破滅のアダムとイヴ 〜Sランクと記憶喪失と東京と〜

新進真

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承『記憶喪失の《討伐者》』

第12話 悲鳴

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 場面は変わって夜。

「ガイアさんと君は……あの後どこに行ってたんだ?」

「急にドラゴンが飛んでいったと思ったら……どこに行っていたか教えてくれ!」

「何故だが分からないが、ステラ村の村人は避難していたみたいだ。皆口を揃えて『山火事が起こったから避難した』と言っていたぞ。これはどういうことだ?」

 村に帰ってくるや否や、質問攻めに遭った。
が、返す言葉もない。記憶改竄か洗脳か、はたまたただの噂か。まだ何も分からないが……何も分からない以上、闇雲に人にベラベラ喋り出すのもあまりよろしくない。

 だが、最後の『山火事が起こったから避難した』の発言の意味がよく分からない。ヤツが村人にそう思わせたのだろうか、思わせたにしては……。

 とりあえず彼も俺も、黙秘を貫いた。心配をしてくる村人たちを横目に。

「何がどうしたの? お父さんも……スカイさんも」

 家に帰るとすぐにシアンさんに話しかけられた。しかし話しかけられたところで、俺達が話すことは何もない。ここでは無視を貫き通す。

「今日のメシは何だ?」と彼が無理やり話題を変える他、できることはなかった。

「野菜のスープよ……」
 彼女も俯きながらそう答えた。いや、そう答えるしかなかったのだ。彼女も察したのか、これ以上の会話は無かった。

 スープを啜る音と食器を動かす音のみが、部屋の中で鳴っていた。

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 またまた場面は変わって、次の日の昼。

「シアンは……今はいないか」
 彼は誰にも見つからないようにか、こっそりと家に入ってきた。

 彼は今さっきまでレインマークの方に赴いていた。ドラゴンに破壊されたステラ村についての報告をしつつも、過去の記録を聞いてきたらしい。

「まぁ……そう簡単には教えてくれやしない」

 彼の言ってることを要約すると、レインマークのお偉いさん方は何も教えてくれなかったようだ。どんなに頼み込んだのにも関わらず。それどころか、白蛇の巣の駆除を再度お願いしてきたらしい。もちろん、命令だが。
彼は苛立ちを見せながらも俺に伝えてきた。

「安心しろ、駆除の命令は断ってきた」

「えっ……」

 無意識のうちに声が出た。レインマークの役所のお偉いさん方の命令を断った……というのは分かるが、断ることができるのだろうか。
いや、彼はできたと言っている。

「あの頭の固いお偉いさんの目の前でこう言ったさ、『モンスターにも良い奴はいる、お前らの命令なんて誰が聞くものか』ってな」

 短気にも程があるが、この状況だったら俺でも同じことをするだろう。
 今の俺たちが白蛇の巣を駆除する必要性などない。白蛇は二度と人間を襲うような真似はしない。そもそもの話、ヤツらは人間を襲うつもりではなかった。モンスターだとしても、2回も同じ過ちはしないだろう。

「こうも言ったさ、『お前たちがモンスターを悪者扱いするせいで、困っているモンスターも居るんだぞ』ってな」

 これは言ってはいけないものではないのか。
モンスターの目線に立つのはいいが、その役所のお偉いさん方からしたら相当……”粛清”の対象になりかねない気もするが。

 大体、彼の行動原理は何なんだろうか。
ドラゴン相手にも怯まずに要求を伝えつつ、交渉に成功している。
 気になってどうしようもなくなった俺は、彼に聞いてみることにした。

「何で……ドラゴンが相手なのにも関わらずその依頼を受けたり、お偉いさん方に向かって真正面から戦うことが出来るんですか?」

 彼は驚いたような顔をしたが、すぐに真面目な顔に戻ってこう言った。

「そりゃ俺だって……小便ちびりそうなくらい怖かったさ。だが、あそこで断ったらどうなるか分かるか? あのドラゴンに火を吐かれるかもしれない、鋭い牙で噛み切られるかもしれない」

「お偉いさん方は……逆だ。真正面から言うということは、通常であれば”死”も当然だろうが……今は”コレ”がある」
 彼は壁に立て掛けてあった、友情の証の盾を手に持った。

「分からないが、あのドラゴンと出会ってからというものの……自分自身勇気が溢れ出ている気がしてな。理屈にはなってないと思うが、アイツらモンスターのおかげだな」

 確かに……と俺は少しだけ納得した。彼はドラゴンに出会ってから少しだけ変わった。ドラゴン相手にも怯まずに交渉したり。また、レインマークのお偉いさん方にも怯まずに要求を断ったり……と。

 元から彼は勇気がある人だったのかもしれない、討伐者という職になっている時点で。

 カラン……

 玄関の扉の向こうから鐘の音が聞こえた。これは、人が来たということだ。
 しかし、シアンさんであれば鍵を持っている。村人であればドアをノックする。誰だろうか?

「はい、今開けますよ~」
 彼が玄関の扉を開けると、そこには見知らぬ人間が3人立っていた。全員、旅人の格好をしているのだろうか、全身布だらけで……「顔なんて見せないぞ」という精神がひしひしと伝わってくる。

「どちら様ですか?」
 彼が聞くや否や、その3人のうちの1人がナイフを取り出し、彼の腹に刺そうとした。
 俺は壁に立て掛けてあった友情の証とされている円形の盾を手に取り、それをナイフを持った奴に向かって思いっきり下から上に投げた。

「ギャウウ……」
 見事に奴に当たったが、奴は人間とは思えないような叫び声を上げた。

「何だ……コイツらは」
 俺も彼もおもわず声を出してしまった。それくらい……奴の身体がおかしなことになっていた。盾が当たったことにより、布は床に落ちていた。
 服であればそう簡単に落ちることはないが、まるで身を隠すためにただ付けていたかのように、全てが床に落ちて丸裸になっていた。

 この見た目は……ゴブリンか?
 他の2体も布を取り、ナイフを持ち、土足で家の中へズカズカと入ってきた。玄関の周りに奴らはいる、外に逃げる方法はない。

 「きゃぁぁああ!!」

 外から悲鳴が聞こえる。外にもゴブリンがいるのだろうか。彼は盾を急いで手に取り、俺に渡して、叫んだ。

「窓から逃げるぞ! ゴブリンたちを相手にしている暇はない!」

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