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冒険者組以外は、いつもと変わらない日常を送っている。
突然襲われた藤代と椎名は、その後何とか意識を取り戻して椎名の光魔法で回復した上で撤退している。
シノイチに操られていた吉川と笹岡も、何故か藤代と椎名に対して激しい嫌悪感を持ったまま移動し、気が付けば隣国のラスリ王国のギルドで活動を再開している。
例外は、一週間ほどダンジョンを完全に密閉した状態でその身を隠していたダンジョンマスターの星出と岡島だ
流石に体調が悪化し始めた七日目に、思い切って少し入り口を開けて互いに意思疎通を図り、ひっそりと生きて行こうと誓いあう。
真上にあるダンジョンマスターの四宮と辰巳とは、ダンジョンの外観からもどう見てもレベル差が大きくなっているので、そちらにも気が付かれないように行動する必要があるのだ。
今更正直に全てを話しても、恐らく自分達は糧にされてしまうだろうと言う判断であり、これは正しい。
すっかりこの世界に染まってしまい、快楽に身を委ねている四宮と辰巳は、かつての恋人であったとしても容赦なく切り捨てる人物になっていた。
だが、ダンジョンが移動できない以上、星出と岡島は最も危険な敵が永遠に真上にいる事になるのだ。
更に、いくら入り口を開けたとはいえ大きく開ければ上の二人に気が付かれるし、レベルの高い魔物が侵入してこないとも限らない。
そんな事から、夜に人が辛うじて一人入れるくらいのスペースしか開けておらず、そのためにダンジョンの糧になり得る獲物を捕らえて来るのも大きさが限定されている。
この作戦も、星出の眷属である蟻が死亡すれば機能しなくなるリスクを孕んでいるのだが、これ以外に生き残る術が思い浮かばないのだ。
思い切って人族の町に繰り出そうと考えた時も有るのだが、人族の町の情報が一切ないので安全に過ごせる保証はなく、場合によっては更に敵を増やす可能性すらあるので踏み切れずにいた。
今回の騒動ですっかり同じ立場の者でも分裂してしまった召喚者達だが、唯一結束を深めている湯原と水野だけは、全く人が来ない縁結びの聖地と言われている場所を心配する余裕を見せつつ、楽しく過ごしていた。
いつの間にかダンジョンレベルも21にまで上昇し、眷属達も均等にレベルを上げているので、全てレベル30になっている。
こうなれば、レベル32であった<淫魔族>のシノイチにも十分に渡り合えなくもない力を得ている事になる。
特に同性である<属性族>のレインであれば、非常に相性が良いのでこのレベル差であれば負ける事はないだろう。
性別の無い眷属達にも<淫魔族>の術は効かないので、唯一異性の<魔人族>であるデルだけが少々危険になるのだが、そこも周囲の他の眷属の助けがあれば問題ないと判断し、いよいよダンジョンを改装する事にした。
「セーギ君。いよいよ……ですね。これまでも来訪者はいなかったですが、少し慎重な人や以前のこの洞窟を覚えている人、冒険者が来れば、新たなダンジョンが出来たと分かってしまいますね?」
「でも、一階層になるこの場所はいじらない予定だから、奥に続く階段も奥まで入らなければ見えないようにするし、暫くは大丈夫だと思うけどね」
そんな話をしつつ、互いに溜まった内包魔力を確認する。
<湯原>のダンジョン レベル21 内包魔力4200 <保有レベル0>
<水野>のダンジョン レベル21 内包魔力4180 <保有レベル0>
互いの内包魔力に若干のずれはあるが、眷属の種類も違う事だし、誤差だと言う事で納得している。
保有レベルに関しては全て眷属のレベルに振り分けているのでゼロだ。
「この階層は変更せずに……いや、階段の変化を分かり辛くするように変更して、その下を色々と考えよう」
「そうですね。そうなると、コアルームに続く扉のように、風景に溶け込んだ壁を作って、その裏に階段が隠れている……と言った所でしょうか?」
こうして一階層については、洞窟の中に入ってよく見なければ変化が分からないようにして下に続く階段を生成する。
この変更は、二階層を作成すると言う変化と共に実施した為、内包魔力を130消費した。
階層追加で100、一階層の階段を隠すようにした事に対して30消費した。
一階層から続く階段の前にフロアボスを置く事も出来るのだが、そうなると明らかに見栄えに変化が起きてしまうので、そこは簡単に二階層に降りて来る事が出来る造りのままだ。
既にレベル21に到達しているので、可能なダンジョンの変更は多岐にわたる。
階層追加、階層拡張、環境変化(大)、罠設置(重症)、転移陣、魔物召喚(レベル10)、冒険者への餌(武器)だ。
レベル21になるまでコアルームの微小変更以外行っていなかったので、一気にできる事が増えている。
中でもダンジョンの守りが強固になる為の環境変化については、初期の頃に出来る様になっていた森や迷路形式の階層にする他、特殊な環境である極寒や溶岩、更には濃霧等の攻略者側にとっては非常に不利になる変更が出来る様になっている。
こうなるとコアルームがどんどんと下層に行ってしまい移動に苦労するのが一般的だが、ダンジョンマスターと眷属であればマスターが管理するダンジョン内部は自由に転移が出来るので全く問題ない……が、残念ながらその設定にも内包魔力が必要になっていた。
