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突然日本から不思議な空間に召喚されている10人。
もちろん不安な感情も強制的に抑えているので恐れる事無く召喚を受け入れており、場は沸き立つ。
誰しもが有りえない力である魔法に憧れている上、場合によっては勇者とか言う一躍有名人になれるのではと言う期待がある。常に武道で心も鍛えていた湯原以外は……
残念ながら今回向かう星には、勇者となってレベル99の力を突然得られるなどと言うお手軽な事情ではないし、最悪の存在と言われがちな魔王がいるわけでもない。
この神々にできる事は、必要に応じて召喚して少しだけ力を与える事だけだ。
神々は召喚先の国での生活についてある程度説明し終えると、本題に入る。
「この場にいる者達は冒険者とダンジョンマスターに分かれて頂く」
ここで初めて若干だが不安そうな表情になる湯原以外の者達。
今まで勝手に浮かれて想像していた勇者の存在もないし、ダンジョンマスターと冒険者……今までの説明で最終的には命のやり取りをする存在になると言うのだから当然だ。
「確かに冒険者とダンジョンマスターは対極にあるが、冒険者側はダンジョンを完全攻略しなければ良いし、ダンジョンマスター側は、侵入してくる冒険者に手心を加えれば良いだろう?場合によっては、罠で一階層に戻す事も出来る」
互いが命のやり取りをする可能性がある事に気が付いた事で抑えていた不安な感情が溢れているのに気が付き、制御するためにこう説明する神。
「成程。だとすると、互いに良い思いをするならば別の立場になった方が良いのか……」
なんちゃって優等生である吉川の言葉を聞いて、湯原以外には気が付く事が出来ない程度に神々の表情が一瞬歪んだ。
神々はやはり今回の召喚も欲望溢れる者達ばかりかと落胆したのだが、ある意味強制的に拉致してしまっている立場の為に、何かを口にする事はない。
湯原だけは常に周囲を警戒しているので、その表情の変化に気が付く事が出来ていた。
「既に各自の適性に応じて役割は決めさせてもらっている。ダンジョンマスター達にはダンジョンを作成する際に必要なコアが体内で生成されている。不思議な感覚があるはずだ。これはダンジョンマスターの心臓とも言える物で、ダンジョン生成後はダンジョンの外には出せない。マスターは外に出られるが、その際にコアを破壊されるとマスターも死ぬ。逆にマスターが死んでもコアは破壊されてダンジョンも死ぬ」
ダンジョンマスターへの説明後、もう一方の神が冒険者側へこう告げる。
「冒険者側も、初期レベル20の力を今与えた。同じく、今迄とは違う力が溢れてきているだろう?」
再び沸き立つこの場。
「確かに力は感じるが、ダンジョンマスターであるか冒険者であるのかの区別はどうするんだ?」
完全に浮かれている四宮は、目の前の有りえない程の力を提示して見せた不思議な存在に対しても不遜な態度だ。
「……ダンジョンマスターはそのコア、ダンジョンを作成するのに必要なコアをダンジョン作成前までは自由に出し入れできる。だが、体内に保管できるのは一月まで。その時までにダンジョンを作っていなければ、強制的にその場でダンジョンが作成される事になる。例え天敵である冒険者が集う冒険者ギルドの目の前だったとしても……だ。お前はダンジョンマスター側だから、“出でよ、コア”と言ってみるが良い」
この話を聞くと四宮がダンジョンマスターである事は確実だが、自分はどうなのか気になる所を堪えて状況を確認しようとする湯原。
隣で少し震えている水野を優しく撫でながら、そっと呟く。
「水野。俺達はどちらか分からないが、仮にダンジョンマスターだったとしても安易にコアを出すな。出せると言ってはいるが、出しても問題ないとは一言も言っていないからな。わかったな?」
常に不意打ちに対しても訓練していた湯原は、この異次元の事象を前にして全てを疑ってかからなければ命取りになると考えている。
祈るような視線を湯原に向けた水野は、湯原の言葉にコクコクと頷く。
「出でよ、コア!」
同時に四宮が言われたとおりのセリフを言うと……胸のあたりから頭程度の大きさの何とも表現できない奇麗な球体が飛び出て来た。
この様子を見た召喚者達は、どこもかしこも、湯原と水野以外の全員が「出でよ、コア」と叫び、冒険者組とダンジョンマスター組が明確に分かれて興奮していた。
「それがコアだ。保管する時は手に触れて胸に押し込むと良い。で、ダンジョンを作成する希望の地にこのコアを出して、“ダンジョン生成”と唱えればダンジョンが出来る。地下型、地上型はその場所に適した方を勝手に選ぶが良いだろう」
神は、この短い時間での召喚者達の態度からもいつもの通りに大外れであったと感じたようで落胆しているのだが、説明だけはある程度終わらせなくてはならないので、もう一方の神が付け加える。
「二つ付け加える。一つ目は、出来たてのダンジョンは非常に脆弱だ。地上型であれば……適切な表現が難しいが、敢えて言うならばボロボロの小屋。地下型であれば、少し広いただの洞窟、と言うよりも空洞だ。その状態でレベル1のダンジョンマスターに力が無いままでは死亡する可能性が高いので、眷属を出せるようにしている」
「待ってました!眷属かよ!!ウッヒョー、サキュバス一択だぜ!!」
「エロいぞ、四宮!」
再び騒ぎ出す四宮とダンジョンマスターと言う立場が確定している辰巳。
彼らの知識にある、女性型の見た目麗しい眷属を呼んでアレコレする事を想像している。
