破滅のアダムとイヴ 〜Sランクと記憶喪失と東京と〜

新進真

文字の大きさ
9 / 87
起 『Sランクの少年は、国から追放されました。』

第9話 力を合わせて頑張ろう

しおりを挟む
----------

「寂しい……ですね」
「まぁ……2人しかいないからな」

 レッドさんは時の石を探しにコンパスを持って城へ出かけた。雲の中に残っているのは……僕とクリムさんだけ。会話したとしてもいずれ限界が来る。限界を迎えた後に来るのは、沈黙だ。会話にも人生にも終わりが来る。

「……素振り50回……これさえやっておけば、お前なら何とかなる」と小さな声で俯きながら
彼は言う。

「どうしたんですか……クリムさん、最近おかし----」

「リーゼもトートも死んじまってな……次は俺じゃないかって毎晩考えてな……悪いな」と、僕の言葉を遮るように彼は僕に対して謝る。

 クリムさんもクリムさんなりに悩んでいた。
もちろん……僕だって悩むことはある。もう少しで……僕もこの世からいなくなるんじゃないか……って。

「時の石のありか……分かったよ」

 レッドさんの声が、雲の中に響いた。いつの間にか戻っていたようだ。

「どうしたの? クリム涙目だけど? もしかして……エストくんに泣かされちゃった?」と比較的大きな声で彼女は質問する。

 それに対して彼は「馬鹿野郎……」と小さな声で呟く。
 レッドさんがクリムさんを小突き回す。これも以前はは日常的な風景だった。余裕がなくなってからは、会話すらない時もある。

----------

「で、時の石のありかは……王の城で当たってたよ」

 結局王の城。もうそこには何回も行っている。鑑定の時も、地下室ごとワープさせた時も、神本を取ってきた時も……。二度と行きたくない……なんて思っていたあの場所か。

「正確には王の城じゃないわ。多分だけど……王が身につけている”王冠”だと思う」

 王冠に時の石が付いている……ということは? 何故、世界を変えるほどの重要な石が……あの王冠に? 常時……王が持ち歩いているの? 全く意味が分からない。

「詳細はもちろん分からないわ。でも、明らかにコンパスが”その緑色の石”を指していたの。実際、王冠に”緑色の石”も付いていたし……指輪の可能性も無きにしも非ず……だけどね」

 もしそれが本当なら、僕はあの忌まわしき……ドンとリーゼさんを失った……、そして僕自身を殺害しようとしていた……あの城ににまた行かなくてはならない。
 僕は……手も足もブルブルと震えていたらしい。自分でも分からないうちに、無意識に。

「安心して、エストくん。もう時の石さえ手に入れれば……それさえあれば、全てが終わるから。もう……苦しめられなくて済むよ」とらレッドさんが僕の手を握りながら語りかけた。
 そうだ。時の石さえ手に入れば、全てが終わる。僕は……この恐怖から解放される。

「問題は王冠を奪取することが可能なのかどうか……。警備も前より……」

 そこが問題だ。前回の作戦の影響もあってか、城の警備が強くなった。
 前回みたいに5人で強行突破……というのも出来ない。今は……3人しかいない。

「でも、やるしかない……」
「次は……兵士の命を奪う……かもしれないけれども……やるしかない」

 レッドさんは覚悟を決め……作戦を話し始めた。

「8日後の【国王誕生日】で【国王誕生日記念パーティー】が行われるそうなの。もしかしたら……中止になるかもしれないけど、あの王さんの性格なら……やるよね」

「その日……正確には【パーティーが始まる2時間前】に王さんを直接狙う。王冠を力ずくで奪い取れればこっちの勝ち。躊躇っていたら殺されるから、敵を切って……切って……切りまくる……」

「3人で力を合わせて……頑張ろう」

 レッドさんが拳を突き上げたのを見て、僕も真似をしてみた。
 クリムさんは、どこか遠くを見つめていた。雲の中で、何も見えないはずなのに。

----------

「エスト……困ったらこれを使え……」とクリムさんが僕に小さな声で小さなナイフを手渡した。短めで、切れ味は抜群そうなナイフ。一体何に使うのか……僕には全く分からなかった。

「どうしたんですか?」と一応聞いてみるが、無視。あまりにも気味が悪いので返そうとするが、クリムさんは無理矢理腰のベルトの所に差し込んできた。

「もしも……もしものことがあったら、これを使え。絶対……」とまた小さな声で彼は囁く。

 よく見たら、クリムさんの剣が新しくなっていた。前よりも太くて、前よりも大きい。これはお古という物なのか。服とか靴ではなく、ナイフだが。

----------

「ソルト・ルクセンバンクよ、コイツらの扱いには慣れたか?」と王は聞く。目の前には巨大な黒い犬が何匹もいる。

「はい!」とまだ精神的にも肉体的にも若々しい少年は元気よく答える。

「お前がAランクで助かった。明日のパーティーも楽しみだな。塵どもを蹴散らそうではないか!」

----------

「こんな所で何をしているの?」とある少女がソルトに対して話しかける。

「俺は、まぁ……いいでしょそんなことは。それより君は……誰だ?」
ソルトは彼女が誰なのか認識していないようだった。

「私は……ミライ・カリアよ。ソルトくんと同じ鑑定の……いわば、同期」

「あぁ、でも何故……ここに?」

「何故って……【第3王国監視部隊】の隊員になったからよ。【Cランク】だけどね」

----------
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...