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承『記憶喪失の《討伐者》』
第24話 リンゴのパイ
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「どうぞ」
その声とともに出てきたのは……本当に料理だった。
綺麗に焼きあがったリンゴのパイに、真っ黒の液体に、茶色い板。リンゴのパイは分かるが、後半2つは食べ物かすら怪しい。
しかし隣の2人は躊躇せず、食らいつく。茶色い板を頬張り、黒い液体をがぶ飲みし、リンゴのパイに至っては切らずにそのまま食べようとする。この場ではそういうマナーか?
「食べろよ、冷めるぞ」
店主の言葉に俺も茶色い板に勢いよくかぶりつく。カリッとした食感とともに甘い風味が口の中に広がる。リンゴのパイの味も、外はカリッと中はふんわりとしていて美味しい。黒い液体は苦いが、どこか風味も感じる。
記憶が蘇りそうな味だ、黒い液体だけは何度でも飲める。
「いいだろ、あの名店・ショウロータルから取り寄せたコーヒーさ!」
その言葉は誰も聞いていない。誰も聞かずに、料理に集中していた。それくらい美味しかったということだ。
店主は彼らに対して料理をどんどん提供する。彼らも彼らで提供された料理をバクバクと頬張る。本当にこの店の地下で集会が行われていたのか、まだ普通の喫茶店にしか見えないが。
「ほら、横の赤いのも食え」
これは、赤いマントを着ている……俺のことだろう。俺はこれ以上食べるつもりは無いが、目の前に料理ご提供されている。これを食べないのも失礼にあたる……はず。
目の前には皿から溢れんばかりの大量の果実。この量を食べたら、どうやっても腹を下す。が、横の2人は食べ続ける。これは食べるしかないのか……。
「いただきます」
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無事、何事も無かったかのように食べ切った。
特別腹を壊す訳でもなく、するすると飲み込むことができた。不思議な力が働いているのか。よく分からないが。
「さて、店じまいだ」
店主はおもむろに立ち、店の扉に鍵をかけた。さらに窓を全て閉めた後、部屋の灯りを全て消した。俺たちは本来は客の立場だ、他の客が居たら不審に思われていただろう。
「行くぞ」
ロックの声と共に、ゴゴゴゴという大きな音が部屋中に鳴り響く。
「見ろ、地下室が開く」とヘイトリッドは楽しそうに言う。下から灯りが漏れている。これが彼らの言う地下室か。
中に入ると如何にも地下室……が広がっていた。入れても10人ほどだろうという、それはもう小部屋である。大量の研究資料と思われる本があり、それは片手では持てないくらい大きな本が何百冊も何百冊も。これが無ければさらに10人は入れそうな予感がする。
机の上にはモンスターの絵。見たことないモンスターまで事細かに描かれている。棚の方に目を向けると、大量のビンが転がっていた。中には緑色の液体が入っている物もある。
「初めて見る物ばかりだろう」
ロックは続けて言う。
「この地下室には団員の研究結果をまとめた資料が保管されている。それこそライムートに見つからないように厳重に。そっちにあるのは薬草を溶かした液体だ、モンスターにも使えるのさ」と、団員でない俺にベラベラと喋る。
彼は俺に対して説明しているようだが気にせずに周りを見渡す。
この地下室にはたくさんの資料が保管されているが、なるほど、読んだところでさっぱり分からん。本を開いても開いても見たことの無い文字だらけで、一切内容の理解ができない。彼らはこの文字を理解しているのか。ならば教えてほしい。
ゴゴゴゴ……
また大きな音が地下室内で鳴り響く。
地下室への通路が開いた音ではない、地下室の中から聞こえるこの音の正体は何だ。
俺以外は喜ぶように笑顔になった。
「レン! 久しぶりだな!」
ロック、ヘイトリッド、店主の3人は喜びの声をあげる。
「大きくなったな……アレアよ。ロックもウォンもいるのか!」
この男はどうやら保護団体の団員らしい。ヘイトリッドとの再会を喜ぶ彼は、俺を見つけ睨む。そして剣を抜きこう言った。
「貴様は誰だ? 団員では無さそうだが……」と。団員でない俺がこの地下室にいる時点で彼からすれば不審者だ。その不審者に向けて剣を構えるという行為に至るのも無理はない。警戒している彼らなら。
