破滅のアダムとイヴ 〜Sランクと記憶喪失と東京と〜

新進真

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承『記憶喪失の《討伐者》』

第13話 助けて

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 家に置いてある武器を手に取る暇もなく、俺たちは窓から外に出た。俺は盾のみ、彼は家の外に立て掛けてあった斧しか武器がない。剣や装備は全て家に置いてきてしまった。取りに帰るべきだろうが、家の中は奴らがいる。
 ここで手こずるよりは、今ある武器で目の前の人を助けに行くべきだ……という彼の考えのもとで俺は動く。

 外にも既に大量のゴブリンがいた。周りの家は燃えており、その火がまた別の家に燃え移り……火の津波がこの村を襲っている。
 しかし、何かが違う。通常であれば棍棒を持って人間を襲うと書いてあった。だが、奴らはナイフを持っている。人間が武器を与えたのだろうか。もしくはレインマークの武器屋が襲われたのか。

「たすけ……」

 まだ火が燃え移っていない家から助けを求める声が聞こえた。小さい声ながらも、俺も彼もしっかりと聞き取っていた。

 その家の中に入ると、中には村人とゴブリンがいた。村人は気絶したのか、その場で眠っていた。そばにいるゴブリンは動かなくなった村人の髪の毛を引っ張り遊んでいた。

 奴はその人間に夢中だ。彼は手に持っていた斧で奴の脳天に向かって振り下ろすが、気づかれてしまった。

「うぉわ……」

 グサッ……

 奴のナイフが彼の腕に刺さった。奴も奴で、ナイフの扱いに慣れていないのだろうか。中途半端に刺さったためか、すぐに抜けてしまった。それが逆に問題である。
 出血が止まらない。傷は浅いが、血は濃く止まらない。彼は血だらけの自分の腕を見た途端、恐れるがあまり気絶した。

 目の前にはナイフを持ったゴブリン。気絶している人が2人、片方は血が溢れ出ている。斧は奴の近くに落ちているが、拾いに行くのは困難だろう。俺が持っている武器は……丸い盾のみ。本来は攻撃を防ぐ物である。

「ウドァァァァ!!」

 奴がナイフを持ったまま高く飛び上がり、襲ってきた。先のように盾を投げて倒すことも出来るが、今は奴を倒すよりも2人を救出することが最優先事項である。
 盾を構え、奴の攻撃を防ぐ。奴の持っていたナイフは弾け飛び、奴の手からスポっと抜けていった。

 今、奴に手持ちの武器はない。

 盾を構えたまま、奴に向かって突進をする。奴自身何も抵抗することなく、そのまま吹き飛ばされた。
 何故か抵抗しない。疑問に思ったが、殺れる。馬乗りになり、盾を両手に持ち、顔面に向かって上から下へ振り下ろす。何度も何度も振り下ろす。
 やがて声がしなくなった。が、振り下ろす。所々場所も変え、腕や足にも振り下ろす。

 ガンッ……ガンッ……と何度も。

 最後に奴の目に向かって振り下ろすと、奴は爆散した、辺りを血だらけにして。

 チッ……と俺は舌打ちをした。奴の血が口に入る。美味しいわけがない。奴の血で身体を塗られてゆく感触がして、俺は嫌悪感を覚えた。

 そうだ、奴を殺すことが目的ではない。2人を救出することが目的だった。
 急いで彼の腕にゴブリンの布を巻き、応急処置をする。具体的なやり方は分からないが、何もしないよりはマシだろう。布が汚れていたが、気にする暇もない。
 続いて気絶した村人を起こし、状況を伝える。俺が血に染まっていたせいで驚かれたが、何とか気絶したままの彼を2人がかりで運びながら脱出した。

 再び外に出ると、この世の終わりかと思うくらいの火に囲まれていた。周りの家は燃え崩れ、逆に燃えていない家を数える方が簡単なくらいである。いずれ、この家も燃えるだろう。比較的安全な場所に逃げようと俺たちは努力する。

 まだ昼間なのにも関わらず、辺りは暗くなっている。いや、正確には曇ってきているだけだ。さらに正確に言えば、周りの燃える火のおかげで明るくなっているが。

「誰か! 誰かいませんか!」
 声を張り上げるも、誰も返事がない。もしや、他の村人は全員殺られてしまったのだろうか。

 代わりにゴブリンがやってくる。この声に反応したのだろうか。そばに居る村人が悲鳴を上げ、さらにその悲鳴に反応したゴブリンがやってくる。
 斧は持っているが、このゴブリンの数……10体はいるだろう。

 どうすればいい、俺1人でも……限界はある。それに、この2人に傷を負わせないようにしながら戦うことも至難の業だ。



「私に任せろ」



 空から声がした。この声は……ドラゴンか。
 空にいたドラゴンは、周りにいるゴブリン達を蹴散らして、地面に降り立ちこう言った。

「ここは危険だ、私の背中に乗るんだ」

 俺は村人と彼をヤツの背中に乗せながら、ヤツに聞いた。

「何故襲われていると分かった?」

「その話は後でする、今は安全な場所に行く」
ドラゴンは慌ただしいのか、そう返した。

 仕方ない、俺もヤツの背中に乗った後、ヤツはこの村から飛び立った。

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「ここは……」

 目を開けると、そこには見知らぬ村があった。人が暮らしていた気配は感じとれないが、目の前には俺たちの村の村長さんがいた。

「無事だったのですね」
 と俺が聞くと、彼は安心したような表情を浮かべた後こう質問された。

「君こそ無事だったのか。血だらけだが……これはモンスターの血か?」と。

 俺が頷くと、彼は話を続けた。

「突如、村にゴブリンが現れた。抵抗する者もいたが……殺られてしまった者もいる。そこで龍も現れた。最初は敵かと思ったが、我々を助けてくださった」と。

 俺たちが住む……ストラート村の人口はまだ近くの村に比べれば多い方であると過去に聞いた。それが、今は半分もいない。その半分は抵抗したまま殺られてしまった者なのかもしれない。または火災に巻き込まれてしまった者でもある。

「この龍は友好的なモンスターではない……と言う者もいた。そうして、その者達は龍に着いて行かずに村で生涯を終えた」

 忘れていた。モンスターとは本来は凶悪な存在であると思われている。そのモンスターに協力を持ちかけられた場合、死に際であったとしても断る人間もいるのか。

「ここに残っているのは……ゴブリンから逃れることが出来た者、モンスターに協力できた者、運が良く助かった者のみだ」

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