僕は目を輝かせながら、顔を上げた。

 見たことある……王の城だ。遠くからでも分かる。3回は行ったことあるだろう。二度と行きたくない……なんて思っていたが、コンパスは……城を指している。

「城の先にあるのかもしれないが……城の中にある可能性の方が大きいな……一旦雲に戻るか」

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 レッドさんに、コンパスが城を指したことを伝えた。そしてついでに、何故僕たちのところにワープしなかったのかと問う。

「雲の中が血だらけになっちゃってて、片付けていたの……まぁトートを置いてきぼりにするのも悪いし……」とのこと。これは仕方がない。

 さっきまで海のように広がっていた……あの黒い血は無くなっていた。シミも何もない。辺りはまた、真っ白になっていた。

「ところで、コンパスが城を指していたのは……どういうこと?」とレッドさんが言う。

 さっき説明した通りで……と言うが、「そっちを聞いているわけじゃない」と言い返された。

「王の城を指していたのは……私でも分かる。でも、コンパスを見て」

 コンパスの針を見ると北を指しているのではなく……2時の方面を指していた。

「城を指していたのなら北を向いたままのはず……なのに動いている。ということは……」

「時の石に自我があるということですか?それなら見つかりにくいのも----」

「違う、誰かが時の石を持ち歩いているだけだ。考えてみれば分かるだろう」と、僕の発言を遮るように指摘された。

「クリムの言う通り、多分時の石を持ち歩いている人物がいる。明日からはその人物の特定を始めようか」

 時の石が自我を持っている説は、僕の中では結構納得した方だったのに。

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「ソルト・ルクセンバンク、お前を……《第2王国監視部隊》の《分隊長》とする。おめでとう、スピード出世だな」

「ありがたき幸せ……です」

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