湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
11 / 159

(10)

しおりを挟む
 <保有レベル30>の意味がよく分からずに、四宮は無意識化でその文字の部分に意識を集中すると……その詳細が浮かんできた。

……呼び出す眷属全体に与える事が出来る初期レベルの総数。レベルは最低1を与える必要がある……

 一体を強化してレベル27にして、残りの三体をレベル1にするのか、ほぼ均等に振り分けるのかを悩む事になる。

 取り敢えず悩みながらも、少しでも安全に過ごすために作業を進める。

 他の連中がどうしようが関係なく、取り敢えずは最低でも自分の周囲を安全な環境にする事が第一だからだ。

  <人型><魔物>

 ここでは、目的がサキュバス一択の為に<人型>を選択する。

 進めた先の選択肢の中にサキュバスが無い事は一切考えていない。

  <魔族><精霊族><獣人族>

 日本の小説情報によれば、サキュバスは魔族であったはず。

 精霊族と言う雰囲気的に美しい感じを与える種族や猫耳の獣人族に意識が行ったが、最上級のおもてなしを想像するとサキュバスに落ち着くので、<魔族>を選択する。

 そもそも、余裕がないのでさっさと作業を進めなくてはと言う焦りも有った。

 ここで<保有レベル30>の時と同様に全てに意識を集中すれば、もう少し呼び出すべき眷属の詳細情報が得られているのだが……

  <淫魔族><吸血族>

「よっしゃ、予定通りだ!」

 迷わず<淫魔族>×4を選択するが、レベルを振り分ける必要がある。

 安全に過ごすためにはどうすれば良いのかを、焦りながらも必死で考える四宮。

 同時に召喚された者達の冒険者組はレベル20を与えられており、あの空間で彼らの動きは見えなかった事から、それは事実だろうと考える。

 今思えば自分達も眷属を得られると浮かれていたのだが、あの動きは異常だったとしっかりと認識し、もう少し警戒すれば良かったと後悔している。

 と同時に、冒険者組と共に餌にしてやろうと睨みつけていた湯原と水野が、どちらの立場なのかすら確認する間もなくあの空間を後にしてしまった事に今更ながら気が付くのだが、最早どうしようもない。

 更に四宮は、この世界にいる冒険者達のレベルがどの程度なのかを何も知らない事に舌打ちする。

 実際にレベル20は相当な強さを持っているとされているので、召喚者以外だけを気にする場合には、差し当たり召喚した眷属の特性も有るのだが、レベル30も有れば十分だったりする。

 逆に、眷属の属性によってはもう少しレベルが低くても問題ないケースもあり得るのだが、そのような知識もないので、召喚者である冒険者に確実に対抗できるようにすると言う結論に至る。

 この世界の標準的な冒険者のレベルは不明だが、取り敢えずは一点集中とする事にした四宮は、一体を27とし、残りの三体はレベル1にした。

 最悪、湯原と水野が共に冒険者側で襲い掛かってきた場合、レベル20二人を相手にしても問題ないと思われる状況にしたかったのだ。

 全ての設定を終えたようで、目の前が急に光り輝いて思わず目を瞑ってしまった後に、視界が戻ると跪いている四人の美女がいた。

「……いいじゃねーか」

 全員同じ顔で同じスタイルだが、少々庇護欲をそそる垂れ目の大きな黒目、そして妖艶さと清楚さを併せ持つ美しく長い黒髪を後ろで束ねているスタイル抜群の女性達。

 漸く不安よりも欲望が四宮の心を支配し、差し当たり最もレベルを高くした一体をコアのある部屋から外に出して周囲を警戒させ、残りの三体を本能の赴くままに扱う。

 眷属は主の命令に絶対服従であり、主の命を守る事を無条件で行うようにできているので、他の三人も四宮とほぼ同じ工程を辿って眷属を召喚した後に眷属と共に過ごしていた。

 欲望が溢れている中でも周囲が辛うじて見えている女性陣の二人、星出 春香と岡島 有希は、淫魔インキュバスを召喚した所は同じだが、四枠全てを使用する事は無かった。

 少しだけ冷静に他種族についても検討していたのだ。

 その結果、星出は一体を魔物の蟻を召喚し、岡島は精霊族の光族を召喚していた。

 星出としては、地下ダンジョンである為に地下特化の昆虫系魔物の蟻を選択しており、岡島は、この世界での戦闘は命のやり取りになる事を理解しているので、回復や防御が行える精霊族に分類される光族を選択した。

 全員がほぼ全ての枠を使用して呼び出した淫魔族は基本的に夢を見せる力を持っている種族であり、夜はレベル相応の力を扱えるのだが、昼間には力が半減する。

 種族の部分に対して意識を集中する事によってこのデメリットを知る事が出来たのだが、他種族を召喚した星出と岡島でさえ、淫魔族を召喚するときには説明を碌に意識せずに召喚していた。

 この淫魔族のデメリットは他にもあり、対象を夢の世界に強制的に誘えるのだが、効果があるのは自らよりもレベルの低い者で、且つ異性のみと言うおまけつき。

 つまり、サキュバスであれば男性やオスにしか戦力とはならず、インキュバスはその逆と言う事になる。

 辛うじて召喚初期からレベル5相当の炎魔法、その他の魔法は生活魔法レベルで使えるので、その魔法で対応できる相手であれば性別は関係ない。

 本来魔法に対してのレベルと言う概念は存在せずに本人のレベルや修練度に比例するはずなのだが、淫魔族だけは特殊であり、初期からレベル5相当の熟練の人が使うような炎魔法が使用できる代わりに、それ以上威力が増す事は決してないのだ。

 このデメリットに着目すれば召喚時のジョーカー的な存在であったりするが、実は彼らの本来の正しい活用方法は他に有ったりする。

 そもそも敵には強制的に夢を見せて混沌させる種族である為に強い魔法を必要としない事も有るのだが、本来この種族を最も活用できる環境に置いているマスターは、今の所存在していない。

 四宮達が楽しんでいたのは夜である為に各個体が最大限の力を発揮できるうえに両性が隣接しているダンジョンに存在しているので、差し当たり安全に一夜を過ごす事が出来るのだが……

 各ダンジョンではそれぞれの力を確認する事もなく、恐怖から解放された為に欲望の赴くままに行動しており、無駄な一夜を過ごす事になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...