「レインマークの奴らに村を焼かれた、僕と同じ境遇に……」とヘイトリッドが説明をしてくれた。危ない、命拾いをした。
「なるほど、剣を抜いてしまって悪かった。俺はレン・スティーロ、ここの団員だ」
彼の目つきも鋭く、鼻も高く、その上身長も高く。女性たちが彼を見たら誰もが落ちてしまうだろうな、そんな整った顔をしている。何の仕事をしているか分からないが、服装も綺麗に整っている。
「俺は、ここから遠く離れた”リバイル村”という場所で討伐者をしている。モンスターを狩っているわけではないが……。ともかく数ヶ月間アミティエに用があって、そのついでに寄ってきたのさ」
何と彼は、ガイアさんと同じく討伐者であった。彼以外の討伐者を見るのは初めてである。というかそもそも、討伐者が彼以外に存在していたのか……と驚いている。
この男はモンスターを狩っているわけではないと言っていた。これは、ガイアさんと同じように便利屋として働いているという解釈で間違っていないか。
「今日はプレゼントもある。これを見てくれ」と言って、彼は大きな袋状の物を5つ取り出した。
「これは?」
誰かが尋ねた。
「こいつはとんでもねぇ代物だ。落下傘というらしい、高いところから飛び降りても無傷で済むらしくてな……試作品だからよく分からないが」と彼は自信ありげに答える。最後の一文の不安要素が強いが、それは大丈夫なのだろうか。
それにしても、落下傘。これは聞いたことない物だ。店主、ロック、ヘイトリッドも誰も聞いたことないらしく、首を傾げている。高いところから飛び降りても無傷で済む、これが本当ならとてつもなく強力な支えになるはずだが、実際に使っているところを見てみたい。高いところと言うが、どれくらいの高さかも見てみないと分からない。
「実践したいが、何せ5個しかない。お前らが持っていくんだ」と彼は強引に俺たちにこの袋状の物体を押しつけた。使い方も教えてくれたが、よく分からない。小さなレバーを引くと、傘が広がり安全に落下できるらしいが、本当にこれで安全に落下できるのか、皆疑問に思っているはずだ。
「さらに報告だ。お前たちが言っていたライムートの中心部にある”ソーラル城”には結界が張ってあるとの情報もある。モンスターが入れないようにしているとか何とか……としか聞いていないが」
結界とは?
よく分からないが、モンスターを入れないために張られている物なら、ドラゴンを用いての作戦ができなくなる。次から次に情報が来るな……と感心している場合ではないが。
「ついでに言っておこう、警備員がアミティエ一帯を取り囲んでいる。ここから抜け出すのは至難の業だろう」
ボソッと彼は重要なことを話す。
やはり、警備の人間に気づかれてしまったようだ。このままでは警備の人間が一軒一軒調べあげ、地下室ごと発見されてしまうだろう。どうすればここから抜け出せるか……。思考を働かせようにも、第一この地下室の仕組みがよく分かっていない。どうすれば。
だがロックもヘイトリッドも店主は慌てる様子なく、冷静に息を吸って吐いて、肝が据わってるのか、ドンと構えている。
「大丈夫だ、この地下室には通路がある。この通路はアミティエ外に森に辿り着く」と冷静に店主は言う。
俺たちが先程まで話し合っていたあの森だろうか、とにかく早めに行かなければならないな。
「俺たちはここに残る」
スティーロと店主はそう告げた。警備に囲まれているのも承知でか? ヘイトリッドもロックもこの言葉には驚いている。
「この店が囲まれているわけでもない、どうにか切り抜けるさ」と彼らは自信満々に言いつつも、どこか悲しげな顔をしていた。
「行ってこい、未来の勇ましい者たちよ」
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俺たちは彼らに半ば強制的に地下通路に押し出された。鍵もかけられた、地下室にはもう戻れない。森に向かうまでの長い通路、俺たちは何も会話せず空間には無言という無言が響いていた。
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「どうぞ」
その声とともに出てきたのは……本当に料理だった。
綺麗に焼きあがったリンゴのパイに、真っ黒の液体に、茶色い板。リンゴのパイは分かるが、後半2つは食べ物かすら怪しい。
しかし隣の2人は躊躇せず、食らいつく。茶色い板を頬張り、黒い液体をがぶ飲みし、リンゴのパイに至っては切らずにそのまま食べようとする。この場ではそういうマナーか?
