湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

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 受付も、吉川達が見た目とレベルに釣り合いが取れていないので召喚者と疑っておらず、絵を見せながら分かり易く説明する。

「これは、このような魔物です。森の奥に生息していますが一家族で生活しているので、基本的には多くても6匹程度で行動しています。動きが早く魔法に耐性があるので、物理攻撃で始末すると良いでしょう。ラグリアは、その無限に生えて来る爪を飛ばして攻撃してきますので、そこには注意してください。討伐証明は、魔物の心臓とも言える魔核をお持ちください。一匹につき、金貨5枚(五万円)をお支払いいたします」

「魔核以外は、引き取りの対象箇所はあるか?」

「一応、その毛皮は高値で買い取れますが……物理攻撃によって切り刻まれるでしょうから、基本的にはゴミになると思います。魔物の亡骸は、病原菌の繁殖になる為に焼却が基本です。死亡した魔物は全ての耐性を失いますので、生活魔法程度の炎魔法でも焼却できます。宜しくお願いします」

 受付の言葉になる程と頷きながらも、何故かお金についても何となく価値が分かっている吉川達は、取り敢えず何も武器を持っていない事に気が付く。

「よっし~、大丈夫だよ。ホラ!」

 そこに、目ざとくポケットに入っている白金貨五枚(五十万円)を出す椎名。

「おいおい、どこに……って、成程な」

 あの空間で不思議な二人がお金を渡すと言っていた事を思い出した吉川は、自分の懐をまさぐって白金貨五枚を確認する。

「これが少々……か」

 元は高校一年生の吉川達にとっては、一応大金だ。

「これで武器を揃えれば、問題ないっしょ?」

 相変わらず場の雰囲気を軽くする椎名の声を聞き、四人は受付から聞いた武器を売っている商店に向かって行く。

 よくわからないが、取り敢えず剣道をしていた吉川は剣を、弓道をしていた笹岡は弓と矢を、藤代はあの空間でも容易く魔法が行使できたので杖を、椎名も魔法を使えるのだが、どちらかと言うと回復や防御に特化した魔法が得意であると肌で感じているので、店主と相談の上、腕輪を購入した。

「まさか、ぼったくられてはいないよな?」

 装備の価値や効果が今ひとつわからない吉川達は、少々不安になりつつも全員各自で白金貨二枚(二十万円)を支払う。

 現代日本で武器を購入する機会がない高校生故の迷いだが、一応ギルドからの紹介で召喚者であると教えられている店主は何かあれば報復される事を恐れ、かなり安く販売していたりする。

「で、よっし~!もし途中であっち四宮達に会ったらどうするの?」

「それは自分も気になっている。今なら確実に勝てる自信はあるが、一応同郷の者。だが、放置すればこちらが危険になる可能性もある」

「相変わらず笹岡君は堅いよね。でも、私もどうするかは今のうちに決めておきたいな」

「……確かに、笹岡の言う通りに放置すると危険かもしれない。本人は永遠のレベル1とは言え、自らのダンジョンを育てる為に眷属を差し向けてくる可能性もある」

 あの時、あの不思議な場所では共通の敵である湯原と水野に全員が視線を向けたが、冷静に考えればダンジョンマスター側にしてみれば、自分達も十分敵になり得るのだ。

 現時点でもダンジョンが相当数ある事が理解できているので、他のダンジョンマスターからの攻撃に耐えるべく自分達の力を急激に上昇させるには、召喚者と明らかな者……つまりは自分達を狙うのが手っ取り早いのだ。

「そうなると……あの場で召喚者と明らかにしたのは浅はかだったかもしれないな。まぁ、終わった事は仕方がない。わかった。ここは異世界。同郷だのなんだの言っていたら命はない。ここは割り切ろう」

 既に育っている先輩召喚者のダンジョンマスターや、生存しているかどうかは不明だが冒険者からもレベルアップの糧として狙われかねない立ち位置である事に漸く気が付いた四人。

 あの場所にいた冒険者程度では相手にならないので問題ないと感じていたが故に、油断が有った事は否めない。

 そうなると逆に手短な糧を得る方が良いと判断して、同時に召喚された対極の存在である四宮達を獲物として捉えてしまうのは当然の流れと言える。

 こうして図らずもこの時までに、ダンジョンマスター側と冒険者側の四人全員が互いを不倶戴天の敵として認識した。

 立場がどうなっているか不明の湯原と水野も見つけ次第始末する事を確認した四人は、それぞれが新調した武器を装備してから依頼のラグリアと呼ばれる、日本で言う所のモグラ……ただし地上で生活している魔物が生息している場所に向かう。

 少し前の多少お気楽な気持ちは失せ、いつ襲われても対処できるように慎重に慎重を期して進んでいる。

 今回は道中何かがある訳でもなく受付に教えてもらった場所に難なく到着すると、四人全員が何となく複数の魔物の存在を感じ取る事が出来ていた。

「自分が行ってみよう」

 徐に弓を構えて矢を射る笹岡。

 立て続けに四本飛んだ矢は何もなさそうな藪の奥に刺さると同時に、魔物の気配が全て消える。

「おっ、レベルアップだ」

 全員がパーティーと認識されたのか、同時に頭の中にレベルが20から22に上昇した旨のメッセージが表示された。
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