破滅のアダムとイヴ 〜Sランクと記憶喪失と東京と〜

新進真

文字の大きさ
11 / 87
起 『Sランクの少年は、国から追放されました。』

第11話 決戦2「エストは大変だと思うの」

しおりを挟む
----------

 キンッ……

「うおおぉぉぉああああ!!!」

 剣を振り回す。それしか僕にはできなかった。
 今までは訓練だけだった。訓練とは言えども大変なものだったが、実技の経験は乏しい。
 そのためか、実際に戦闘を行うとなると、どうも身体が追いつかない。

「うぉぉぉあぁぁぁ!!」
 相手の鎧の隙間……脇にちょうど剣が入った。あとは……そのまま上に……!

「ぐはっぁぁぁあ……」

 初めて自分の力のみで人を倒した……。倒した。
 ”真っ赤な黒”が剣を染める。臭いもコーティングされていく。

「はぁ……はぁ……はぁ……」
 息がもたない。キツい。キツすぎる。
 これでやっと1人だ。クリムさんの足を引っ張ってはいけない……。

 ふと辺りを見渡すと、兵士の数が増えていた。

「エスト! 敵が増えてきたぞ!」
 ここで疑問を解消することにしよう。何故僕が魔法を使わなかったのか。

----------

 数時間前、最後の作戦会議でのこと。

「王さんは……どデカい怪物を従えていたよね?」とレッドさんは僕に聞く。

「はい、僕と……ドンはそれに襲われました」

「つまり……王さんも怪物を扱えるし、魔法を使う人たちも多いはずよ。王の城に仕える人達ってAランク出身の人が多いし……」と彼女は冷静に分析する。

「あえて……魔法を使わずに事を進めよう。直前までこっちが魔法を使えることを隠そう」

 それは、僕とレッドさんの魔法を一部封印することを表している。僕から魔法を取ったら……何も残らない。戦闘では役に立たない。今も役に立つかどうか分からないけど。

「私はともかく、”エスト”は大変だと思うの。だからクリムと2人で行動して。もしも敵の数が増えて大変なことになったら……その時は使って、騒動を起こしてね!」

----------

「今だ!」

 クリムさんの合図で、僕は自分の剣の剣身の部分に手をかざし、そのまま剣を天に突き刺すように上に掲げた。

《火炎魔法》

 剣身の部分が、紅く燃え上がった。天にまで届きそうな火柱が立っており、ゴオオ……ゴオオ……と燃え続けている。

「これは……」
「火炎魔法の使い手とは……」

 熱い……熱すぎる。手に持つので精一杯だ。このままでは僕ごと燃えてしまう。訓練で何度か使ったことはあるが、安定していた事は一度もない。いつもトートさんに助けてもらっていた。

 でも、失敗はできない。

「いけ……エスト!」
彼の掛け声と共に、一気に剣を振り下ろす。

「うぉぉぉぉぉお……!」

 スパンッ……

 目の前にある全ての物が、斜め状に燃え出した。人も悲鳴を上げる者もいれば、そのまま力尽きる者もいた。木も門も、綺麗に斜め状に切れている。断面も綺麗だ……。

「火炎魔法所持者がいるぞ! 気をつけろ!」

 まだ生き残りの兵士がいたみたい。

「エスト、これはいけるか?」
 クリムさんに小石を手渡された。なるほど。そういうことか?

《火炎魔法》

 石は燃えないかもしれない。だが、この火炎魔法は、対象の物を熱くさせることが出来る。というか、炎は出ないが”熱する”ことが出来る。トートさんくらいになると、無理やり燃やし尽くすこともできるが……。

 僕は小石を空に向かって投げ、火炎魔法をかけた。前にも言ったが、クリムさんの剣は大きくて太い。
 クリムさんがその剣の平たい部分で、躊躇なく小石を兵士たち目がけて打った。

「ごぼぅぅぅぅぅ……」

 小石といえども”熱せられている小石”だ。威力は段違いだ。相手の腹に当たっただけだが、気絶している。

 見た限り、敵はもういない。フードを取り、木の幹に座り、自分の身体をいたわる。

「あらかた片付いたが……レッドがいないな」

「王を探しに行ったんですかね。それにしても僕らに何も言わないなんて……」





 こんなやり取りをしている中、微かな足音がしたのを、僕もクリムさんも聞き逃さなかった。

「誰だ!」

 僕たちは剣を構えつつ、周りも見渡してみる。が、誰もいない。

 コツコツ……

 コツコツ……

 城から2人の男女が出てきた。見た目的に僕らと同じくらいの年齢みたいだ。そして両方とも……どこかで見たことあるような……、僕は既視感を覚えた、金髪の少年、黒髪の少女……。

「フードを深く被れ!」
 クリムさんが慌てながらも、僕に呼びかけた。

「クリムさ……」
「名前を呼ぶな! 急げ!」

 僕はその指示通りにフードを深く被った。それにしても、彼ら……その男女2人からは異様なオーラを感じる。まるで……僕らと同じ運命を辿ってきたかのような。

「お前ら……誰だ?」
 僕たちが名前を聞く前に、向こうから聞かれた。

「そう言われて、教えるわけないだろ」
 クリムさんが答えた。『弱いところ』を敵に見せてはいけない。彼らのことを歯を食いしばって睨みつけていた。

「じゃあ……行くか」
 そう言うと男の人の方が、僕たちに向かって……いや、見当外れな方向にナイフを投げた。僕たちを狙っていないのか……というくらい、外れた所に投げている。

「あさっての方向に飛んでいったな、かすってもないぞ?」とクリムさんが言うと、彼らは笑いながらこう言った。

「それはどうかな」と。

《移動魔法》

 突然、このナイフが僕らの方へ向かって飛んできた。まるでナイフ自身に意思があるように、僕らのことだけを追ってくる。

「何をしやがった!?」と……彼でもこの魔法は知らなかったようで、追尾するナイフから逃げ切ろうと疾走する。

「このナイフに《移動魔法》をかけたのさ。君たちに刺さるまで、ずっと追いかけるよ」と男の方は説明する。

 これは厄介すぎる。『君たちに刺さるまで』ということは……どう防げばいいのか分からない。

「こっちに来い!」
 クリムさんが突然叫んだ。ナイフも僕を追わずに、彼を追い始めた。

「悪いな……兵士さんよ」
 彼はそう言うと、クリムさんは気絶した兵士を軽々と持ち上げ、盾のようにナイフを防いだ。ナイフはしっかりと、その兵士の胸に突き刺さっている。

「防がれたか……まぁ、俺はAランクだ。お前らが何のランクか知らないが、俺が絶対に倒す!」

 この声……聞いたことがある。Aランクの人とも……どこかで会ったことがある。僕はそう確信した。頭もぼんやりしたまま、記憶も混乱していて色々と思い出せないが。

----------
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...