「食べろよ、冷めるぞ」
店主の言葉に俺も茶色い板に勢いよくかぶりつく。カリッとした食感とともに甘い風味が口の中に広がる。リンゴのパイの味も、外はカリッと中はふんわりとしていて美味しい。黒い液体は苦いが、どこか風味も感じる。
記憶が蘇りそうな味だ、黒い液体だけは何度でも飲める。
「いいだろ、あの名店・ショウロータルから取り寄せたコーヒーさ!」
その言葉は誰も聞いていない。誰も聞かずに、料理に集中していた。それくらい美味しかったということだ。
店主は彼らに対して料理をどんどん提供する。彼らも彼らで提供された料理をバクバクと頬張る。本当にこの店の地下で集会が行われていたのか、まだ普通の喫茶店にしか見えないが。
「ほら、横の赤いのも食え」
これは、赤いマントを着ている……俺のことだろう。俺はこれ以上食べるつもりは無いが、目の前に料理ご提供されている。これを食べないのも失礼にあたる……はず。
目の前には皿から溢れんばかりの大量の果実。この量を食べたら、どうやっても腹を下す。が、横の2人は食べ続ける。これは食べるしかないのか……。
「いただきます」
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無事、何事も無かったかのように食べ切った。
特別腹を壊す訳でもなく、するすると飲み込むことができた。不思議な力が働いているのか。よく分からないが。
「さて、店じまいだ」
店主はおもむろに立ち、店の扉に鍵をかけた。さらに窓を全て閉めた後、部屋の灯りを全て消した。俺たちは本来は客の立場だ、他の客が居たら不審に思われていただろう。
「行くぞ」
ロックの声と共に、ゴゴゴゴという大きな音が部屋中に鳴り響く。
「見ろ、地下室が開く」とヘイトリッドは楽しそうに言う。下から灯りが漏れている。これが彼らの言う地下室か。
中に入ると如何にも地下室……が広がっていた。入れても10人ほどだろうという、それはもう小部屋である。大量の研究資料と思われる本があり、それは片手では持てないくらい大きな本が何百冊も何百冊も。これが無ければさらに10人は入れそうな予感がする。
机の上にはモンスターの絵。見たことないモンスターまで事細かに描かれている。棚の方に目を向けると、大量のビンが転がっていた。中には緑色の液体が入っている物もある。
「初めて見る物ばかりだろう」
ロックは続けて言う。
「この地下室には団員の研究結果をまとめた資料が保管されている。それこそライムートに見つからないように厳重に。そっちにあるのは薬草を溶かした液体だ、モンスターにも使えるのさ」と、団員でない俺にベラベラと喋る。
彼は俺に対して説明しているようだが気にせずに周りを見渡す。
この地下室にはたくさんの資料が保管されているが、なるほど、読んだところでさっぱり分からん。本を開いても開いても見たことの無い文字だらけで、一切内容の理解ができない。彼らはこの文字を理解しているのか。ならば教えてほしい。
ゴゴゴゴ……
また大きな音が地下室内で鳴り響く。
地下室への通路が開いた音ではない、地下室の中から聞こえるこの音の正体は何だ。
俺以外は喜ぶように笑顔になった。
「レン! 久しぶりだな!」
ロック、ヘイトリッド、店主の3人は喜びの声をあげる。
「大きくなったな……アレアよ。ロックもウォンもいるのか!」
この男はどうやら保護団体の団員らしい。ヘイトリッドとの再会を喜ぶ彼は、俺を見つけ睨む。そして剣を抜きこう言った。
「貴様は誰だ? 団員では無さそうだが……」と。団員でない俺がこの地下室にいる時点で彼からすれば不審者だ。その不審者に向けて剣を構えるという行為に至るのも無理はない。警戒している彼らなら。