突然襲われた藤代と椎名は、その後何とか意識を取り戻して椎名の光魔法で回復した上で撤退している。
シノイチに操られていた吉川と笹岡も、何故か藤代と椎名に対して激しい嫌悪感を持ったまま移動し、気が付けば隣国のラスリ王国のギルドで活動を再開している。
例外は、一週間ほどダンジョンを完全に密閉した状態でその身を隠していたダンジョンマスターの星出と岡島だ
流石に体調が悪化し始めた七日目に、思い切って少し入り口を開けて互いに意思疎通を図り、ひっそりと生きて行こうと誓いあう。
真上にあるダンジョンマスターの四宮と辰巳とは、ダンジョンの外観からもどう見てもレベル差が大きくなっているので、そちらにも気が付かれないように行動する必要があるのだ。
今更正直に全てを話しても、恐らく自分達は糧にされてしまうだろうと言う判断であり、これは正しい。
すっかりこの世界に染まってしまい、快楽に身を委ねている四宮と辰巳は、かつての恋人であったとしても容赦なく切り捨てる人物になっていた。
だが、ダンジョンが移動できない以上、星出と岡島は最も危険な敵が永遠に真上にいる事になるのだ。
更に、いくら入り口を開けたとはいえ大きく開ければ上の二人に気が付かれるし、レベルの高い魔物が侵入してこないとも限らない。
そんな事から、夜に人が辛うじて一人入れるくらいのスペースしか開けておらず、そのためにダンジョンの糧になり得る獲物を捕らえて来るのも大きさが限定されている。
この作戦も、星出の眷属である蟻が死亡すれば機能しなくなるリスクを孕んでいるのだが、これ以外に生き残る術が思い浮かばないのだ。
思い切って人族の町に繰り出そうと考えた時も有るのだが、人族の町の情報が一切ないので安全に過ごせる保証はなく、場合によっては更に敵を増やす可能性すらあるので踏み切れずにいた。
今回の騒動ですっかり同じ立場の者でも分裂してしまった召喚者達だが、唯一結束を深めている湯原と水野だけは、全く人が来ない縁結びの聖地と言われている場所を心配する余裕を見せつつ、楽しく過ごしていた。
いつの間にかダンジョンレベルも21にまで上昇し、眷属達も均等にレベルを上げているので、全てレベル30になっている。
こうなれば、レベル32であった<淫魔族>のシノイチにも十分に渡り合えなくもない力を得ている事になる。
特に同性である<属性族>のレインであれば、非常に相性が良いのでこのレベル差であれば負ける事はないだろう。
性別の無い眷属達にも<淫魔族>の術は効かないので、唯一異性の<魔人族>であるデルだけが少々危険になるのだが、そこも周囲の他の眷属の助けがあれば問題ないと判断し、いよいよダンジョンを改装する事にした。
「セーギ君。いよいよ……ですね。これまでも来訪者はいなかったですが、少し慎重な人や以前のこの洞窟を覚えている人、冒険者が来れば、新たなダンジョンが出来たと分かってしまいますね?」
「でも、一階層になるこの場所はいじらない予定だから、奥に続く階段も奥まで入らなければ見えないようにするし、暫くは大丈夫だと思うけどね」
そんな話をしつつ、互いに溜まった内包魔力を確認する。
<湯原>のダンジョン レベル21 内包魔力4200 <保有レベル0>
<水野>のダンジョン レベル21 内包魔力4180 <保有レベル0>
互いの内包魔力に若干のずれはあるが、眷属の種類も違う事だし、誤差だと言う事で納得している。
保有レベルに関しては全て眷属のレベルに振り分けているのでゼロだ。
「この階層は変更せずに……いや、階段の変化を分かり辛くするように変更して、その下を色々と考えよう」
「そうですね。そうなると、コアルームに続く扉のように、風景に溶け込んだ壁を作って、その裏に階段が隠れている……と言った所でしょうか?」
こうして一階層については、洞窟の中に入ってよく見なければ変化が分からないようにして下に続く階段を生成する。
この変更は、二階層を作成すると言う変化と共に実施した為、内包魔力を130消費した。
階層追加で100、一階層の階段を隠すようにした事に対して30消費した。
一階層から続く階段の前にフロアボスを置く事も出来るのだが、そうなると明らかに見栄えに変化が起きてしまうので、そこは簡単に二階層に降りて来る事が出来る造りのままだ。
既にレベル21に到達しているので、可能なダンジョンの変更は多岐にわたる。
階層追加、階層拡張、環境変化(大)、罠設置(重症)、転移陣、魔物召喚(レベル10)、冒険者への餌(武器)だ。
レベル21になるまでコアルームの微小変更以外行っていなかったので、一気にできる事が増えている。
中でもダンジョンの守りが強固になる為の環境変化については、初期の頃に出来る様になっていた森や迷路形式の階層にする他、特殊な環境である極寒や溶岩、更には濃霧等の攻略者側にとっては非常に不利になる変更が出来る様になっている。
こうなるとコアルームがどんどんと下層に行ってしまい移動に苦労するのが一般的だが、ダンジョンマスターと眷属であればマスターが管理するダンジョン内部は自由に転移が出来るので全く問題ない……が、残念ながらその設定にも内包魔力が必要になっていた。
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