もちろん不安な感情も強制的に抑えているので恐れる事無く召喚を受け入れており、場は沸き立つ。
誰しもが有りえない力である魔法に憧れている上、場合によっては勇者とか言う一躍有名人になれるのではと言う期待がある。常に武道で心も鍛えていた湯原以外は……
残念ながら今回向かう星には、勇者となってレベル99の力を突然得られるなどと言うお手軽な事情ではないし、最悪の存在と言われがちな魔王がいるわけでもない。
この神々にできる事は、必要に応じて召喚して少しだけ力を与える事だけだ。
神々は召喚先の国での生活についてある程度説明し終えると、本題に入る。
「この場にいる者達は冒険者とダンジョンマスターに分かれて頂く」
ここで初めて若干だが不安そうな表情になる湯原以外の者達。
今まで勝手に浮かれて想像していた勇者の存在もないし、ダンジョンマスターと冒険者……今までの説明で最終的には命のやり取りをする存在になると言うのだから当然だ。
「確かに冒険者とダンジョンマスターは対極にあるが、冒険者側はダンジョンを完全攻略しなければ良いし、ダンジョンマスター側は、侵入してくる冒険者に手心を加えれば良いだろう?場合によっては、罠で一階層に戻す事も出来る」
互いが命のやり取りをする可能性がある事に気が付いた事で抑えていた不安な感情が溢れているのに気が付き、制御するためにこう説明する神。
「成程。だとすると、互いに良い思いをするならば別の立場になった方が良いのか……」
なんちゃって優等生である吉川の言葉を聞いて、湯原以外には気が付く事が出来ない程度に神々の表情が一瞬歪んだ。
神々はやはり今回の召喚も欲望溢れる者達ばかりかと落胆したのだが、ある意味強制的に拉致してしまっている立場の為に、何かを口にする事はない。
湯原だけは常に周囲を警戒しているので、その表情の変化に気が付く事が出来ていた。
「既に各自の適性に応じて役割は決めさせてもらっている。ダンジョンマスター達にはダンジョンを作成する際に必要なコアが体内で生成されている。不思議な感覚があるはずだ。これはダンジョンマスターの心臓とも言える物で、ダンジョン生成後はダンジョンの外には出せない。マスターは外に出られるが、その際にコアを破壊されるとマスターも死ぬ。逆にマスターが死んでもコアは破壊されてダンジョンも死ぬ」
ダンジョンマスターへの説明後、もう一方の神が冒険者側へこう告げる。
「冒険者側も、初期レベル20の力を今与えた。同じく、今迄とは違う力が溢れてきているだろう?」
再び沸き立つこの場。
「確かに力は感じるが、ダンジョンマスターであるか冒険者であるのかの区別はどうするんだ?」
完全に浮かれている四宮は、目の前の有りえない程の力を提示して見せた不思議な存在に対しても不遜な態度だ。
「……ダンジョンマスターはそのコア、ダンジョンを作成するのに必要なコアをダンジョン作成前までは自由に出し入れできる。だが、体内に保管できるのは一月まで。その時までにダンジョンを作っていなければ、強制的にその場でダンジョンが作成される事になる。例え天敵である冒険者が集う冒険者ギルドの目の前だったとしても……だ。お前はダンジョンマスター側だから、“出でよ、コア”と言ってみるが良い」
この話を聞くと四宮がダンジョンマスターである事は確実だが、自分はどうなのか気になる所を堪えて状況を確認しようとする湯原。
隣で少し震えている水野を優しく撫でながら、そっと呟く。
「水野。俺達はどちらか分からないが、仮にダンジョンマスターだったとしても安易にコアを出すな。出せると言ってはいるが、出しても問題ないとは一言も言っていないからな。わかったな?」
常に不意打ちに対しても訓練していた湯原は、この異次元の事象を前にして全てを疑ってかからなければ命取りになると考えている。
祈るような視線を湯原に向けた水野は、湯原の言葉にコクコクと頷く。
「出でよ、コア!」
同時に四宮が言われたとおりのセリフを言うと……胸のあたりから頭程度の大きさの何とも表現できない奇麗な球体が飛び出て来た。
この様子を見た召喚者達は、どこもかしこも、湯原と水野以外の全員が「出でよ、コア」と叫び、冒険者組とダンジョンマスター組が明確に分かれて興奮していた。
「それがコアだ。保管する時は手に触れて胸に押し込むと良い。で、ダンジョンを作成する希望の地にこのコアを出して、“ダンジョン生成”と唱えればダンジョンが出来る。地下型、地上型はその場所に適した方を勝手に選ぶが良いだろう」
神は、この短い時間での召喚者達の態度からもいつもの通りに大外れであったと感じたようで落胆しているのだが、説明だけはある程度終わらせなくてはならないので、もう一方の神が付け加える。
「二つ付け加える。一つ目は、出来たてのダンジョンは非常に脆弱だ。地上型であれば……適切な表現が難しいが、敢えて言うならばボロボロの小屋。地下型であれば、少し広いただの洞窟、と言うよりも空洞だ。その状態でレベル1のダンジョンマスターに力が無いままでは死亡する可能性が高いので、眷属を出せるようにしている」
「待ってました!眷属かよ!!ウッヒョー、サキュバス一択だぜ!!」
「エロいぞ、四宮!」
再び騒ぎ出す四宮とダンジョンマスターと言う立場が確定している辰巳。
彼らの知識にある、女性型の見た目麗しい眷属を呼んでアレコレする事を想像している。
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