「レインマークの奴らに村を焼かれた、僕と同じ境遇に……」とヘイトリッドが説明をしてくれた。危ない、命拾いをした。
「なるほど、剣を抜いてしまって悪かった。俺はレン・スティーロ、ここの団員だ」
彼の目つきも鋭く、鼻も高く、その上身長も高く。女性たちが彼を見たら誰もが落ちてしまうだろうな、そんな整った顔をしている。何の仕事をしているか分からないが、服装も綺麗に整っている。
「俺は、ここから遠く離れた”リバイル村”という場所で討伐者をしている。モンスターを狩っているわけではないが……。ともかく数ヶ月間アミティエに用があって、そのついでに寄ってきたのさ」
何と彼は、ガイアさんと同じく討伐者であった。彼以外の討伐者を見るのは初めてである。というかそもそも、討伐者が彼以外に存在していたのか……と驚いている。
この男はモンスターを狩っているわけではないと言っていた。これは、ガイアさんと同じように便利屋として働いているという解釈で間違っていないか。
「今日はプレゼントもある。これを見てくれ」と言って、彼は大きな袋状の物を5つ取り出した。
「これは?」
誰かが尋ねた。
「こいつはとんでもねぇ代物だ。落下傘というらしい、高いところから飛び降りても無傷で済むらしくてな……試作品だからよく分からないが」と彼は自信ありげに答える。最後の一文の不安要素が強いが、それは大丈夫なのだろうか。
それにしても、落下傘。これは聞いたことない物だ。店主、ロック、ヘイトリッドも誰も聞いたことないらしく、首を傾げている。高いところから飛び降りても無傷で済む、これが本当ならとてつもなく強力な支えになるはずだが、実際に使っているところを見てみたい。高いところと言うが、どれくらいの高さかも見てみないと分からない。
「実践したいが、何せ5個しかない。お前らが持っていくんだ」と彼は強引に俺たちにこの袋状の物体を押しつけた。使い方も教えてくれたが、よく分からない。小さなレバーを引くと、傘が広がり安全に落下できるらしいが、本当にこれで安全に落下できるのか、皆疑問に思っているはずだ。
「さらに報告だ。お前たちが言っていたライムートの中心部にある”ソーラル城”には結界が張ってあるとの情報もある。モンスターが入れないようにしているとか何とか……としか聞いていないが」
結界とは?
よく分からないが、モンスターを入れないために張られている物なら、ドラゴンを用いての作戦ができなくなる。次から次に情報が来るな……と感心している場合ではないが。
「ついでに言っておこう、警備員がアミティエ一帯を取り囲んでいる。ここから抜け出すのは至難の業だろう」
ボソッと彼は重要なことを話す。
やはり、警備の人間に気づかれてしまったようだ。このままでは警備の人間が一軒一軒調べあげ、地下室ごと発見されてしまうだろう。どうすればここから抜け出せるか……。思考を働かせようにも、第一この地下室の仕組みがよく分かっていない。どうすれば。
だがロックもヘイトリッドも店主は慌てる様子なく、冷静に息を吸って吐いて、肝が据わってるのか、ドンと構えている。
「大丈夫だ、この地下室には通路がある。この通路はアミティエ外に森に辿り着く」と冷静に店主は言う。
俺たちが先程まで話し合っていたあの森だろうか、とにかく早めに行かなければならないな。
「俺たちはここに残る」
スティーロと店主はそう告げた。警備に囲まれているのも承知でか? ヘイトリッドもロックもこの言葉には驚いている。
「この店が囲まれているわけでもない、どうにか切り抜けるさ」と彼らは自信満々に言いつつも、どこか悲しげな顔をしていた。
「行ってこい、未来の勇ましい者たちよ」
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