湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

文字の大きさ
14 / 159

(13)

しおりを挟む
 受付も、吉川達が見た目とレベルに釣り合いが取れていないので召喚者と疑っておらず、絵を見せながら分かり易く説明する。

「これは、このような魔物です。森の奥に生息していますが一家族で生活しているので、基本的には多くても6匹程度で行動しています。動きが早く魔法に耐性があるので、物理攻撃で始末すると良いでしょう。ラグリアは、その無限に生えて来る爪を飛ばして攻撃してきますので、そこには注意してください。討伐証明は、魔物の心臓とも言える魔核をお持ちください。一匹につき、金貨5枚(五万円)をお支払いいたします」

「魔核以外は、引き取りの対象箇所はあるか?」

「一応、その毛皮は高値で買い取れますが……物理攻撃によって切り刻まれるでしょうから、基本的にはゴミになると思います。魔物の亡骸は、病原菌の繁殖になる為に焼却が基本です。死亡した魔物は全ての耐性を失いますので、生活魔法程度の炎魔法でも焼却できます。宜しくお願いします」

 受付の言葉になる程と頷きながらも、何故かお金についても何となく価値が分かっている吉川達は、取り敢えず何も武器を持っていない事に気が付く。

「よっし~、大丈夫だよ。ホラ!」

 そこに、目ざとくポケットに入っている白金貨五枚(五十万円)を出す椎名。

「おいおい、どこに……って、成程な」

 あの空間で不思議な二人がお金を渡すと言っていた事を思い出した吉川は、自分の懐をまさぐって白金貨五枚を確認する。

「これが少々……か」

 元は高校一年生の吉川達にとっては、一応大金だ。

「これで武器を揃えれば、問題ないっしょ?」

 相変わらず場の雰囲気を軽くする椎名の声を聞き、四人は受付から聞いた武器を売っている商店に向かって行く。

 よくわからないが、取り敢えず剣道をしていた吉川は剣を、弓道をしていた笹岡は弓と矢を、藤代はあの空間でも容易く魔法が行使できたので杖を、椎名も魔法を使えるのだが、どちらかと言うと回復や防御に特化した魔法が得意であると肌で感じているので、店主と相談の上、腕輪を購入した。

「まさか、ぼったくられてはいないよな?」

 装備の価値や効果が今ひとつわからない吉川達は、少々不安になりつつも全員各自で白金貨二枚(二十万円)を支払う。

 現代日本で武器を購入する機会がない高校生故の迷いだが、一応ギルドからの紹介で召喚者であると教えられている店主は何かあれば報復される事を恐れ、かなり安く販売していたりする。

「で、よっし~!もし途中であっち四宮達に会ったらどうするの?」

「それは自分も気になっている。今なら確実に勝てる自信はあるが、一応同郷の者。だが、放置すればこちらが危険になる可能性もある」

「相変わらず笹岡君は堅いよね。でも、私もどうするかは今のうちに決めておきたいな」

「……確かに、笹岡の言う通りに放置すると危険かもしれない。本人は永遠のレベル1とは言え、自らのダンジョンを育てる為に眷属を差し向けてくる可能性もある」

 あの時、あの不思議な場所では共通の敵である湯原と水野に全員が視線を向けたが、冷静に考えればダンジョンマスター側にしてみれば、自分達も十分敵になり得るのだ。

 現時点でもダンジョンが相当数ある事が理解できているので、他のダンジョンマスターからの攻撃に耐えるべく自分達の力を急激に上昇させるには、召喚者と明らかな者……つまりは自分達を狙うのが手っ取り早いのだ。

「そうなると……あの場で召喚者と明らかにしたのは浅はかだったかもしれないな。まぁ、終わった事は仕方がない。わかった。ここは異世界。同郷だのなんだの言っていたら命はない。ここは割り切ろう」

 既に育っている先輩召喚者のダンジョンマスターや、生存しているかどうかは不明だが冒険者からもレベルアップの糧として狙われかねない立ち位置である事に漸く気が付いた四人。

 あの場所にいた冒険者程度では相手にならないので問題ないと感じていたが故に、油断が有った事は否めない。

 そうなると逆に手短な糧を得る方が良いと判断して、同時に召喚された対極の存在である四宮達を獲物として捉えてしまうのは当然の流れと言える。

 こうして図らずもこの時までに、ダンジョンマスター側と冒険者側の四人全員が互いを不倶戴天の敵として認識した。

 立場がどうなっているか不明の湯原と水野も見つけ次第始末する事を確認した四人は、それぞれが新調した武器を装備してから依頼のラグリアと呼ばれる、日本で言う所のモグラ……ただし地上で生活している魔物が生息している場所に向かう。

 少し前の多少お気楽な気持ちは失せ、いつ襲われても対処できるように慎重に慎重を期して進んでいる。

 今回は道中何かがある訳でもなく受付に教えてもらった場所に難なく到着すると、四人全員が何となく複数の魔物の存在を感じ取る事が出来ていた。

「自分が行ってみよう」

 徐に弓を構えて矢を射る笹岡。

 立て続けに四本飛んだ矢は何もなさそうな藪の奥に刺さると同時に、魔物の気配が全て消える。

「おっ、レベルアップだ」

 全員がパーティーと認識されたのか、同時に頭の中にレベルが20から22に上昇した旨のメッセージが表示された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金5億で異世界転移、よりによって金本位制の世界だった

夜明け一葉
ファンタジー
32歳の個人トレーダー・佐藤慧は、5年間の雪辱を賭けたトレードで5億円の借金を抱え、意識を失った。目覚めると、そこは剣と魔法が存在する見知らぬ世界だった。常識が通じない異世界で、金貨を見るだけで嘔吐する「金アレルギー」を抱えながら、若き冒険者リナと出会い、生き延びる術を探し始める。諦めることだけができなかった男が、新たな世界で再び立ち上がる異世界サバイバル譚。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

氷結の夜明けの果て (R16)

ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン) よくある異世界転生? 使い古されたテンプレート? ――そうかもしれない。 だが、これはダークファンタジーだ。 恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも―― まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。 穏やかな始まり。ほのかな優しさ。 だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。 その時が来れば、闇は牙を剥く。 あらすじ 失われた魂――影に見つめられながら。 だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか? 異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。 生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。 ――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。 冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、 彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。 だが、栄光へと近づく一歩ごとに、 痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。 光の道を歩んでいるかのように見えて―― その背後で、影は静かに育ち続けていた。 ――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。 🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。 🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。 🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。 ヴェイルは進む。 その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。 それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...