湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
7 / 159

(6)

しおりを挟む
 湯原の質問に答える神。

「……お前は湯原と言ったか?期待が出来そうだ。詳細の説明をしなくなってから久しいが、あの二人と同じ事を聞いてくるとはな。日本では有りえない力を与えられても冷静さを保てた人物、どうしても期待してしまう」

 一人の神が感心したように話すと、もう一人が質問に答えてくれる。

「確かにその通りだ。質問に答えよう。誰もが四天王……四体の眷属の方がお得と考えるだろうし、事実今回のダンジョンマスターの様子からも、欲望にまみれた同一種族を四体呼び出すだろう。種族によって得手不得手が有るので、仮にレベル差が大きく有ったとしても敗北する事も有るのだが……と、話が逸れたな。実は……」

 説明によれば、呼び出せる魔物はダンジョンのレベルに応じて種類、数が決められるが、眷属については総合でレベル297……呼び出した個体数で分割する事になるので、三傑の場合は各個体の成長限界が最大レベルの99になる。

 四天王の場合と三傑では呼び出せる眷属の種類も異なり、四天王を選択すると選択肢が大幅に減るらしい。

 三傑であれば最大レベル99の眷属となるのだが、もちろんこれは成長限界であり、召喚初期はレベル30を召喚した眷属に分割する事になる。

 そうなると四天王の場合、一体の最大成長限界レベルは297を四分割するので74にまで落ちる上に、初期のレベルも30を四つの個体に分ける事になる。

 この話を召喚者にできたのは、以前ダンジョンマスターが暴走してバランスが崩れた事によって説明を止めてからは二度目であり、神は湯原の冷静さから以前の様な危機的状況にはならないだろうと判断し、更に事情を説明する。

「……つまり、ダンジョンコアを一度顕現してから一月後にダンジョンを生成しないと、上限レベルが60固定。その後更に一月後に眷属を召喚しないと、こちらも上限レベル74付近で固定と言う事ですか?」

「数の上ではそうだが、実際はダンジョンレベルに応じて眷属のレベルが上がるから、レベル74になる事は難しいだろう。だが、それだけ……日本で言う所の環境適合とでも言うのか?レベル99になるのであれば、そこまでの力を得るための期間が必要なのだ。この事実を知っているダンジョンマスターは、今はお前達二人だけ。長い歴史の中での召喚者達を含めると、過去にはいたのだが……」

「あっ、俺達はダンジョンマスター側だったのですか。そうなると、仮に直ぐにダンジョンを作成して眷属を呼んだとしても、ダンジョンのレベル上限60の制約で眷属も実際は上限が74としても60位にまでしか上昇できない……と言う事ですね?じゃあついでと言う訳ではないですが、俺達二人で一つのダンジョンを管理すると言う事は出来ますか?」

「眷属については均等にレベルアップさせればその通りだ。ダンジョンの統合……残念ながら生成時にそれは出来ないな。だが、隣接する形で作れば問題ないだろう?」

 湯原としては、神のこの一言で唯一の味方であり好意を寄せている水野と共に行動できる事、そして守れる事に安堵していた。

「では久しぶりに出会えた気の良い召喚者達よ、旅立つと良い」

 神の一言で場所を決めにかかる湯原と水野だが、向こうに到着後に即始末される可能性もあるので、場所選びは非常に慎重になっている。

 今回の・・・召喚者は大陸の中のとある国家、ラスリ王国のみにこの場から送還できるようで、全く人気のない場所か、逆に王都のように人の溢れる所か……非常に判断に迷っている。

「迷っているようだな。お前達にはもう少しだけ助言をしておこう。気になっているのは先行して向こうに行った連中だろう?あの連中もかつてない程の低俗っぷりだったからな。何も考えなしで向かっては、ダンジョンマスター側はダンジョン生成すらしていないので戦闘力は皆無故に除外できるが、冒険者側には始末されかねない勢いだったな。そこを気にしているのだろう?」

「そうなのです。私達、何もしていないのに……」

 極限の状態で初めてかけてもらえた優しい言葉に思わず水野が反応したのを見て、再び神が微笑みながらこう告げた。

「そこで少しでも生存確率を上げるために、やはり王都に向かう事を勧める。冒険者ギルドも多数あるので今回の召喚者達とかち合う可能性も少ないし、素顔を隠して様子を見れば人ごみに紛れる事が出来るので、見つかる可能性は少ないだろう。大した情報を与えられずに済まないな。無理やり召喚しておいて、申し訳ないと思っている」

「……そう言えば、帰りたいと言う感情が無い事を不思議に思っていました。見た限り、今回召喚された他の者もそのように見みえたので、何かされましたか?」

 湯原の鋭い指摘に、再び二人目の神が反応する。

「湯原と言ったな。本当に鋭い男だ。その通り。勝手な事とは重々承知しているが、帰還願望についてはなくさせて貰っている。即そこまで気が付いたのはお前が初めてだ。だが、感情を操作している事については申し訳ないと思っている」

「いいえ。その感情が無い為かは分かりませんが、不思議と悲しいと言う事も有りませんので。事情もおありでしょうから、受け入れますよ。アドバイスありがとうございました。行こうか、水野?」

「はい、湯原君。皆さん、ありがとうございました!」

 こうしてこの会話以外にも神々からのアドバイスを貰い、王都に送還される二人。

 残された神々は……

「あの二人であれば、長く平和な時間が続くかもしれないな」

「あぁ。長きにわたって安定を保ってくれたあの二人にそっくりだからな。大いに期待できそうだ。だが、もう我らには召喚できる力は残されていない……最後の賭けだ」

 こう呟いて、姿を消した。

 実は送還先の世界は神々が言っていた通りに長きにわたって安定していたのだが、それにはもちろん理由がある。

 会話の中でも出てきていた慎重な者……ダンジョンマスター側のとある人物が非常に慎重な人物であり、暴走している冒険者やダンジョンマスターを制御、最悪は始末してくれていたのだ。

 当然他の召喚者達からは目の敵にされ、事情を知らない冒険者達からは相当レベルの高いダンジョンとして攻略の目標とされていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...